産業用ロボットSIer 300社掲載

2021.04.30

スマートファクトリーの定義|実現までのロードマップも紹介

スマートファクトリーという言葉を聞く機会が増えましたが、どのように定義されているのか解説します。また、スマートファクトリー化を実現するためには、工場や物流に対する考え方から設備、システム全体を変えなくてはなりません。実際にどのようにスマートファクトリー化できるのか、具体的なロードマップも紹介します。

この記事の結論

・スマートファクトリーとは製造現場のFA機器がつながった工場のこと
・経済産業省ではデータを高度活用し、システムの面的拡張と応用ができている工場をスマートファクトリーと呼んでいる
・スマートファクトリーでは何を目的とするかによってロードマップが異なる

スマートファクトリーの定義

生産工程の自動化を図るシステムをファクトリー・オートメーション(Factory Automation:FA)と総称します。スマートファクトリーとは、製造現場のFA機器がつながった工場を意味する和製英語です。スマート工場とも呼ぶことがあります。

スマートファクトリーでは、あらゆるFA機器の稼働状況をネットワークを介して把握・蓄積します。つまり、各FA機器を効率的に稼働させることで最大の利益を産み出す工場がスマートファクトリーといえるでしょう。

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経済産業省におけるスマートファクトリーの定義

経済産業省では、スマートファクトリーの定義を公開していません。しかし、スマートファクトリーを実現する流れとして以下の3つを紹介しているので、これらの流れに沿い、新たなシステムを実現した工場はスマートファクトリーだと考えられます。

  • データの高度活用
  • システムの面的拡張
  • システムの応用

データの高度活用

データの高度活用とは、データを活用することにより導入効果の向上を追求することを指しています。データの収集・蓄積から、分析・予測、制御・最適化へと進めることで、よりスマートな(賢い)工場を目指します。

システムの面的拡張

システムの面的拡張とは、導入したシステムを縦横に広げることを指しています。製造ラインだけへの導入から工場全体のスマート化、多拠点も含めたスマート化へと進化させることでスマートファクトリーは完成します。

システムの応用

スマートファクトリーでは、導入したシステムを応用し、メインとなる目的以外の目的も実現します。例えば生産性の向上を目的にスマートファクトリー化を計画した場合でも、生産性の向上をある程度達成したら、次はリスク管理の強化や、製品性能の向上などの別の目的達成を目指すなど、新たな目的設定と目標達成を目指します。

【スマートファクトリーロードマップ1】品質向上

経済産業省では、特定の目標を達成するためのスマートファクトリーロードマップを公開しています。まずは品質向上を目的とするスマートファクトリー化のロードマップを紹介します。

  • 1.目的を明らかにする
  • 2.データの収集・蓄積
  • 3.データの分析・予測
  • 4.データによる制御・最適化

1.目的を明らかにする

品質向上をどの方面からアプローチするのか、目的を明らかにします。例えば不良率の低減や品質の安定化、設計品質の向上などを目的とすることができます。

2.データの収集・蓄積

人の作業内容と設備、製品をセンシングすることでデータを収集します。製品の使用状況もセンサや通信機能で調べます。

3.データの分析・予測

データを分析し、不良品の出現や品質のばらつきと設計データの因果関係を探ります。問題点を明らかにし、改善することでどの程度の品質向上が実現できるか予測します。

4.データによる制御・最適化

分析したデータから、作業改善モデルを構築します。例えばロボットの設計仕様の改善、その他の設備の改善などを実施し、最初に立てた目的を実現します。

【スマートファクトリーロードマップ2】コスト削減

コスト削減を目的とするスマートファクトリー化のロードマップを紹介します。手順は品質向上のためのロードマップと同じですが、収集するデータや分析手順が異なります。

  • 1.目的を明らかにする
  • 2.データの収集・蓄積
  • 3.データの分析・予測
  • 4.データによる制御・最適化

1.目的を明らかにする

製造や物流、仕入れなど、どの部分にかかるコストの削減を目指すのかを明らかにします。例えば、材料の使用量の削減、生産にかかるリソースの削減、在庫の削減、設備管理の省力化などを目的と定めることができます。

2.データの収集・蓄積

設計事例や生産管理システムからデータを収集します。設備管理に関しては、設備にセンサをつけてモニタリングすることでデータ収集します。

3.データの分析・予測

過去の設計事例の分析を行います。また、蓄積したデータから、作業プロセスやエネルギー投入予定量、受注・生産・出荷の変動要因の分析を行います。

4.データによる制御・最適化

設計改善モデルを用いて材料の最少化、人の作業計画の修正、調達資材と生産した製品の最適化を図ります。目的以外の場面でもコスト削減につながるヒントが見つかったときは、実践し、全体的なコスト減を目指します。

【スマートファクトリーロードマップ3】生産性向上

生産性向上を目的とするスマートファクトリー化のロードマップを紹介します。こちらも目的設定からデータ活用までの手順はコスト削減等と同じですが、分析する内容や改善内容が異なります。

  • 1.目的を明らかにする
  • 2.データの収集・蓄積
  • 3.データの分析・予測
  • 4.データによる制御・最適化

1.目的を明らかにする

生産性向上は、生産量を増やすことで目指せます。また、廃棄処分となる製品や原材料を削減することや、稼働率を高めることでも実現できます。具体的には、設備や人の稼働率の向上、人の作業軽減・負担軽減、設備故障による稼働停止の削減などを目的とすることができるでしょう。

2.データの収集・蓄積

製造実行システムのデータを収集します。製品にセンサを取り付けて、モニタリングすることでもデータを収集できます。

3.データの分析・予測

設備と人の稼働状況と収集したデータを併せて分析します。モバイル端末等に分析した結果から導かれる作業指示を表示し、製造に携わる作業員がチェックできるようにします。

4.データによる制御・最適化

生産ライン全体の生産完了予定時間や人の稼働時間、設備の稼働停止時間が最短化されるよう、設備の稼動計画を立てます。また、一定期間経過後、必要に応じて計画の見直しも実施します。

【スマートファクトリーロードマップ4】リスク管理強化

リスク管理強化を目的とするスマートファクトリー化のロードマップを紹介します。リスク管理の分野は、業種に関わらず強化が必要です。

  • 1.目的を明らかにする
  • 2.データの収集・蓄積
  • 3.データの分析・予測
  • 4.データによる制御・最適化

1.目的を明らかにする

例えば製造業の場合は、素材の加工や組立、サービスなどの分野でリスク管理を強化することを目的とします。その他の業種も、幅広いリスク管理を目指します。

2.データの収集・蓄積

製品に通信機能を搭載して、加工・組立・検査・出荷のデータを収集・蓄積します。製品に搭載できない場合は、ロット管理等を通してデータ収集を行います。

3.データの分析・予測

製品に不具合が発生したときには、製品や資材に蓄積されたデータを分析することで、不具合の原因の特定を行います。原因を早期に特定することで、不具合のある製品が市場に出回るリスクを最小限に抑えることができます。

4.データによる制御・最適化

製品に不具合が発生したときに、通信機能を通じて、製品を使用しているユーザを把握します。ユーザ特定後は、対策を講ずることで影響範囲を最小化します。

まとめ

スマートファクトリーとは、ファクトリーオートメーションが実現した上で、各ファクトリーオートメーション機器がつながった工場を意味します。経済産業省では具体的な定義をしていませんが、特定の目的に向かってデータを活用している工場を指す言葉として用いています。スマートファクトリー化を実現することで、生産性の向上やコスト削減を目指し、競争力のある工場の実現を目指しましょう。

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