産業用ロボットSIer 300社掲載

2021.02.28

協働ロボットとは?特徴や用途、活用事例を解説!

この記事では協働ロボットと従来の産業ロボットとの違い、メリットやデメリット、活用事例まで幅広く解説します。

この記事の結論

・協働ロボットとは生産ライン上で人間と協働して作業をするロボットのこと
・80W以上の産業用ロボットの規制緩和などにより協働ロボットの導入が加速中
・協働ロボットの導入には省人化・品質の安定・生産性の向上といったメリットが期待できる

協働ロボットとは

協働ロボットとは生産ライン上で人間と協働して作業をするロボットです。

厚生労働省の「平成25年12月24日付基発1224第2号通達」によると、全軸が80W以下のモーターで構成されているロボットと、80W以上で国際標準化機構(ISO)の産業用ロボット規格を満たしているロボットが協働ロボットに含まれます。

人と共存して作業できる協働ロボットの登場により、従来ロボットの導入が難しかった産業分野でも人とロボットが協働してさまざまな作業ができるようになりました。

また後述する規制緩和などの時代背景により、製造業を中心に協働ロボットの導入がさらに加速しています。

引用元:https://youtu.be/zktfIz20084

協働ロボットの導入が加速している背景

ここでは、協働ロボットの導入が加速している背景について2つの観点から解説します。

  • 産業用ロボットにおける規制緩和
  • ロボット技術の進化

産業用ロボットの規制緩和

協働ロボットの導入が加速している背景の一つは、2013年に施行された産業用ロボット関連法案の規制緩和です。

従来の規制においては安全上の理由から80W以上のモーターを搭載する産業用ロボットは柵で囲い人間の作業スペースから隔離しなければなりませんでしたが、2013年12月以降はISO規格などの条件を満たせば、80W以上の産業用ロボットも人間と同じ作業スペースで働くことが可能となりました。

このような規制緩和により産業用ロボット導入の障壁となっていた金銭的・時間的コストなどが大幅に軽減し、中小企業におけるロボット導入の動きが加速しています。

ロボット技術の進化

安全性技術が進化

規制緩和に加え、ロボット自体の技術が進化しつつあることも協働ロボットが注目されている背景の一つです。

たとえば80W以上のロボットに安全センサーを組み込む技術などが進化しており、機械としての安全性が大幅に改善しつつあります。

システムインテグレーションの進化

産業用ロボットを動かすためにはロボット本体だけではなく、周辺機器の設置やロボットに作業内容を教えるロボットティーチングなど、現場に合わせた環境を構築する「システムインテグレーション」のプロセスが必要不可欠です。

昨今の技術革新により、ロボットに作業内容を教えるロボットティーチングやシステムインテグレーションの手間や負担、 実装期間を最小限に抑えられる仕組みが確立されてきたことも、協働ロボット導入の追い風となっています。

コンパクト化

ロボット自体の大きさも小型化・軽量化してきたことも協働ロボットの導入を加速させる一因となっています。作業員ほどの背丈のロボットも多数登場しており、スペースが限られている製造現場でもロボットを導入しやすくなりました。

従来の産業用ロボットと協働ロボットの違い

ここで、従来の産業用ロボットと協働ロボットの違いを使用目的、形状、安全柵、対応作業の観点から比較してみましょう。

従来の産業用ロボット協働ロボット
使用目的人間の作業を代替(自動化)人間の作業を補助
形状大型で重量小型で軽量
安全柵
必要な場合が多い
不要
主な対応作業大量生産・単純作業多種変量生産・繊細作業

従来の産業用ロボットの使用目的は工場の自動化(FA化)であるのに対し、協働ロボットの目的は人間のする作業を補助することです。

そのため協働ロボットは人と一緒に働けるようなコンパクトで軽量な作りになっており、人とロボットの間に安全柵を設置する必要もありません。

また協働ロボットは動きに柔軟性が求められる多種変量の生産ラインに向いており、人間により近い繊細な作業にも対応できる点で従来の産業用ロボットと異なります。

協働ロボットを導入するメリット・デメリット

製造現場に協働ロボットを導入する場合には以下に挙げるメリットとデメリットの両方を考慮する必要があります。

メリット

  • 省人化
  • 品質の安定
  • 生産性の向上

デメリット

  • ロボットだけで作業するのは難しい
  • ロボットの専門知識が必要
  • 誤作動の可能性がある

一つずつ見ていきましょう。

メリット

省人化

協働ロボットを導入することで従来手作業で行なっていた作業の一部をロボットで代替できるため省人化を実現できます。省人化によって、人件費の削減や人手不足の解消が可能になります。

品質の安定

ロボットはプログラムに沿って一定の動きを一定時間一定品質で継続することができるため、製品の品質が安定しやすくなります。

結果的に、不良品の削減など、製品の品質管理もしやすくなるでしょう。

生産性の向上

協働ロボットに作業を教えることで、工場全体の生産性を向上させることができます。たとえば簡単な作業を協働ロボットに任せ、そこに割かれていた人員を他の作業に動員すれば、生産効率の底上げが可能になります。

デメリット

ロボットだけで作業するのは難しい

協働ロボットはあくまで人の作業をサポートするような使われ方に適しているロボットなので、作業工程を全て自動化するような用途には適していません。

無人での作業は難しいかもしれませんが、協働ロボットと人間の強みをうまく掛け合わせることによって作業を効率化することができます。

ロボットの専門知識が必要

協働ロボットを実際に導入する場合は、定期点検やメンテナンス、誤作動への対応といった専門知識を持った人材が必要になります。

またロボットの動きをプログラムする「ティーチング」と呼ばれる作業ができる人材も必要となります。そのため長期的な視点を持って協働ロボットを扱える人材の育成を進めていく必要があるでしょう。

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誤作動の可能性がある

ロボットや機械には誤操作や故障が発生するリスクが常にあります。

たとえばプログラムの設定を間違え誤作動を起こしてしまったり、災害時などに電源供給システムなどのトラブルが発生した場合の対処法を事前にシミュレーションしておく必要があります。

協働ロボットの導入事例

ここでは様々な産業分野における協働ロボットの導入事例を3つ紹介します。

包装機へのハム・ソーセージ製品投入ロボットシステム

ハム・ソーセージギフト製品の包装機への投入工程に5本指のロボットハンドを持つ協働ロボット2台を導入しました。 その結果、お中元やお歳暮の時期など需要拡大時の長時間労働が削減され、作業員の労働環境が改善しました。

事例の引用元:『ロボット導入実証事業 事例紹介ハンドブック2018』p.22

医療用分包紙検査システム

医療用分包紙製品の仕分けおよび品目別出荷における、積み込み工程に協働ロボット(垂直多関節ロボット)を導入しました。生産ラインの上流部・下流部の流れを工夫することで1台のロボットのみでシステム構築を実現。その結果、労働生産性が1.5倍に向上しました。

事例の引用元:『ロボット導入実証事業 事例紹介ハンドブック2018』p.26

建設機械用油圧機器の外観検査システム

建機用の多品種油圧パイロット弁の外観検査に協働ロボット(双腕ロボット)を導入しました。さらにAIによる画像認識技術を組み合わせることで、熟練工による外観検査技術をロボットで再現。

その結果、労働生産性は10倍に向上し、人とロボットが協働したシステム構築により、すでにあるスペースを有効活用しながら自動化を実現することができました。

事例の引用元:『ロボット導入実証事業 事例紹介ハンドブック2018』p.56

協働ロボットのメーカー一覧

協働ロボットを取り扱っている主な国内・海外メーカー(全17社;2021年現在)の一覧を表にまとめました。

協働ロボットの主要メーカー17社(五十音順)

メーカー名本社公式ウェブサイト
IDECファクトリーソリューションズ株式会社愛知県http://www.idec-fs.com/index.html
オムロン株式会社京都府https://www.omron.co.jp/
カワダロボティクス株式会社東京都https://www.kawadarobot.co.jp/nextage/
ファナック株式会社山梨県https://www.fanuc.co.jp/
三菱電機株式会社東京都https://www.mitsubishielectric.co.jp/
株式会社ダイアディックシステムズ石川県https://dyadic.co.jp/jp/
株式会社デンソーウェーブ愛知県https://www.denso-wave.com/
株式会社不二越東京都http://www.nachi-fujikoshi.co.jp/index.htm
株式会社安川電機福岡県https://www.yaskawa.co.jp/
桜田電気工業株式会社東京都https://www.sakurada-denki.co.jp/
緑屋テクノ株式会社東京都http://www.midoriya-techno.co.jp/
Asea Brown Boveri(ABB)チューリッヒ(スイス)https://new.abb.com/jp
Aubo Roboticsノックスビル(アメリカ合衆国)https://aubo-robotics.com/
KUKA(クーカ)アウクスブルク(ドイツ)https://www.kuka.com/ja-jp
Stäubli(ストーブリ)プフェフィコーン(スイス)https://www.staubli.com/ja-jp/
Techman Robot桃園(台湾)https://www.tm-robot.com/en/
Universal Robotsオーデンセ(デンマーク)https://www.universal-robots.com/ja/

実際の現場にロボットシステムを導入する場合は、ロボットの付帯設備の設計・製作・設置が必要です。付帯設備には以下のようなものがあります。

  • 制御盤
  • 架台
  • エンドエフェクター(ロボットハンド)
  • 搬送装置

こういった付帯設備を含むシステムの設計・制作・設置はロボットシステムインテグレーター(ロボットSIer)に依頼するのが一般的であり、費用が別途発生します。その他にもロボットティーチングやメンテナンスといった時間的・金銭的コストも想定しておく必要があります。

まとめ

この記事では協働ロボットと従来の産業ロボットとの違い、メリットやデメリット、活用事例まで幅広く解説しました。

人と共存して作業できる協働ロボットの登場により、従来ロボットの導入が難しかった産業分野でも今後さらにロボットの導入が加速することが予想されます。

協働ロボットに興味を持たれた方は、この記事で解説したメリット・デメリットやメーカーの一覧表を参考にしながら自社にとって最適な一台をぜひ探してみてください。

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