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塗装工程は、有機溶剤という有害物質を扱う上、気化した気体を吸引しやすい点から過酷作業になりやすいと言われています。
自動車部品、電子部品等、様々な産業で必須の塗装作業ですが、人手不足や作業効率化の観点から、工程の自動化を検討する場合も多いでしょう。
本記事では、塗装ロボットの特徴、導入事例、おすすめのSIerを紹介します。
・塗装ロボットは多種のロボットを組み合わせたロボットシステム。
・塗装ロボットの活用により、塗装工程の自動化が可能。
・作業効率性の上昇だけでなく、作業安全性の確保にも資する。
塗装ロボットの特徴
産業用ロボットの中に塗装ロボットという分類があるのではなく、塗装工程を自動化できる産業用ロボットシステムのことを塗装ロボットと呼びます。
塗装ロボットには、メインロボットに加えて、周辺設備や付属機械が含まれます。メインロボットには、垂直多関節ロボットや直交ロボット等の中から用途に合致するロボットが選ばれます。
ただし、塗装作業で扱う有機溶剤は引火性を持つため、塗装ロボットは内部に気体が入り込むことを防ぐ機構が必須に備えられています。
塗装ロボットの導入手順
塗装ロボットの導入で想定通りの効率化を実現するには、充分な準備が必要です。綿密な計算の下でシステム設計をしなくては、狙い通りの生産性が実現できないからです。
以下のような導入の手順に沿いながら、経験豊富なSIerと相談して導入を進めて下さい。
- 導入の目的を明確に設定
- システムの構想
- 構想提案に基づいた仕様の定義
- 生産システムの詳細設計
- 製造・納入前テスト
- 稼働開始
- 保守・点検
各手順の詳細は以下の記事に記載をご参考下さい。
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塗装ロボットを導入するときのポイント
塗装ロボットは、複数のロボットが組み合わさって成り立つため、導入にあたって検討すべき事項は多いです。自社工場の塗装作業が過酷な業務になっていたり、効率化のボトルネックになっていたりする場合には、SIerと塗装ロボット導入の検討のしてみると良いでしょう。
塗装ロボット導入に際して検討すべきポイントは、以下の通りです。
- 導入の目的を明確化
- 導入費用とその効果が見合うのか確認
- 塗装ロボットに関する情報収集
- 「提案依頼書(RFP)」の原案を作成
- 導入を依頼する会社を選定
各ポイントの詳細は以下の記事に記載をご参考下さい。
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塗装ロボット導入するときに同時に導入したい周辺機器
塗料ポンプ
塗料ポンプは、塗料をロボットに取り付けられたスプレーやローラへ供給する役割を持ちます。
塗装の目的・用途に応じて導入すべきポンプの性能は変わります。超微細な塗装を実現するためには、微量の塗料の供給制御が可能なポンプを導入する必要があります。
また、塗料の粘度によって供給の安定性が変わることがあり、使用塗料に応じた詳細な事前設計が必要となるため、塗装ロボット導入の際に経験豊富なSIerに相談すべき項目と考えられます。
スプレー、ローラ
塗料を製品へ塗布するためには、スプレーやローラといったエンドエフェクタが必要です。
対象物が平面か曲面かなどによって適する部品は異なりますが、細かい塗装面が多い場合には微細な動作が可能なエフェクタを持ちいる必要があります。
安全柵
塗装作業で塗料に用いられる有機溶剤は、人体に有害であるため、塗装ロボットから生じた飛沫が周辺に拡散することを防止し、十分な空間を確保できる安全柵を設置する必要があります。
塗装ロボットでは、他の産業用ロボットと比較してより空間密閉性の高い安全柵を用いる場合が多いです。
塗装ロボットの導入事例
エアタンク塗装工程のロボット化
従来、熟練工による手作業で行われていたエアタンクの塗装工程を、塗装用ロボットシステムの導入により自動化した事例です。
本事例の塗装用ロボットシステムは、「自動投入ロボット」「垂直多関節ロボット」「焼入れ乾燥炉」から成り立っていて、このシステムにより、一日あたりの生産量の増加と作業人員数の減少が実現しました。
ローラの吊り/降ろし工程へのロボット導入
従来、ローラの塗装後のタッチアップ工程では、ローラの吊り作業、タッチアップ塗装作業、梱包作業、降ろし作業のすべてを人力で行っていました。
本事例では、この人力による過酷作業工程に塗装ロボットシステムを導入することで、吊り作業、タッチアップ塗装作業、梱包作業、降ろし作業のすべてを自動化しました。
タッチアップ工程は、ローラの増産のボトルネックとなる工程だったので、作業人員の削減、時間あたり生産量の増加を通じ、労働生産性が5倍以上向上しました。
伝統工芸の漆器の塗装作業へのロボット導入
漆器の塗装は熟練した職人によって一つずつ手作業で行われていますが、高齢化と後継者不足により産業用ロボットによる代替が模索されています。
本事例では、垂直多関節ロボットを導入し熟練工の塗装技術をデジタル的に再現することで、熟練工以外の作業員でも塗装が可能になりました。
ダイカスト製品のメッキ工程
ダイカスト製品をメッキ加工するメッキ加工工程は、自動化が進んでいないことが多い工程です。メッキ加工工程では、ダイカスト製品をメッキ治具に取り付け、メッキ加工後に製品を治具から取り出す作業を行います。
従来はすべて人力で行っていて、調整の難しさから自動化は難しいと言われていましたが、本事例では、双腕ロボットをメインロボットとする塗装ロボットによる完全自動化に成功しました。
作業人員が3人から1人へ減少し、時間あたりの生産量が1.5倍になるなど、大幅な生産性の向上が実現しました。
バルコニー避難間仕切り用ボードの塗装工程
バルコニー避難間仕切り用ボードの塗装は、従来は作業員がローラーで行っていましたが、品質の安定化、作業員の負荷軽減のために自動化の必要がありました。
この事例では、塗装ローラーを搭載した多関節ロボットを導入し、ボードの塗装工程を自動化しました。
作業スピードや生産量はそのままに、作業人員を1人に減少させる効率化を達成しました。
塗装ロボットの導入が得意なSIer
株式会社ロボプラス
ロボプラスは、ロボットの企画・開発をおこなているシステムインテグレーターです。
中小企業への産業用ロボット導入を得意としており、ロボットメーカー、ITシステム、行政機関とのネットワークを生かして最適なロボットシステムを提案しています。
組立工程の自動化等だけでなく、受付業務の自動化の実証実験などにも積極的です。
対応業種 | 製造業、小売業、卸売業、サービス業 等 |
対応プロセス | 塗装、陳列、接客 |
住所 | 兵庫県伊丹市西台3-9-20-301 |
URL | https://www.roboplus.co.jp/index.html |
ロボットスクールの有無 | 無し |
ロボットショールームの有無 | 無し |
株式会社豊電子工業
豊電子工業は、設計前の開発・提案、ロボットシステムや配電制御システムの製造、納品までを一貫してサポートするシステムインテグレーターです。
1964年の創業以来行っている、自動車部品事業、配電盤事業で培ったノウハウを活かし、ロボットSIerのリーディング企業として活躍しています。
対応業種 | 自動車部品、エレクトロニクス、建設 等 |
対応プロセス | 加熱処理、検査、ダイカスト、保守 等 |
住所 | 愛知県刈谷市一ツ木町5丁目12番地9 |
URL | https://www.ytk-e.com/ |
ロボットスクールの有無 | 有り(ファナックロボット) |
ロボットショールームの有無 | 無し |
髙丸工業株式会社
髙丸工業は、様々なメーカーのロボットを、工場自動化のニーズに最も合致したシステムとして提供するSIerです。ジェットトーチ、ジェットガンといった自社研究・自社開発のロボットツールを扱っている点が特徴で、周辺機器も含めた産業用ロボットシステムの完成度は他社の追随を許しません。
対応業種 | 金属、非鉄金属、製造業 等 |
対応プロセス | 溶接、搬送、バリ取り、塗装 等 |
住所 | 兵庫県西宮市朝凪町1-50 JFE西宮工場内 |
URL | https://www.takamaru.com |
ロボットスクールの有無 | 有り |
ロボットショールームの有無 | 無し |
まとめ
以上のように、多関節ロボットやパラレルリンクロボットを中心とした塗装ロボットの導入により、塗装工程の自動化と大きな労働生産性の向上が報告されています。塗装工程は、作業安全性の観点からも自動化のメリットが大きい分野です。
塗装ロボットの導入を検討する際は、本記事で紹介した塗装工程に長けたSIerに相談してください。