産業用ロボットSIer 300社掲載

2023.05.24

産業用ロボットを導入するために、まずは構造や種類を確認しよう

コンベヤラインに並ぶ産業用ロボット

産業用ロボットには多種多様な種類があり、それぞれに得意とする作業が異なります。産業用ロボットの種類と特徴を知れば、自社が導入するべきロボットも選びやすくなるでしょう。同時に、産業用ロボットの基本的な構造を理解しておくことも、各種類の違いを知るうえで重要です。

この記事では、産業用ロボットの市場や構造、種類ごとの特徴について詳しく解説します。

産業用ロボットとは

ロボットアームと通信ネットワーク

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では、ロボットを「センサ、知能・制御系、駆動系の3つの要素技術を有する、知能化した機械システム」と定義しています。

ロボットは大きく「産業用ロボット」と「サービスロボット」に分けられ、両者の違いは利用される目的にあります。産業の自動化に使われるのが産業用ロボット、日常生活の支援に使われるのがサービスロボットです。サービスロボットはさらに、医療ロボットやコミュニケーションロボット、ドローンなどの種類に分けられます。

産業用ロボットとは、人に代わって労働力を提供する機械のうち、生産性向上を主な目的として導入されるものになります。

参考:NEDOロボット白書2014

産業用ロボットの市場

産業用ロボットを制御する技術者

産業用ロボットの市場規模は年を追うごとに拡大しています。国際ロボット連盟(IFR)の発表によると、2020年に世界中で稼働している産業用ロボットの数は3,014,879台と推定されており、前年より10%増加しています。2015年以降の平均成長率は13%で、市場が確実にに成長していることが伺えます。

国別に見ても、日本における産業用ロボットの稼働台数は多く、中国に次いで世界2位。世界中で稼働している産業用ロボットの、約10%は日本で稼働しているという結果が出ています。

参考:2021年度ロボット産業・技術振興に関する調査研究報告書

産業用ロボットの主な構造

機械部品で作られたロボットハンド

産業用ロボットの基本構造を知れば、種類ごとの違いについても理解しやすくなります。

ここでは、産業用ロボットの構造について解説します。

人間の体に例えると

産業用ロボットの構造は、人間の体に例えることができます。人の体は肘や肩などの関節部分を骨がつなげる構造で動くようになっています。ロボットでいえば、関節にあたるのがジョイント、骨にあたるのがリンクです。産業用ロボットでは、設計段階でジョイントやリンクの数を調節することで、必要な動作に対応できるようにします。

いくつの軸で構成されている?

ロボットの可動域を増やすパーツのことを軸と呼び、軸が多いほどロボットは多彩な動きができるようになります。軸には2つの種類があり、回転方向に動く回転関節と、直線方向に動く直動関節です。

軸の数はロボットの種類によって異なります。例えば、垂直多関節ロボットは6軸で構成されており、複雑な動きにも対応できる仕組みになっています。人間でいえば、腰・肩・肘・手首・指先といった関節を動かしながら作業するようなものです。

ロボットを構成する要素

ロボットは主に「知能・制御系」「駆動・構造系」「センサ系」の3つの要素から構成されます。ここでは、それぞれの要素について解説します。

知能・制御系

知能・制御系は、人間でいえば頭脳や神経に該当するコンピュータシステムです。センサが感知した情報を処理し、ロボットの動作をコントロールする役割を果たします。量産化される産業用ロボットでは、コストダウンや小型化といったメリットのあるマイコンが主に使われます。

駆動・構造系

人間でいうと筋肉や骨格に該当するのが駆動・構造系です。モータや非常用ブレーキ、アームといったパーツで構成されます。

動力伝達機構の減速機も、駆動・構造系における重要なパーツです。モータには高回転を得られる一方でトルクを得にくい欠点がありますが、減速機によって回転エネルギーをトルクに変換することで、ロボットの力強い動作を実現します。

センサ系

センサ系は、人間でいえば感覚器官に該当する要素です。外からの情報を感知する外界センサと、機械内部の状態を検知する内界センサに大別されます。

外界センサは、光や音、熱などだけでなく、磁気や電波、時間などの幅広い情報を感知対象としています。内界センサで特に重視されているのは、モータの回転速度や回転角度を検出するエンコーダです。

産業用ロボットの種類

CPUチップを保持する産業用ロボット

産業用ロボットの得意な作業はモデルごとに異なるため、導入の際は作業内容に適した種類を選ぶ必要があります。

ここでは、産業用ロボットの種類を紹介します。

直角座標型ロボット

直角座標型ロボットでは、スライドする2~4つの軸を直角に組み合わせています。構造が単純で制御も簡単ですが、非常に精度の高い作業をできるのが特徴です。価格も安価ですが、人間の腕のような複雑な動きには対応できません。単純な作業をスピーディにこなしたい場合に用いられます。

円筒座標型ロボット

円筒座標型ロボットは、ベースの近くに回転関節があり、その上に2つの直動関節が備わっています。直角座標型ロボットと似ていますが、回転関節がある分、より広い領域内で作業可能です。主にパネルの搬送などに利用されています。

極座標型ロボット

極座標型ロボットは、2つの回転関節と1つの直動関節を組み合わせたものです。円筒座標型ロボットよりも広い作業領域に対応できます。産業用ロボットの始祖として、黎明期に多くの工場で活躍しました。しかし、アーム先端の角度が変化するので制御が難しく、現在ではほとんど使われていません。

垂直多関節型ロボット

垂直多関節型ロボットは、すべての関節が回転型で構成されているタイプです。人間の腕とよく似た構造で、設置面積が狭いうえに稼働領域が広く、複雑な動きができます。その汎用性の高さから、世界中の工場で活用されています。溶接や塗装、組立、搬入など、あらゆる分野で活躍している産業用ロボットです。

水平多関節型ロボット

水平方向の動きに特化しているのが、「スカラロボット」とも呼ばれる水平多関節型ロボットです。3つの回転関節と1つの直動関節が基本の構成要素で、水平に移動するアームの先端が上下に動くようになっています。電機分野の組立作業で広く採用されており、部品の押し込みといった形で使われます。

パラレルリンク型ロボット

パラレルリンク型ロボットでは、並列に動く複数のアームで1つの先端を支えています。先端部分に吸着ユニットが取り付けられており、ベルトコンベヤから製品をピックアップするといった形で活用されます。可搬重量は限られているものの、軽いアームを複数本用いることで高い剛性を実現しており、高速動作が可能です。

まとめ

自動車生産ラインに並ぶ産業用ロボット

産業用ロボットの市場は急激に成長しており、世界中の工場で300万台を超えるロボットが活躍しています。産業用ロボット導入の際は、その構造や種類を知り、作業内容に適したものを選ぶことが重要です。

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