産業用ロボットSIer 300社掲載

2023.03.03

溶接ロボットの価格は?代表的なメーカー10選と導入効果事例

溶接ロボット価格

「溶接ロボットを導入したいけれど、いったい費用はどれくらいかかるかわからない…」こんなお悩みはありませんか?本記事では、はじめてロボットを導入する例が多いと思われるアーク溶接ロボットを中心に、導入する際の価格や導入の仕方を、具体的に紹介します。さらに実際の導入事例の中から導入効果を数値で紹介しますので、溶接ロボット導入を検討されている方はぜひご覧ください。

溶接ロボットとは

機械工場
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溶接ロボットとは、溶接職人の方が手を使って行っていた溶接作業を代わりに行ってくれる機械です。ロボットが行う溶接の種類で分類すると、アーク溶接、スポット溶接、レーザ溶接などがあります。

アーク溶接ロボットのより詳しい紹介は下記ページも参考にして下さい。

溶接ロボットの装置構成

溶接ロボットは具体的にどのような構成で装置として成り立っているのでしょうか。ロボットは以下3つで構成されています。

・マニピュレータ

・コントローラ

・ティーチングペンダント

マニピュレータとは、実際に溶接するために動作する部分です。装置に汎用性を持たせる場合、マニピュレータには多軸のサーボモータ駆動による多関節垂直型の産業用ロボットが使われます。

マニピュレータはコントローラとワイヤで接続されており、さらにマニピュレータの動きを登録するときに手動で操作するためのボックスがティーチングペンダントです。

溶接ロボットの周辺機器

上記3つ以外にも、ロボットには以下のような周辺機器が必要です。

・エンドエフェクタ

ロボット先端に取り付けるアーク溶接を行うためのトーチ

・付加軸

ロボットの位置を変更しないとアプローチできないような溶接を行う際にロボットの位置を動かすス ライド軸

・溶接治具

手動溶接でも必要なワークを固定などして溶接を行いやすくする器具

・安全柵

自動運転の際に装置内に人が入れないようにする柵

・消耗品保管場所

ワイヤーパックやシールドガスのボンベを置くスペース

溶接ロボットの導入メリットとデメリット

溶接技術
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溶接ロボットを導入するメリットとデメリットをまとめました。

導入メリット

  • 作業スピードが向上し生産量が増加する
    • ロボットは人間より持続的に動作が早いので、通常ロボット導入によって生産量は増えます。
  • 作業の安定性が向上する
    • ロボットは動作の位置決め精度が人間より高いので、溶接が安定して製品のバラツキも減少します。
  • 長時間の劣悪な環境下で運用可能
    • ロボットは暑さ寒さに強く休憩も必要ないので、人間が長時間こなすことのできない作業も可能です。
  • 計画的生産が可能になる
    • ロボットは1サイクルの作業時間が一定のため、より精度の高い生産計画を立てられます。

導入デメリット

  • 設備投資の資金が必要
    • 多くの場合設備導入のネックとなるのは導入資金です。
  • 人員教育に時間が掛かる(技術、作業習得)
    • 導入後は設備の保全を行う必要があるため、導入する設備を担当する人員とその工数を確保し教育を行う必要があります。
  • 材料の均一性の保持が必要
    • ロボットの動作精度が高いため、溶接前の部品の形状や状態にばらつきがあると溶接欠陥をまねきます。導入前のトライアルで十分確認する必要があります。
  • ロボット用に材料や治具の保管スペースが必要
    • 設備に供給する溶接前の部品や溶接治具はロボットにハンドリングさせることが多いので、安全柵で囲われた保管スペースが必要になります。そのほかアーク溶接の場合は、溶接に必要なワイヤやガスの供給装置、ノズルクリーナーのスペースも確保します。

溶接ロボットの具体的な導入コストは?

コスト
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実際に溶接ロボットを設備導入する場合のコストについて具体的に紹介します。

溶接ロボットの価格は?

溶接ロボット単体の価格はアーム長と可搬重量によって大きく変動しますが、150〜500万円程度です。しかしロボット単体では生産設備になりません。付帯設備や設置コストを含めると装置全体のコストはロボットの2〜5倍になります。ロボットの中古市場もありますが、付帯設備まで中古で揃えることは難しいかもしれません。

溶接ロボットの設備の価格は?

ロボット単体の他に必要な付帯装置の具体的な例を紹介します。付帯設備は特注になることが多いので、検討や設計のコストが必要です。 溶接設備にはロボットに取り付ける溶接トーチ、溶接治具、付加軸のほか、材料や治具をロボットにハンドリングさせる装置や安全柵も含まれます。

・ロボット ¥3,000,000

・付帯設備 ¥5,000,000

・ロボット架台 ¥500,000

・制御装置 ¥2,000,000

・設置工事費 ¥3,000,000(試運転調整費含む)

・設計費 ¥1,500,000

・合計 ¥15,000,000

溶接ロボットのメーカー10選

溶接ロボットを製作している国内外の主要メーカーと具体的なモデルのベース価格を紹介します。原材料の高騰などにより、ここで紹介している価格より値上げされている場合もあります。

パナソニック

誰もが知ってるパナソニックは溶接ロボットの業界でも知名度があります。マニピュレータのアームの長さは大きく分けて4種類あります。アーク溶接ロボットTS/TM/TLシリーズ(GⅢ)の定価は300万円〜500万円です。

https://connect.panasonic.com/jp-ja/products-services_welding_products_industrial-robots_arc-welding-robot_g3#Spec%EF%BC%89

神戸製鋼所

KOBELCOのブランドで有名な神戸製鋼所のアーク溶接ロボット「ARCMAN-MP」標準構成(CA,溶接用500A電源含む)の定価は500万円〜580万円です。

https://www.kobelco.co.jp/welding/system/manipulator/arcman-mp.html

ダイヘン

設立当初「大阪変圧器」という社名だけあってダイヘンは溶接機の専門メーカーです。代表的なモデルはFD-B4S・B4LSなどの7軸ロボットです。ユニバーサルロボット株式会社との協業による溶接現場向け協働ロボットシステムWelbee Co-Rというアーク溶接ロボットの販売価格は187万円から販売されています。

https://www.daihen.co.jp/products/welder/cor/co-r.htm

安川電機

MOTOMANの愛称が有名な安川電機は九州のメーカーです。MOTOMAN-SSA2000アーク溶接ロボットの販売価格は357万円からとなっています。

川崎重工

川崎重工は日本三大重工のひとつで、巨大企業の一部門として産業用ロボットを製造しています。アーク溶接ロボットBA006Nの価格は300万円からです。

不二越

NACHIブランドで主に自動車業界で存在感を発揮する不二越のスポット溶接ロボット SRA100B/100Jは100万円から500万円です。

https://www.nachi-fujikoshi.co.jp/rob/spot/sra100a.htm

ファナック

黄色のコーポレートカラーが印象的なファナックは産業用ロボットとNC装置それぞれで世界シェア首位の企業です。アーク溶接ロボットARC Mate 100iDの価格は300万円〜400万円です。

https://www.fanuc.co.jp/ja/product/robot/f_r_arc.html

日鉄溶接工業Z

日本製鉄グループの溶接機器メーカーである日鉄溶接工業は造船用などの専用設計された溶接機器が有名です。小型溶接ロボットNAVI-21の価格は400万円〜500万円です。

https://www.weld.nipponsteel.com/products/instrument/buttwelding/navi-21.html

ABB

ABBはスイスのロボットメーカーですが、日本や中国にも進出しています。汎用ロボットIRB 1400 は200万円からです。

https://library.e.abb.com/public/99bb3fb8ff6495cfc1257b130056d120/IRB1400_R3-US%2002_05.pdf

Kuka

KUKAは元はドイツのロボットメーカーで、今は中国の電機メーカーの子会社となっています。小型汎用ロボットKR5 Sixx R650 の価格は200万円からとなっています。

https://www.robots.com/robots/kuka-kr-5-sixx-r650

導入効果の考え方

投資回収

溶接工程を自動化する最大のメリットは溶接職人の人件費を省くことができる点です。たとえば年収600万円の職人でも、会社の年間コストは1000万円くらいです。よって1000万円の設備導入でも1年で回収できることになります。

高付加価値業務への移行

よく業務の自動化を実現すると溶接職人の仕事が無くなり解雇されるのではないかという心配が話題になりますが、そういうことはありません。繰り返し作業や高負荷環境での作業から解放された溶接職人には、より付加価値の高い仕事をしてもらえば良いのです。具体的には技能の伝承や自動溶接の際の溶接条件決定などで、後継者不足などの問題解決にもつながります。

安定した生産体制

自動化された溶接工程は、誰がやっても同じ製品が同じ時間でできます。製品の不良率削減、属人化の防止、危険作業や高負荷環境作業が減少する、生産計画が容易になるなど、財務指標にすぐには表れない導入効果が得られます。

溶接ロボットの具体的な導入効果は?

SIerに依頼した見積もり金額に対する費用対効果はどのように算出すれば良いでしょうか?ここでは実際の導入効果事例と導入効果の考え方を紹介します。

導入効果事例

経済産業省のロボット導入実証事業のWebサイトでは、産業用ロボット導入事例が多数紹介されています。この中で溶接ロボットの導入事例は18件紹介されています。導入効果は1労働者の時間あたりの生産数として「労働生産性」という指標で表しています。18件の平均労働生産性は3.3倍で平均事業規模は4100万円です。ここではこの中から3例を紹介します。

(出典:http://robo-navi.com/Cases/index

小ロット多品種板金加工:株式会社田名部製作所

小ロット多品種板金加工業の溶接工程に溶接ロボットを導入しました。2220万円の投資に対して労働生産性は1.5倍となったようです。

(出典:http://robo-navi.com/cases/detail?case_id=10

自動車用ボディフレーム試作工程の自動溶接:株式会社フジ技研

従来の技術者による手動溶接にかわり、溶接ガン6式まで自動で交換できる装置を組み合わせた溶接ロボットを導入しました。結果5180万円の投資で労働生産性は3倍になりました。

(出典:http://robo-navi.com/cases/detail?case_id=269

自動車用小物板金部品のスポット溶接とナット組付工程:アスカ株式会社

従来手作業で行っていた自動車ボデー小物板金部品のスポット溶接とナット組付工程へロボットを導入し、3870万円の投資で労働生産性はなんと5.8倍になったとのこと。小型ロボットを採用することでロボット化しても省スペースを実現しています。

(出典:http://robo-navi.com/cases/detail?case_id=13

良いSIerの探し方

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前述の通り溶接ロボット単体を購入しても生産設備にはなりません。付帯設備を含めた設備全体を検討し実現するのはロボットメーカーではなく、システムインテグレータ通称SIerです。どのSIerにお願いするかによって装置の完成度や導入効果は変わってきます。良いSIerを見つけられるかどうかが良い装置を実現するキーポイントとなります。

良いSIerはどうすれば見つかるでしょうか?ロボカルに相談すれば確実です。

SIer選びはコストだけでなく、得意としている分野や地域性も考慮しましょう。そして見つけたSIerに実現したい装置を相談し、トライアル等を依頼します。トライアルは工数がかかるため、有料になることもあります。

まとめ

代表的なメーカーの溶接ロボットの価格情報と、溶接ロボットの具体的な設備投資額を導入効果とともにご紹介しました。ロボット単体の価格は数百万円ですが、装置全体の総額は平均4千万円でした。この投資額は大きいですが、いずれの企業も生産性を数倍向上させ導入効果をあげています。

数千万円の投資は溶接職人の人件費1〜3年分で償却できるので、投資回収のプランも考えやすいです。相談したSIerに導入コストについても相談するのも良いでしょう。資金調達については、「ものづくり補助金」など国や自治体の補助金を活用する手もあります。

導入へのハードルはありますが、挑戦する価値は十分あります。ぜひこの記事を参考に溶接ロボット導入へ第一歩を踏み出してください。

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