目次
「産業用ロボットを導入したいけど、場所が足らない」「人の動きを真似られるロボットを導入したい」と考えている方は双腕ロボットがおすすめです。
今回は、双腕ロボットについて詳しく紹介していきますので最後までお読みください。
・2本のアームで構成されて複雑な作業が可能
・省スペースで設置できて低コスト
・重量物がもてないなどのデメリットもある
双腕ロボットとは
双腕ロボットとは、2本のアームがついている産業ロボットのことをいいます。1つのアームで構成されている単腕ロボットと違い、両腕を上手く利用することで複雑な作業が可能になります。
構造自体は単腕ロボットとほとんど変わりません。人の関節にあたるジョイント部位と骨にあたるリンク部位で構成されています。
先端のハンド(エンドエフェクタ)を3次元方向に動かすことができ、旋回、前後、上下、回転の4つの動作が可能になっています。
最近では人間の目に値する画像認識センサーや力を制御する力覚センサーなども備えられており、より人間に近い作業が可能です。
また、人と同じ環境で働くことができる協働ロボットのものが多く、危害を加えることがないため安全です。万が一ロボットと衝突した場合でも怪我しないような設計になっています。
実際にどのようなロボットか動画で見てみましょう。
双腕ロボットには2種類ある
双腕ロボットには主に2種類あり、垂直多関節型ロボットと水平多関節型(スカラ型)ロボットがあります。
垂直多関節型ロボット
垂直多関節型ロボットは、多軸で立体的に可動でき、人間の腕に近い動作が実現されています。そのため、幅広い分野で使用でき、加工や検査、組立などに使用することができます。
水平多関節型ロボット
水平多関節型ロボットは、水平方向にアームを動かすことができる多関節ロボットです。スカラロボットとも呼ばれます。平面上での作業を行うことが得意です。
垂直多関節型ロボットよりも可動範囲が小さいため制限はありますが、上下の剛性に強いため良く用いられています。用途として、組立や検査、搬送などがあります。
双腕ロボットのメリット
双腕ロボットを導入することでさまざまなメリットがあるので紹介していきます。
- 単腕ロボットではできない人に近い作業ができる
- 導入コストが低い
- 小スペースで設置できる
- 人よりも精度の高い作業ができる
- 2つの作業を同時に行える
単腕ロボットではできない人に近い作業ができる
双腕ロボットは単腕ロボットではできない人に近い作業ができます。従来単腕ロボットでは、1台につき1つの動作しかできませんでした。
加工や組立を行うときなども治具を用いて固定しなければならず、専用治具を作成するのにコストが発生していました。
しかしながら、双腕ロボットは2本のアームがあることから、片方の手で部品を固定でき、もう片方の腕で加工や組立を行えます。
そのため、治具がなくても作業が可能になり、コスト削減および製品バリエーションの増加にも対応できるようになります。
導入コストが低い
双腕ロボットは2本の腕があるため、単腕ロボットよりも導入コストが高いと思われがちですが、そのようなことはありません。
一般的な産業用ロボットの金額は300万~500万円だといわれていますが、双腕ロボットも300万円程度で購入できます。
さらに、双腕ロボットは人と同じ環境で働く協働ロボットであることが多いため、安全柵などの周辺機器が必要ありません。生産ラインの構築が必要ないため、導入に必要なコストを安く抑えることができます。
小スペースで設置できる
人と同じスペースで作業を行うことができるため、設置場所に困らないのがメリットです。
単腕ロボットであれば、ロボット架台の上に設置して固定する必要がありますが、双腕ロボットはキャスターが装着されているものもあり、簡単に移動させることができます。
そのため、汎用性が高く、さまざまな製品で作業を行うことができます。
人よりも精度の高い作業ができる
人よりも精度の高い作業ができるのもメリットです。例えば、検査工程での不良品検出で効果があります。
人が行って検査するとどんなに注意しても見逃してしまう可能性があり、不良品を流出してしまうかもしれません。
しかしながら、画像認識機能のついた双腕ロボットではミスをすることがなく、確実に不良品の流出を防ぐことができます。
また、加工工程で安定した品質を維持することも可能です。生産ラインでは初心者から熟練者までおり、人によって品質にバラつきが出てしまいます。
双腕ロボットを導入することで同じ作業を同じレベルでできるため、安定して高品質の製品を作り続けられます。
2つの作業を同時に行える
2つの作業を同時に行えることも大きなメリットです。
例えば「部品の取り外し」と「新しい部品の取り付け」を行う工程があった時、単腕ロボットでは2つの作業の間に取り外した部品を置く、新しい部品を掴むという工程が発生して時間がかかってしまいました。
双腕ロボットでは、同時に作業を行うことができるため、部品を取り外した後すぐに新しい部品の取り付けを行えます。
資格がなくてもティーチングできるロボットもある
法律上80W以上の産業用ロボットはティーチングするために「特別教育」の資格が必要ですが、双腕ロボットは80W以下のものもあり、資格がなくてもティーチングできます。
最近の双腕ロボットは簡単にプログラムを作れるようなソフトが内蔵されているため、ある程度学習すれば誰でもティーチングが可能です。
双腕ロボットのデメリット
双腕ロボットは魅力的なメリットもありますが、デメリットもあるので紹介していきます。
- ティーチングに工数がかかる
- 人の方が効率の良い場合もある
- 重量物を扱えない
ティーチングに工数がかかる
2本分のティーチングを行うため単腕ロボットよりも工数がかかります。2本のアームを同期する必要があるので、工夫してティーチングを行わなければなりません。
人の方が効率の良い場合もある
人が作業する方が効率のいいケースもあります。経済産業省が発行している産業ロボット導入ガイドラインに複雑な作業が多い場合は以下のように書かれています。
作業が複雑で品種が毎日変わるような組立工程、柔軟物を含む高度な組立工程などは、ロボット化による費用対効果が十分に得られないことが多い。
産業ロボット導入ガイドライン
そのため、ロボットを導入しても大きな効果が得られない場合もあります。
重量物を扱えない
双腕ロボットは人ができる作業の代用を目的に作られたものが多いため、人間が持つと想定されていない重量物は扱えません。
重量物を扱うのであれば、大型の単腕ロボットを導入してください。
双腕ロボットの導入事例
双腕ロボットの導入事例を紹介します。
協働ロボットと人工知能技術を組み合わせた多品種油圧機器外観検査作業の省コスト化
建機用の多品種油圧パイロット弁の外観検査を、画像認識できるAIと双腕ロボットで自動化しました。
これまで、作業者が目視で傷や刻印の検査を行っていましたが、熟練者でないと困難な作業でした。
そこで、AIと双腕ロボットを活用します。3台のカメラが搭載された画像認識機能付き双腕ロボットを導入したことにより、良品の判定が行え、生産性を向上することができました。
免疫検査抗体製造における凍結真空乾燥準備工程へのロボット導入
インフルエンザの診断に代表されるイムノクロマトという方法の製造工程で凍結真空乾燥があります。
その準備工程で多種のチューブ状容器と濾紙状シートを目視検査を行いながらトレイの上に整列させ、試薬を分注するという複雑な作業を作業者がしなければなりませんでした。
そこで、双腕ロボットと検査カメラをユニット化したシステムを構築し、多種の部材に対応できるようにします。
結果、目視検査と整列をロボットに任せることで、作業者は部材の投入と試薬塗布分注された部材の取出しを行うのみとなり、作業時間の削減と品質の安定化が実現できました。
少量多品種化粧品のパウチビニール袋詰め工程のロボット化
化粧品の受託生産では受託先の形状・規格に合せた工程が必要で人手作業が求められており、化粧品パウチビニールの袋詰めを3名で行っていました。
過去にロボットや専用機を導入したことはありましたが、少量多品種であるため、設備に合わせた商品の修正ができず、一般的な産業用ロボットでは自動化が困難でした。
そこで、双腕ロボットと周辺設備を導入し、自動化を行います。結果、双腕ロボットによる多品種変量のビニール袋詰めが実現できました。
作業者も3人から1人になり、人件費も削減可能に。数量の入れ間違いも亡くなり品質向上もできるようになりました。
まとめ
双腕ロボットについて紹介しました。双腕ロボットには単腕ロボットにはできない複雑な作業ができるため、非常に使い勝手がいいです。導入コストが低いのも魅力的です。
双腕ロボットを導入するのであればシステムインテグレータに相談することがおすすめです。是非検討してみてはいかがでしょうか?