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2023.03.27

4Mとは?概要や活用方法を解説!

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製造業において、トラブルは日常茶飯事です。むしろトラブルなく上手くいく方が少ないと言えるでしょう。そこで重要になってくるのが、トラブルの原因究明です。問題の本質はどこにあり、何から改善すべきなのか。技術者には原因を素早く突き止めて、解決していく力が求められます。本記事では、トラブルの原因究明に役立つ「4M」というフレームワークを紹介します。一つ一つのトラブルに対して原因をゼロから考えていたのでは、工数も労力もかかってしまいます。4Mというフレームワークを上手く活用することで、効率的に問題の本質を突き止めることが可能です。技術者ならば必ず身に付けておくべきフレームワークです。

4Mとは何か

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4Mとは、主に品質工学の分野で用いられる概念で、製造業における4つの重要な要素です。これは、Man(人)、Machine(機械)、Material(材料)、Method(方法)の頭文字を取って4Mと呼ばれています。不具合の事象をこれらの4つの要素に分解して考えることで、問題の本質を素早く掴むことが可能です。また4Mはトラブルの原因分析だけでなく、生産プロセスの改善や品質管理、新製品開発の分野でもよく用いられます。非常に汎用性が高く、強力なフレームワークと言えるでしょう。

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Mの詳細

ここからは4Mそれぞれの要素の具体的な内容について説明していきます。

Man(人)

Man
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Man(人)では、従業員や作業者などの製品やサービスに関わる「人」そのものが、どのように影響しているかを考えます。人に関わる具体的な要因としては以下のような項目があります。

技能・技術

製品に関わった人の技能や技術について考察します。例えば、作業者の技術・技能レベルは適切か、個々の作業者の熟練度の差はあるか、技術水準を保つための適切な教育はなされているか、などを見る必要があります。

経験

製品に関わった人の経験について考察します。上述の技能・技術と意味合いは近いですが、技術レベルの高い作業者であっても、初めての作業であればミスをする可能性もあります。例えば、作業者の経験年数はどの程度か、経験に応じて適切に人員が配置されているか、などを見ると良いでしょう。

意識・態度

製品に関わった人の意識・態度について考察します。作業者にスキルがあっても、作業に対する意識やモチベーションが低ければ、その力を発揮することはできません。また製造業ではチームワークが重要なので、適切なコミュニケーションが取れているかなども大切です。例えば、作業ルールは守られているか、規則の理解はされているか、報告・連絡・相談などを正しく行う雰囲気はあるか、などを見る必要があります。

労働条件

製品に関わった人の労働条件について考察します。作業者の疲れはミスを誘発します。適切な労働時間や休憩が整備され、作業への集中力を保てる労働条件であることが大切です。例えば、適切な作業環境は整っているか、身体に負荷の掛かる作業はないか、休憩時間は整備されているか、などを見る必要があります。

このようにMan(人)の要素に注目して、人材管理や教育、労働環境の観点から考えることが大切です。上記ではトラブルの原因究明をベースとして話をしていますので、作業者に着目していますが、新製品開発などの場合は顧客をMan(人)として捉えて分析することもあります。

Machine(機械)

機械
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Machine(機械)では、製品やサービスに使用される「機械」が、どのように影響しているかを考えます。ここでいう機械とは、大きな製造設備だけのことではありません。作業に使う細かなツ―ルなども含みます。機械というよりも「道具」と捉えた方が直感的でわかりやすいかもしれません。機械に関わる具体的な要因としては以下のような項目があります。

設備の性能

設備の性能について考察します。求める品質や精度を確保するために、設備の仕様が適切なのかを確認します。例えば、機械は適切に選定されているか、要求する精度に対してどれだけ余裕があるか、などを見る必要があります。

メンテナンス

機械の保守について考察します。機械を使い始めたばかりの時は問題なくても、経年劣化により機械の性能は低下していき、故障の可能性も高まります。定期的な保守、点検を行うことで、設備の劣化を防ぎ品質の維持をすることができるでしょう。例えば、適切な保守は行われているか、保守管理はされてているか、保守の内容は適切か、などを見る必要があります。

操作方法

設備の操作方法について考察します。適切な環境、条件、操作手順で機械を使わなければそれによって生み出される製品の品質は低下するため、使われ方を確認することが大切です。例えば、過剰な条件で使われていないか、取扱説明書通りの操作が行われているか、改造などが施されていないか、などを見る必要があります。

このようにMachine(機械)の要素に注目して、適切な設備選定、メンテナンス、操作方法の観点から考えることが大切です。上述しましたが、機械に関わらず、道具として広く捉える必要があります。場合に応じて「金槌」一つ取っても、同じように考えていくことが重要です。

Material(材料)

素材
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Material(材料)では、製品やサービスに使用される「材料」が、どのように影響しているかを考えます。ここでいう材料とは、製品の製造に必要な原材料や部品、消耗品のことです。材料に関わる具体的な要因としては以下のような項目があります。

品質

材料の品質について考察します。これは言わずもがなですが、納入された材料自体の品質に問題はないかということです。例えば、材料の受入検査はどのように行っているか、品質保証書などはあるか、などを見る必要があります。

在庫管理

材料の在庫管理について考察します。必要な時に材料が足りなくなる在庫不足も大きな問題です。例えば、在庫管理は適切にできているか、過剰在庫はないか、発注はどのタイミングで行っているか、などを見る必要があります。

供給元

材料の供給元について考察します。信頼の置ける供給元から材料を調達することで、安定した品質確保が可能です。海外輸入などの部品では購入者に無断で仕様や材料が置き換わるサイレントチェンジが良く起こります。このような心配がない供給元であるかどうかをチェックして、付き合うことが重要です。例えば、過去にサイレントチェンジがあったか、二次下請けまで明確になっているか、などを見る必要があります。

保管・運搬

材料の保管・運搬について考察します。材料自体の品質に問題が無くても、保管や運搬時のトラブルにより、材料の品質が低下し、それが製品トラブルに繋がる場合もあります。例えば、運搬時に大きな衝撃は掛からないか、正しく梱包されていたか、雨ざらしで保管されていなかったか、などを見ると良いでしょう。

このようにMaterial(材料)の要素に注目し、品質管理、供給元管理、適切な保管・運搬方法などの観点から考えることが大切です。

Method(方法)

メソッド
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Method(方法)では、製品やサービスの生み出す「方法」が、どのように影響しているかを考えます。ここでいう方法とは、生産に関わる作業手順や生産・管理方法のことです。方法に関わる具体的な要因としては以下のような項目があります。

標準化

作業手順の標準化について考察します。作業を標準化することで、品質のばらつきを抑え、製品品質の一貫性を確保することが可能です。逆に標準化が出来ていない場合は、同じ作業でも作業者や製作工場によってばらつきが発生し、トラブルとなります。例えば、各作業内容が属人的になっていないか、作業手順書はあるか、などを見ると良いでしょう。

効率化

作業手順の効率化について考察します。標準化された作業が、時代や設備に応じて更新されているかを確認しましょう。数十年前以上に制定された作業が、理由もわからずそのまま残っている場合もあり、不要な作業はトラブルの原因ともなります。例えば、作業手順の更新ルールはどうなっているか、今の作業手順書が制定されてから設備更新があったか、などを見ると良いでしょう。

情報共有・横展開

作業手順の情報共有や横展開について考察します。標準化や効率化が進んでいたとしても、それを各部署ごとに進めていたら、一貫性に欠け、品質のばらつきが生まれやすくなります。例えば、部署ごとにコミュニケーションは取れているか、改善案や作業手順を共有するルールは整備されいてるか、などを見る必要があります。

このようにMethod(方法)では、適切なプロセス標準化、効率化、情報共有などの観点から考えることが大切です。

4M活用のメリット

チーム
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品質問題の特定・解決

4Mの観点から原因分析を行うことで、問題の本質を迅速かつ正確に特定し、効果的な改善策を実施できます。4Mを活用しない場合、問題の原因特定に時間が掛かったり、トラブルに対する恒久対策になりがちで、繰り返し同じ問題が発生する可能性があります。

プロセス最適化

4M要素を総合的に評価し、改善活動に繋げることで生産効率や品質が向上でき、コスト削減にもつながります。4Mを活用しない場合、改善の取り組みが担当者によって偏りがちとなり、最適な状態にならない場合があります。

トレーニング・教育効果

4Mを用いた教育やトレーニングが行われることで、社員の問題解決能力が高まります。4Mはフレームワークであるため、個人の能力に依存しません。適切なトレーニングを積めば、誰もが問題の原因追求を行うことが可能となります。

4Mの具体的な活用方法

改善策
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ここからは、具体的な4Mの活用方法について見ていきましょう。説明のために、簡単なトラブル事例を用意しました。このトラブルを改善するために4Mを使っていきます。

トラブル事例

産業用ロボットを導入した自動化ラインがあります。ロボットが工作機械に材料を供給し、加工が終わったら完成品を取り出して、更に次の材料を供給するというものです。ここ最近、産業用ロボットが材料を落下させ、ラインが止まるトラブルの頻度が増えてきました。

このトラブルの原因を4Mを使って洗い出していきましょう。

4M手法による分析

上記のトラブル事例を、4Mに分解して考えると下記のような要因が考えられます。

Man(人)

・自動化ラインの作業担当者が変わった

・操作者がロボットの設定やメンテナンスを適切に行っていない

・トラブル発生時の対処方法について、従業員が十分に研修を受けていない

Machine(機械)

・産業用ロボット自体に故障や劣化があり、位置決めにばらつきがある

・生産ラインのセンサーが汚れや劣化で誤動作を起こしている

Material(材料)

・材料自体の品質が悪く、サイズにばらつきがある

・供給元が変わり、材料の品質が変化した

・材料の保管状態の影響で、材料の表面状態が荒れている

Method(方法)

・ロボットの動作プログラムそのものが外乱に弱い動きになっている

・設定が不適切で、環境条件(例えば、振動や温度)に影響を受けやすいくなっている

と、このように要素を4Mに分けて考えるだけで、どこから原因を調査すべきかが短時間で抽出できます。実際には、ただやみくもに4Mに分けて考えるのではなく「特性要因図(フィッシュボーン図)」という図を書きながら分析していくことが多いです。

参考URL:10 分で理解できる特性要因図|書き方から原因を特定する方法まで

4Mの新しい考え方

考え方
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5M+E

4Mに加えて、Measurement(測定)とEnvironment(環境)が追加された考え方です。Measurement(測定)は、製品やプロセスの品質を評価・管理するための測定方法や機器を指します。測定の正確さや繰り返し性が品質に影響する可能性を考慮しています。Environment(環境)は、製品や生産プロセスに影響を与える外部環境を指します。具体的には温度、湿度、照明、騒音などのことで、外部環境が製品に与える影響を考慮しています。4Mでは捉えきれなかった要素を含むように発展させた手法です。

6M

4Mに加えて、Measurement(測定)とManagement(マネジメント)が追加された考え方です。ここでいうManagement(マネジメント)は、生産ラインの管理を指します。従来の大量生産から多品種少量生産に時代が移り変わることで、生産ラインも柔軟に変化する必要がでてきました。よって、生産ラインの管理自体が品質において重要な役割を担うようになり、要因として追加されました。

まとめ

本記事の要点を復習しましょう。 

– 4Mとは、原因究明のためのフレームワーク

– Man(人),Machine(機械),Material(材料),Method(方法)の頭文字で4M

– 4Mを活用することで、問題の本質を迅速に掴むことができる

– 派生の考え方として、「5M+E」や「6M」がある

ここまで、紹介したように4Mは使いこなすことで非常に強力な武器となります。一方で、4Mにはデメリットもありますので、こちらも合わせて理解しておくと良いでしょう。4Mでは、過剰に4Mの要素に焦点を当てがちになってしまい、他の重要な要素(例えば、4Mに含まれない市場ニーズや経済状況など)が無視されることがあります。

4Mという枠で視野を限定しているからこそ原因を究明しやすくなるわけですが、その反面で4Mの枠に無理やり当てはめようとして不具合の事象を歪めて解釈してしまうことがあります。4Mだけに依存せず、あくまでも、分析手法の一つとして使っていくことをおすすめします。

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この記事の監修者
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しぶちょー
某大手機械メーカー
機械設計エンジニア

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