産業用ロボットSIer 300社掲載

2023.03.01

ロボット導入で生産性が向上、挑戦し続ける高石餅店の未来投資

株式会社ネクストクリエイション
【インタビューご協力者】 代表取締役 清藤貴博様
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職人の高齢化、受注の増加に伴う人手不足に対し、ロボットを導入し生産性向上に成功した高石餅店。学生インターンから最高齢82歳までの幅広い年齢層、外国人研修生など多様な人材が活躍しています。新しいことに挑戦し続ける高石餅店の5代目経営者・清藤様にインタビューさせていただきました。

【会社概要】株式会社ネクストクリエイション(高石餅店)

商号株式会社ネクストクリエイション
代表者代表取締役社長 清藤 貴博
設立2014年
本社福岡県北九州市門司区葛葉1丁目11−6
事業内容餅の商品企画および製造・販売

http://takaishi-foods.com/

ロボカル矢部:
まずはじめに、御社の事業内容についてお願い致します。

清藤様:
福岡県北九州市で110年以上続く高石餅店の経営をしています。2014年に母から事業継承して、私が5代目となりました。新しいことに積極的に挑戦していきたいという思いがあり、外国人のホームステイの受入れをしていたことから、外国人研修生と一緒に商品開発を行ったり、大学生と3DCADを用いた商品開発をしたりと、様々なことにチャレンジしています。


最近では九州大学大学院の学生に、AI技術を活用した需要予測ができるシステムの開発をしていただき、母親の長年の勘とどちらが正確かを競わせるということも行いました。

ロボット導入に至ったきっかけ

ロボカル矢部:
ありがとうございます。ロボット導入の経緯についてお願いします。

清藤様:
私が5代目として跡を継ぐ前までは、代々女性が経営していたこともあって、重労働を減らすための餅つき機や餅切機などの設備投資はもともと行っていました。

外国人の受け入れを行ったことがメディアに取り上げられたことをきっかけに、餅の生産量が増え、人手不足で生産が追い付かなくなってきたことがあリました。

ちょうどそのタイミングにテレビでレオン自動機が取り上げられており、導入を検討し始めました。

1番の課題は従業員のメンタル・フィジカル両面の負担を減らすこと

ロボカル矢部:
どのような点に課題感を持っていたのでしょうか?

清藤様:
年末の5〜10日間ほどで年間売り上げの4分の1、約3万個の売り上げがあるため、作業者の肉体的にも精神的にも大きな負担がかかっていました。毎年年末になると全員機嫌が悪くなりますね(笑)。
特に私の母がそこに対し課題感を持っており、自動化することで作業者の負担を減らすことができると思いました。
また、最近は人の手で握ったおにぎりを食べられないという人も増えており、衛生的にも自動化していきたいという考えもありました。
ただ、自動化する業務と人の手で作業する業務をきっちり分けており、あんこを練る技術は門外不出のため私と母しか分からないようにしています。

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高石餅店の従業員たちの様子

構想から導入までの道のり

ロボカル矢部:
構想から導入まではどれくらいの期間かかりましたか?

清藤様:
約2年ですね。導入を検討したタイミングで補助金の申請が終わっており、次のタイミングを待っていました。
また、導入にあたって床を平行にする必要があり、その工事にも時間がかかりました。

ロボカル矢部:
レオン自動機さんとはどのような打ち合わせを行ったのでしょうか?

清藤様:
レオン自動機さんのロボットをテレビで拝見してご連絡したところ、「火星人」というロボットを紹介していただき、実際に店に来てテストもしてもらいました。うちは小さい店舗なのでテストに来られた際に、ここに導入するのかと驚いてみえました。でも実際に営業している様子を見て、うちの生産量の多さに納得されていましたね。

ロボカル矢部:
費用としてはおいくらでしたか?

清藤様:
ロボット自体は500万円ほどですが、周辺設備や床の改修費を合わせて全体で650万円ほどになりました。北九州市産業用ロボット導入支援補助金に申請して、一部補助を受けることができました。

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高石餅店に導入されたロボット「火星人」。

ロボットを導入して開放された重労働

ロボカル矢部:
実際に導入してみていかがでしたか?

清藤様:
柔らかさや形状を今まで通りできるか心配でしたが、レオン自動機さんの機械は比例制御が正確で皮の幅やあんこの量などを調整することができ、人の手よりも安定しました。また、人の手で生産する場合には手に餅がつかないように「餅とり粉」という片栗粉のような粉を表面につけて作業するのですが、ロボットの場合それが不要で、味もおいしくなりました。
年末年始などの繁忙期は1日で500個ほどの饅頭を手作業で生産していているため、本当に辛かったのですが、その重労働から解放されたのはありがたかったです。

ロボカル矢部:
周りからの反響はいかがでしたか?

清藤様:
とても大きかったです。普通にロボットを導入したと真面目に発信するよりも、面白おかしく発信したいという想いがあり、「ほこ×たて」という番組を参考にロボットと職人のどちらが生産スピードが速いのかという企画を行いました。
その反響が大きく、合計で新聞4回、テレビ8回ほど取材していただき、広告として有効活用することができました。その後は北九州市の市長さんもお正月の所信表明で当社について触れてくださり、知名度はかなり上がりました。

実際の運用で見えた想定外の課題

ロボカル矢部:
導入してから思った通りにいかなかった点はありましたか?

清藤様:
掃除が思ったより大変でした。熱々の餅を機械に投入するのですが、作業後に細かいカスが残ってしまい、部品点数も約50個と多いため、取り外して掃除するのに1時間かかるのは想定外でした。その組み立ても私しかできないのでそこも課題点ですね。作業自体は2時間短縮できましたが、終わった後に1時間メンテナンスが必要なので計1時間の短縮となりました。
また、トラブルが起きることもあり、一度動かし始めたら止めることができないという問題も実際使ってみてから分かりました。

ロボカル矢部:
毎日1時間掃除されているんですか?

清藤様:
掃除の負担が大きいので、普段は以前の機械を使っています。新しいロボットは途中で種類を変えると色の違う餅が混ざってしまうので、小ロット多品種にはあまり向いていないですね。
忙しい年末年始などのタイミングで新しいロボットが活躍しています。

今後も新しいことへの挑戦を続けていく

未来を見据えて投資をしていき日本を盛り上げたい

ロボカル矢部:
今後の展望についてお願いします。

清藤様:
今はカーボンニュートラルに力を入れています。北九州大学の環境工学科と共同研究して、餅を作る過程でどれだけCO2が発生しているかを洗い出しました。
その結果1パック当たり600mlのCO2が発生していることが分かり、それをどう減らしていくかを考えています。その取り組みに注目していただき、SDGs教育として行政と連携した企画なども行っています。

ロボカル矢部:
御社のように社内の高齢化が進み、事業継続が難しくなっている会社さんも多いと思うのですが、そういった会社さんに何かアドバイスをお願いします。

清藤様:
事業継承をしていく上では、次の世代が継ぎたいと思えるような環境を作ることが必要だと思います。まずはしっかりと利益を上げることが重要で、そのためにも積極的に投資をしていくことが求められると思います。継ぎ手がいないから投資しないのか、投資しないから継ぎ手がいないのかという両面の考え方があると思うのですが、最終的に残っていくのは投資している会社なので、未来を見据えて投資をしていくべきだと思います。
国や自治体も補助金などで支援してくれるので、そういったところをうまく活用していき、地域の零細企業がもっと日本を盛り上げていきたいですね。 

ロボカル矢部:
未来に目を向けていくことが重要ですね。
本日は貴重なお話ありがとうございました。