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2023.03.27

IE (Industrial Engineering) とは?収益UPにつながる工程管理の方法

生産現場でよく耳にするIE(Industral Engineering)ですが、その内容まで把握している人は少ないのではないでしょうか。この記事ではIEの定義から各手法の解説まで網羅的に記載しています。IEについて知ることで工場の効率化に貢献しましょう。

IE (Industrial Engineering) の定義

IEとは「Industrial Engineering」のことで、工程管理の手法の一つです。

人・物・設備について詳細に分析することで、工程のムリ・ムラ・ムダを発見し、工程を最適化します。生産性向上と収益に繋がる非常に重要な考え方です。

この考え方は100年程前にアメリカのフレデリック・テイラーによって提唱されました。当時の生産現場では、作業者の勘やコツによって成り立つ属人化された作業が主体でした。テイラーはそこに科学的な見方を導入し、客観的なマネジメントを実施しました。

その後、多くの人により研究・改良され発展しており、現在でもその考え方に基づいたマネジメントが行われています。

参考URL:Dラボ

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IE手法の種類

IEには大きく分けて、方法研究・作業測定の二つに分類されます。そして、それぞれに対していくつかの分析方法が存在しています。

1. 方法研究

方法研究とは作業方法を分析して最適な方法を追求するものです。分析によって、ムリ・ムダ・ムラを発見し、改善していきます。実践する際の着眼点として、「動作経済の法則」を知っておくと良いでしょう。

出典元:動作経済の法則(https://kaizen-base.com/column/31897/

1-1. 工程分析

工程分析とは、材料が製品になるまでの工程を分析することです。対象工程を「加工・運搬・検査・停滞」分けて分析していきます。

 ・加工:材料の加工や組立のこと

 ・運搬:機械や人力で物を運ぶこと

 ・検査:仕様で決められた特徴(数量・寸法・品質)をもとに、製品を検査すること

 ・停滞:製品が上記3つのどの工程にも属さず、放置されていること

工程分析では上記4つに分類した作業を図表で表し、全体の流れの把握や改善のための現状調査などに活用します。この図表は工程分析図(プロセスチャート)と呼ばれています。プロセスチャートには3種類あり、目的によって使い分けましょう。具体的な実施手順や図表の表記方法は下記を参考にしてください。

出典元:工程分析実施手順(https://kaizen-base.com/column/31872/

1-2. 動作分析

動作分析では作業員の動作を細かく分析します。分析結果をもとに無駄な動作を排除することで、効率的で最適な作業工程を作り上げます。代表的なものは「サーブリッグ分析」や「フィルム分析」です。この方法は歩行の少ない作業や、短いサイクルの作業で有効です。

・サーブリッグ分析

 動作を詳細に分析したい場合に使います。人の動作を18種類の要素(サーブリッグ)に区分し、それぞれに記号と名称が割り当てられています。これらの記号を用いて動作を表現し、改善点を洗い出す分析方法です。

いろいろな種類の作業に適用でき、詳細な分析が可能です。ただし、分析に時間がかかることや定量的な表現ができないことが欠点となります。サーブリッグ記号は下記を参照ください。

出典元:サーブリッグ記号(https://www.otrs.jp/kaizen/chart/

・フィルム分析

動画を撮影してコマ送りで観察することで、各動作の所要時間や動作内容を分析する方法です。低速度撮影により長時間作業を分析する「メモモーション分析」と高速度撮影により単純反復作業の分析をする「マイクロモーション分析」があります。

メモモーション分析は早回しにすることで、通常の速度では気付かない点に気付くというものです。反対にマイクロモーション分析は観測対象の詳細な動きを把握することができます。

1-3. 運搬分析(マテハン分析)

運搬分析は製品や材料などの物の移動を分析する方法です。移動のロスをなくし、効率的に運搬できる仕組みを構築することがゴールです。

作業は「価値のある作業・付随作業・ムダ」の3つに分類でき、物の移動は付随作業に分類されます。運搬分析は付随作業を最小限に抑えて、価値のある作業の割合を増やすために実施します。

運搬分析には下記の3つがあります。

・運搬工程分析

 物の流れの状態を「運搬工程記号」で表し、積み下ろしや停滞などの状態を分析する手法です。

・運搬活性分析

 運搬活性指数(運搬のしやすさを表す)を用いて分析を行います。これにより極限までムダを省くことが出来ます。

・カラ運搬分析

 カラ運搬(物の移動を伴わず人や運搬機器のみ移動している状態)の状態を分析して、カラ運搬を減少させる方法です。

運搬分析の手順については下記を参考にしてください。

出典元:運搬分析(https://kaizen-base.com/column/31939/

2. 作業測定

作業にかかる時間を測定・分析することで標準時間(作業に必要な時間)を決定する手法です。また、非効率な作業の削減も可能です。

2-1. 時間分析

時間分析とは、作業時間を実際に測定し分析することです。分析方法には、「ストップウォッチ法」と「PTS法」があります。

・ストップウォッチ法

 作業時間をストップウォッチで直接測定する方法です。最近ではビデオやスマートフォンの動画を用いて測定する方法が一般的です。測定の際は作業を細かい動作内容に分けて測定します。

例:「ねじをとる」「ものを持ち上げる」など

ストップウォッチ法の詳細手順は下記を参照ください。

出典元:ストップウォッチ法(https://www.sk-koutei.com/ie/ie04_watch.html

・PTS法

 作業時間を直接測定することなく標準時間を見積もれる方法です。動作ごとに動作標準時間が設定されており、動作内容と動作距離から動作の時間を見積もることができます。

ストップウォッチ法に比べて、公平な標準時間の設定が可能です。

PTS法の詳細は下記を参照ください。

出典元:PTS法(https://www.sk-koutei.com/ie/ie05_pts.html

2-2. 稼動分析

稼動分析では、人や設備の何にどの位の時間をかけているかを分析する手法です。

分析方法として、「連続観測法」「ワークサンプリング法」などがあります。

・連続観測法

機械や人の稼動状態を長時間記録し分析する手法です。記録と分析に時間がかかりますが、細かい改善点を見つけることが出来ます。主に段取り替えなどの作業の分析の際に活用します。

・ワークサンプリング法

機械や作業者をランダムに観測し、総観測回数に対する同一作業回数の比率から作業時間を求める方法です。例えば、機械の稼働状況を100回記録したうち、70回は稼働中で30回は停止中であった場合、稼働率は70%ということになります。そして、信頼度は観測回数から求めることができます。

稼動分析の詳細は下記を参考にしてください。

出典元:稼動分析(https://kaizen-base.com/column/31939/

IEで使える便利なツール

IE手法での観測・分析において、知っておくと便利なツールがありますので下記で紹介します。

タイムプリズム

実際の作業を分析する際に使えるソフトです。撮影した動画からIE手法にのっとった分析が可能です。このソフトには、分析したり、分析結果をまとめるたりするためのツールが入っています。

出典:タイムプリズム

ウェアラブルカメラ

作業者に装着して目線や手元の動きを撮影できます。撮影のために時間をとられることが無いため、長時間の撮影に非常に便利です。選定のポイントとしては、作業の邪魔にならないように、小型軽量で動作時にずれないことが重要です。

出典元:ウェアラブルカメラ(https://cyk.official.ec/items/12803700

Go Proカメラ

定点観測での動画撮影において非常に有効です。360度撮影可能なため、作業員のフレームアウトがなく、作業の全体的な流れをの撮影が出来るのも魅力です。また、歩行中の作業動作を全て記録することができます。

ウェアラブルカメラと組み合わせて、手元作業はウェアラブルカメラ、全体の作業はGoProで撮影するという方法もおすすめです。

ただし、動画のサイズが非常に大きくなってしまうため、動画の変換作業に高性能なPCが必要になることがあります。

出典元:GoPro

IEを活かして効率的な生産管理を目指そう

IE手法を網羅的に紹介しましたが、実際に使う際にはそれぞれの手法の詳細リンクを確認してみてください。IE手法を使う際に最適な手法が分からない場合は、お気軽にロボカルまでお問い合わせください。

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