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どこの工場でも部品などのモノが溢れていると思いますが、モノを移動させる作業(マテリアルハンドリング)の効率化は、現代の物流業、製造業において大きな課題となっています。
今回は部品に溢れる工場の課題を解決するハンドリングロボットについて、種類や導入で期待できるメリットについて解説します。
・ハンドリングロボットは、工場のワークの搬送に使われるロボット
・ハンドリングロボットの種類は「ピック&プレースロボット」「梱包ロボット」「パレタイジングロボット」
・ハンドリングロボットのメリットは「コスト削減」「人の保護」「作業精度向上」「スペースの省略化」
・ハンドリングロボットの箱詰め・検査の導入事例
・ハンドリングロボットを扱うメーカー6社
ハンドリングロボットとは
ハンドリングロボットとは、主に工場内でのワークの搬送に使われるロボットのことを指します。
ハンドリングはマテリアルハンドリング(Material Handling)とも呼ばれます。「原材料・仕掛品・製品などの運搬・管理を効果的に行うための技術や方法など、モノの移動に関わる取り扱い全般」を指す言葉です。工場現場では、略語の「マテハン」が定着しており、「荷役」と呼ばれることもあります。
原材料や製品などを棚から出荷し、別の作業場まで持っていく作業を人の手ですべて実行すると、多くの人員・時間を要してしまいます。モノを移動させるハンドリング作業を産業用ロボット活用で効率化することは、多くの工場の課題になっています。
ハンドリングロボットの種類
ハンドリングロボットにはいくつか種類がありますが、用途ごと代表的な種類を紹介します。
ピック&プレースロボット
特定の位置にあるワークを摘まみ上げ、所定の位置へ運び、そこにワークを下すという一連の作業を行うロボットです。
パラレルリンクロボットや水平多関節ロボット(スカラロボット)などが主に使用されます。
梱包ロボット
出荷される製品をダンボールや発泡スチロールなどの容器に詰める作業を行うロボットです。
従来、出荷前の梱包作業は人手に頼っていましたが、近年では双腕型スカラロボットや人型ロボットなどを用いた自動化が進められてきています。
パレタイジングロボット
パレットに箱、袋、ケース、瓶、カートンなどの荷物を積み上げていく作業を行うロボットです。人が持つには負担が大きい、または困難な重量物を積み上げる場合に多く使用されます。
主に垂直多関節ロボットが用いられます。
ハンドリングロボットのメリット
ハンドリングロボットを導入することで期待できるメリットを紹介します。
コスト削減ができる
ハンドリングロボットのメリットの中でも、インパクトが大きいのはコスト削減です。ハンドリングを自動で行えるようになるので、人件費の節約につながるからです。
ハンドリングロボットは、プログラミングされた作業内容を忘れることはありませんので、新たに採用した人員に対して教育を施すコストも不要になります。
人の保護ができる
重量物のハンドリングをハンドリングロボットで行えば、人体損傷や命を落とすリスクを回避できます。
もしも人手で作業を行いハンドリング中に重量物を落としたとしたら、重量物と地面に人体を挟まれる事故につながります。手足の骨折などの重傷や、最悪の場合命を落とすことさえあり得ます。
作業精度が向上する
ハンドリングロボットを用いればミスすることなく、安定したハンドリングが可能となります。ハンドリングロボットは繰り返し精度も高く、ワークや荷物を一定の場所にハンドリングすることができます。
ハンドリングのような単純作業を人が繰り返し行った場合、疲労や意識の低下により、作業時間に比例して作業ミスをする可能性が増えます。
スペースが省略化できる
ハンドリングロボットが作業するスペースだけ確保できれば、人が作業するスペースが不要になります。
ハンドリングを用いて部品の整理整頓がされるため、新たな作業を行えるスペースを生むことも可能です。
ハンドリングロボットの導入事例
ハンドリングロボットのメリットが感じられる導入事例をご紹介します。
箱詰めの一連の工程を自動化
真空冷凍パックの箱詰めをハンドリングロボットで自動化した事例です。箱詰め~積み付けの工程に、梱包ロボットとパレタイジングロボットを導入し、作業の効率化を狙いました。
ロボットの導入により、真空冷凍パックの箱詰めから箱の積み付け工程に必要な人数が8人から2人に削減されました。結果的に労働生産性が4.4倍と大幅に向上しました。
検査工程へのロボット導入
これまで検品の際に、人が検査・整列・分注作業をしていた工程をハンドリングロボットで代替した事例です。凍結真空乾燥準備工程に双腕ロボットと検査カメラを導入し、作業時間の圧縮を狙いました。
ハンドリングロボットの導入により、作業者は部材の投入と取り出しのみを行えばよくなり、作業時間が7.5時間から1時間に大幅に短縮されました。また、人手と比べると検査・品質のバラつきがなくなり、品質も安定しました。
ハンドリングロボットを扱うメーカー
全てのメーカーでハンドリングロボットを発売しているわけではありません。ここではハンドリングロボットを扱うメーカーを6社紹介します。
安川電機
創業1915年で、福岡県に本社を構える安川電機。
MOTOMAN-HC10DTシリーズには、小型ロボット MotoMINI(6軸垂直多関節)や、人協働ロボット(6軸垂直多関節)を取り揃えています。
株式会社九州テクノロジー
創業は2016年と比較的最近で、福岡県に本社を構える九州テクノロジー。
ハンドリングロボットを主要事業としており、「外観けんた君」は、目視検査による検査員の作業不可低減、検査後のトレーサビリティ管理、24H対応による検査工程リスクの低減等の効果を上げています。
キーエンス
創業1974年で、大阪府に本社を構えるキーエンス。
製造現場向けの産業用ロボットに強みがあり、垂直多関節ロボット、水平多関節ロボット(スカラロボット)、パラレルリンクロボット、直交ロボットとさまざまな課題に対応するハンドリングロボットを揃えています。
HCI
創業2002年で、大阪府に本社を構えるHCI。
AI技術を用いたハンドリングロボットシステムを強みとしており、パレタイザー付ワーク自動検査ロボットシステムなど7種のロボットシステムを提供しています。
アイズロボ
創業2014年・従業員数8名で、大阪府に本社を構える新進気鋭のメーカーのアイズロボ。
プレス品のハンドリングを得意としており、ほとんどの製品はオーダーメイドで、企画から設計、製造、据付、試運転までワンストップで対応しています。
SMC
創業1959年で、東京都に本社を構えるSMC。
大手メーカーだけあって、ハンドリングロボットの品ぞろえは豊富です。ロータリアクチュエータ、オートハンドチェンジングシステムなどワーク形状や搬送形態に合わせた各種ハンドリング機器を揃えています。
まとめ
少し前は産業用ロボットは大型のものが主流でした。しかし中小企業からのニーズや作業工程の部分的な代替ニーズが生まれ、新たに誕生したのがハンドリングロボットです。
今後も工場の作業員の減少などの影響を受けてハンドリングロボットの成長は続く見込みです。新たなハンドリングロボットの登場にも期待が続きます。