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2023.04.19

抑えておきたい! ものづくり日本を支える「NC旋盤」の基本と、有力メーカー5社

抑えておきたい! ものづくり日本を支える「NC旋盤」の基本と、有力メーカー5社

金属加工の現場で広く用いられ、重要な役割を果たす工作機械である「旋盤」。近年ではコンピュータによる数値制御(CNC)を含めた「NC旋盤」が主流となっています。NC旋盤による作業の自動化によって、均一で高品質な加工を、従来よりも短時間で処理することが可能となり、特に大量生産が必要な場合にはなくてはならない設備といえます。
ここでは、NC旋盤に関する基本知識と、代表的な国内メーカーをいくつかピックアップしてご紹介します。

まずはNC旋盤の基本をおさらい

まずはNC旋盤の基本をおさらい

旋盤とは、回転する金属材料に刃物(バイト)を押し当てて加工する工作機械で、従来、すべての操作を手動で行っていましたが(汎用旋盤)、これにNC(Numerical Control/数値制御)装置を組み込むことで、作業者のスキルに左右されない、均一で精密な加工が可能となりました。さらに現在では、数値制御をコンピュータが行うCNC旋盤が主流ですが、ここではCNC旋盤を含めて「NC旋盤」として扱います。
NC旋盤は、加工に必要な位置や速度などの、あらかじめ設定した数値情報に従って機械が自動で加工を行うもので、従来の作業員の手動による汎用旋盤に比べて、大幅に作業工数を減らすなど多くの利点があり、また、汎用旋盤では難しかった大量生産にも適しています。

想像以上に身近で幅広い、NC旋盤の役割

想像以上に身近で幅広い、NC旋盤の役割

NC旋盤では、鉄、アルミ、ステンレス、真鍮、樹脂などのさまざまな材料を加工することができます。基本的な加工性能は汎用旋盤と同様ですが、NC旋盤による加工製品は、その精密さと高い生産性から、非常に幅広い産業で使用されています。電子部品、光学機器、時計・ジュエリーなどの身近なところから、自動車、航空機、住宅、医療器具、果てはロケットや人工衛星など航空宇宙産業にまで及び、あらゆる産業の基盤になっています。それほど、NC旋盤による恩恵は、私たちの生活に密着しているのです。

旋盤を画期的に進化させたNCの原理とは

旋盤を画期的に進化させたNCの原理とは

NC旋盤の土台となる汎用旋盤では、主軸に固定した円柱状のブランク品(材料あるいは半加工品)を回転させて、作業員が手動でバイトと呼ばれる刃物を当てて切削、研削などの作業を行います。数種の加工が必要な場合には、途中でバイトを付け替えることもあります。NC旋盤は、これらの作業をあらかじめプログラムによって入力した数値データ(工作物の形状や回転数、速度、切削深さ、刃具の位置や移動量などの加工条件)に従い、タレット(刃物台)に装着した多様なバイトを使い分けながら自動加工を行います。工数や加工時間を大幅に減らせるだけでなく、中にはμm(マイクロメートル=1mmの1/1000)単位の高精度加工が可能なものもあります。

また、近年のNC旋盤の中には、主軸およびタレットが複数搭載されているものや、加工物の搬入出、洗浄、計測なども機械内部で自動化されているものもあり、より生産効率が高まっています。

日本のNC旋盤製造メーカーから5社を紹介

日本のNC旋盤製造メーカーから5社を紹介

NC旋盤の用途は多岐にわたり、上述のような幅広い産業からのさまざまな加工品需要があります。無限ともいえるその仕様に対応するため、世界中に数多くのNC旋盤メーカーが存在しますが、ここからは、NC旋盤を製造する国内の工作機器メーカーの中から、それぞれ強みの異なる代表的な関連企業5社をご紹介します。

オークマ株式会社

1898年の創業から約120年の歴史と、国内7社、海外19社の関係会社を持つグローバルな総合工作機械メーカーで、日本を代表する3大工作機械メーカーの1社です。NC旋盤をはじめとする工作機械を製造し、切削型工作機械では国内トップシェアを誇ります。

主な事業内容

1、2サドルCNC旋盤、立形CNC旋盤、平行スピンドルCNC旋盤などを製造するほか、マシニングセンタや複合加工機なども製造しています。数値制御(NC)装置のみならず、モータ、サーボドライブユニット・検出器などのユニットをすべて自社開発、さらに、スマートマシン(状況を判断し、自律的に最適加工を行う知能化工作機械)やロボット・IoT・AI活用などの先端技術開発にも取り組んでいます。

会社情報

  • 創業:1898年1月
  • 会社設立:1918年7月
  • 本社所在地:〒480-0193 愛知県丹羽郡大口町下小口五丁目25番地の1
  • 代表者:代表取締役社長 家城 淳
  • 従業員数:単体:2,310名 連結:3,953名
  • 資本金:18,000百万円
  • 営業内容:NC工作機械(NC旋盤、複合加工機、マシニングセンタ、研削盤)、NC装置、FA製品、サーボモータ、その他、製造・販売

(2022年3月現在)

※出典:オークマ株式会社 会社概要

株式会社FUJI

1959年創業、愛知県知立市に本社を置き、電子部品自動装着機で世界トップクラスのシェアを誇る産業機械メーカーです。電子部品実装ロボットおよび工作機械の開発・製造・販売・サービスを展開し、自動車部品を中心に、PC・携帯電話・デジタル家電製品など多くの分野で活躍しています。

主な事業内容

高いコストパフォーマンスと優れた熱変位性能を持つTNⅡシリーズ、重切削も可能な高剛性スライドが特徴的なCSシリーズといったさまざまなNC旋盤を製造しています。また、多様な産業用ロボットや、難接着・異種材料の接着・コーティングなどを助ける大気圧プラズマユニットなどの開発、製造も行っています。

会社情報

  • 創業: 1959年4月
  • 本社所在地:〒472-8686 愛知県知立市山町茶碓山19番地
  • 代表者:代表取締役会長兼社長 曽我信之
  • 従業員数:連結2,791名、単体1,710名
  • 資本金:5,878百万円
  • 営業内容:電子部品実装ロボット、工作機械の開発、製造

(2022年3月末現在)

※出典:株式会社FUJI 会社概要

DMG森精機株式会社

主にNC旋盤やマシニングセンタなどの工作機械、周辺機器などを製造、活動拠点をグローバルに展開し、世界でも1位、2位のシェアを争う大手工作機械メーカーです。日本3大工作機械メーカーの1社としても知られます。

主な事業内容

2016年にドイツのDMG MORI AGとの完全経営統合を果たし、世界で約15万カ所の顧客を持ち、累計約30万台の工作機械を稼働させています。5軸マシニングセンタ・複合加工機、自動化システム、デジタル化などの技術を活用した顧客の生産工程集約、生産性向上に力を入れており、パレットプールシステムやワークハンドリングに代表される自動化システム、切削油やツールワゴンなどといった関連製品も製造しています。

会社情報

  • 設立: 1948年10月26日
  • 本社所在地:〒135-0052 東京都江東区潮見2-3-23
  • 代表者:取締役社長 森 雅彦
  • 従業員数:12,259名(連結)
  • 資本金:51,115百万円
  • 営業内容:工作機械(マシニングセンタ、数値制御装置付旋盤及びその他の製品)の製造、販売製造

(2021年12月現在)

※出典:DMG森精機株式会社 会社概要

株式会社池貝

工作機械、産業機械の製造、オーバーホールを主要事業とし、子会社を通じて船舶用エンジンなども取り扱っています。前身となる池貝鉄工所は、「日本の工作機械の父」とされる池貝庄太郎が1889(明治22)年に設立、国産第1号の旋盤を世に送り出すなど、日本近代工業史に名を刻む老舗企業です。

主な事業内容

小型~大型加工品に対応できるさまざまなNC旋盤を製造しています。また、汎用旋盤の製造や、既に導入している旋盤のオーバーホールならびにレトロフィット(最先端の部品やNC装置への付け替え)なども行っています。

会社情報

  • 創業:1889年5月
  • 会社設立:1949年7月1日
  • 本社所在地:〒311-3501 茨城県行方市芹沢920-52
  • 代表者:代表取締役CEO 張 春華/代表取締役社長 中西 章
  • 従業員数:200名(連結)
  • 資本金:90百万円
  • 営業内容:工作機械等の製造、修理ならびに販売及び設置工事

※出典:株式会社 池貝 会社概要

株式会社エグロ

工作機械やコレットチャックなどの製造を中心に、μm(マイクロメートル)単位の高精度小型工作機械の製造を得意としています。ロボット搭載NC旋盤など、工作機械の自動化に30年以上にわたって取り組んできた実績を持ち、2007年には経済産業省中小企業庁により「元気なモノ作り中小企業300社」にも選定されています。

主な事業内容

2001年にグッドデザイン賞を受賞した2軸CNC旋盤や、サブスピンドル、回転工具ユニットなどの豊富なオプションが選択できる3軸制御刃物台CNC旋盤などを製造するほか、バラエティーに富んだ製品を取り扱っています。顧客の仕様に沿った工作機械のカスタマイズを得意とし、ブランク品を固定するコレットチャックや、5軸制御マシニングセンターの製造を行っているのも特徴です。

会社情報

  • 創業:1937年10月
  • 本社所在地:〒394-0043 長野県岡谷市御倉町8−14
  • 代表者:代表取締役 江黒寛文
  • 従業員数:180名
  • 資本金:8,580万円
  • 営業内容:精密小形CNC各種工作機械の開発・製造・販売・機械自動化

(2022年10月現在)

※出典:株式会社エグロ 会社概要

まとめ

まとめ

1952年アメリカで最初のNC工作機械が開発され、その数年後、東京工業大学の中田孝教授(当時)らが日本で最初のNC工作機械である「NC旋盤」を試作しました(※1)。その後、コンピュータとの連携によって、NC旋盤は高精度な部品を特殊な形状であっても大量に加工できるようになり、現在では極めて幅広い分野にわたってその発展の成果を広げています。
一方で、人手不足が深刻化する中、今後は「自動化」が生産現場にとっての重要なキーワードになっています。AIやロボット技術などによるFA化は必然で、それを支えるNC旋盤メーカーの今後に注目していきましょう。

※1:(参考)一般社団法人SME日本支部(国際生産技術者協会)「日本の工作機械を築いた人々~中田孝 氏」

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