産業用ロボットSIer 300社掲載

2021.02.28

工場自動化の5つの段階を解説|自動化の手順や具体的な事例も紹介

工場自動化には、5つの段階があります。自動化を進めていくための具体的な手順を紹介しますので是非参考にしてください。また、工場自動化の具体的事例も紹介します。

この記事の結論

・工場の自動化には「作業支援」「特定の作業を自動化」「条件付きの自動化」「高度な自動化」「完全自動化」の5つの段階がある
・人材不足や技術継承問題などにより工場自動化は進んできた
・自動化することで人手不足への対応や人件費の削減が図れる

工場自動化が進む理由と今後の展開

現在、さまざまな作業や工程を人手によらず実行する「工場自動化」が進んでいます。また、今後もより一層の自動化が進むと考えられています。なぜ工場自動化が進んできたのか、そしてなぜ今後も進むと考えられるのかについて見ていきましょう。

工場自動化が進む理由

工場自動化が進んできた理由として、次の3つを挙げることができます。

人材不足が起きている

少子高齢化により、15歳から64歳の生産年齢人口が減少しています。1997年には8,700万人ほどいた生産年齢人口は、2015年には7,700万人ほどと、わずかな期間に1,000万人もの減少が見られています。

そのため、人材不足に悩まされている企業は少なくありません。特に製造業は人材不足が深刻で、自動化による人手削減が必須の流れといえるでしょう。

技術継承問題が起きている

技術者たちが高齢化したことで、技術継承ができていない工場もあります。作業を自動化するならば、作業員がスキルを持たない場合でも今までと同じ製造作業が可能になるでしょう。

テクノロジーが発展してきている

工場自動化を実現するためには、相応のテクノロジーが必要です。工場自動化を可能とするテクノロジーはすでに開発されており、ますます発展しています。工場自動化が進むのは当然の流れといえるでしょう。

工場自動化の今後の展開

人材不足と技術継承問題、そしてテクノロジーの発展により、工場自動化が進んできました。実際に完全自動化を行う工場もすでに誕生しており、今後もますます工場自動化が進むと考えられます。

工場の自動化にAIが取り入れられる

AIを取り入れることで、製造量や原料の供給量の調整がさらに容易になります。また、パネル等で作業の見える化が進み、少ない人員でも工場を管理できるようになるでしょう。

分野を横断した工場の自動化がなされるようになる

工程間だけでなく工場間や市場間の自動化・AI化が進むことで、さらに市場に連動した製造が可能になります。つくり過ぎや製品不足の解消も期待でき、より無駄のない製造が可能になるでしょう。

工場自動化の5つの段階

工場の自動化には5つの段階があります。工場自動化を検討する前に、まずは現在どの段階まで工場の自動化が進んでいるのか、今後はどこまで自動化したいのかを明らかにしておきましょう。

  • 第一段階:作業支援
  • 第二段階:特定の作業を自動化
  • 第三段階:条件付きの自動化
  • 第四段階:高度な自動化
  • 第五段階:完全自動化

第一段階:作業支援

最初の段階は「作業支援」です。ネジ締めや切断などの特定の作業を機械でサポートします。

例えば人間が手で握って使う自動ネジ締め機などは、作業支援の一例です。人がドライバーなどの工具でネジを締めるよりも短時間で締められ、なおかつ緩みを回避することもできます。

第二段階:特定の作業を自動化

第二段階は「特定の作業の自動化」です。

例えば先程のネジ締め機の例で見てみましょう。第一段階では人が機械を持って作業しましたが、第二段階に進むと、人手を必要とせずにネジを締める自動ネジ締め機の導入が始まります。

第三段階:条件付きの自動化

第三段階は生産工程における「条件付きの自動化」です。

ネジ締めなどの作業ひとつだけではなく、例えば部品組み立ての工程全て、検品工程の全てなど、特定の工程全体を自動化します。

第四段階:高度な自動化

第四段階は、作業全てを自動化する「高度な自動化」です。スタッフは管理やメンテナンスだけを行います。

第五段階:完全自動化

第五段階は「完全自動化」です。

工場と他の工場との連携や、市場状況を反映した管理などもAIを用いて自動化するため、ごくわずかの人員で工場を運営できます。

工場自動化の手順

工場は一足飛びに自動化することは困難です。次の手順で、工場自動化を進めていきましょう。

自動化が必要な作業をピックアップ

いきなり第五段階の完全自動化をすることは難しいでしょう。段階を経て自動化を進めるために、まずは自動化が必要な作業、例えばネジ締めや組み立て、切断などの作業をピックアップします。

自動化により問題が解決できているか調査する

次は作業を自動化したことで、問題が解決できているか調査をします。実際に作業が楽になったのか、また、危険や手間などの問題が解決できたのか現場のスタッフに尋ねて詳しく調査をします。

自動化をする工程・ラインを選定する

自動化により問題解決ができていることを確認し、自動化の範囲を作業から工程全体、ライン全体に広げていきます。ただし、作業の自動化は既製品の機械でも可能ですが、工程やラインの自動化には、産業用ロボットのオーダーメイドなどが必要になります。

工場全体の自動化を推進

必要に応じて工場全体の自動化を進めます。コストや生産量などを多面的に見て必要性がないと判断した場合は、工程・ラインの自動化で終えることもできます。

他工場との連携の自動化

さらに自動化を進めていく場合は、AIを導入し、他工場や景気などを反映した製造ができるシステムをつくります。ただし、この過程も、必要性がないと判断した場合は不要です。

工場自動化のメリット・デメリット

工場を自動化するメリットとデメリットについて見ていきましょう。

メリット

工場自動化には、次の5つのメリットがあります。

人手不足が解消できる

今後より一層人手不足が深刻になると考えられるので、工場自動化を進め少ない人数で作業できるようにしておくことは大きなメリットといえます。

人件費が削減できる

人件費は毎月かかります。一方、工場自動化する際には初期費用がかかりますが、後はほぼメンテナンスと電力のみの低コストで運営することが可能です。

生産効率が上がる

製造のスピードがあがるだけでなく稼働時間も増やせるので、効率よく製造が進みます。

一定の品質を担保できる

人の作業と比べると、自動化によって製造された製品は、質にばらつきがほとんどありません。粗悪品が減るため、無駄になる材料も減らせます。また、粗悪品が市場に出回りにくくなることで、企業の信頼性も向上するでしょう。

人同士の接触を回避できる

危険な工程や作業を自動化するならば、工場内での事故防止にもつながります。また、作業人員が減ることで、人同士の接触による事故も減らせます。

デメリット

工場自動化で幅広いメリットが生まれますが、注意すべき点もいくつかあります。デメリットとなり得る4つの問題を紹介します。

大きな初期投資が必要

最初に巨額の初期投資費用が必要です。オーダーメイドで機械をつくるとなると、さらに高額な費用がかかるでしょう。

機械の誤作動や故障のリスクがある

万が一機械が誤作動したときには、製品や社員を傷つけることもあります。また、故障のときには多大な修理費がかかることも想定しておきましょう。

繊細な作業は作業の質が低い

作業の質は人手のほうが勝ることもあります。繊細な製品を製造している場合には、工場自動化は向かないことがあるでしょう。

機械の設置にスペースが必要

機械の設置には、ある程度のスペースが必要です。場合によっては、レーンの間隔を見直さなくてはいけないこともあるでしょう。

工場自動化の具体的事例

自動化にはさまざまな段階があり、また、企業によっても自動化の段階は異なります。工場自動化のいくつかの事例を紹介します。

アイリスオーヤマ:11万平方メートルの敷地に50人のスタッフ

アイリスオーヤマのLED照明を製造するつくば工場は、約11万平方メートルの敷地にスタッフは50人ほどしかいません。どのラインも一人の作業員で対応できるため、大幅な人員削減が実現できています。

サラダクラブ:衛生面にも配慮したカット野菜の自動製造

サラダクラブでは、野菜を洗う・カットする・袋詰めする・箱詰めするの作業をすべて自動化してカット野菜を製造しています。人の作業よりも、衛生的な点も工場自動化のメリットといえるでしょう。

KDDIエボルバ:スマホキッティングの自動化

KDDIエボルバでは、スマホキッティング(初期設定)を自動化しました。作業工程数が99%も減り、また、ミス率をわずか0.002%にまで削減しています。

まとめ

工場自動化により、人件費の削減や品質の安定化などのメリットが得られます。生産効率の向上や工場内事故の削減も図れます。ただし、工場によっては完全自動化を目指す必要はないので、製造量や予算とも考えあわせ、必要性の高い段階までの自動化を目指しましょう。

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