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2023.03.16

板金加工で使われる機械と最新事情を解説

板金加工で使われる機械と最新事情を解説

複雑な形状の板金加工部品をみて、どのように作られたのか疑問に思ったことはありませんか?本記事では、板金加工で実際に使われている機械とその工程、さらに最新の動向をご紹介します。板金加工にご興味をお持ちの方は、ぜひご覧ください。

板金加工とは

板金加工とは、金属板を塑性変形させる加工方法の総称です。自動車のボディー、自動販売機や厨房機器など箱型機械の外装パネルによく採用され、身近でよく見ることができます。身近な部品に採用されている理由は、材料が比較的安価で加工時間を短くできるからです。

板金加工は加工方法によって、機械板金手板金プレス加工に分類されます。分類や呼び方は業界や会社によって若干差があり、例えば機械板金を精密板金と呼ぶ会社もあります。ちなみに自動車の外装修理業者を板金屋さんと呼ぶのは、昔は手板金で外装パーツを修理していたからです。

機械板金と手板金の違い

板金加工のうち、機械板金と手板金の相違点を下の表で分類しました。手板金は加工に時間がかかるため、量産する工業製品にはほとんど使われなくなりました。

機械板金手板金
使用する工作機械専用機械を使用機械は使用せず職人がハンマー、板金ハサミ等の工具を使用
金型汎用金型を組み合わせる金型は使用せず当て金を使う
用途大量生産の工業製品少量生産の工芸品、自動車修理
特徴加工時間が比較的短い金型不要で複雑な曲面や細かい形状が再現できる
特徴を活かせる生産数10〜1000個1〜10個
製品例スチール家具、厨房機器希少車のレストア
加工精度±0.5mm±0.05mm
製造初期投資ほぼ不要ほぼ不要
生産立上げ時期短い短い
設計変更柔軟に対応できる柔軟に対応できる

機械板金加工とプレス加工の違い

機械板金とプレス加工の相違点を表で分類しました。困惑するかもしれませんが、生産数の多い業界ではプレス加工が前提のため、機械板金という言葉がプレス加工を指す場合もあります。また少量多品種生産のため、機械板金で加工した部品にプレスした部品を溶接するなど、ひとつの製品で機械板金とプレス加工が用いられる例もあります。

機械板金プレス加工
使用する工作機械ベンダー、パンチング、溶接機プレスマシンのみ
金型汎用金型を組み合わせる専用金型が必要
用途小〜中ロット、多品種大量生産
特徴を活かせる生産数10〜1000個1000個以上
製品例スチール家具、PCパネル自動車パネル
加工精度±0.5mm±0.1mm
製造初期投資ほぼ不要金型製作が必要
生産立上げ時間短い長い
設計変更柔軟に対応できる型変更が必要

機械板金加工で使用される工作機械

板金加工では、様々な加工機械を組み合わせて製品を作るのが特徴です。いずれの加工機械も加工時間は1分以下で、どちらかというと加工前の段取りに時間がかかります。板金加工は加工時間の短い機械を複数組み合わせることによって低コストでの多品種生産を可能としているのです。下記に実際に使用されている機械を紹介します。

シャーリング

https://www.sheetmetal.amada.co.jp/column/course/basis04/

製品の加工に必要な板材を、定尺の部材から切り出す機械です。ハサミと同じく剪断加工という原理を利用しています。後ほどご紹介するタレパンやレーザー加工機では定尺材から直接製品を切り出すことができるため、シャーリングの出番は減少傾向です。

タレパン

タレパン
https://www.muratec.jp/sm/products/tp/m5000.html

正式名はターレットパンチプレスといい、板金加工に特化したプレス機です。汎用金型で穴加工やトリミングをNC加工で高速で行うため、機械板金のコスト削減に寄与します。多種多様な汎用金型が用意されており、穴や切り欠きの他、板の表面に凹凸をつけたりすることも可能です。最近では、タレパンを中心に前述したシャーリングや後述するプレスブレーキを産業用ロボットで連結した、「パンチングセル」と呼ばれる設備が注目を浴びています。

レーザー加工機

レーザー加工機
https://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/products/mecha/laser/pmerit/2d/gx-f/index.html

タレパンでは難しい複雑形状の切断、切断・穴あけ・彫刻・マーキングをNC加工するのがレーザー加工機です。レーザー光を集約して板材を溶断する仕組みで、低価格化が進んだレーザーカッターやレーザー彫刻機と基本構造は同じです。

ファイバレーザー複合機

ファイバーレザー複合機
https://www.sheetmetal.amada.co.jp/lineup/combi/eml-aj/eml-aj.html

ファイバレーザー加工機は、通常のレーザー加工機で使われるCO2レーザーやYAGレーザーよりもランニングコストが少なく、アルミや銅など高反射材の切断や微細加工を実現しています。このファイバレーザー加工機とタレパンを工程集約させて、加工時間を短縮させたのがファイバレーザー複合機です。近年は各メーカーとも、このファイバレーザー複合機に、最も開発に力を入れています。

プレスブレーキ

プレスブレーキ
https://sanki.komatsu/bankin/PBZ.html

プレスブレーキは、直線折り曲げを行う機械です。機械に固定されたダイと呼ばれる下型に、金属板をあてパンチと呼ばれる上型でプレス加工することで、様々な角度や形状の曲げ方が実現できます。最近は加工の重要な変数である加圧量や折り曲げ順序を設定したり、金型交換システム(QDC)で自動で段取り替えができるNC制御モデルもあります。

溶接機

溶接機
http://www.ikuratools.com/w_ARCfan.html

溶接は部材の一部を溶かして、金属の接合を行う加工です。板金加工では、主にアーク溶接機やスポット溶接機、めねじを接合するスタッド溶接が使われてきました。特にアーク溶接は作業者の技量に仕上がりが左右されます。近年は溶接工程の自動化が進み、レーザ溶接や溶接ロボットも採用されています。

バリ取り機・仕上げ用ハンドツール

バリトール
https://www.fuji-kiko.co.jp/products/baritoriki/bt4/

板金加工の仕上げに使用されるのがバリ取り機です。特にタレパンなどで加工された金属板のエッジには、バリと呼ばれるナイフ状の突起が形成されます。このバリをワイヤブラシで除去するのがバリ取り機です。そのほか溶接ビードの仕上げなどには、ディスクグラインダーやベルトサンダーなどのハンドツールが用いられます。

板金加工の流れ

前章7つの機械を使用して行う板金加工の流れを、具体的にご紹介します。

1.板金設計

最終製品の設計者から供給されたCADデータをもとに、3次元形状を展開して板金加工を行うための図面を作成します。この作業を板金設計と呼びます。板金の折り曲げ加工を行う際、折曲げ部の外側は張力が発生して板が伸び、逆に内側は圧縮力が加わります。この複雑な変形や材料の板厚や材質も考慮して、2次元の展開図を作成します。板金加工機械メーカーは、自社の機械との親和性の高い板金専用のCADソフトを用意しております。

2.NC加工データ作成

前章でご紹介したレーザ加工機やタレパンはNC加工機です。板金設計図をもとにNCデータを作成します。大きな定尺板から材料を複数切り出すまとめ取りを行う場合は、なるべく廃棄部分が少なくなるように、形状を配置する工夫も行います。板金設計と同じく、板金加工機械メーカーが用意しているCAMソフトを利用することで、効率的なNCプログラムが作成できます。

3.切断・抜き・パンチ加工(タレパン・レーザー加工機・ファイバレーザー複合機)

レーザ加工機やタレパンで、穴や切り欠きを開けます。その後外周をトリミングします。まとめ取りを行う場合に完全にトリミングしてしまうと製品が分離してしまいますので、外周にミクロジョイントと呼ぶ切り残しを設けます。後工程で板材から製品を分離します。

バリ取り、タップ加工(バリ取り機)

折り曲げる前の準備として、加工前の製品のバリを取ります。板金の切断面は、バリがナイフ状になり素手で触るのは非常に危険なため、通常は革手袋や強化繊維の軍手をはめるのが必須です。少量の場合はやすりを使ってバリを取りますが、大量生産品はバリ取り機を使用します。タレパンで加工したバーリング部にめねじを切るタップ加工も、この工程での作業です。

5.曲げ加工(プレスブレーキ)

プレスブレーキで曲げ加工を行います。曲げる部分の幅や材質、曲げ角度に応じて適切な金型と曲げ圧力を選択します。2回以上折曲げ加工を行う場合は、加工機と製品が干渉しないように曲げる順番を考慮します。

6.溶接(溶接機)

縦壁を折り曲げて作った箱形状の板金製品は、縦壁をアーク溶接で接合することがあります。また複数の板金製品を組み合わせる場合や、ナットなどの市販部品を板金部品に接合するには、アーク溶接やスポット溶接が行われます。

仕上げ(ディスクグラインダー・ベルトサンダー)

溶接ビードの研削やバリ取りを行い、メッキなどの表面処理を施します。塗装を行う場合は傷を隠すパテ埋めなども行われます。

板金加工機械のメーカー3選

板金加工に必要な工作機を製造している大手メーカーをご紹介します。下記の3社の特徴は、板金加工で使用される機械を幅広く扱っている点です。

株式会社アマダ

アマダは板金加工分野において、国内トップの70%を超えるシェアを握っています。さらに工作機械全体でも、世界シェア4位のメーカーです。アマダの加工機は赤黒の2トーンカラーデザインが特徴です。日本国内の板金加工業者を訪問すると、必ずといって良いほどアマダの赤黒の加工機を見ます。アマダは板金加工機の他にも、旋盤、研削盤、溶接機などもラインナップする総合工作機械メーカーです。

参照:https://www.sheetmetal.amada.co.jp/about/about.html

村田機械株式会社

村田機械は、もともとは京都で西陣織の織機を作っていた企業です。Muratecというブランド名で、主に工場設備の搬送装置が有名ですが、板金分野の加工機も製造販売しています。NCタレットパンチプレス、ファイバレーザ複合機、バリ取り機のほか、会社の主力の搬送装置と板金加工機を組み合わせた複合機も扱っています。上の写真はレーザー加工機に加工パレットの保管と自動搬送機能を追加したシステムです。

参照:https://www.muratec.jp/sm/products/sysls/

TRUMPF

TRUMPFはドイツの工作機メーカーで、工作機の世界シェア1位の企業です。日本にも法人がありNCタレットパンチプレス、ファイバレーザ複合機などの板金加工機械を取り扱っています。日本では国産メーカーのシェアが高いからか、加工精度の高いハイエンド機種が販売の中心です。上の写真は1モジュール内でレーザーカット、レーザー溶接など複数の工程を行うことができるシステムです。

参照:https://www.trumpf.com/ja_JP/products/machines-systems/3d%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%B6%E5%88%87%E6%96%AD%E6%A9%9F/

まとめ

板金加工は、様々な加工機を駆使して複雑な形状の製品を短時間で製作します。一度段取りを済ませれば、短いサイクルタイムで連続して加工できるのも共通する特徴です。最近は加工工程の連続性を高めて自動化を実現するのがトレンドです。

自動車の電動化や世界的な材料不足などが大きな話題となっていますが、板金加工への影響は少ないと言えます。なぜなら、自動車にはエンジンよりも車体に板金製品が採用されていますし、板金加工自体が最小限の資源で製品を製造する方法だからです。

板金製品のニーズは途絶えることなく、世界的な動向調査でも年3%以上の成長が予想される活況な業界です。

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