目次
「ティーチングペンダント」を使用し、ロボットを実際に動作させます。
今回はティーチングペンダントの仕組みや技術、ティーチングペンダントによるオンライン・ティーチングのメリットやデメリットをご紹介します。
・ティーチングには「オンライン」「オフライン」があり、ティーチペンダントはオンラインで使用
・ティーチペンダント使用のメリットは「操作が簡単」、デメリットは「教育に時間が必要」
・ティーチペンダントの基本機能は「停止」「表示」「安全装置」「動作」
・ティーチペンダントを販売する代表的メーカー3社
ロボットにはティーチングが必要
多くの産業用ロボットは購入しただけでは思い通りに動いてくれません。ロボットを工場現場で稼働させるためには、ロボットに動きの指示を教え込む「ティーチング」が必要となります。
具体的には、工場ラインに合わせて「どういう条件のときに、どういう順番で、どういう姿勢で動かす」かをロボットに指示する作業がティーチングです。
ロボットのティーチングの種類は、大きくわけると下記の2つがあります。
- オフラインティーチング・・・ロボットがいない場所でロボットの動作をとなるプログラミングを組み込むことで、ロボットを作動させること
- オンラインティーチング・・・実際にロボットの前でティーチングペンダントと呼ばれる道具を使用してプログラムを組み込み、ロボットを作動させること
今回はオンラインティーチングで使用するティーチングペンダントを取り上げて解説します。
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ティーチングペンダントとは
オンラインティーチングとは、実際にロボットの前で、ティーチングペンダント(リモコンのような機材。「ティーチングペンダント」とも呼ばれる)を使用してロボットに動きを組み込んでいくことをいいます。
ティーチングペンダントを使ったティーチング作業は、実際にロボットを動かして、各ジョイントを何度動かせばいいかなどのロボットの姿勢を記録・再生します。
具体的には、角度などの数値を入力して目標の位置まで動かしたうえでプレイバックで再生、更に微調整を加えます。一連の動きが固まったら、ティーチングペンダントでその座標と各関節の状態を記憶させます。
ティーチングペンダントを使用するメリットとデメリット
メリット
ティーチングペンダントの操作はそれほど難しくありません。そのためロボットのティーチングの経験が浅い方であってもティーチングを習得できます。
ロボットティーチングの教育の場として利用できるため、ロボットの扱いに慣れていない工場現場ではおすすめの手法です。
デメリット
ティーチングペンダントの操作は簡易であっても、実際のティーチングにはそれなりの時間を要することになります。すぐにロボットを稼働させたい現場では、不向きな手段といえます。
また、ティーチング時には生産ラインを停止させる必要があるため、一時的な生産ロスも生じます。
ティーチングペンダントの機能
ティーチングペンダントでロボットを動かすための基本機能を紹介します。
非常停止
ティーチング中にロボットが想定外の動作を起こし、アクシデントに発展しそうな場合に押す非常停止ボタンです。
事故を防ぐための大事な機能なので、どの種類のティーチングペンダントにも必ず赤色で大きく目立つように配置されています。
表示盤
入力情報メニューやロボットのティーチングの記録、異常時のエラーメッセージなど、ロボットのコンディションを表示するディスプレイです。
表示盤を見ながらロボットの各種設定、速度や加速度、位置データや作業データを入力したり調整したりします。
イネーブルスイッチ
本体機器の裏側にある安全装置にあたるスイッチです。
スイッチを押してイネーブル(enable=操作可能)状態にしてから、ロボットの軸操作を行います。強く押すか完全に離すことで電源が遮断され、ロボットが停止する仕組みです。
動作軸キー
ロボットの細かい動きを指示するキーです。
左右・前後・上下の基本3軸に加え、曲げ・ひねり・回転の手首3軸、さらには動きの方向を制御する「+」と「-」にそれぞれ対応するボタンキーです。イネーブルスイッチを押しながら、この動作軸キーを押してロボットを操作します。
軸の種類や動きの量を少しでも誤るとミスや事故のもとになるため、必ずボタンを目視で確認しながら押す意識が大切です。
ティーチングペンダントの提供メーカー
ティーチングペンダントの代表的な販売メーカーを紹介します。
ダイヘン
アーク溶接ロボットを1979年に開発した産業用ロボットの老舗メーカーで、ティーチングペンダントは2種類販売しています。
比較的小型で軽量なのが「FDTP」です。従来比40%のサイズ減で狭い場所でも取り回しが楽なのが特徴です。またタッチパネル操作やジョグダイヤルなどで、ティーチングに不慣れな人でも操作や微調整がやりやすいメリットがあります。
もう一つが「WiTP」というワイヤレス(無線)で操作可能なティーチングペンダントです。ケーブルが気にならないため、移動しながらスムーズにティーチングができます。
また一台のペンダントでロボット番号を切り替えることで、複数のロボットを操作することもできます。ワイヤレスで初めて認証取得(業界初)をとった注目の製品です。
デンソーウェーブ
1960年代初頭に最初の「デンソーロボット」の開発をはじめた大手メーカーです。自動車部品開発で培われた高度な技術力と、自社内で導入してきた18,000台以上のロボット使用経験を集結し、高性能・高機能な様々な製品を開発しているメーカーです。
注目は「多機能ティーチペンダント」です。外部自動運転以外のすべての操作を、ティーチングペンダントで行なえます。7.5型のTFT液晶を搭載し、カラー表示・タッチパネルで、作業効率を高めます。
平田機工株式会社(Hirata)
1951年にHirataのコアテクノロジーであるロボット技術を活かし、多くの産業に向けた各種ロボット・制御装置を製造・販売していている企業です。
Hirataからは3種類のティーチングペンダントが販売されています。
標準ティーチングペンダントである「H-3826」、多機能ティーチングペンダント 「H-3835、H-3836」、そして多言語に対応している「 H-3798」です。
多言語対応は日本語、英語、中国(簡体繁体)、韓国語に対応しているため、外国人労働者が多い現場でも使用可能です。
まとめ
産業用ロボットを実際に現場で動かすにはティーチングと呼ばれる人間による操作が必要です。現在はティーチングペンダントを用いたオンラインティーチングが主流の方法です。
ティーチングペンダントも様々な種類があるため、自社の工場が求める作業や動作に合わせて選定することが必要となります。
また昨今のティーチマン不足などの課題がある場合は、オフラインティーチングと使い分けるなどの対応も必要です。自社の工場現場に合わせたティーチング手法を選ぶようにしてください。