目次
ロボットの動きはどのように作られているかご存知でしょうか。導入する際にロボットの制御方法を知っておくことで、導入環境にマッチしたロボットを選定することが出来ます。本記事では制御方法や周辺システムの構成を解説していますので参考にしてください。
ロボット導入の目的とメリット
近年、生産現場など様々な場所で自動化が推し進められています。その背景には、企業の生産コスト削減や人手不足など様々な要因があります。このような社会の流れからも、年々ロボットの必要性が高まっています。ここでは、ロボット導入の理由やメリットについて説明していきます。
なぜロボットを導入するのか
生産現場では企業の利益追求のため、コストの削減が重要な課題となっています。その一つの方法として、ロボットの導入が考えられます。
従来の人手作業をロボットに置き換えることで、人件費を削減できる上に、近年の人手不足の解決につながるからです。このような理由からロボット導入が検討されています。
ロボット導入のメリット
ロボット導入により、どのようなメリットがあるのでしょうか。メリットの一つは、前述したとおり手作業をロボットに置き換えることが出来るため、人件費を抑えることが出来る点です。
また、もう一つの重要なメリットとして、品質事故撲滅が挙げられます。人手作業では、ミスであったり、検査工程での不良の見落としを完全に防ぐことは難しいです。ロボットを用いることで、その発生確率を大きく下げることが可能です。
もしミスが発生した場合でも、画像や動画でデータを残せるため、原因の特定がしやすくミスの改善に繋がることもそのメリットとなっております。
ロボットはどのようにして制御しているのか
ロボットを初めて扱う場合、ロボットがなぜ指定位置に移動できるかが気になる方も多いのではないでしょうか。ここでは、その制御方法を解説していきます。
ロボットの動きを作る「ティーチング」
ロボットの動きがどのように作られているのか、それは「ティーチング」という方法で実現しています。ティーチングとは、ロボットが「どのようなタイミングで、どこに移動して、何をするのか」をロボットに覚えこませる作業です。これにより、ロボットが指定位置に移動したり、ものをつかんだりすることができ、それを何度も再現できるようになります。
ティーチングの方法
ティーチングの方法は大きく分けて4つあります。それぞれについて、下記で説明していきます。
オンラインティーチング
オンラインティーチングとは、ティーチングペンダント(通称:ティーペン)と呼ばれるリモコンの様なものをロボットにつないで、実際にロボットを動作させて覚えさせる方法です。
メリットとしては実物を見ながら行うため、周囲の障害物との距離感や、実際の動きをイメージしやすい方法です。ただし実際にロボットを動かす必要があるため、生産をストップして実施する必要がある点は、デメリットとなっています。
オフラインティーチング
オフラインティーチングとは、コンピュータソフト上でロボットの動作を作成し、それをロボットに導入する方法です。各メーカーごとにシミュレーションソフトがあり、3Dデータ上で導入する現場の環境を再現して、動作を試行できます。
メリットとしてはオフラインで出来るため、生産をストップする必要が無い点やロボットハンドの設計に活かすことが出来る点です。また、近年ではメーカーにより様々な特色があるので、展示会等で情報を仕入れてみると良いでしょう。
ダイレクトティーチング
ダイレクトティーチングは、文字通り直接ロボットを手で動かして、動きを覚えさせる方法です。これは、専門的な知識が無くても、簡単な作業でティーチングが出来るため、現場の作業者でも対応可能な点がメリットです。
デメリットとしては正確な軌道を覚えさせることが難しいため、位置精度が要求されるような作業では、使用できない場合があります。
ティーチレス
近年、展示会などで注目されているのが、ティーチレスです。ロボットコントローラーにAIを搭載しており、ワークの位置などから自分で最適な軌道を生成することができます。
従来のティーチングでは、ティーチングするための人材が必要でした。しかし、この方法ではティーチング無しで運用することが出来るという夢のような方法です。
一方で、中身がブラックボックス化されていたり、不具合などの対応に高度な技術が必要だったりするため、簡単に導入できるわけではありません。
今後さらに進化していく分野になりますので、ティーチレスが一般的になる時代になっていくと予想されています。
参照URL https://www.eaglys.co.jp/news/column/ai/aimanufacturing/
ロボットビジョンの役割
ロボットの制御では、ロボットビジョンからの情報を用いて位置制御をしていきます。ここでは、ロボットビジョンを使ってどのようなことが出来るのかを説明していきます。
ロボットビジョンとは
ロボットとは「センサ、知能・制御系、駆動系の3つの要素技術を有する、知能化した機械化システム」と定義されています。
参考URL https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h27/html/nc241320.html
ロボットビジョンはその「センサ」にあたり、人間で言うところの、目の役割をしています。カメラでワークの状態を検出し、その状態からロボットが向かう位置を計算しロボットを動かす、といった使い方をします。
このシステムを用いることで、コンベア上をバラバラに流れてくるワークを、向きをそろえて箱詰めするなどの作業を再現することが出来ます。
ロボットビジョン導入時の注意点
ロボットビジョンは正しく画像認識できないと、ロボットが製品を掴み間違えたり、所定外の場所に移動したりします。また、検査に用いる場合、不良品を良品と判断してしまうといった品質事故に繋がりかねません。
ロボットが正しく判断するために、照明の種類や位置を検討して導入前のテストを入念に行うことをおすすめします。
また、不良判定において非常に難しい点は、どこまでが不良品でどこからが良品かという判断です。従来の人手の検査では、その境界線が数値化されていないことが多いです。
導入の前に実際の良品・不良品のサンプルを判定して、ここまでは良品にしますよという閾値を決めておくことが重要です。
ロボット制御の構成事例
ここでは実際にロボットをシステムに組み込む際のシステム構成について、その事例をご紹介します。
PLCやタッチパネルの連携
下図にシステム構成の例を示します。
PLCを用いることで、ロボットと付帯設備との連携をとったり、PLCからロボットへ命令を送信することが出来ます。また、タッチパネルを用いる事で、ロボットの操作をタッチパネルから行うことも出来ます。ロボットは単体で使用するよりも、設備と連携して導入する場合が多いので、PLCなどの知識もつけておくと良いでしょう。
参考文献:三菱電機ITソリューションズ
タイミングチャートの活用
付帯設備と連携をする際に、タイミングチャートを活用すると便利です。下図に簡単な例を示します。
これを作ることで、他の装置の動きとの関係性を視覚的に見ることが出来ます。タイミングチャートの活用で、ロボットと付帯設備との干渉を防いだり、ロボットに必要な速度や能力を決める際にも役立ちます。
ロボット導入時の注意点
さて、ここまで説明してきたように、ロボットにはたくさんのメリットがあります。しかし、その扱いを間違えると逆効果になったり、人命に関わる事故が発生するリスクもあります。ここでは、導入の際に注意して欲しい3つのことを説明します。
導入前の効果確認
ロボット導入前に必ず導入による効果金額を算出しましょう。ロボット導入のコストと、人件費削減によるコストを比較し、ロボット導入コストのほうが圧倒的に大きい場合、ロボットではなく、別の改善でコスト削減を図ったほうがいい場合もあります。
安全の確保が何よりも大切
ロボットを扱う上で特に注意すべきは、安全への配慮です。エリアセンサや安全柵を用いて、作業者とロボットが衝突しないような対策を実施してください。
また、ティーチング時は、安全柵内部で作業する場合もあるので、必ず「特別教育」を受けた人がティーチングを実施するなど、事故防止対策をとって下さい。
ロボットの操作に慣れてくると、安全の確保がないがしろにされるケースが多いです。
常にロボットの周囲に気を配り、動作させるときは他の作業者への声かけを行うなどの意識を持ってください。
安全については、「セーフティアセッサ」「セーフティサブアセッサ」等の資格の勉強をすることで、より詳しく知ることが出来ます。
出典元:日本の資格検定
ロボットの保全方法をマニュアル化
意外に忘れたり、適切に実施されていないものが、ロボットの保全です。2、3年の使用ではあまり問題になることは無いですが、長年使用することで駆動系の故障が発生してきます。
各メーカーでメンテナンスの方法がマニュアル化されていますので、それを社内の標準書などに落とし込んで、メンテナンスが確実に実施されるような仕組みを整えておきましょう。
正しく導入して利益の出せる工場へ
今回は制御方法に焦点を当てながら、ロボット導入のメリットや注意点について解説しました。導入のハードルは高いように見えますが、導入できれば確実に効果を発揮できますので、今回解説した内容に気をつけて、導入してみてください。
導入に際して、アドバイスが必要だったり、不明な点があれば、ロボカルまでご相談ください。
関連リンク: