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数ある業界の中でも、細かい作業が多い食品向上では人間に作業が偏る傾向が多く、産業用ロボットの導入はあまり進んでいません。今回は食品を扱う工場現場に注目し、産業用ロボットの導入に関する課題や導入のメリット、活用が期待される作業をご紹介します。
・食品工場では「衛生管理」「多くの品目数の管理」などが課題で、ロボットのニーズが高まっている
・ロボットに期待される作業は「ピッキング・パッキング」「パレタイジング」「人との協働」
・ロボット導入が進めば、食品工場では「人手不足の解消」「品質の安定化」が期待できる
食品工場で産業用ロボットが求められる理由
食品製造業は製造や点検、包装などの細かい作業工程が多いのが特徴です。人の目や手作業に頼らざるを得ないケースも多く、食品工場では人の作業に頼る傾向があります。
さらに労働時間の超過問題や労働災害の発生などのネガティブな印象から人が集まらず、食工場での欠員率は高くなってしまうという課題が生じているのです。
2020年6月には改正食品衛生法が改正され、国際的な衛生管理基準HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point、ハサップ)が食品を取り扱う事業者に義務化されました。
食品工場では、原材料から出荷に至るまでの全工程における衛生管理・データ管理への対応が必須となりました。この法改正を背景として、食品工場の現場ではロボットによる自動化ニーズが一気に高まったのです。
ロボットでの解決が見込まれる食品工場の課題
食品工場でのロボット活用は注目を集める背景として、食品業界が抱える独自の課題があります。
衛生管理が難しい
食品工場では、徹底した衛生管理による食の安心・安全の確保が求められています。
食品工場で働く作業者には、決められたルールに基づいた手洗いや殺菌消毒により衛生状態が求められますが、どうしても人が行うことには限界があります。
ロボットであれば、自動で飛び散った食品の破片などを感知するなど、科学的に衛生管理をすることができます。ロボットは人的ミスのリスクがなく、また万が一問題が起きても原因究明がしやすい利点もあります。
食品工場ならではの徹底した衛生管理を行うために、産業用ロボットの活用が期待されています。
扱う品目が多い
季節の商品や人気商品など、コンビニやスーパーマーケットでは取り扱う商品が日によって異なることも珍しくありません。
昨日まで生産していた商品は取り扱いが終了し、今日からは全く異なる商品を生産するといったように、生産現場は臨機応変さが求められます。
産業用ロボットであれば、たとえこれまでの工程と異なる作業を担わせたとしても、正確に遂行が可能になります。日々複雑化する食品工場の生産ラインの課題解決のために、産業用ロボットによる作業の自動化や安定化が求められています。
食品工場での産業用ロボットの活用場面
食品工場では、ひとつの製品が完成するために複数の工程が存在します。実際の作業工程にならってロボットが活用できる場面を具体的に紹介していきます。
ピッキング・パッキング
ピッキングやパッキングは、箱詰め機械や包装機械に食品をセットする前段階の下準備をするための仕分け作業全般を指します。
ベルトコンベアーでランダムに流れてくる製品を、ロボットが腕(アーム)の先端で吸着し、整列していくことができます。最近では、製品を整列するだけでなく、トレーや箱へのセットなど次工程の一部まで担うロボットシステムも実用化されてきました。
これまではアルバイト・パート社員で担っていた食品工場の代表的な作業ですが、作業工程の生産性をあげるためにロボットの活用が期待されている工程です。
パレタイジング
食品工場において、仕分けと並び多く使われる用途が、製品出荷前の荷積み作業であるパレタイジングです。
パレタイジングは、キログラム単位の段ボール箱や袋などを動かす作業が一般的です。現場作業者への身体的負担が重いのが課題だったため、重量を問わないロボットの活躍が期待されています。
人との協働
食品工場では、昨今ロボットの新しい型である「人と協働できるロボット」も注目されています。
従来型のロボットはいずれも、安全確保のため作業者と隔離された空間で動作することを前提としており、人と協働する作業は想定していませんでした。しかし人と協働できるロボット、いわゆる「協働ロボット」は、作業者の隣でも稼働できるよう安全面の配慮がなされています。
食品工場では納品計画はタイトに設定されている一方、生産を支える従業員は生身の人間であるがゆえ、欠勤リスクもゼロではないためです。このようなニーズに対し、協働ロボットは人の代替としてフィットする存在といえます。
食品工場での産業用ロボットの活用メリット
食品工場で産業用ロボットを活用することで、期待できるメリットを紹介します。
人手不足の解消
食品工場は決して人気の高い職場ではありません。売り手市場が続く昨今は、各工場で人手不足の悩みを抱えている状況で、産業用ロボットを活用することで人手の代替が期待されています。
今後さらにロボットの技術革新が進めば、食材を自動で認識し、人と同じような力加減で盛り付けるなどの人ならではの作業の再現も可能になるでしょう。新人作業員を雇用し、育成コストや退職リスクを抱えるよりも、産業ロボット導入のほうがコストパフォーマンスが高くなることもあります。
品質の安定化
産業用ロボットが人手よりも秀でているポイントは、正確な作業をすばやく反復できる点にあります。
この強みが活かせる作業のひとつは、食品工場には複数存在します。たとえば、同一の数の食品製品を指定の箱に詰める際、人のライン作業では高い集中力が長時間必要になるため、ミスが生じる可能性も高くなります。しかしロボットであれば、作業時間に関係なく正確な箱詰め作業を高速で行えます。
食文化が細部化される日本を支える食品工場において、産業用ロボットを導入し品質を安定させることは、今後ますますニーズが高まると思われます。
まとめ
食品工場の自動化・ロボット化は、最近注目されている潮流であり、これから徐々に本格化することが予想されています。
食品工場の複雑かつ品質管理が求められる工程を、いますぐ産業用ロボットに置き換えられるわけではありません。だからこそロボットの技術革新によって、作業フローの改変の波が今まさに起こっている業界といえます。今後は食品工場のメーカー側の協力なども得ながら、徐々にロボットの作業可能性が高まっていく分野です。