目次
力覚センサーとは、力やモーメントの大きさ、方向を測定する装置のことです。どのような種類があるのか、また、利用できる場面やメリットについて紹介します。
・力覚センサーとは力やモーメントの大きさ、方向を測定する装置のこと
・光学式や圧電式、ひずみゲージ式、静電容量式の力覚センサーがある
・力覚センサーはロボットとの協調作業や精密作業の自動化などに用いられている
力覚センサーとは
力覚センサーとは、力やモーメントの大きさ、方向を測定する装置のことです。力に関してx軸・y軸・z軸の3方向に分けて、また、モーメントに関してもx軸・y軸・z軸の3方向に分けて測定するため、6軸型が基本となります。
簡単にいえば、力覚センサーとは、ロボットに人間のような触覚を与えるためのセンサーです。人間はものを触っただけでどの程度の強さで持てばよいのか、また、どれほど優しく扱うべきなのかを瞬時に判断することができます。
力覚センサーを搭載した産業用ロボットも、ものの力とモーメントを瞬時に理解するため、どの程度の力でつかむことができるのか、作業する際にはどの程度の強さまで出すことができるのかを判断することが可能になります。
力覚センサーの種類
力覚センサーは感知方式によっていくつかの種類に分かれます。代表的な4つの種類を紹介します。
- 光学式力覚センサー
- 圧電式力覚センサー
- ひずみゲージ式力覚センサー
- 静電容量式力覚センサー
光学式力覚センサー
対象物の変化をカメラやレーザーを用いて測定するセンサーを「光学式力覚センサー」と呼びます。ゲージ率を分析することで、力とモーメントを算出します。対象物に直接触れる必要がないことが特徴です。
圧電式力覚センサー
力覚センサーに受ける圧力により一定の電子が放出されますが、その電子を測定することで力を算出するセンサーを「圧電式力覚センサー」と呼びます。圧電式力覚センサーは対象物と接触するタイプです。
ひずみゲージ式力覚センサー
対象物が圧縮等の力を受けてひずむ際のひずみを検出することで、力やモーメントを測定するセンサーを「ひずみゲージ式力覚センサー」と呼びます。対象物のゲージ率とセンサーを組み合わせることが必要です。
静電容量式力覚センサー
2枚の平行板に力が加わり、板の間の距離が変化すると、静電量に変化が生じます。この微細な変化を測定することで力の大きさを測定するセンサーを「静電容量式力覚センサー」と呼びます。他の力覚センサーと比べると構成がシンプルなことが特徴です。
力覚センサーの用途
力覚センサーは力とモーメントを同時に検出できることから、様々なシーンで活用されます。どのような場面で使われるのか紹介します。
外力・反力の検出
力覚センサーでは、力だけでなくモーメントも同時に検出することが可能です。ロボットの末端に取り付ければ、外力や反力を同時に検出することができます。
作業にかかる力が強すぎて崩壊する前に検知することができるので、作業ミスを減らすだけでなく、不良品の減少、廃棄物の削減などの効果も期待できるでしょう。
ロボットとの協調作業
力覚センサーを搭載すると、微細な力加減を測定することができます。産業用ロボットに取り付ければ、人間との協調が可能になります。
協調作業が必要な工場、安全柵を設けずに人間とロボットが同じ空間で働く作業場に設置されているロボットに使用されることもあります。
精密作業の自動化
力覚センサーで力やモーメントを正確に検出できるようになると、ロボットの作業における力加減などを細かく設定することが可能になり、熟練工水準の精度の高い作業が実現できるでしょう。
ロボットを用いた工場全体の自動化が可能になり、生産性の向上にもつながります。
触覚診断・遠隔診療
遠隔診療においても、力覚センサーは活躍します。力覚センサーを取り付けた端末を患者さん側に配置し、力覚センサーで読み取った力やモーメントを医師側が読み取れるようにしておくならば、触覚診断による遠隔診療が可能になります。
過疎地や離島などの高度な医療機器を利用できない場面でも、より正確な医療的判断を行えるようになります。
研削・バリ取り作業
力覚センサーを搭載することで、微小な違いを測定できるようになります。細かな力加減のコントロールが必要になる研削作業やバリ取り作業を行う産業用ロボットに力覚センサーを取り付けるならば、より美しく加工できるようになるでしょう。
特にバリ取り作業は熟練の技が必要なため、経験の浅い作業員では美しく仕上げることが困難です。しかし、力覚センサーを搭載した産業用ロボットを利用するならば、熟練工水準の仕上がりを期待できるでしょう。
ピッキング作業
検品作業に見落としがあると、不良品が市場に出回ることになり、消費者に被害を与えるばかりか、企業の信用度も著しく落ちることになります。
ピッキング作業を行う産業用ロボットに力覚センサーを搭載すれば、微細な違いやミスに気付くことができるので、見落としが減り、企業の信用度の向上にもつながるでしょう。
ネジ締め作業
単純に見えるネジ締めも、微細な力のコントロールが必要な作業です。強すぎると本体を破壊する恐れがあるが、弱すぎるとネジ自体が取れてしまい、作業工程のやり直しが必要になることもあります。
ネジが緩んでいる状態で市場に出てしまうと、消費者に何らかの損害を与える可能性があるだけでなく、企業としての信頼にも関わります。
ネジ締め作業を行う産業用ロボットに力覚センサーを取り付けておけば、適正な力加減で作業を行えるようになるでしょう。
対象物の硬さや耐久性に応じた力加減にコントロールすることもできるので、複数のネジや複数の製品への対応も可能になるでしょう。
力覚センサーを利用するメリット
多彩な使い道のある力覚センサーは、多くのメリットがあるアイテムです。力覚センサーを利用することで得られるメリットを2つ紹介します。
- 微小な力への反応性を高める
- 意図しない方向への反応を回避できる
微小な力への反応性を高める
力覚センサーは、力をx軸・y軸・z軸の3方向に分析して測定できるセンサーです。そのため、ごく微小な力であっても立体的に把握できるという特徴があります。
産業用ロボットに力覚センサーを取り付けることで、ロボットハンド等の反応性を高めることができます。繊細な作業を必要とする工場でも、力覚センサーを搭載することで理想的な弱さ・強さの作業が可能になるでしょう。
意図しない方向への反応を回避できる
力覚センサーを取り付けると、モーメントや力を方向別に測定することが可能になります。意図しない方向に産業用ロボットが反応した場合は力覚センサーがいち早く察知し、動きを止めるなどのアクションにつなげることができるでしょう。
事故防止や作業ミスの防止のためにも、力覚センサーを搭載しておくことができます。
まとめ
力覚センサーは力とモーメントをそれぞれx軸・y軸・z軸の3方向に分けて解析できるセンサーです。
微小な力を感知して3軸に分けて分析することができるので、ロボットと協調作業を行う工場や遠隔診療・触覚診断、研削作業・バリ取り作業、ピッキング作業、ネジ締め作業など様々な場面での活用が可能です。
また、力覚センサーを搭載することで事故防止や作業ミスの防止も図れるので、ぜひ力覚センサーの導入を検討し、安全かつミスの少ない作業を目指していきましょう。