産業用ロボットSIer 300社掲載

2023.03.13

CNC工作機械は何ができる?機械の種類と活用シーン

CNC工作機

私たちの生活と密接に関連しているCNC工作機械。普段はあまり人目に触れませんが、実は身の周りの工業製品はCNC工作機械によって作られているかもしれません。この記事ではCNC工作機械とはどんなものか、何に使われているのか、そしてCNC工作機械がもっと便利になるようなヒントについてご説明します。

CNC工作機械とは

実は私たちの生活に密接に関連しているCNC工作機械ですが、聞きなれないアルファベット3文字と、聞きなれない四字熟語の組み合わせです。まずは言葉の意味から解説します。

工作機械とは

工作機械とは、モノを好きな形状に変える(「加工」)ための機械です。削る、切る、磨く、叩く、引き延ばす、潰すなど、様々な方法で加工を行います。ここでは主に「金属を削る加工(「切削」)を行う機械」を扱います。

工作機械は小さなものでも一人暮らし用の冷蔵庫サイズ、大きいものでは25mプールよりも大きなものも存在します。

CNCとは

CNCは”Computer Numerical Control”の略で、日本語では「コンピュータ数値制御」と訳されます。様々な方法で金属を切削する工作機械ですが、世の中に出始めた頃は職人が自分で機械を操作し、切削を行っていました。ラジコンやドローンのようなイメージです。

しかしそれでは、機械から片時も手を離せない、仕事を休むと生産が止まってしまう、同じものを加工するときに誤差が生じるなど、多くの問題が発生しました。特に製品にばらつきが出るのはものづくりにおいて致命的です。品物によっては数百ナノ〜10ミクロン単位の寸法誤差しか認められないものもあります。工作機械にとって、正確に切削することは非常に重要度の高い項目なのです。

工作機械に「自動で、正確に、同じ動き」で切削させたいという願望の末に生まれたのが、CNCという考え方です。つまり工作機械とコンピュータを合体させ、プログラム(以降は「CNCプログラム」と記載します)の指示によって、工作機械が正確に決められた移動量を決められた速度で、しかも自動で動くようにしました。

CNCプログラムは、「Gコード」や「Mコード」と呼ばれるプログラミング言語で構成されており、CNC工作機械の操作盤(「NC装置」)に手動で入力することができます。最近は動画のように、タッチパネル操作のNC装置を搭載するCNC工作機械も増えてきました。

更に現在は「対話式CNC」という、より簡単な入力方式を用いるケースも多数あります。また「CAM」と呼ばれる金属をどのように切削するかをシミュレーションするソフトウェアから生成したプログラムを、CNC工作機械に直接送るという方法を採る企業も増えてきています。

CNC工作機械の誕生により、金属を「自動で・正確に・同じ動き」で切削できるようになり、ものづくりの効率性が格段に向上しました。

CNC工作機械の種類

「金属を切削する」と言っても削り方は様々で、それによって機械を使い分ける必要があります。ここでは2種類の機械を解説します。

CNC旋盤

CNC旋盤は、主に円盤・円筒形状の材料を回転させ、そこに刃物(「切削工具」や、単に「工具」と呼ばれます)を当てることによって金属を削ります。ちょうど「ろくろ」のようなイメージです。多くの場合は、「チャック」という保持具によって材料を固定します。チャックはモーター(「主軸モーター」)と連結しており、チャックを回転させることで材料も回転します。

それから、「刃物台」という、工具を取り付ける台にバイト、ドリル、ボーリングバー、Uドリル、タップ、リーマなどの工具を装着します。更に刃物台をX/Z軸の2軸方向に動かすことにより回転する材料に工具を接触させ、所定の形状に削ります。参考になる動画をご紹介しますので、ぜひご覧ください。

多くのCNC旋盤の刃物台は回転式になっており、一台の機械に複数の工具を装着し、加工内容によって工具を自動で使い分けながら、加工を行うことができます。CNC旋盤にはこの他に、Y軸方向にも刃物台が動くタイプ、材料を回転させるだけでなく回転工具を取り付けられるタイプ、更に刃物台が回転して刃物の角度を自在に変えられる、5軸複合旋盤という機械もあります。

CNCマシニングセンタ

CNCマシニングセンタは、材料に対して回転する工具を当てることによって金属を削ります。多くの場合は、「テーブル」という加工エリアに設置した「バイス」や「イケール」などの保持具によって材料を固定します。それから、工具に回転を伝達する装置(「主軸」)に、エンドミル、フェイスミル、ドリル、ボーリングバー、タップ、リーマなどの工具を装着し、CNCプログラムの指令によって回転させます。

更に主軸やテーブルをX/Y/Z軸の3軸方向に動かすことにより材料に回転工具を接触させ、所定の形状に削ります。主軸の向きによって、地面と垂直であれば「立形マシニングセンタ」、地面と水平であれば「横形マシニングセンタ」に分類されます。

マシニングセンタには「ATC」という装置が付いてます。「オートツールチェンジャ」の略で、日本語では「自動工具交換装置」と訳されます。CNCマシニングセンタの主軸は、ふつうは一本の工具しか装着できません。しかし加工内容によっては一本の切削工具では加工を完了できないので、切削工具を工程ごとに交換する必要があります。これを自動で行う装置がATCです。

ATCは「ツールマガジン」という工具を収納しておく装置から工具を取り出し、主軸に付いている工具と自動で交換します。参考になる動画をご紹介しますので、こちらもぜひご覧ください。

CNC工作機械で作られているもの

CNC工作機械は金属を切削する機械ですが、金属を切削してどんなものを作っているのでしょうか。代表的な例をご紹介します。

自動車部品

ガソリン自動車にはエンジン、トランスミッション、ドライブシャフト、デファレンシャルギヤ、ホイールなど、様々な金属製の部品が使用されています。電気自動車でもモーターケース、モーターギア、バッテリーケースなどの多くは金属製です(軽量化のためにCFRPなどの新素材を使うこともあります)。これらの多くを削っているのは、CNC工作機械です。

航空宇宙部品

皆様が旅行や出張で利用する旅客機。エンジン、プロペラ、油圧シリンダー、ブレーキ、ランディングギア、翼のリブなどの金属製の部品が非常に多く使われています。また近年は、米SpaceX社が商用ロケット事業を進めるなど活発な動きを見せる宇宙業界。ロケットにも航空機と同様、多くの金属製の部品が使われます。

人工衛星や宇宙望遠鏡も同様です。2021年にNASAが開発・打ち上げを行った「ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡」には、宇宙からの赤外線をキャッチする「主鏡」という部品があります。この主鏡をベリリウムという金属の塊から精密に削り出したのは、埼玉県に本社を置く三井精機工業株式会社製のCNCマシニングセンタでした。

https://seizougenba.com/node/13188

ロケットや航空機の部品には強度、軽量、耐久性の全てが求められるので、それらの特徴を持つ「ジュラルミン」と呼ばれるアルミ合金や、チタン合金、「インコネル」と呼ばれるニッケル合金などが、材料として多く選ばれています。

CNC工作機械と防衛産業

航空宇宙技術は民間・研究目的だけでなく、軍事目的でも用いられます。その代表例は戦闘機やヘリコプター、ミサイルなどです。これらは旅客機やロケットと同じく、多くの金属製部品が用いられています。CNC工作機械は、私たちの暮らしを守る産業にとっても欠かせない存在なのです。

ロボット部品

ソニーのAibo、ホンダのASIMO、ソフトバンクのPepperなど、ロボットは過去から現在に至るまで私たちを魅了してきました。新しいロボットを設計製造するベンチャー企業も次々と登場しています。

またこれら民生用ロボットだけでなく、自動車メーカーの多くには「産業用ロボット」と呼ばれる、工場で使う専用のロボットが導入され、日夜自動車の組み立てを行っています。

ロボットは民生用・産業用問わず、私たちの生活に密接に関わっていますが、ロボットにもモーター、減速機、ブラケットやボルトなど多くの金属製部品が使われています。

医療用機器部品

血圧計・心電計・ペースメーカや人工関節・MRIやCTスキャンなど、病院には大小問わず様々な機器があり、それらの多くに金属製部品が用いられています。

なお医療業界では、治療において医療器具を直接体内に埋め込むことがあります。その代表例が人工関節で、強度と軽量と耐久性の全てを満たし、なおかつ金属アレルギーを起こしにくい材料が選ばれます。従って人工関節においては、しばしばチタン合金が材料として選ばれることがあり、これを一人一人の体のサイズに合わせてオーダーメイドで削るのが、CNC工作機械の役目であり得意分野です。

CNC工作機械が使われている場所

CNC工作機械が何を作っているのかが分かったところで、次はどんな場所で見つけることできるのか、代表的な例を2つご紹介します。

中小加工業者

街を歩いていたりGoogleマップを見ていると、「〇〇製作所」や「〇〇鉄工」と書かれた看板や表示を見かけることがあります。そのような中小加工業者は、もしかしたらCNC工作機械を設備しているかもしれません。あなたの家の周りの鉄工所も、もしかしたら私たちの生活と密接に関わる自動車・飛行機・ロボット・医療機器の部品を削っているかもしれませんね。

町工場にとってCNC工作機械は一世一代の大勝負

CNC工作機械は新品で購入すると安いものでも500万円、高性能・多機能なものでは5000万円や1億円を超えるものもあります。年間売上高が数千万円〜数億円、従業員数が1名〜5名ほどのいわゆる「地元の町工場」にとって、CNC工作機械への投資は、会社の今後の経営を左右する一世一代の大勝負なのです。

だから多くの町工場の経営者は、投資する工作機械の機種やオプションの選定、更に工作機械購入後の加工依頼の確保に常に神経を遣っています。

大手メーカー

自動車、航空機、ロボット、医療機器、家電、電子機器、工作機械などの最終製品をつくる、いわゆる大手メーカーも、CNC工作機械の大きな需要家の一つです。自社内での加工や外注品の修正のためにCNC工作機械が設備されることがあります。

数万〜数十万個単位の量産部品の加工では、複数の専用CNC工作機械、産業用ロボット、加工物の自動搬送装置などを組み合わせた「トランスファライン」という切削加工システムを構築することもあります。このシステムの構築には、工作機械メーカー、産業用ロボットメーカーだけでなく、「ロボットSIer」と呼ばれる、ロボットシステムを提案・設計・施工する専門の事業者が関わることも多くあります。

大手メーカー生産技術者とCNC工作機械

一台だけでも非常に高額な工作機械。更にトランスファラインのような産業用ロボットと組み合わせた大規模なシステムは、1億円から10億円を超えるものも珍しくありません。

当然導入する大手メーカーでは幾多の投資効果検証、予算申請、稟議承認手続きが踏まれます。そして導入後は、検証した効果(切削時間短縮、生産量アップ、加工品質向上、工程集約など)が生産現場で実際に出るかが常に試されます。

導入をリードする部署や生産技術者は、高額設備が効果を出して会社の利益に貢献すれば高い評価を得られます。その一方で、想定した効果を得られずに赤字設備になってしまったら…。大手メーカー生産技術者にとって、CNC工作機械やシステムの導入は出世の大きな登竜門の一つです。従って生産技術者は、導入するCNC工作機械の機種やオプション選定に非常に気を配り、しばしば自社の生産工程に合った特注オーダーメイド仕様が多数詰め込まれることもあります。

人手不足の未来とCNC工作機械

人手不足は生産現場の大問題の一つです。少子高齢化に加え、製造業不人気によって人材が生産現場に集まりにくくなっています。その際に、導入するCNC工作機械が人手不足の強い味方になってくれるよう、いくつかのポイントがあります。

適切なオプションを選ぶ

CNC工作機械には多数のオプションが用意されており、生産工程に合わせてこれらを組み合わせ、自社に最適な仕様を選択する必要があります。人手不足を助ける力になってくれるオプションを、いくつかご紹介します。

チップコンベア

CNC工作機械は金属を切削する機械なので、加工後には大量の金属の細かい切りくず(「切粉」)が発生します。ふつうは機械の下に差し込まれた容器に落下するのですが、切粉でいっぱいになった際に容器を引っ張り出し、スコップなどで切粉を別の場所へ運搬するのは非常に大変な作業です。チップコンベアは切粉を機外に排出する装置です。チップコンベアの排出口の下にキャスター付きの容器を置いておけば、少ない人数でも短時間で効率よく切粉を処理することができます。

このオプションは、機械の左右もしくは後方にコンベア分のスペースが必要になるので、工場面積を考慮して選択する必要があります。

パレットチェンジャー

多くの横型マシニングセンタ、及び一部の立形マシニングセンタには、プログラムに従って材料を取り付けたパレットを機内と機外で入れ替える装置を選択できるものがあり、これをパレットチェンジャーと呼びます。これによって機内で加工中に、もうひとつの機外のパレットで、材料の取り付け作業と完成品の取り外し作業(両方を合わせて「段取り作業」)を行うことができます。

中には30個以上のパレットを入れ替えられる機種もあり、パレットに材料を取り付けることにより、長時間の無人運転が可能になります。

大容量ツールマガジン

CNCマシニングセンタでは加工内容に応じて、いくつもの工具をATCで入れ替えながら加工を行います。工具が不足したり破損すれば、人間がツールマガジンを操作して、新しい工具と交換する必要があります。従って工具収納本数が多ければ多いほど、工具交換作業を減らすことができます。

30本や40本のほか、メーカーや機種によっては500本を超える工具を同時に収納できるオプションも用意されています。当然ツールマガジンが大きくなればなるほど機械スペースも巨大になるので、予算やスペースを考慮して最適なオプションを選定します。

CAMを活用する

CNC工作機械は長い時間切削させることにより、投資効果を最大限引き出すことができます。従って多くの生産現場は、機械を止めてNC装置でCNCプログラムを入力する時間(非切削時間)を、なるべく短くしたいと考えています。

CAMを活用することによって、パソコン上で生成したCNCプログラムを連続してCNC工作機械に送り、非切削時間の削減に貢献することができます。

産業用ロボットを活用する

CNC工作機械の段取り作業は、従来は人間が時間をかけて行っていたため多額の人件費が発生し、更にCNC工作機械の非切削時間を増加させる要因でもありました。そこで産業用ロボットとCNC工作機械を組み合わせることにより、段取り作業時間を短く、無人化する企業が増えてきています。

CNC工作機械側で加工を終えてから、ロボットへ材料の搬入出の指示を出し、ロボット側で搬入出が終わったらCNC工作機械に次の加工に入る指示を出すなど、CNC工作機械のNC装置と密接に関わるシステムですので、専門のロボットSIerのサポートを受けることもできます。また近年は工作機械メーカーから、CNC工作機械と産業用ロボットを組み合わせたシステムが発売されています。

まとめ

CNC工作機械は、CNCと工作機械が合体したものです。大きくCNC旋盤とCNCマシニングセンタに大別され、金属加工の現場で様々な金属部品を加工していることを解説しました。

ご紹介した便利なオプションのほか、産業用ロボットを使ってCNC工作機械の生産性を向上させたいと検討されている方がいらっしゃいましたら、ロボカルがいつでもご相談に乗り、最適なご提案をいたします。

この記事の監修者
古河悟アイキャッチ
古河 悟
外資系IT企業勤務 製造業系ソフトウェア営業

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