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産業界の人手不足や高齢化が加速している昨今、製品などの荷積み作業(パレタイジング)に産業用ロボットを導入する流れが加速しています。
この記事ではパレタイジングロボットを使うメリットや導入時のポイント、実際の活用事例まで詳しく解説します。
・パレタイジングロボットとは荷積みや荷下ろし作業をするために開発された産業用ロボット
・パレタイジングロボットの形状としては4軸のアーム型が主流
・パレタイジングロボットを導入することで人件費削減や品質向上、業務効率アップといったプラスの効果が期待できる
パレタイジングロボットとは
パレタイジングロボットとはハンドリングの一工程である荷積み(パレタイズ)や荷下ろし(デパレタイズ)の作業を担当する産業用ロボットを指します。特に、作業員にとって負担が大きい重量物などを積み上げる現場で活用されています。
最近ではワーク(原材料や製品など)を掴むために使うロボットアームの先端部の性能が進化してきており、より幅広い荷積み現場に対応できるようになってきています。
パレタイジングロボットの構造
パレタイジングロボットの多くはアーム型の「垂直多関節ロボット」です。下記の例のように、複数の軸(ジョイント・関節)を自由自在に動かしリンク(骨)で力を伝えるという原理で動いています。
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一般的な垂直多関節ロボットは柔軟性に特化した6軸タイプが主流ですが、パレタイジング用の垂直多関節ロボットは重量物の搬送に対応できるように剛性を重視した4軸タイプが大半を占めます。
パレタイジングロボットを導入する4つのメリット
パレタイジングロボットを導入することによって得られるメリットは次の4点です。
- 作業員の安全確保
- 省人化による人件費削減
- 製品の品質向上
- 業務の効率化
一つずつ見ていきましょう。
作業員の安全確保
パレタイジングロボットを導入することで荷積みや荷下ろし作業中の怪我や腰痛といった健康面・安全面のリスクを軽減することができます。
たとえば重い段ボールなどを持ち上げるような重労働も自動化することができるので、作業員の安全を確保することができます。
省人化による人件費削減
手作業でおこなっていた荷積み・荷下ろし作業をパレタイジングロボットで自動化すれば人手を減らすことができるため、人件費を削減することができます。
またロボットはプログラミング通りの動きを継続することができるので、人間よりも教育コストがかかりません。そのため新入社員の研修などの経費削減にもつながります。
製品の品質向上
パレタイジングロボットはプログラムされた一定の動きを繰り返すことができるので、製品の質と量を高水準に保つことができます。
そのため人間の手作業をロボットで代替することによって品質管理や納期管理がしやすくなるというメリットがあります。
業務の効率化
パレタイジングロボットの主流である垂直多関節ロボットは、組み込み系技術が充実しているのが特徴であり、AI(人工知能)などの最新技術をロボット組み込むことで業務を効率化することが可能です。
たとえばAIによる機械学習をパレタイジングロボットに適用することでロボットが過去の作業データからパターンを自ら学習し、パレタイジング作業を最適化することもできます。
パレタイジングロボットを導入する際のポイント
パレタイジングロボットを導入する場合、
- 用途(特に、製品の重量が可搬質量に対応しているか)
- 設置できるスペース
- 予算
以上3点を明確化した上で、現場に適したロボットを選定しましょう。ちなみに可搬質量とはどの程度の質量のものを搬送できるかを示す数値のことです。
可搬質量が大きければ大きいほど重量物にも対応できるようになりますが、その分ロボット本体の剛性も必要になるため価格相場が高くなります。またロボットの設置スペースも広くなる傾向にあります。
パレタイジングロボットの活用事例
ここでは様々な産業分野におけるパレタイジングロボットの活用事例を3つ紹介します。
真空冷凍パックのパレタイジングシステム
真空パック製品の箱詰め工程および段ボール箱のパレット積み工程に、パレタイジングロボット(垂直多関節ロボット)を導入しました。
その結果、従来この工程に従事していた6名の人員を上流工程へ配置転換することが可能になり、限られた人材を有効活用しながら生産数をアップさせることができました。
事例の引用元:ロボット導入実証事業 事例紹介ハンドブック2018』p.18
医療用分包紙検査システム
医療用分包紙の自動仕分けおよび品目別出荷における、積み込み工程にパレタイジングロボット(協働ロボット)を導入しました。
その結果、「人とロボットが共存できる職場」となり、作業者の肉体的負担が軽減されました。
事例の引用元:『ロボット導入実証事業 事例紹介ハンドブック2018』p.26
極小レンズのハンドリングシステム
画像処理技術とパレタイジングロボット(垂直多関節ロボット)の組み合わせることにより、透明なレンズをハンドリングするシステムを導入しました。
その結果、熟練作業の代替・支援および品質向上、自社技術の流出防止につながりました。
事例の引用元:『ロボット導入実証事業 事例紹介ハンドブック2017』p.51
パレタイジングロボットのおすすめメーカー3選
ここでは、パレタイジングロボットに強いメーカー3つのメーカーを紹介します。
安川電機
株式会社安川電機(本社:福岡県北九州市)は袋物の食品や、ダンボール、ボトルケース、建材など、多種多様な製品に適したパレタイジングロボットを提案している日本の老舗メーカーです。
可搬重量は80kgから800kgのものまで充実のラインナップ。新型の4軸垂直多関節ロボット「MOTOMAN-PLシリーズ」のほか、パレタイジングロボット専用のアプリケーション(ソフトウェア)なども幅広く取り扱っています。
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川崎重工業
川崎重工業株式会社(本社:東京都港区)は物流に強いパレタイジングロボットを得意とする日本のメーカーです。オートバイ・航空機・鉄道車両・船舶といった輸送機器分野において培われた実績を活かしたパレタイジングロボットを多数提案しています。
可搬質量は80kg~700kgまでのロボットに対応。新型パレタイズロボット・CPシリーズは動作範囲とスピード面で機能性が高く、物流のスピードアップに威力を発揮します。
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KUKA
KUKA(本社:ドイツ・アウクスブルク)は汎用性の高いパレタイジングロボットを提供しているメーカーです。
可搬重量は40kg〜1300kgとロボット業界の中でも随一の広さを誇ります。また最大リーチが3601mmの大型ロボットなど、それぞれの製造現場に合わせた特殊仕様の開発にも幅広く対応しています。
まとめ
この記事ではパレタイジングロボットを使うメリットや導入時のポイント、実際の活用事例などを解説しました。
パレタイジングロボットで荷積み・荷下ろし工程を自動化することで、人件費の削減や労働環境の改善といった様々な効果が期待できます。
パレタイジングロボットを自社にも導入してみたいと思われた方は、この記事で紹介した導入時のポイントや3つのメーカーなどをぜひ参考にしてみてください。