産業用ロボットSIer 300社掲載

2021.05.31

ロボットビジョンとは?仕組みや導入メリットを解説

近年、技術革新が進む産業ロボットですが、とりわけIoT化に欠かせない技術がロボットビジョンです。ロボットビジョンとは、産業用のロボットに取り付ける位置検出や画層測定システム・カメラのことをいいます。

今回はロボットビジョンの仕組みや技術、ロボットビジョン搭載の産業用ロボットの導入のメリットをご紹介します。

この記事の結論

・ロボットビジョンは視覚機能を持ちティーチングが不要
・ロボットビジョンの機能は「認識」「記憶」「処理」
・ロボットビジョンのメリットは「整理不要」「多品種対応」「同時複数作業」
・ロボットビジョンはピッキングやラインの最終チェックで活用できる

ロボットビジョンとは?

産業用ロボットに搭載される視覚機能をロボットビジョン(またはマシンビジョン)といいます。
カメラに映した画像を処理する工程で、パターン認識によって対象物を識別したり、周囲の環境を把握したりする技術です。

カメラシステムをつけることでロボットに視覚機能を持たせ、物の形や特徴をロボットに伝達する役割があります。状況を捉える「センサー(カメラ)」、撮像した対象物を認識して判断する「画像処理システム」などで構成され、画像処理の結果に合わせてロボットに指示を出す役割も果たします。

空間認識や製品認識を画像で判断させ、アルゴリズム化して識別できるため、生産現場やピッキングの現場では人の代わりとなる活躍が期待されています。

ロボットビジョンが注目される背景

ロボットビジョンが注目されている背景には、工場現場の人不足にあります。

一般的に産業用ロボットは、「ティーチング」と呼ばれる正常に作動させるためのプログラムやカスタマイズを行わなければなりません。生産ラインを立ち上げる時はもちろんのこと、扱うワークを取り替える時などもティーチングは必要になります。

ティーチングの方法はいくつかありますが、ティーチングペンダントと呼ばれるリモコンでロボットを動かして動作を記憶・再生しながら確認する方式が一般的です。この方式は、ティーチングをする度に作業を中断するため、時間的なロスが生じてしまいます。

また、ティーチングは産業用ロボットに近づいて行うケースが多く、接触事故の危険性があります。そのため、ティーチングを行う作業員には、資格の取得が義務付けられています。ティーチングには知識や経験も必要になるため、作業員に一連の業務を習得させるためには、教育コストもかかってしまうのです。

ロボットビジョンを活用すれば、画像処理によってワークの位置・角度を認識しながら調整ができるため、ティーチングにかかる工数の削減が可能です。また、ティーチング技術者の育成コストもかかりません。

ただでさえ作業者不足の工場現場において、さらなるロボットが代替できる可能性としてロボットビジョンは注目されているのです。

【関連記事】ロボットの制御方法は?一歩先の自動化のために知っておくこと|ティーチング

ロボットビジョンの機能とその仕組み

ロボットビジョンの仕組みとともに、可能となる基本機能を紹介します。

認識する

カメラのセンサー部分は、対象物を確認する目の役割を持ちます。
カメラで対象製品の位置座標と、対象物や特徴の向き、形状、位置を認識します。

対象物がバラバラであっても認識可能で、アセンブリのエラー、表面の欠陥、部品の損傷、特徴の欠落を検査することができます。

記憶する

画像処理システムを用いて、対象物を認識・判断する脳の役割を持ちます。
対象となる製品の形状、大きさ、つかむ部位を事前にカメラで把握し、記憶させます。

記憶する基本機能としては重さや色・サイズなどが一般的ですが、最新技術では「AI認識」や「QRコード」での記憶機能を持つロボットビジョンもあります。

処理する

記憶させた作業プロセスをアームの動きを通じて動かす体の役割を持ちます。

事前に登録しておいた情報と、カメラからの情報をもとに対象製品の場所とつかむ位置を特定します。アームを指示された位置に移動させ、対象製品をつかみ、所定の場所にピッキングや搬送を行うことができます。

ロボットビジョンの導入メリット

実際の作業工程に沿ってロボットビジョンを導入するメリットを具体的に紹介していきます。

製品を整理する必要がない

ロボットビジョンは不規則に製品が並ぶ現場でも作動ができます。

通常、ピッキングや搬送などの作業を産業用ロボットが行う場合、プログラムで決められた動作を実行します。
そのため、流れてくる製品を配置する向きや製品と製品の間隔を一定にしなければなりません。製品の流れに少しでもプログラムと異なる挙動があると、ロボットは対応不可能になり生産ラインが停止してしまいます。

ロボットビジョンが搭載されている場合、製品の位置や角度など細かなプログラムを設定せずに、アームの制御を柔軟に行えます。製品の形状や大きさを一度記憶すれば、製品の向きや位置が不規則であってもアームの作動が可能になるのです。

その結果、エンジニアが様々なパターンに合わせてプログラミングしたり、定期的なメンテナンスを行う必要がなくなり、省人化や作業時間の短縮につながります。

多種類の製品に対応できる

多くの種類の製品を扱えるのがロボットビジョンのメリットです。

従来の産業用ロボットでは、扱う製品が変わるたびにティーチングを行わなければなりませんでした。製品の形状や大きさが違うと、ロボットに組み込まれているプログラムの定義も変更する必要があるからです。

ロボットビジョンでは、画像認識で対象を識別するため、一度に複数の製品情報を記憶できます。
ひとつのコンベアに複数の製品が入っていたとしても、製品別にピッキングを行ったうえで別々のパレットに並べられます。

商品ごとにロボットやセンサー、カメラなどの機材を設置する必要がなくなるため、スペースの有効活用にもつながります。

複数作業が同時にできる

従来はロボットを導入しても、一台につき一つの作業しか行えないため、工程が変わるとまた別の設備を用意する必要がありました。

ロボットビジョンを搭載することによって、複数の作業工程を同時に行えるようになります。たとえば、製品の検査とピックの位置決めにはロボットを個別に設置しなければなりませんでしたが、ロボットビジョンでは1台のカメラでピックする位置を確認でき、寸法などの検査も同時に行えるのです。

これまで複数作業を行う際に準備が必要だったロボット本体や以辺設備にかかる費用を抑えられます。

ロボットビジョンが活躍する場面

期待が高まるロボットビジョンですが、まだまだ導入事例は少ないのが実態です。ロボットビジョンのメリットを感じてもらうため、いくつか先行的な導入事例を紹介します。

工場のピッキング

多くの工場では伝票や指示書に基づいて、商品を取り出すピッキングする作業工程が存在します。

生産ラインにおいて位置や形状がバラバラなものを、ロボットビジョンの画像処理によって適切に認識したうえで、ロボットアームで正確に掴むことが可能です。

例えばお菓子工場で箱詰めをする際には、正確に掴んで適切に箱詰めをする必要がありますが、毎回人が流す位置や向きを設定していてはロボットを導入する意味がありません。画像処理ロボットの活用によって、効率が大きく変わり、生産性の向上やコスト削減に繋がります。

高度なロボットビジョンの場合、認識情報を元に制御アプリケーションが 「どのように取るか」や「取れなかった場合どうするか」などの指示まで行えます。より実践的な「取る作業」が実現できます。

【関連記事】ピッキングができるロボットとは?導入メリットを解説

最終ラインのチェック

製造業の現場でも最近になってロボットビジョンが導入されているのは、特に少量多品種生産を行う工場の最終ラインでの導入例です。

最終ラインでの検品やピッキング作業は製品の品質を左右します。ロボットビジョンの導入で、複数に混在する製品を正確に箱詰めしたり、不具合品を選別することもできます。

アイテム形状を画像で読み込ませるだけでなく、不具合品の選別にも使える点はロボットビジョン導入の利点ともいえます。

【関連記事】ライン作業とは?作業内容や産業用ロボット導入の利点・注意点を解説

まとめ

省人化や、コスト削減のために産業用ロボットを導入しても、ロボットを制御するために人員やコストが発生してしまっては、作業の効率化をはかれず本末転倒にもなりかねません。

ロボットビジョンを導入し活用することで、ティーチングが必要ない自動化された製造工場の実現が可能になります。

これから産業用ロボットを導入しようと考えていたり、すでに導入している産業用ロボットをより一層効果的に活用したい場合は、ロボットビジョンの搭載を検討してみてはいかがでしょうか。

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