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「工場内で部品を自動で搬送・運搬したいが、どんなロボットがあって、何ができるのかがわからない」「搬送用ロボットを比較・検討しているが、ロボット導入のポイントを知りたい」こんな疑問やお悩みをお持ちではないでしょうか?本記事では次の内容について、ロボット業界で10年以上働いている筆者がわかりやすく解説します。
・搬送用ロボットにはどんなものがあるのか、何が自動化できるのか
・搬送用ロボットメーカーはどんな会社があるのか
・搬送用ロボット導入のポイント
搬送用ロボットに興味を持った方や、ロボットの導入検討中の方は、ぜひ今回の記事を参考にしてみてください。
搬送用ロボット4種類と機能
搬送用ロボットの種類(カテゴリー)と、それぞれのロボットが自動化できることを紹介します。搬送用ロボットはさまざまな業種で使用されており、ロボットの形や搬送する荷物も多岐にわたっています。ここでは、自動化の現場でよく使われる、次の4種類の搬送用ロボットを紹介します。
・ロボットアーム
・移動ロボット(AGV・AMR)
・半導体搬送ロボット
・直交ロボット
ロボットアーム
産業用ロボットのマニピュレータ(ロボットアーム)は、搬送用ロボットとしての用途があります。ロボットアームは人間の腕と同じような役割をしており、手先で荷物を持って別の場所に運ぶ、という作業をします。
垂直多関節ロボット
垂直多関節ロボットは人間の腕と似たような構造をしているアームを持っています。垂直多関節ロボットは、物を移動させるときに上下をともなう動きがあるような作業が得意です。たとえば、コンベヤから流れてきた荷物を台車にパレタイジング(整列)させるといった作業。このような工程は、垂直多関節ロボットで自動化することが可能です。
スカラロボット
スカラロボットは、アームが水平に配置されたロボットです。水平多関節ロボットとも呼ばれることがあります。スカラロボットは、小さなワークをある場所から別の場所に水平方向に搬送する、といった作業が得意です。
たとえば、基板などの電子部品を検査機にセットして、検査が終わったらトレーに並べるといった作業。このような工程は、水平多関節ロボットで自動化することが可能です。
移動ロボット(AGV・AMR)
車輪で地上を移動するロボットです。工場内で数十kg~数百kgの荷物を人間が運ぶ場合は台車を使いますが、「台車でものを運ぶ」という工程を自動化するのが移動ロボットとなります。搬送用途としての移動ロボットは「AGV」と「AMR」の2種類があります。
AGV(無人搬送車)
出典元:(明電舎 https://www.meidensha.co.jp/products/logistics/prod_01/prod_01_01/index.html)
AGV(Automated Guided Vehicle)とは、無人で搬送・運搬をする移動ロボットです。あらかじめ搬送経路に磁気テープなどのラインを敷いて、AGVがラインを検知し、ラインに沿って走るという仕組みになっています。
決まった経路上しか走れないという特性はありますが、その分導入はしやすく、さまざまな工場で部品の搬送用ロボットとして使われています。
AMR(自律走行型ロボット)
出典元:(OMRON https://www.fa.omron.co.jp/products/family/3664/)
AMR(Autonomous Mobile Robot)とは、自分で走行経路を判断して搬送・運搬をする移動ロボットです。AMRはセンサーで常に周囲を監視し、人間が近づいても自分から避けるように動きます。人間と作業エリアを共用したいときや、搬送ルートを頻繁に変えたいという場合に活躍します。
AGVとAMRの違い
AGVはあらかじめ敷かれたラインの上しか走れませんが、AMRは倉庫内の任意の経路をロボット自身が判断し、移動することができます。AGVは導入・運用が比較的容易で、AMRは搬送レイアウトが頻繁に変わる現場でも搬送ルートの変更がしやすいと言えます。
それぞれに優位な点があるので、自社の自動化したい工程によってどちらを導入するかを検討しましょう。
半導体搬送ロボット
半導体製造の原料となるシリコンウエハをプロセス室に搬送するためのロボットです。シリコンウエハはプロセス室でさまざまな加工がされ、パソコン・スマホ・家電などに使われるICチップになります。
ITの発展や自動運転などの技術進歩によって需要が増えており、国家間競争力にも大きな影響を与える半導体。その需要は増えており、それにともなって半導体搬送ロボットの市場も大きくなっています。
半導体搬送ロボットはクリーンロボットの一種で、クリーンルームというホコリやチリの少ない場所で働くことが求められています。
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半導体搬送ロボットは、搬送工程によって主に「OHT(天井走行式無人搬送車)」と「ウエハ搬送ロボット」の2種類のカテゴリーがあります。
OHT(天井走行式無人搬送車)
出典元:(村田機械株式会社 https://www.muratec.jp/cfa/products/)
OHTは「Overhead Hoist Transport」の略で、クリーンルームの天井に設置した軌道上を走行する移動ロボットです。製造途中のシリコンウエハは、複数枚まとめてFOUP(読み:フープ)と呼ばれる箱に入れられます。
クリーンルーム内は半導体製造装置が敷き詰められているため、空いている天井のスペースを活用し、FOUPを搬送します。
ウエハ搬送ロボット
出典元:(株式会社ジェーイーエル https://www.jel-robot.co.jp/products/GCR4210_AM.html)
ウエハ搬送ロボットは、FOUPから取り出されたシリコンウエハを一つひとつ搬送し、半導体製造装置内のプロセス室への設置・取り出しを行います。ロボットの構造はスカラロボットと似ていますが、クリーンルーム内や真空環境内でも動作できる特殊な構造になっています。
直交ロボット
出典元:(YAMAHA https://www.yamaha-motor.co.jp/robot/lineup/xyx/shaft/)
直交ロボットはX・Y・Zの直交座標系に直動アクチュエータ(直線状に動く機械)が取り付けられているロボットです。比較的簡単な構造でロボットのティーチングもしやすいですが、動作範囲の割に大型になるというデメリットがあります。そのため、製造装置の中に組み込まれ、その中で部品の搬送を行うという役割が多いです。
搬送用ロボットのメーカー16選
搬送用ロボットのメーカーを紹介します。
ロボットアームのメーカー
垂直多関節ロボット
垂直多関節ロボットのメーカーは「ファナック」、「川崎重工」、「安川電機」、「デンソーウェーブ」などです。
スカラロボット
スカラロボットのメーカーは「セイコーエプソン」、「川崎重工」、「ヤマハ」、「芝浦機械」などです。
AGV(無人搬送車)のメーカー
Swisslog
SwisslogはスイスのAGV世界最大手メーカーで、産業用ロボット大手KUKAの子会社です。
ギークプラス
ギークプラスは中国の北京ギークプラステクノロジーカンパニーリミテッドと日本資本のジョイントベンチャーです。搬送ロボットEVEというAGVで、特に物流業界において近年急速に存在感が増しているメーカーです。
明電舎
明電舎のAGVは台車形、全面低床形、フォークリフト形などの種類があります。パレット(生産現場で製品を一時的に入れておく箱)が積まれた台車を組み立て現場まで運ぶ工程に、明電舎のAGVが使われています。
AMR(自律走行型ロボット)のメーカー
オムロン
オムロンはPLCや産業用センサーメーカーですが、近年はロボット事業にも力を入れています。オムロンのAMR「LD/HDシリーズ」は、障害物や人を自動で避けて目的地に向かい、工場のレイアウト変更もマップを自力で生成し、すぐに対応できる特徴があります。
オムロンは自社の工場でAMRを導入しています。従来は人間が行っていた搬送工程をAMRにさせることで、「搬送のリードタイムが平均で80%短縮」することができたそうです。
参照:https://www.youtube.com/watch?v=KMVVSVzoUgU
ラピュタロボティクス
ラピュタロボティクスは、複数台のロボットをクラウド上で制御する技術を持ったスタートアップ企業です。ラピュタロボティクスのAMRの導入事例として、「事務用品通販大手のアスクルなど8社が導入し、生産性は2倍以上に高まった」という効果を上げているそうです。
参照:https://www.youtube.com/watch?v=Yb9BcHWWJt8
半導体搬送ロボットのメーカー
OHT(天井走行式無人搬送車)
半導体搬送用OHTは「ダイフク」と「村田機械」が主要メーカーです。ダイフクは搬送機器のメーカーで、物流分野をはじめとして様々な業界の搬送システムを手掛けているメーカーです。
物流などの搬送・運搬工程は「マテリアルハンドリング」とも言われるのですが、ダイフクはマテリアルハンドリングのサプライヤーで世界No.1の売り上げがあります(2022年現在)。
参照:https://www.mmh.com/article/top_20_material_handling_systems_suppliers_2022
村田機械はロジスティクス(物流)・クリーンFA・工作機械・情報機器・繊維機械の事業セグメントがあり、搬送用ロボット以外にも工作機械や繊維機械も手掛けるメーカーです。搬送用ロボットにおいては、病院向けに薬品などを搬送するロボットシステムも発売しています。
ウエハ搬送ロボット
ウエハ搬送ロボットのメーカーは「川崎重工」、「JEL」などがあります。川崎重工は産業用ロボットの総合メーカーで、垂直多関節ロボットやパラレルリンクロボットも製造しています。ウエハ搬送ロボットにおいて高いシェアを持っており、大手半導体装置メーカー各社に川崎重工のロボットが採用されています。
JELは広島県に本社を置くウエハ搬送ロボット・液晶ガラス基板搬送用ロボットメーカーです。JELはソーターシステムという装置も手掛けています。この装置は、FOUPからシリコンウエハをロボットが取り出し、他のFOUPにふりわけるというものです。
以下の関連記事にもウエハ搬送ロボットのメーカー一覧がありますので、ご参考ください。
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直交ロボット
直交ロボットのメーカーは「ヤマハ」、「IAI」などがあります。以下の関連記事にも直交ロボットのメーカー一覧がありますので、ご参考ください。
【関連記事】▶直交ロボットとは?構造やメリット・デメリット、導入事例を解説
搬送用ロボット導入のポイント
搬送用ロボット導入の際に気を付けるポイントは、以下の通りです。導入の際はぜひ参考にしてください。
・目的をはっきりとさせておく
・価格・導入費用と効果が見合うか確認する
・ロボットに関する情報収集を行う
・「提案依頼書(RFP)」の原案を作成しておく
・導入を依頼する会社を選ぶ
各ポイントの詳細は、以下の記事で詳しく解説しているのでご参考ください。
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▶産業用ロボットの導入方法を詳しく解説!流れや事前準備について紹介!
搬送用ロボットの導入はロボカルにお任せください!
「導入したい搬送用ロボットはなんとなくわかったけど、自社の搬送工程にどのように組み込んでいいかわからない」「SIerとのつながりがなく、どのSIerを選べばよいかわからない」
初めて搬送用ロボットを導入する際は、こんな不安もあると思います。ロボカルでは提携SIerさんのロボット導入事例をデータベース化しており、適切なSIerさんのご提案や、費用効果の高いシステム提案が可能です。搬送用ロボットの導入を検討されている企業さんは、ぜひご相談ください!
まとめ
この記事では「搬送用ロボットの種類、搬送用ロボットメーカー、搬送用ロボット導入のポイント」を解説しました。
生産現場の人手不足、生産性向上、デジタルトランスフォーメーション(DX)の普及といった社会的トレンドを考えると、生産工程の自動化は進み、搬送用ロボットの活躍の場はさらに拡大していくことが予測されます。
この潮流に乗って自社工場の生産性をより上げていくために、搬送用ロボットを導入してみませんか。
搬送用ロボットを導入したいが自社だけで進めるのに不安があれば、ぜひロボカルにご相談ください。