産業用ロボットSIer 300社掲載

2021.04.30

スカラロボットの使用例について導入コストもあわせて紹介!

スカラロボットの使用例を紹介します。スカラロボットは多関節ロボットの中でも低価格なため、多くの企業で導入されています。今回は、実際に「どの分野の企業がどのような目的で導入したか」を詳しく見ていきましょう。

この記事の結論

・スカラロボットは組立、搬送、ねじ締め、塗布などに用いられている
・さまざまなメーカーがスカラロボットを導入して自動化を実現している
・人件費の削減や作業者の負担軽減に貢献している

スカラロボットの用途を紹介

スカラロボットの主に用途は以下の4つがあります。

  • 組み立て
  • 搬送
  • ネジ締め
  • 塗布

それぞれ詳しく見ていきましょう。

組み立て

スカラロボットは組立工程で多く利用されています。高速・高精度のため、人間よりも生産性の高い動作が可能なため、導入することでコスト削減や利益の増加に大きく貢献します。

また、垂直多関節ロボットと比べて、省スペースでの設置可能です。生産ラインに複数設置することで人だけの生産ラインより、何倍もの生産性を高めます。

搬送

スカラロボットは前工程から次工程のラインへの搬送や製品の整列なども得意としています。水平方向にスピーディに動くことができるという利点があり、ワークの持ち運びに最適です。生産効率の向上に貢献します。

ねじ締め

ねじ締め工程に利用することもできます。先端に電動ドライバのエンドエフェクタを取り付けることで、高速でねじ締めを行うことができます。

ティーチングを行い、ねじ締めの場所を教示することで、素早く複数の場所をねじ締めできます。また、自動化を行うことで、ねじの締め忘れなどの不良品発生率を下げることも可能です。

塗布

スカラロボットの先端にディスペンサのエンドエフェクタを取り付けることで、ゲル状の材料などを塗布することができます。

機械系であれば接着剤、食品分野であればモンブランのクリームなどと幅広い分野でさまざまな材料の塗布が可能で、生産ラインの自動化に貢献します。

スカラロボットの使用例を導入コストとあわせて紹介

実際にスカラロボットがどのように使われているか見てみましょう。経済産業省と一般社団法人日本ロボット工業会が発行した「ロボット導入実証事業事例紹介ハンドブック2018」から導入事例と実際のコストを紹介します。

画像処理技術により重量計算を行う焼鳥整列ロボットシステム|株式会社コスモジャパン

株式会社コスモジャパンでは焼き鳥の串刺し工程を機械で行っていましたが、焼き鳥を機械に投入する工程は人間が行わなければなりませんでした。

刺す順番や材料の形と方向を判断して投入する必要があり、熟練の技術が必要でした。そこで、2台のスカラロボットとがそう処理システムを導入します。結果、投入工程を自動化でき、作業員の無人化に成功しました。

労働生産性2.5倍
人数3人→1人
労働時間7時間→7時間
生産量8400個→7000個
その他の効果熟練の不要
導入したロボットスカラロボットデンソーウェーブHSRシリーズ
導入コスト51.8百万円
1年あたりの効果利益増:500万
労働生産性:360万(2名分の人件費)
回収期間6.0年

機能展開型SIプロセスによる薄板板金プレスの自動化|株式会社北斗

株式会社北斗では、事務製品に必要な金属部品のプレスラインがありましたが、多品種少量生産により、人件費の増大や作業者の検査にばらつきがあるなどの問題を抱えていました。

そこで、画像処理機能を持つスカラロボットと材料位置決めロボットを導入します。結果、検査工程が自動化でき、人件費の削減や品質の向上につなげることができました。

労働生産性16倍
人数2人→1人
労働時間32時間→4時間
生産量4800個→4800個
その他の効果流出不良を抑制
導入したロボットスカラロボット材料位置決めロボットヤマハ発動機、オリイメックYK1200X
導入コスト27.6百万円
1年あたりの効果5.7百万円(利益×生産数)
回収期間4.8年

冷凍粒牡蠣の分散・移載工程のロボット化FS|クニヒロ株式会社

クニヒロ株式会社では、作業者が団子状態の粒牡蠣を手でばらしながら1個ずつ向きを揃えてベルトコンベアに移載していますが、人手不足が問題で工程を自動化する必要がありました。そこで、自動化のために生産ラインを構築し、スカラロボットを導入します。

結果、牡蠣を一個ずつばらばらにする工程、位置検出を行う工程、ピッキングを行う工程の3つのシステムを構築したことで自動化でき、2名分の作業を削減できました。

労働生産性3.0倍
人数3人→1人
労働時間8時間→8時間
生産量57600個→57600個
その他の効果生産量安定化
導入したロボットスカラロボットオムロンエニーフィーダー
導入コスト23百万円
1年あたりの効果500万円(2人分の人件費)
回収期間4.6年

リニアコンベアを利用した省コスト化コンプレッサ組立システム|ギフハイテック株式会社

ギフハイテック株式会社では、自動車のコンプレッサの検査工程でスカラロボットを導入しました。

従来計画していた新機種のコンプレッサ検査工程では、ワークの組立を行った後に各種検査を実施するため、ロボットなしで計画すると1シフトに5名必要でした。

しかしながら、この工程では複数のねじ締め作業があるため、不良品流出の可能性や作業者の肉体的労働などの問題があります。

そこで、スカラロボットを3台導入したことで、組立工程を自動化。リニアコンベアと6軸多関節ロボットと組み合わせた製品移動の自動化も行ったため、1シフトに1名の工程になりました。

労働生産性5.0倍
人数10人→2人
労働時間8時間→8時間
生産量1300個→1300個
その他の効果省スペース化
導入したロボットヤマハ発動機 YA-R5F、LCM-X
導入コスト56.8百万円
1年あたりの効果2,420万円/年(4名×2シフトの人件費)
回収期間2.4年

弁当・惣菜製造ラインにおける蓋閉め工程の自動化|タマムラデリカ株式会社

タマムラデリカ株式会社では、弁当や総菜の蓋閉め工程があります。

弁当や総菜は商品によって容器の形が異なるため、従来は人の手によってライン生産をしていました。しかしながら、熟練作業者の育成が必要で、繁忙期では人材不足になることから自動化の必要がありました。

そこで、アタッチメントを交換することで複数商品に対応できるスカラロボットを導入。人員を削減でき、安定した生産ができるようになりました。

労働生産性2.0倍
人数2人→1人
労働時間5時間→5時間
生産量15000個→15000個
その他の効果不良品流出の削減
導入したロボットワイ・イー・データ・ヤマハ発動機 専用設計、YK500TW
導入コスト20.0百万円
1年あたりの効果6.0百万円(人件費)
回収期間3.3年

球型冷凍おにぎりの成型工程にロボット導入FS|株式会社テイスティフーズ

株式会社テイスティフーズは球型冷凍おにぎりの製造を行っていますが、特注の型が必要な少量多品種のおにぎりの場合、すべて人による作業で行っていました。

しかしながら、人による作業の場合、製品の重量や品質にばらつきができ、不良品が発生するなどの問題がありました。

そこで、先端に電動グリッパーを取り付けたスカラロボットを導入します。つかんだごはんを球型に成型しながら重量を測定することで品質の安定化だけでなく、工数の削減を実現しました。

また、作業人数の削減や生産量の向上にも効果があり、利益が増加しました。

労働生産性10.5倍
人数6人→2人
労働時間7.5時間→7.5時間
生産量6000個→21000個
その他の効果労働環境の改善
導入したロボットヤマハ発動機 YK250XGC、YK350XGC、YK500TWC
導入コスト72百万円
1年あたりの効果利益増:1080万円
労働生産性:480万円(4名の人件費に相当)
回収期間4.6年

まとめ

スカラロボットの使用例について紹介しました。スカラロボットの特性により組立や搬送などさまざまな用途で生産性の効率化を実現できます。また、記載した使用例の通り、あらゆる産業でスカラロボットを使用することが可能です。

しかしながら、はじめてロボットを導入する場合、どれを選べばいいかわからないという方も少なくないでしょう。その場合は、是非ロボットシステムインテグレータに相談してみましょう。

関連記事