産業用ロボットSIer 300社掲載

2021.02.28

溶接用ロボットとは?導入時のポイントや活用事例も合わせて紹介!

従来は熟練工が手作業でおこなうことが多かった溶接作業を自動化できる溶接用ロボット。この記事では溶接用ロボットの基本構造から導入するメリット、活用事例まで幅広く解説します。

溶接用ロボットを取り扱っているメーカーも紹介しているので、ぜひ検討材料にしてみてください。

この記事の結論

・溶接用ロボットとは溶接作業を自動化できる産業用ロボットのこと
・溶接用ロボットの種類は、「スポット溶接用」と「アーク溶接用」の2つに大別される
・溶接用ロボットを導入することで、品質安定・業務効率化・作業環境の改善などの効果が期待できる

溶接用ロボットとは

溶接用ロボットとはその名の通り溶接作業を代替することができる産業用ロボットです。溶接用ロボットの登場により従来手作業でおこなうことの多かった溶接工程の自動化が進みつつあります。

ただし2021年現在の技術では複雑な面や上向きの溶接姿勢は難易度が高く、溶接用ロボットが対応できる製造現場はある程度限られます。

現状の技術では、ワークの溶接面が

  • 下向きである
  • 横向き(水平)である
  • 直線か直線に近い曲線である

という3条件を満たしている場合に溶接用ロボットを導入しやすいと言われています。

引用元:https://youtu.be/CA63kqidAos

溶接用ロボットの構造

溶接用ロボットはその他の産業用ロボットと同様に、以下の3つの部分から構成されます。

  • マニピュレーター
  • コントローラー
  • ティーチング(プログラミング)ペンダント

詳しく見ていきましょう。

マニピュレーター

マニピュレーターとは溶接作業をするロボットの本体部分を指します。

ロボットアームの先端は用途に応じて付け替えられるようになっており、溶接用ロボットの場合には「溶接トーチ」を付け替えることで、各種溶接に対応することが可能です。

なお溶接用ロボットのマニピュレーターの形状は自由度の高い動きができるアーム型(多関節ロボット)である場合が一般的です。

多関節ロボットについてより詳しく知りたい方は下記の記事も合わせてご覧ください。

【関連記事】

▶︎産業用ロボットのマニピュレーターとは?機能や選び方を解説

▶︎多関節ロボットとは?種類や特徴、活用事例まで解説

コントローラー

コントローラーはマニピュレーターとティーチペンダント(後述)をつなぐ役割をしています。

プログラミングペンダントから入力されたプログラムをコントローラー内の「コンピュータ部」で記憶し、そのプログラムを基に「インターフェース回路」を使うことでマニピュレーターの動きを制御します。

ティーチング(プログラミング)ペンダント

ティーチング(プログラミング)ペンダントとはマニピュレーターに溶接の順序・動作・条件などを教えるための「ロボットティーチング」を遠隔操作でおこなうための端末です。

ロボットティーチングの方法については後述します。

溶接用ロボットの制御(ティーチング)方法

溶接用ロボットの制御方法には主に次の2種類があります。

  • オンラインティーチング
  • オフラインティーチング

一つずつ見ていきましょう。

オンラインティーチング

オンラインティーチングとは、ティーチペンダントに搭載されているリモコンを使う方法です。

リモコンを使って動作させることで関節などの動きを記録し、記録した動きをロボットがプレイバックするという方法で制御します。

オフラインティーチング

オフラインティーチングとは、パソコン上でロボットを動作させるためのプログラムを事前に作成しておいて、そのプログラムをロボットに読み込ませることによって制御する方法です。

溶接用ロボットで多用されるのはオンラインティーチングとオフラインティーチングの2つですが、昨今の技術革新によりその他のティーチング方法も発達してきています。

ロボットティーチングに関心を持たれた方は下記の記事も合わせてご覧ください。

【関連記事】産業用ロボットのティーチングとは?種類やそれぞれの特徴を紹介

溶接用ロボットの種類

溶接用ロボットの種類は、用途に応じて「スポット溶接用」と「アーク溶接用」の2つに大別されます。

スポット溶接用のロボット

スポット溶接とは、金属が持つ電力抵抗を利用して金属同士をつなぎ合わせる方法です。スポット溶接用のロボットは自動車の車体溶接などに用いられており、比較的大型なのが特徴です。

アーク溶接用のロボット

アーク溶接とは、アーク放電という空気中の放電現象を利用して金属同士をつなぎ合わせる方法です。アーク溶接用のロボットは鉄骨フレームをはじめ比較的細かい製品の溶接などに用いられており、比較的小型なのが特徴です。

また昨今の技術革新により、強度に優れたTIG溶接やレーザーを利用するYAG溶接など、さまざまな種類のアーク溶接に対応できるロボットも登場しています。

【関連記事】アーク溶接ロボットとは?用途や仕組み、具体的な製品も紹介

溶接用ロボットを導入する4つのメリット

製造現場に溶接用ロボットを導入することによって次の4つの効果が期待できます。

  • 品質が安定する
  • 生産管理がしやすくなる
  • 作業環境が改善される
  • 属人化を防げる

一つずつ見ていきましょう。

品質が安定する

手作業でする塗装作業には体力と時間に限りがあり、その日の健康状態などによって仕上がりにムラが生じたり、集中力低下によるミスや事故が起こりやすくなったりする可能性もあります。

一方、ロボットはプログラムされた一定の動きを繰り返すことができるので、作業の質を一定に保つことができます。そのため品質管理がしやすくなるというメリットがあります。

生産管理がしやすくなる

人間は24時間365日働き続けることは難しいため、人間の労働力だけで生み出せる生産量には限界があります。また作業員の習熟度によっても生産量せ生産スピードは大きく左右されます。

一方、溶接用ロボットであれば、プログラムされた一定の動きを続けることができるため、作業量と作業スピードを高水準で安定させることができます。

またロボットであれば営業時間内はもちろん夜間などの営業時間外にも作業を自動的に継続することができるので、その分も生産性が大きく向上するでしょう。

作業環境が改善される

溶接現場では刺激的な光や有害な煙が発生する場合も多く、作業員が健康を害するリスクがつきものです。たとえばアーク溶接などで発生する「ヒューム」という物質は、作業中に吸引してしまうと肺の機能が低下すると言われています。

塗装用ロボットであれば、溶接環境に合わせた仕様で設計・導入することができるため、人間にとって過酷な作業も難なくこなすことができます。

このように塗装用ロボットが危険な作業を代替することで、作業員にとって過酷な労働環境を改善させることができます。

属人化を防げる

溶接は一般的に高度なスキルが要求される場合が多く、作業者の技術力や勘・経験値次第でに品質にバラつきができてしまいやすいという課題がありました。

溶接用ロボットを導入すれば一部の熟練工の腕だけに頼る必要もなくなるため、溶接技術の属人化を防ぐことができます。

それと同時に、熟練工の高齢化に伴う後継者問題や少子化による人手不足問題の解消にもつながります。

溶接用ロボットの活用事例

ここでは様々な産業分野における溶接用ロボットの活用事例を3つ紹介します。

大型の門扉製造工程における溶接システム

従来熟練工が手作業でおこなっていた特注品の大型の門扉の溶接作業を溶接用ロボット(垂直多関節ロボット)で自動化しました。

その結果、溶接スキルの有無にかかわらず誰でも作業が可能になり、労働生産性が8倍に上昇しました。

事例の引用元:『ロボット導入実証事業 事例紹介ハンドブック2018』p.42

鉄道車両用床板のワンサイドスポット溶接システム

鉄道車両用床板部品のスポット溶接工程を自動化するために溶接用ロボット(垂直多関節ロボット)を導入しました。

その結果、過酷作業がロボットによって代替され作業環境が大幅に改善しました。

事例の引用元:『ロボット導入実証事業 事例紹介ハンドブック2018』p.54

曲面や立体形状アルミ部品の溶接加工システム

従来手作業でおこなっていた立体形状の部品へのスタッド溶接作業を溶接用ロボット(垂直多関節ロボット)で自動化しました。

その結果、スタートボタンを押すだけでスタッド溶接ができるようになり、作業者の負担が軽減するとともに生産スピードが4.4倍上昇、手加工時の不良率を下げることにつながりました。

事例の引用元:『ロボット導入実証事業 事例紹介ハンドブック2017』p.25

溶接用ロボットのおすすめメーカー3選

ここでは、溶接用ロボットに強いメーカーを3つ紹介します。

安川電機

株式会社安川電機(本社:福岡県北九州市)は溶接用ロボットの中でも特にアーク溶接用ロボットを得意とするメーカーです。

たとえば6軸の垂直多関節ロボット「MOTOMAN-AR700シリーズ」をはじめ、業界最高水準の溶接用ロボットを取り揃えています。

また溶接電源やコントローラー、ポジショナーといった溶接工程に必要な周辺機器が充実しているのも魅力の一つです。

KOBELCO

KOBELCO(株式会社神戸製鋼所・本社:兵庫県神戸市)は産業用ロボットの中でも溶接用ロボットに特化しているメーカーです。専門力を活かし、鉄骨溶接、橋梁溶接、造船溶接など、大規模な溶接の自動化なども手がけています。

溶接用ロボットはもちろんのこと、溶接電源・装置から溶接材料、システム構築に至るまで溶接に関する悩み事に幅広く対応しています。

ダイヘン

株式会社ダイヘン(本社:大阪府大阪市)が手がける溶接用ロボットは、ロボット本体の機能性はもちろんのこと、周辺機器が充実している点が特徴です。

たとえば最新の7軸垂直多関節ロボット「アルメガプレミアム・フレンドリーシリーズ」に各種溶接トーチやワイヤレスコントローラーなどを組み合わせることでそれぞれの製造現場に最適なシステムにカスタマイズすることが可能です。

まとめ

この記事では溶接用ロボットの基本構造から導入するメリット、活用事例までを幅広く解説しました。

溶接工程の自動化技術は未だ発展途上にありますが、スポット溶接やアーク溶接など用途に応じたロボットも実用化されてきていますし、今後さらなる技術発展が大いに期待できるでしょう。

溶接用ロボットを自社にも導入してみたいと思われた方は、この記事で紹介した溶接面に関する条件や対応可能な溶接の種類、おすすめメーカーなどをぜひ参考にしてみてください。

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