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産業用ロボットは、人の代わりに、塗料・粉塵・スパッタが飛散するような悪環境で活躍しています。一度導入したロボットは、できるだけ長くきれいな状態で使用したいですが、そのためには清掃やメンテナンスに多くの手間と費用がかかります。こうした悩みを解決してくれるアイテムが、ロボットカバーです。この記事では、ロボットカバーとは何か、またそのメリットと導入の際のポイントを解説します。ロボットカバーを取り扱うメーカーについてもご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
ロボットカバーとは
ロボットカバーとは、防塵・防水・防汚などの目的でロボット本体に装着するカバーのことです。ロボットカバーは伸縮性の高い生地でできており、ロボット形状にフィットするよう設計されているため、ロボットの動きを邪魔しません。そのため、カバーを取り付けた状態でロボットを操作することができ、作業中に飛散した水や油、汚れからロボット本体を守ります。
ロボットカバーのメリット・デメリット
ロボットカバーをつけることでどのようなメリットがあるのか、デメリットも含めて見ていきましょう。
ロボットカバー4つのメリット
ロボットカバー導入の主なメリットとしては、以下の4点があります。
1.ロボットの清潔性を保つ
ロボットカバーは、汚れがロボット本体に付着するのを防ぎます。ロボットに水や油が付着すると、見た目が悪くなるだけでなく故障の原因にもなります。ロボット本体のこまめな清掃が必要になりますが、そのためには長時間ラインを停止しなければなりません。ロボットカバーを装着すれば、ロボット本体の清掃頻度が軽減され、ライン停止時間の削減が期待できます。
2.ロボットの老朽化を防ぐ
ロボットカバーを取り付けることで、ロボットの老朽化を防ぐことができます。ロボット自体を長期間、よい状態で使い続けることができれば、ロボットのメンテナンスや更新にかかるコストの削減につながります。
3.ロボットトラブルの軽減する
水、油、塗料ミストなどがロボットの稼働部や端子部に入り込むと、ロボットの誤作動や精度低下といったロボットトラブルが発生しやすくなります。こうした問題が起こると、作業効率が悪化し、生産計画の遅延につながりかねません。ロボットカバーでロボット全体を覆うことで、水や異物の侵入によるロボットトラブルの軽減が見込めます。
4.衛生基準が厳しい現場の自動化を実現できる
食品や医薬品、化学品の製造工程といった衛生基準の高い現場にロボットを導入する場合、ロボットには洗浄のしやすさや薬品耐性が求められます。しかし、こうしたクリーン環境に対応したロボットは、高価な上に取り扱っているロボットメーカーも多くありません。衛生基準を満たしたロボットカバーを装着することで、手軽に低コストで食品や医薬品を扱う環境の自動化を実現できます。
ロボットカバー2つのデメリット
ロボットカバーのデメリットとしては、以下の2点が考えられます。
1.装着の手間がかかる
ロボット本体に装着する手間と時間はどうしてもかかってしまいます。しかし、ロボットカバーは軽量でロボットの形状にフィットした設計になっているので、取り付けたままロボットを動作することができ、毎回着脱する必要はありません。
2.カバー購入の費用がかかる
ロボット本体に加え、カバーを購入する費用が発生します。価格の相場は、5万〜40万程度です。また、カバーメーカーに対象のロボット用カバーのラインナップが無ければオーダーメイドでの設計になるので、ロボットカバーにかかる費用は決して安いとは言えないでしょう。
ロボットカバーを導入するときのポイント
次に、ロボットカバー導入にあたってのポイントを紹介します。
ロボットメーカー・機種に対応したカバーを選定
ロボットカバーメーカーは、各ロボットメーカーの機種ごとに専用のカバーを取り扱っています。ロボットカバーメーカーのホームページには、製作対応しているロボットメーカーと製品のラインナップが記載されているので、まずはお使いのメーカー・機種に対応したカバーがあるか確認しましょう。
使用環境に適した生地素材のカバーを選定
ロボットを使用している環境によって、ロボットカバーに求められる生地素材は様々です。溶接現場で使用するロボットカバーであれば、耐熱性・耐スパッタ性のある生地を使用したカバーが最適ですし、食品製造現場で使用するロボットカバーは消毒液耐性のある生地を使用している必要があります。ロボットの使用環境に適した生地素材のカバーを選定しましょう。
オーダーメイドやメーカーとの共同開発も
対象のロボット・機種に対応したロボットカバーを取り扱っているメーカーが見つからない場合、ロボットカバーをオーダーメイドで発注することも検討しましょう。ロボットの形状に合ったカバーでないと、ロボットの動作に悪影響を与えかねません。開発段階からロボットメーカー・SIer・エンドユーザーの要望を取り入れてくれ、共同開発品の提案が可能なロボットカバーメーカーもあります。
ロボットカバーの導入事例
塗装工程での導入事例
塗装工程では、ロボットが塗装ミストをワークに吹きかける際に、飛散した塗料がロボットに付着することがあります。ロボット本体が汚れてしまうだけでなく、ロボットに付着したロボットがワークに垂れ落ちることで、塗装不良を発生させてしまう恐れがあります。塗装ミスト吸着性のあるカバーをロボットに装着することで、飛散した塗料はカバーが吸収してくれます。
溶接工程での導入事例
溶接工程では、火花やスパッタ(金属の粒)からロボットを保護し、汚れや故障を防止するためにロボットカバーが使われます。難燃性・耐熱性に優れたカバーでないといけないので、消防服で使われるアラミド繊維を使用したものや、耐熱温度が200℃以上のものが導入されています。
食品製造程での導入事例
衛生管理の厳しい食品製造工程では、使用前後にロボットを消毒、洗浄する必要があるため、アルコールや次亜塩素ナトリウムなどの化学品に耐性のあるカバーを使用します。ロボットは複雑な構造をしているため、洗浄するのに手間がかかってしまいますが、ロボットカバーを装着すればカバーのみの洗浄で済むので、洗浄にかかる時間を大幅に削減することができます。
代表的なロボットカバーメーカー5選
多様な環境に対応できるロボットカバーを取り扱うメーカーを5社ご紹介します。
株式会社ナベル Robot-Flex
引用元:https://www.bellows.co.jp/ja/nabell_tm_rf/robot_flex.html
株式会社ナベルは三重県に本拠地があり、ジャバラの製造・販売を行なっていますが、産業用ロボット・協働ロボットに関わらずロボットカバーも販売しています。また、生地素材も防水・防塵用の一般向けのものから、ブラスト用、塗装用、溶接用、食品用、マシンテンディング用、電磁波シールド用のラインナップがあります。
最新の3D機器を使用することで、複雑なロボットの動きにも追随可能なカバーを設計している点が強みです。(Smart-Form)独自の製法と素材により作られており、着脱容易な見た目もスマートなカバーです。
協働用ロボットでは、TECHMAN ROBOT、FANUC、三菱電機、YASKAWA、UNIVERSAL ROBOTS、DENSOに推奨されております。T ECHMAN ROBOT正規代理店でもあります。
ROBOWORLD社 ロボスーツ
アメリカのROBOWORLD社では、ロボットを保護するための製品として「ロボスーツ」を展開しています。このロボスーツは高温、低温の作業環境、溶接、塗装、薬品、クーラントなど幅広い環境に対応しています。安川電機やファナックなど、日本のロボットメーカー専用カバーの実績も多く、オーダーメイド設計も可能です。日本では、商社の株式会社キャプテンインダストリーズを通して購入することができます。
株式会社艶金 ロボットスーツ
株式会社艶金は岐阜県にある繊維生地の染色整理加工を行なう会社です。塗装用、クーラント用、耐熱対応のロボットカバーの取り扱いがあり、伸縮性のある生地が強みです。10分程度で簡単に装着できる点も特徴です。
株式会社ファスコジャパン ロボットジャケット
株式会社ファスコジャパンは、千葉県にある企業で、産業用ロボットジャケット、ケーブルカバー、工作機械用ジャバラの製造、販売を行なっています。
ファスコジャパンのロボットカバーは、マジックテープで縦割りになっているため、治具やケーブルを付けたまま簡単に装着可能です。以下のロボットメーカーに対応した製品を扱っており、実績の豊富な会社です。
・ABB
・ダイヘン
・DENSO
・FUJI-ACE
・MELFA
株式会社ミヤモリ ロボテックス
株式会社ミヤモリは、富山県に本拠地を置くアパレル専門メーカーです。アパレルメーカーのノウハウを活かし、スマートで、軽量で、無駄のない動きを実現するロボットカバーを製造します。ロボットカバー自体にも汚れが付着しにくいよう、生地を特殊ラミネート加工しています。また、耐薬品性、耐熱性の機能も備えています。一点ずつオーダーメイドで生産しているのも特徴的です。
まとめ
今回はロボットカバーのメリットと導入のポイント、そしておすすめのロボットカバーメーカーをご紹介しました。ロボットカバーを導入することで、ロボットの美観を守り、故障のリスクを軽減することができます。
ロボットの機種ごとに専用のロボットカバーがあり、またロボットの使用環境によって、選定すべきカバーの生地素材も異なります。カバーメーカーと相談のうえ、最適なサイズと機能のロボットカバーを選定しましょう。