産業用ロボットSIer 300社掲載

2021.02.15

パラレルリンクロボットとは?機構や活用事例も合わせて紹介

この記事で紹介する「パラレルリンクロボット」は従来の産業用ロボットが抱えるコストの問題を解決するために生み出されました。

本記事で紹介する「パラレルリンクロボット」は従来の産業用ロボットが抱えるコストの問題を解決するために生み出されました。
パラレルリンクロボットの基本的な特徴から、用途や活用事例までを徹底解説します。
コストパフォーマンスの良い産業用ロボットを検討中の方はぜひ参考にしてみてください。

この記事の結論

・パラレルリンクロボットは従来の産業用ロボットが抱える課題を解決するために生み出されたロボット
・パラレルリンクロボットは高速・精密作業に強い
・パラレルリンクロボットは製品の重量によっては向き・不向きが分かれる

パラレルリンクロボットとは

パラレルリンクロボット(parallel link robot)とは、従来の産業用ロボットが抱えるコスト面の課題を解決するために比較的最近生み出されたロボットです。

後述する、「パラレルリンク」という仕組みによって、下の例に示されるように、上から吊るす形で使用され、高速かつ精密な動きが実現されます。

パラレルリンクロボットは軽量物の高速ピッキング作業などにおいて強みを発揮しますが、製品の重量によっては向き・不向きが分かれます。

引用元:https://youtu.be/1LeC4EWFKBg

パラレルリンクロボットの構造

パラレルリンクロボットは、マニピュレーター(本体部分)に「パラレルリンク」という仕組みを採用しているのが特徴です。

産業用ロボットは一般的にジョイント(軸・関節)を動かしてリンク(骨)で力を伝えるという原理で動いていますが、リンクの並び方が直列であるか並列であるかの違いにより、「シリアルリンク」と「パラレルリンク」に分類されます。

「垂直多関節ロボット」に代表される従来のロボットでは、最終出力先の関節を制御するために、直列につながっている関節を一つずつ動かしていく「シリアルリンク」が採用されています。

それに対し、パラレルリンクロボットは並列につながっている関節を連携して動かす「パラレルリンク」の構造となっています。

出典元:産業用ロボットはどんな構造?ロボットアームが動く仕組みを徹底解説(川崎重工)

パラレルリンクロボットの4つの特徴

パラレルリンクロボットには次の4つの特徴があります。

  • 高精度
  • 高速
  • シンプルな機構
  • 作業領域は狭い

一つずつ見ていきましょう。

高精度

パラレルリンクロボットは、パラレルリンクを利用することで出力を1点に集約させ、高出力を実現できるため、高精度の作業に向いています。このような特性を活かして、生産ラインにおける材料の選別や整列などのコンベアトラッキングの用途に適しています。

人間が作業をする場合、体調や疲れ、習熟度などによって集中力が低下したり、品質にムラが生じたりする可能性がありますが、ロボットは一定の精度で同じ作業を何度でも繰り返すことができるので、品質管理などもしやすくなるでしょう。

高速

パラレルリンクロボットは、高出力を活かした高速作業が得意分野です。
特に、電子基板などの小型部品の高速ピッキング作業に向いているといえます。
人間が作業をする場合には、長時間労働などによって作業速度や効率の低下がありますが、ロボットは一定速度で何時間でも作業することができます。

これにより、短期だけでなく長期の生産量の見通しを立てやすくなります。

シンプルな機構

パラレルリンクロボットは主に、モーター、ベアリング、アルミパイプの3機構(パーツ)で構成されています。

このように機構がシンプルなのが特徴であり、一つ一つの機構の種類や形状が同じである場合も多いです。

そのため生産コストが低く、メンテナンスも比較的容易であるというメリットがあります。ただしシンプルな機構であるがゆえに、重量物は扱うのが難しくなります。パラレルリンクロボットの可搬重量は製品によって異なりますが、1kg〜3kg前後であることが多いです。

作業領域は狭い

パラレルリンクロボットは、アーム同士が並列につながる構造のため、可動域が狭くなる特徴があります。ただ、その分生産ラインをコンパクトに抑えることができるので、上手く取り入れることが重要です。また、作業領域が限られることから、工場内の安全性の確保が容易になります。

パラレルリンクロボットの用途・活用事例

先述の特徴をまとめると、パラレルリンクロボットは一般的に以下の3条件を兼ね備えた作業において力を最大限に発揮します。

  • 高精度
  • 高速
  • 軽量物

具体的にはどのような産業分野で活用できるのでしょうか?以下、パラレルリンクロボットの活用事例を3つ紹介します。

レトルトパウチ製品の整列システム

不規則に配置されたレトルトパウチ製品の生産ラインにおいて、パラレルリンクロボットと高性能カメラによる画像処理技術を組み合わせたシステムを導入しました。

その結果、配列の重なりや位置ズレの検出が可能となり、パウチ製品包装時に正確なハンドリングを実現できるようになりました。さらに生産性は3.0倍に増加し、1日あたり4名の省人化を達成することができました。

事例の引用元:『ロボット導入実証事業 事例紹介ハンドブック2018』p. 10

液晶部品のピッキングシステム

液晶ディスプレイ用偏光フィルムの断裁工程において、断裁後の小片ワークをピッキングする作業にパラレルリンクロボットを2台導入しました。

その結果、ピッキングシステムの効率化・省コスト化・省スペース化を実現しました。さらにパラレルリンクロボットのハンドに4枚取りの機能を持たせたことで、1台のロボットの能力が約3倍向上し、 2台のロボットだけでピッキング作業をすることができるようになりました。

事例の引用元:『ロボット導入実証事業 事例紹介ハンドブック2018』p.72

関連リンク:ピッキングができるロボットとは?導入メリットを解説

化粧品の仕上げ包装工程におけるラベル貼り・小物装填システム

変種変量生産が求められるメイクアップ化粧品の仕上げ包装工程にパラレルリンクロボットを4台導入しました。パラレルリンクロボットが持っている柔軟性やロボットビジョン(ロボットに取りつけるカメラシステム)の機能を活用し、変種変量生産に対応出来るロボットシステムを構築。

その結果、製品ごとに発生するシス テムインテグレーション費用や段取り替えの作業時間が大幅に低減できたほか、1日あたり21.5人の省人化が達成されました。

事例の引用元:『ロボット導入実証事業 事例紹介ハンドブック2018』p.76

パラレルリンクロボットのメーカー一覧

パラレルリンクロボットを取り扱っている主なメーカー(全7社;2021年現在)を一覧表にまとめました。

パラレルリンクロボットの主要メーカー7社(五十音順)

メーカー名本社公式ウェブサイト
オムロン株式会社京都府https://www.omron.co.jp/
パナソニック株式会社大阪府https://www.panasonic.com/jp/home.html
川崎重工業株式会社東京都https://www.khi.co.jp/
村田機械株式会社京都府https://www.muratec.jp/
株式会社GKM石川県http://www.gkm.co.jp/
株式会社ロボテック東京都https://www.robotec.tokyo/
株式会社安川電機福岡県https://www.yaskawa.co.jp/

実際の現場にロボットシステムを導入する場合は、ロボットの付帯設備を設計・製作・設置が必要です。付帯設備には以下のようなものがあります。

  • 安全柵
  • 制御盤
  • 架台
  • エンドエフェクター(ロボットハンド)
  • 搬送装置

こういった付帯設備を含むシステム設計・制作・設置はロボットシステムインテグレーター(ロボットSIer)に依頼するのが一般的であり、その費用が別途発生します。その他にもロボットティーチングやメンテナンスといった時間的・金銭的コストも想定しておく必要があります。

パラレルリンクロボットを導入する際には、上述の点も総合的に踏まえた上で検討してみてください。

関連リンク:

川崎重工のロボット|種類・特徴と価格は?導入事例解説

安川電機のロボット「MOTOMAN」シリーズ|種類や価格と導入事例

パラレルリンクロボットについて

今回はパラレルリンクロボットの構造や特徴、活用事例について解説しました。

パラレルリンクロボットはマニピュレーター(本体部分)にパラレルリンクが採用されていることによって高速かつ高精度の作業を得意とします。シンプルな機構でメンテアンスがしやすく、コストパフォーマンスに優れているのも魅力です。

製品の重量によって向き・不向きはあるものの、その使い勝手の良さからコンベアトラッキングなど様々な工程で活用されているのがパラレルリンクロボットです。産業用ロボットの導入を検討中の方はぜひ選択肢の一つに加えてみてください。

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