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食品製造業はライン自動化に対するハードルが高いことから、これまでは人手による作業が主流でした。
しかし近年は食品に向いた産業用ロボットの開発が進んでおり、自動化できる工程は広がってきているため、導入のハードルは下がってきています。
今回は、食品製造業における産業用ロボットの適用例と、ロボット導入が得意なSIer企業3社をご紹介します。
・食品製造業界では産業用ロボット導入による自動化が可能
・異物混入リスク軽減や生産性向上、柔軟な生産量調整が実現できる
・食品のピッキングや搬送、箱詰め工程での実績が多い
食品製造業で産業用ロボットは導入できる
仕分けを自動化したいならパラレルリンクロボット
食品の仕分けは従来、アルバイトやパートなどの従業員が担っていたのですが、人手不足の深刻化に伴い、自動化のニーズが高い作業でした。
そんな仕分け作業では、パラレルリンクロボットが広く使われるようになっています。
ラインの上から吊るす形状で、ライン上のお菓子の位置や角度をカメラで認識、3軸のアームを伸ばして製品を吸着しピッキングします。
目にもとまらぬ高速動作が特徴で、仕分け作業の大幅な効率化も実現可能です。
既存のラインにロボットを導入したいなら協業ロボット
今まで人が作業していたラインを一気に自動化するのは難しいので、一部の工程へのロボット導入を検討する企業は多いです。
しかし、通常の産業用ロボットは、周りに人がいると危険を及ぼす可能性があるため、作業場を明確に分けなければならない問題がありました。
そんな時は、協業ロボットを導入することで、既存のラインにロボットを導入しても危険が生じず、安全に人手不足の解消を実現できます。
協業ロボットは、エリアセンサーで人を感知すると通常よりも動きが遅くなり、また2kg以上の力がかかると自動的に停止するので、人が触れてしまっても大きな力がかからず、安全に作業が継続できるのです。
食品製造業で産業用ロボットを導入してできること
食品製造産業で産業用ロボットを導入してできることは以下の3つです。
- 人件費の削減
- 清潔さの確保
- 生産量の柔軟な調整
人件費の削減
食品製造業では生産品目は幅広く、入れ替わりも激しいため、従来の自動化装置では対応できないことが多いです。
その点、産業用ロボットならアームを使って人と同様の作業ができ、また画像認識の精度向上や作業を柔軟に行う能力も向上してきているため、人の代わりにロボットが働ける条件が整いつつあります。
産業用ロボットの導入は初期費用こそ高いですが、人件費の削減が実現でき、また生産量の調整も簡単に行えるメリットがあります。
清潔さの確保
食品製造業においては、異物の混入を防ぐなど清潔さを確保することは欠かせません。
産業用ロボットは摺動部から生じるゴミや塗装の剥がれ、駆動用オイルの混入などが衛生上の懸念となりますが、これらに対応した食品用のロボットも増えてきています。
防水性を確保して丸洗いできるロボットや、簡単に取り付けでき次亜塩素酸で洗浄できるジャケットなど、構造も多岐に渡るので希望に合ったロボットが見つかるでしょう。
人の作業ではどうしても発生するコンタミも、自動化によって低減することが可能です。
生産量の柔軟な調整
食品業界においては生産量の変動が多く、日ごとの生産量を調整するのは大変です。
しかし産業用ロボットを導入すれば、作業時間を変動させるだけで容易に生産調整が可能になり、また人手が足りない所にロボットを導入するというやり方も実現し始めています。
食品製造業界で産業用ロボットを導入されやすい工程
食品製造産業で産業用ロボットを導入されやすい工程は以下の3つになります。
- 食品のピッキング
- 異物チェックなどの外観検査
- 箱詰め工程
食品のピッキング
まず、弁当箱に唐揚げや野菜を入れるなどのピッキング工程において、産業用ロボットを導入できます。
従来は、人間のように繊細な手を作ることは難しく、柔らかい食品のピッキングには対応していなかったのですが、最近は様々なロボット用の手が開発されており、つかめる対象は広がってきています。
協業ロボットの開発により、作業者と一緒にロボットが作業できる条件も整っているため、人員不足への対応としてロボットを導入することも可能です。
異物チェックなどの外観検査
製品完成後の外観検査も、産業用ロボットで自動化できる工程です。
従来の画像認識では、複雑な形状をした製品の検査は難しかったのですが、多関節ロボットを用いて様々な角度から画像を撮り、画像認識を行うことで、人の目に匹敵する精度で検査が行えるようになっています。
箱詰め工程
製品の箱詰めも、産業用ロボットを導入して自動化しやすい工程です。
パラレルリンクロボットにてライン上の製品を高速でピッキングし、箱詰めします。
従来は製品サイズにばらつきが大きく、また頻繁な製品の種類変更があるため自動化が難しかったのですが、近年では画像認識技術の発展により対応できる幅が広がっています。
箱詰め後のパレタイズの工程も自動化に対応しており、幅広い段ボールサイズを記憶し最適なパレタイズを行うことが可能です。
食品製造業での産業用ロボットの導入が得意なSIer
日本国内には食品製造産業にロボットを導入実績が豊富で、多くの企業から信頼を獲得しているSIerが多数存在します。
ここでは代表的なSIerを3社ピックアップして紹介します。
サンビット株式会社
「サンビット株式会社」は福岡県と佐賀県を拠点として、食品メーカーを中心とした様々な業界の生産ラインにロボットを導入するSIer企業です。
企画構想、設計から据付、生産立会いまで、システム構築をトータルにサポートしているのが特徴で、食品の整列搬送を始め、多数のロボット導入実績を誇ります。
ロボット以外にもAI・IoTなど最新技術の導入にも対応しています。
対応業種 | 金属製品、プラスチック製品、生産用機械器具、業務用機械器具、非鉄金属、住宅産業、電子部品・デバイス、情報通信機械器具、電気機械器具、食品製造業、医薬品、半導体、輸送用機械器具、汎用機械器具など |
対応プロセス | 機械設計、制御設計、製造・組立、電気配線、システム制御、ティーチング |
住所 | 福岡県福岡市博多区住吉3-1-80 オヌキ新博多ビル3階 |
URL | https://www.sunbit.co.jp/ |
ロボットスクールの有無 | 無 |
ロボットショールームの有無 | 無 |
新立電機株式会社
新立電機株式会社は山口県を拠点とし、SI事業を始め、EMS、ネスティング事業を扱うSIer企業です。
ロボットシステムのSIer企業としての実績も豊富で、撹拌、箱詰め・袋詰め、ボトル搬送など、特に食品業界における実績が多いです。
ロボットシステムの導入のみならず、周辺設備も含めて設計し、導入後のティーチングやメンテナンスにも対応しています。
対応業種 | プラスチック製品、生産用機械器具、業務用機械器具、電子部品・デバイス、情報通信機械器具、電気機械器具、食品製造業、医薬品、輸送用機械器具、汎用機械器具など |
対応プロセス | 機械設計、制御設計、製造・組立、電気配線、システム制御、ティーチング |
住所 | 山口県下松市東海岸通り1-10 |
URL | http://shinritsu.co.jp/ |
ロボットスクールの有無 | 無 |
ロボットショールームの有無 | 無 |
株式会社イシダ
株式会社イシダは、1893年より民間初のハカリメーカーとして誕生し、近年は計量以外の領域にも事業領域を広げ、食に関わる全ての現場に対してサービスを提供しています。
業界では「食のインフラ」とも称されており、食品工場から小売、物流までの分野におけるトータルソリューションを提供可能です。
ロボットシステムの導入はもちろん、各種自動化装置の導入に対応しています。
対応業種 | プラスチック製品、食品製造業、医薬品、輸送用機械器具、汎用機械器具など |
対応プロセス | 機械設計、制御設計、製造・組立、電気配線、システム制御、ティーチング |
住所 | 京都府京都市左京区聖護院山王町44 |
URL | https://www.ishida.co.jp/ww/jp/ |
ロボットスクールの有無 | 無 |
ロボットショールームの有無 | 無 |
食品製造業における産業用ロボットの導入事例
これまで自動化は困難だとされてきた食品製造産業にも産業用ロボットが導入され活用されています。導入事例を3つ紹介しますので参考にしてください。
- 弁当の自動盛り付け
- 食品選別工程の自動化
- 人と協働ロボットで作業交代
弁当の自動盛り付け
弁当の盛り付け工程は、料理の形状が不定形なことからロボットによる認識が難しく、またダメージを与えずにピッキングする難易度も高いという問題がありました。
デンソーは、産業用ロボットにAIを搭載することで不定形物の認識を可能にし、またエラストマー製の柔らかいハンドを取り付けることで、様々な食品のピッキングを可能にしました。
ハンド取り付け部をツールレス化してねじ脱落リスクを軽減し、洗浄可能なカバーをロボットに取り付けて異物混入を抑えるなど、食品向けの工夫も行われています。
食品選別工程の自動化
食品の選別工程では、熟練の作業員が外観をチェックし、基準を満たしているかを経験に伴って選別する作業を行っていました。
しかし、人員不足や熟練作業者の高齢化に伴って、生産性が低下してしまうという問題がありました。
そんな選別工程にパラレルリンクロボットを導入すれば、外観検査とピッキングを自動化でき、省人化や効率向上が可能となります。
使えるのは上方から画像認識できる食品に限りますが、高速かつ精密に動作できるのが強みで、非常に高い効果を生み出します。
人と協働ロボットで作業交代
協業ロボットは、作業場に入って人と一緒に作業できるのが強みですが、ロボットは基本的に据え付けで使うため、他の場所で使うにはキャリブレーションをはじめとした専門家による対応が必要という問題がありました。
そこでオムロンは、業務用機械器具業界では産業用ロボット導入による自動化が可能簡単に移設でき、作業者と交代して作業を行えるような協業ロボットを開発しました。
「ランドマーク」と呼ばれる付属のプレートを設置することで、自動でキャリブレーションを行えるようになるため、移設後すぐ使用できます。
食品工場や惣菜やコンビニ弁当などの中食工場での急な欠員対応などにも臨機応変に対応できます。
まとめ
食品を始め、化粧品、医薬品の「三品産業」の分野では自動化のハードルが高く、人による作業が主流です。
しかし、近年では食品業界への注目が高まっており、自動化技術も大きく向上しているため、省人化や生産効率の向上などが実現できる可能性が高いでしょう。
産業用ロボットを導入したことが無い場合は、実績の多いSIerに依頼すれば最適なラインを提案してもらえるので、一度相談してみてはいかがでしょうか。