産業用ロボットSIer 300社掲載

2021.04.30

中小企業でも産業用ロボットは導入できる!理由や注意点、事例を紹介!

産業用ロボットは現在価格の低下や国・自治体の導入促進により、中小企業でも導入しやすくなりました。事前に導入の準備を行うことで低コストでの導入が可能になります。今回は、導入前に気を付けることや事例を詳しく紹介します。

この記事の結論

・ロボットの価格低下や政府からの支援制度により中小企業でも導入しやすくなっている
・ロボットの導入のためには目的を明確にすることが大切
・要望に沿ったロボットシステムを構築するためにも提案依頼書の作成は必要

中小企業でも産業用ロボットを導入できるようになった理由

中小企業でも産業用ロボットを導入できるようになった理由を紹介します。主な要因として以下のようなものがあります。

  • ロボットの価格が低下したため
  • 政府や自治体のさまざま支援制度が充実しているため

それぞれ詳しく見ていきましょう。

ロボットの価格の低下

ロボットの価格が低下したことが理由で中小企業でも購入できるようになっています。

産業用ロボットは1970年代には日本中で注目されていましたが、当時は膨大な費用がかかってしまうため、大規模な投資ができる大企業にしか導入できませんでした。

しかしながら、産業用ロボットメーカーによる製造コストの削減やロボット産業の競争が行われていることで価格が低下していき中小企業でも導入可能になりました

特に近年では比較的低価格な協働ロボットや小型ロボットが開発されており、より導入しやすくなっています。

政府や自治体のさまざま支援制度が充実

政府や自治体が中小企業の発展のために、さまざまな支援を行っているため導入しやすくなっています。

主な取り組みとして以下のようなものがあります。

  • 補助金制度
  • 研修会や講習会の実施
  • 国や自治体による促進プロジェクトの立ち上げ

補助金制度

国や自治体、その他団体で産業用ロボットを導入する中小企業に向けた補助金制度が設立しています。

例えば、

  • ものづくり補助金…ものづくりに関わる企業に対する補助金制度
  • IT導入補助金…ITを導入することで生産性の向上を目指すときに申請できる補助金制度
  • ロボット導入実証事業…ものづくり・サービス分野におけるロボット未活用領域へのロボット導入の実証事業に要する費用に対する補助金制度

など、さまざまな支援制度が実施されています。

補助金制度の中には、助成率が半分以上のものもあり、大幅なコスト削減が可能です。

研修会や講習会の実施

中小企業では、初めて産業用ロボットを導入するところが多いと思います。

しかしながら、「導入の仕方がわからなくて失敗しそう」「本当に効果が得られるか心配」と懸念してしまうこともあるのではないでしょうか?

そこで、自治体によっては産業用ロボットの導入を検討している企業のために、研修会や講習会を実施しています。

活用方法の説明や導入効果の見積もりだけでなく、システムインテグレータに要望通りのシステムを構築してもらうための提案依頼書の作成方法を教えてくれます。

自治体による促進のための組織立ち上げ

自治体によりますが、中小企業の技術力底上げのため、ロボットの導入を促進するための組織を立ち上げています。

関西では経済産業省の近畿経済産業局が「中小企業におけるロボット導入促進プロジェクト」を実施。ロボット関連企業や大学と手を組んでロボット導入促進研究会を設立しました。

ロボット工業会やSIer協会と連携し、中小企業に人材不足の対応やロボットに関する情報提供などのサポートを行っています。

中小企業が産業用ロボットを導入する際の注意点とは

中小企業がロボットを導入するために注意しなければならないことがあるので、必ず最後まで読んでください。

導入する目的を明確にする

必ずどうしてロボットを導入するのかを把握しておきましょう。目的を明確にしておかないと本来必要のないロボットや装置を導入してしまう場合があり、コストがかさむ場合があります。また、目的がころころと変わってしまって自社に最適な産業用ロボットの導入ができず、導入後に期待した成果が出なくなってしまう場合もあるので気を付けてください。

導入費用と効果が見合うか確認

せっかく投資をして産業用ロボットを導入したのにあまり効果がなかったのであれば、会社の損失に大きく関わるかもしれません。

そのため、投資額に見合った効果が得られるのか検討しましょう。最低限いつまでに投資額を回収できるか算出することをおすすめします。

「提案依頼書(RFP)」の原案を作成しておく

SIerに依頼する前に提案依頼書(RFP)を作成しておきましょう。SIerなどからの提案がより具体的になり、見積もりも正確になります。

情報収集によって知識もつき、話をスムーズに行えますし、SIerからの提案を判断できるようになるためおすすめです。

補助金を申請するのであれば事前準備が大切

補助金を申請し、認可されるためには、事前準備が必要です。スケジュールの把握はもちろんのこと、必要書類の準備は徹底的にしてください。

事業計画書を提出する場合は、審査する人がわかりやすいように作成してください。審査をする人は、審査対象事業に精通しているわけではありません。導入理由や背景、効果について誰でもわかるように書きましょう。

中小企業で産業用ロボットを導入した事例を紹介

実際に中小企業で導入した事例について見ていきましょう。経済産業省と一般社団法人日本ロボット工業会が発行した「ロボット導入実証事業事例紹介ハンドブック2018」から導入事例と実際のコストを紹介します。

なお、中小企業の定義は中小企業基本法の定義より、「資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人」としています。

少量多品種生産に対応したレトルト製品パレット積み工程のロボット化|株式会社釜屋

株式会社釜屋ではレトルト製品等の受託生産をしていましたが、近年受注の増加により作業量が膨大になりました。

しかしながら、肉体的負荷のかかる出荷工程が人の手で行われており、特に6~12kgの箱を積み上げるパレット作業が問題となり、自動化が求められていました。

そこで、垂直多関節ロボットを用いたパレタイズシステムを構築し稼働します。結果、少量多品種の生産でも対処でき、作業者の負担を減らすことができました。

労働生産性1.25倍
人数10人→8人
労働時間8時間→8時間
生産量266個→266個
その他の効果過酷作業の代替と支援
導入したロボット垂直多関節ロボット 川崎重工業 CP180L
導入コスト25百万円
1年あたりの効果利益増:480万円/年(2名分の人件費)
回収期間5.2年

不規則に配置されたレトルトパウチ製品の整列作業の高速ロボット化|セントラルパック株式会社

セントラルパック株式会社では、カレーや釜めしなどのレトルトパウチ製品を包装工程に向けて配列を手作業で行っていましたが、パウチの配列が不規則のため包装機への供給作業が自動化できませんでした。

そこで今回、パラレルリンクロボットと高性能カメラ導入を行い、画像認識技術による配列の自動化が実現しました。現在は、作業人数を3分の1に減らすことができ、熟練者がいなくても安定供給できるようになっています。

労働生産性3.0倍
人数6人→2人
労働時間8時間→8時間
生産量62400個→62400個
その他の効果過酷作業の軽減
導入したロボットパラレルリンクロボットファナックM-2iA/3SL
導入コスト45.5百万円
1年あたりの効果1280万円(4人分の人件費に相当)
回収期間3.6年

可搬ロボットを用いた鉄道車両用床板のワンサイドスポット溶接システムの効率化|株式会社アコオ機工


株式会社アコオ機工では、鉄道車両の床板をスポット溶接システムを導入しました。

従来、溶接時に加わる1t以上の圧力耐えられるロボットが見つからなかったためできませんでしたが、210kg可搬ロボットでも1tの加圧力に対応できるシステムを開発。

大型の専用装置が必要だった従来のシステムに対し、低コスト・省スペースでの導入が可能になり、費用対効果の向上が実現できました。

労働生産性8.0倍
人数2人→1人
労働時間4時間→0.5時間
生産量1個→1個
その他の効果過酷作業の代替・支援
導入したロボット垂直多関節ロボット 不二越 SRA210T-01
導入コスト40.0百万円
1年あたりの効果生産数の増加及び不良率低下を加味した結果、840万円の効果(2.8名分の人件費に相当)
回収期間5年

自動車用ボディフレーム試作工程のロボットによる省コスト化自動溶接の実現|株式会社フジ技研

株式会社フジ技研では、自動車のボディフレームの溶接工程が手動で行われていました。

しかしながら、熟練者でないとできない作業であり、工数のかかる作業のため1日1台が限度でした。また、2人で1基の溶接を行っているため、品質も安定しませんでした。

これらの問題を解決するためにスライド機能付きの溶接ロボットシステムを導入。導入により従来の3倍の生産数で行うことができ、品質も安定しました。

労働生産性3.0倍
人数2人→2人
労働時間10時間→10時間
生産量2個→6個
その他の効果品質の安定化
導入したロボット垂直多関節ロボット 安川電機 MOTOMAN MS210
導入コスト51.8百万円
1年あたりの効果不良率低下、生産数増加により利益が増加した結果
年間1902万円の効果(4人分の人件費に相当)
回収期間2.7年

まとめ

中小企業でも産業用ロボットを導入できる理由や事例について詳しく紹介しました。価格低下や補助金によって現在産業用ロボットは比較的安く購入できます。

もし導入を検討しているのであれば、政府や自治体でさまざまな取り組みが行われているので、講習会や研修に参加してみましょう。

また、目的に沿ったシステム導入のためにもシステムインテグレータ(SIer)に依頼することが大切です。提案依頼書を作成したら、一度SIer企業に相談してみましょう。

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