産業用ロボットSIer 300社掲載

2021.02.28

外観検査ロボットとは?できることや導入のメリットを紹介

外観検査装置とロボットが合体している外観検査ロボット。この記事では外観検査ロボットの構造から導入するメリット、実際の活用事例まで詳しく解説します。

この記事の結論

・外観検査ロボットとは出荷前の検品作業などを担当する産業用ロボットのこと
・外観検査ロボットは製品を撮影するロボットアームと撮影した画像を分析する画像検査装置から構成される
・外観検査ロボットを導入することで、作業や管理業務の効率化・省スペースといった効果が期待できる

外観検査ロボットとは

外観検査ロボットとは不良品や製品グレードの判定、出荷前の検品作業といった外観検査を担当するロボットです。

実際の製造現場ではワークの整列・搬送といった他のハンドリング作業と一体化している外観検査ロボットも数多く活用されています。

外観検査は自動化が難しい工程の一つとしても知られており、従来は一部の熟練工の感覚や技術に頼っていました。

しかし技術革新によって産業用ロボットの精度が向上したことで、外観検査工程にもロボットが積極的に導入されるようになってきています。

引用元:https://youtu.be/uRqRgZfXJaU

外観検査ロボットの構造

外観検査ロボットは、主に2つの部分から成り立っています。

  • ロボット
  • 画像検査装置

それぞれ詳しく見ていきましょう。

ロボット

ロボット部分はワークの撮影作業を担います。ロボット部分の形状としては多関節ロボットが採用されるケースが多いです。

多関節ロボットは人間の腕と同じような複雑なカメラワークができるため、複雑な形状の製品にも対応できる高精度の外観検査を実施することが可能です。

画像検査装置

画像検査装置とは画像を認識し、製品の可否を判別する装置であり、製品撮影用のカメラや照明、レンズ、画像処理ソフトなどで構成されます。

外観検査ロボットが撮影した製品画像を装置に取り込んだ後、画像検査装置が画像処理技術によって製品の可否を判定します。

また近年では、画像検査装置にAI(人工知能)を搭載することによって過去の製品データからAIがパターンを学習することで検査精度を上げていく取り組みなども進んでいます。

【関連記事】産業用ロボットにAIを搭載してできることとは|事例やメリットを解説

外観検査ロボットを使う4つのメリット

外観検査ロボットを導入することによって得られるメリットは主に次の4つです。

  • 作業の効率化
  • 品質管理がしやすい
  • さまざまなサイズ・角度に対応
  • 作業スペースをコンパクトにできる

一つずつ見ていきましょう。

作業の効率化

従来人が目視で実施していた外観検査作業をロボットで自動化することで、外観検査作業にかかっていた人数や時間が削減され、さらには生産量を向上させることができます。

またロボットであれば一定期間に一定速度で同じ作業を続けることができるため、納品スケジュールや出荷量の管理もしやすくなります。

品質管理がしやすい

手作業による外観検査では一定数の見落としなどが生じ、不良品を誤出荷してしまうリスクがあります。また農産物のグレードの判別などでは、手作業だと作業者の熟練具合などにより判別基準ににムラが出る可能性もあります。

一方、外観検査ロボットを導入すれば、人為的なミスを最小限に抑え製品の品質を一定に保つことができます。

また、先述のように外観検査ロボットにはAIの画像処理アルゴリズムが組み込まれており、検査回数を重ねるごとに検査精度の向上を図ることもできるようになっています。

【関連記事】QC7つ道具とは?品質管理の課題解決ツール紹介

さまざまなサイズ・角度に対応

外観検査ロボットは、画像検査装置にロボットアームの柔軟な動きが加わることによって、様々なサイズや形状のワークの外観検査に対応できます。

またロボットの方で検査(画像撮影)の方向を自動調整してくれるので、従来作業員が手作業でおこなっていたワークの位置決めなども自動化することが可能です。

作業スペースをコンパクトにできる

外観検査ロボットは関節を自在に操れるので、コンパクトなスペースを使って柔軟に外観検査をすることができます。

そのため大きなスペースが確保できない製造現場であっても限られたスペースを有効活用しながら導入を検討する余地があります。

外観検査ロボットの活用事例

ここでは様々な産業分野における外観検査ロボットの活用事例を3つ紹介します。

油圧機器の外観検査システム

外観検査ロボット(協働双腕ロボット)で画像センサと照明を操作し、取得した画像をAI技術で解析することで、多品種の油圧機器の外観検査を自動化しました。

外観検査ロボットとAIを使った画像認識技術の掛け算により生産性が大きく向上。また人と協働したシステムの構築により、従来のスペースを有効活用しながら自動化を実現することができました。

事例の引用元:『ロボット導入実証事業 事例紹介ハンドブック2018』p.56

ダイカスト鋳造品の外観検査システム

アルミダイカスト鋳造機で生産した製品の外観検査工程に外観検査ロボット(垂直多関節ロボット)を導入しました。

それと同時に、将来的な生産システムに対応するため、若手を中心に自社内でシステムインテグレーター育成体制の基礎を構築。

その結果、従来製品全数検査を3~5名が目視でしていた作業を自動化することができ、人件費や不良品などのコスト削減が実現しました。

事例の引用元:『ロボット導入実証事業 事例紹介ハンドブック2018』p.74

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樹脂成型品キャップの外観検査システム

従来手作業で行なっていた樹脂成型品キャップの外観検査作業に垂直多関節ロボットを導入しました。

その結果、製品の品質が安定するとともに、作業員の眼精疲労、肩こりといった肉体疲労や精神的ストレスが軽減され、過酷な労働環境が大幅に改善されました。

事例の引用元:『ロボット導入実証事業 事例紹介ハンドブック2017』p.106

外観検査ロボットのおすすめメーカー3選

外観検査ロボットに強いメーカーを3つ紹介します。

  • デクシス
  • 引地精工
  • AIハヤブサ

デクシス

株式会社デクシス (本社:千葉県船橋市)はキャップやボトルといった固体の外観検査はもちろんのこと、液体物や粉末の検査にも対応している外観検査の総合メーカーです。

中でも高精度の画像処理システムが搭載された人型ロボット「外観けんた君」は作業員と協働作業も可能であり、食品製造ラインなど様々な現場で活用されています。

引地精工

引地精工株式会社(本社:宮城県岩沼市)は比較的画像検査が難しい鏡面・局面形状のワークにも対応可能なロボット「HS-IR100」を手がけています。

電化製品や自動車部品などのメッキ仕上げ部品、塗装部品、樹脂成型品など幅広い形状・材質のワークに対応しているのが特徴です。

またHS-IR100は汎用性も高く、組立ラインや目視検査ラインといった既存の生産ラインに直接組み込むことが可能です。

AIハヤブサ

株式会社AIハヤブサ(本社:北海道函館市)は独自の開発プラットフォーム「AIハヤブサ」を軸に外観検査ロボットを手がけるメーカーです。

多関節のロボットアームによって携帯電話サイズの小さな部品から自動車のドアなどの大型ワーク、さらには撮影が難しいとされている曲面・鏡面ワークに至るまで、幅広い外観検査が可能です。

撮影された画像から画像処理にAIを搭載することで高精度化した「AIハヤブサ」が擦り傷、ピンホール、打痕、ブツ、へこみの他、塗装やメッキの色ムラなどの欠陥を自動抽出し、画像解析します。

まとめ

本記事では外観検査ロボットの構造から導入するメリット、実際の活用事例まで詳しく解説しました。

ロボットアームと画像検査装置が一体化した外観検査ロボットを導入することで、作業や管理業務の効率化、省スペースといった効果が期待できます。

外観検査ロボットを自社にも導入してみたいと思われた方は、この記事で紹介した導入事例、おすすめメーカーなどをぜひ参考にしてみてください。

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