産業用ロボットSIer 300社掲載

2023.04.25

NC自動旋盤とは?構造や種類・主なメーカー解説

NC自動旋盤とは?ロボカルのアイキャッチ

この記事では、丸物部品の大量生産に使われるNC自動旋盤の概要や構造、種類、メリットとデメリット、主なメーカーや自動化の例などを解説しています。

NC自動旋盤とは

NC自動旋盤は主に小型ワークの量産加工に用いられる工作機械です。

スイスの機械加工
引用元:MasterCam(スイスマシニングとは?

まずはNC自動旋盤の見た目と、どのような加工を行っているかのイメージを掴んで頂きたいと思います。分かりやすい動画があるので、ご覧ください。

Citizen Machinery UK

NC自動旋盤の用途

NC自動旋盤は主に小型ワークの量産加工に用いられます。NC自動旋盤は、NC旋盤の中でも特に棒材の連続加工に特化した機械です。主にφ1〜φ60前後の細い材料を、1m〜3mの棒材として投入します。NC自動旋盤は棒材を主軸側へ指定の量だけ押し進める機構を持つため、一つの工程が終わって完成品を切り落とした後、棒材の供給を受け、再び同様の加工を段取り替え無しで続行することが可能です。

NC自動旋盤の歴史

NC自動旋盤の画像
出典元:Lathes.co.uk

旋盤で棒材から量産加工を行うという加工技術は、19世紀後半にスイスで誕生しました。ROLEXやOMEGAなど、腕時計産業の世界的な集積地であるスイスは、小型部品の大量生産の高いニーズが存在しました。そこで汎用旋盤に棒材を供給し、加工が終わるたびに手動で棒材を指定の量だけ押し込み、再び同様の加工を行うという製造方法が生み出されます。

1950年代以降は工作機械のNC化に伴い、加工や棒材供給が自動化したことによって、小型丸物部品の大量生産といえばNC自動旋盤、といえるほど広く普及しました。

現在では旋削加工だけでなくフライス加工にも対応した、複合自動旋盤も各社から発売されており、棒材連続加工の幅は更に広がっています。

NC自動旋盤の構造

ここではNC自動旋盤の基本的な構造について解説しています。

ベッド

承鋒鋳造工場株式会社の工作機械の土台
出典元:承鋒鋳造工場株式会社

多くの工作機械に共通の構成部品として、ベッドがあります。ベッドの上に他の全ての構成部品が乗る、工作機械の土台です。多くのNC自動旋盤は非常に重量のある鋳物製のベッドを採用しており、加工時に発生する負荷を受け、振動を減衰しています。

主軸

主軸は棒材に回転運動を伝達する装置です。NC自動旋盤は回転する棒材に対して刃物を接触させて加工を行うので、主軸はNC自動旋盤のコア要素の一つと言えます。主軸にフレがあると加工精度が悪化し、更に予期しない負荷によって機械寿命にも影響するので、非常に高い真円度が求められます。

チャック

チャックは棒材を把持する固定具です。チャックは主軸と締結されており、主軸の回転はチャックを介して棒材に回転運動を与えます。NC自動旋盤では主に2種類のチャックが用いられます。

コレットチャック

ユキワ精工株式会社コレットチャックの画像
出典元:ユキワ精工株式会社

コレットチャックとは、「コレット」というスリットの入った円筒形状の固定具に材料を挿し込み、ワークの外径を固定する、棒材把持に特化したチャックです。

円柱・円筒形状の材料を円筒形状のコレットによって包み込むように固定するので、圧力が分散し、柔らかい材料でも固定時に材料の外径に傷が付きにくいことが特徴です。また特に日本メーカー製のコレットは非常に優れた真円度が保証されているので、高精度な加工を行うことができます。

三爪チャック

スタンダードチャックの画像
出典元:株式会社北川鉄工所

三爪チャックは、本体に120°ごとに付いた「爪」という治具で棒材の外径を挟み込むことによって材料を固定します(内径穴がある材料を内張りする固定方法もありますが、一般的には外径を把持します)。

チャックワークとバーワークのいずれにも対応できる汎用的なチャックですが、材料を爪先端の三面のみで挟み込むため、真鍮などの柔らかい材料を把持すると、ワーク表面に傷がつく恐れがあります。また爪先端には把持の度に高い圧力が掛かり、摩耗・変形が容易に起こり得るため、一般的にコレットチャックと比較して芯が出づらい傾向にあります。

刃物台

刃物台は刃物を固定する台です。NC自動旋盤は回転する棒材に対して刃物を接触させて加工を行うので、非常に重要な構成要素です。主に「くし刃形」と「タレット形」の2種類のタイプが用いられるので、詳細は後述します。

NC装置

ファナックのNC装置画像
出典元:ファナック株式会社

NC装置は、NCプログラムを受け取り、その記載通りに各軸が稼動するようモータや油圧・空気圧装置などに指令を送り、工作機械を自動的に稼働させる装置です。NC自動旋盤の場合は、各軸のほかに棒材供給の量・速度・タイミングも加工に欠かせない要素なので、NC自動旋盤においてNC装置の果たす役割は非常に大きいと言えます。

NC自動旋盤の種類

NC自動旋盤は主軸や刃物台の方式などによって分類されます。ここでは各方式の概要とその特徴について解説しています。

主軸の方式

NC自動旋盤は、主軸固定形と主軸移動形の2種類に大別されます。

主軸固定形

主軸が固定されており、移動式の刃物台が加工内容に応じて稼動し、刃物を接触させる方式を主軸固定形といい、一般的なNC旋盤と同様の方式です。突き出しが長くなると材料にフレが出やすくなり、ビビリの原因になります。従って細長い完成品よりも、短い完成品(L/D=1未満〜5程度)の加工に向いています。

主軸移動形(スイス式)

刃物台が固定された状態で、加工内容に応じて主軸が移動する主軸移動型NC自動旋盤は、「スイス式自動旋盤」とも呼ばれます。棒材をチャックから突き出すと、棒材の先端に近づくほど材料にフレが生じ、ビビリやすくなります。

そこで主軸の前方(刃物台側)にガイドブッシュという保持具を設置し、加工部とガイドブッシュをできるだけ近づけることで、加工部の振れを抑制することが一般的です。

ガイドブッシュにより、常に最小限の振れで加工が可能となるため、細長い(L/D=5以上)ワークの加工に適しています。腕時計産業が盛んなスイスで、腕時計用の小型部品の加工に使用され始めたことから、「スイス式」と呼ばれるようになりました。

刃物台の方式

NC自動旋盤の刃物台は主に2つの方式に大別されます。

くし刃形

タカハシキカイのクシ刃旋盤画像
出典元:タカハシキカイ

くし刃形刃物台は、横送り台の長手方向に刃物を一直線で固定するタイプの刃物台です。送り台の水平移動のみによって使用する刃物の変更ができるため、高速な刃物割り出しが可能なことが特徴です。

しかし300〜600mm程度の横送り台に刃物を並べる方式、かつ刃物の間隔を狭めるほど隣の工具と材料が干渉しやすくなるため、一般的には10本以上などの、多くの刃物を搭載できないことがデメリットです。

タレット形

株式会社ツガミのCNC旋盤の画像
出典元:株式会社ツガミ

タレット形刃物台は、タレットという円形の回転機構に放射状に刃物を挿し込み、使用する工具をタレットの回転によって呼び出す方式です。10本以上などの多くの工具を、比較的隣接工具との干渉を気にせず使用できることがメリットです。

一方、次に使用する刃物によっては、最大でタレットを180°回転させる必要があるため、刃物割り出し速度ではくし刃形刃物台方式に劣る傾向にあります。

主軸と刃物台の数

NC自動旋盤には生産性を上げるために主軸を複数個搭載したものもあります。

1タレット1スピンドル機

シチズンマシナリー株式会社主軸台移動形CNC自動旋盤の画像
出典元:シチズンマシナリー株式会社

主軸と刃物台が両方1個の1タレット1スピンドル機は、最も一般的なNC自動旋盤です。

1タレット2スピンドル機

シチズンマシナリー株式会社のMiyano BNA42MSY画像
出典元:シチズンマシナリー株式会社

刃物台1個に対し、主軸が左右に一つずつ搭載されているモデルがあります。主軸が左側に1個の場合は刃物台側しか加工ができませんが、1タレット2スピンドル機であれば、左側の第一主軸で加工を終えた後、右側の第二主軸に持ち替え、背面の加工を行うことが可能です。背面加工があるワークを完成品まで連続加工を行うことができるため、非常に生産性が高い機械です。

2タレット2スピンドル機

左側に第一主軸とそれに対応する刃物台、右側に第二主軸とそれに対応する刃物台を持つNC自動旋盤を、2タレット2スピンドル機といいます。

1タレット2スピンドル機と同様、第一工程終了後に第二工程として背面加工が可能ですが、それぞれの主軸に対応する刃物台が搭載されているため、第二工程と、次の第一工程を同時に行うことができます。一台の機械で二つの工程を同時に加工できるため、1タレット2スピンドルよりも加工時間が更に短くなる傾向にあるのが特徴です。

3タレット2スピンドル機

シチズンマシナリー株式会社のMiyano ABX51/64THY画像
出典元:シチズンマシナリー株式会社

左側に第一主軸とそれに対応する刃物台、右側に第二主軸とそれに対応する刃物台を持
ち、更に下刃物台も搭載されたNC自動旋盤を、3タレット2スピンドル機といいます。特に細長いワークを加工する際、上刃物台の刃物と下刃物台の刃物で材料を挟みながら切削するピンチカット加工を行うことによって、突き出しの長井材料でも最小限のフレとビビリで加工できます。

多軸機

株式会社嶋田鉄工所の多軸自動旋盤画像
出典元:株式会社嶋田鉄工所

嶋田鉄工所は、円形に配置された6個/8個の加工部を、順番に回転させながら連続加工を行うことができる多軸機のメーカーです。

同じ刃物で同じ工程を軸数の回数行った後、次の工程を再び別の工具で軸数の回数行い、完成品まで連続加工していきます。1スピンドル機と比較して工具割り出しの回数を圧倒的に減らすことができるので、量産部品に絶大な威力を発揮します。

NC旋盤と比べたメリット

NC自動旋盤には、一般的なNC旋盤と比較して大きなメリットがあります。

単一製品の大量生産

一般的なNC旋盤は、一回の加工が終わるたびに材料の段取り替えを行う必要があり、その度に人手を介します。棒材の自動供給機能が付いたNC自動旋盤で加工することにより、一般的なNC旋盤を遥かに凌駕する大量生産を実現することができるのです。

単一製品の高速生産

一般的なNC旋盤は、一回の加工が終わるたびに材料の段取り替えを行う必要があり、その度に時間がかかります。NC自動旋盤は、断続的に棒材の供給を受け、連続加工を行うことができるため、一般的なNC旋盤と比較して速く加工を終えることができます。

省スペース

株式会社桐生明治のNC自動旋盤加工画像
出典元:株式会社桐生明治

NC自動旋盤は、棒材の連続加工に特化しているという特性上、最大でも主にφ65前後までの小径ワークがターゲットです。小型ワーク専門の機械なので、機械サイズもそれに合わせてコンパクトな傾向にあります。

またNC自動旋盤は単一製品の量産加工に特化しているため、オペレータが機械の前で段取り替えを行うことをあまり想定する必要はありません。従って複数台の設備でも機械の間隔を詰めて配置することができ、狭い工場スペースでも有効に量産設備を構築することができます。

NC旋盤と比べたデメリット

大量・高速・省スペースというメリットがあるNC自動旋盤ですが、一般的なNC旋盤と比較したデメリットもあります。

多品種少量生産には不向き

NC自動旋盤は、単一製品を金太郎飴のように連続加工することが得意分野です。一方、多品種少量生産の場合、プログラム・加工条件・棒材突き出し量・工具など全てが一品一様で異なるため、棒材の連続供給機能を上手く活用することができません。

大径ワークには不向き

中村留精密工業株式会社のNC旋盤についての説明記事画像
出典元:中村留精密工業株式会社

NC自動旋盤は重い金属の棒材を振り回すという特性上、φ65前後が各社の最も大きな機械の最大加工径です。それ以上の径の材料については、ひとつひとつ手で段取りすれば加工できなくはないかもしれませんが、自動供給はできないので、NC自動旋盤の最大の特徴である棒材の連続供給機能を上手く活用することができません。

複雑加工には不向き

ヤマザキマザック株式会社Twitterより引用した画像
出典元:ヤマザキマザック株式会社

近年ではエンドミルのような回転工具にも対応した、複合自動旋盤が各社から発売されていますが、あくまでも斜めフライス・穴穿け加工が限度です。同時5軸マシニングセンタで行うような自由曲面のある複雑形状は、NC自動旋盤のターゲットではありません。

引用元:ヤマザキマザック株式会社

NC自動旋盤の主なメーカー

国内の主要なNC自動旋盤メーカーを紹介します。

シチズンマシナリー株式会社

シチズンマシナリー株式会社のCNC自動旋盤画像
出典元:シチズンマシナリー株式会社

シチズン時計の完全子会社であるシチズンマシナリーは、1936年にシチズン時計の工作機械開発製造部門として旋盤の生産を開始し、1982年にシチズン時計から分離独立しました。2007年から同じくNC自動旋盤メーカーであるミヤノと資本業務提携を開始し、日本最大のNC自動旋盤メーカーとして業界で強い存在感を発揮しています。


バーワークに向く主軸台移動形のCincomシリーズと、チャックワークに向く主軸台固定形のMiyanoシリーズの両方をラインナップし、幅広い加工ニーズに応えています。各軸を切削方向に振動させることによって切粉の分断を促進するLFV技術や、摩擦接合によって棒材の残材を削減する技術など、革新的な取り組みも特徴の一つです。

スター精密株式会社

スター精密株式会社の自動旋盤の画像
出典元:スター精密株式会社

1950年に創業されたスター精密は、当初は腕時計やカメラ部品の製造販売会社でした。1958年にカム式自動旋盤のリリースによって工作機械業界に参入し、今ではスイス式自動旋盤で世界トップシェアを持ちます。独自のスラント型すべり案内面構造によって加工時の振動を抑え、高剛性・高精度な加工に強みがあります。

株式会社山善(ツガミ)

ツガミの画像(株式会社山善)
出典元:株式会社山善

1923年にゲージブロックの研究会社として創業したツガミは、1957年に「T-2形主軸移動形自動旋盤」をリリースし、自動旋盤業界に参入しました。

対向くし刃や垂直刃物台など、ニッチな刃物台機構をラインナップしています。またガイドブッシュレスで主軸移動形自動旋盤を稼動させる独自技術を持っており、バーワークの加工が平易に実現できます。

NC自動旋盤の自動化

棒材の連続加工に強みを持つNC自動旋盤ですが、更に高水準の自動化を進める手段もあるので、ここで紹介します。

バーフィーダ

株式会社アルプスツールのバーフィーダ画像
出典元:株式会社アルプスツール

ほとんどのNC自動旋盤には、棒材を収納・自動供給するバーフィーダが搭載されています。様々な製品があるので最適なものを選択することで、更に自動化を進めることが可能です。

棒材の収納本数にフォーカスすれば、例えばアルプスツールからはφ4の棒材を48本収納できるモデルが発売されています。また棒材の長さにフォーカスすれば、同じくアルプスツールからは最大で4mの棒材を供給できるモデルも選択可能です。

材料が長ければ長いほど一本の棒材から取り出せるワークが増えるので、より少ない段取り回数で多くの部品を生産できます。

多関節ロボット

シチズンマシナリー株式会社のオンマシンタイプの画像
出典元:シチズンマシナリー株式会社

NC自動旋盤と多関節ロボットを組み合わせることで、更に高水準な自動化のオーダーメイドが可能です。例えば加工後に突切りしたワークがシューターから排出される仕組みを機械側に持たせるとします。そうすると、排出されたワークをロボットによって自動で整列・測定・外観検査・次工程への輸送などを行うことができます。

また機械天井部に多関節ロボットを付け、機内へアクセスできるようにカスタマイズするとします。この場合、ワークを落とさずにロボットにキャッチさせることができ、完成品外径の傷を防ぎながら自動で整列・輸送することが可能です。


ロボカルは、NC自動旋盤の自動化にお困りの方に、最適なロボットソリューションの提案を行うことができます。

まとめ

この記事ではNC自動旋盤の用途や歴史、構造、種類、メリットやデメリット、主なメーカーや自動化の例を紹介しました。種類が多く複雑なNC自動旋盤ですが、NC旋盤とは異なる性質・特徴をご理解頂けたかと思います。

NC自動旋盤の運用・検討をされている皆様は、ぜひ参考にしてください。

この記事の監修者
古河悟アイキャッチ
古河 悟
外資系IT企業勤務 製造業系ソフトウェア営業

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