産業用ロボットSIer 300社掲載

2021.03.31

産業用ロボットにAIを搭載してできることとは|事例やメリットを解説

AI(人工知能)による技術革新が目覚ましい昨今、製造業をはじめとする各種産業界においてもAIが搭載されたロボットが導入され始めています。

本記事では、産業用ロボットとAIの技術融合が進んでいる背景や産業用ロボットにAIを搭載するメリット、実際の導入事例について解説します。

この記事の結論

・産業用ロボットにAIを搭載することで、多品種多変量処理への柔軟対応・故障の事前予測といったメリットが期待できる
・従来の産業用ロボットにAIを組み込むことも可能
・AIでティーチングレスを実現することで、ロボットティーチングにかかるコストを削減できる

産業用ロボットにAIを搭載する4つのメリット

産業用ロボットにAIを搭載することによってどのようなことができるようになるのでしょうか?4つのメリットを紹介します。

  • ロボットティーチングを自動化できる
  • 多品種多変量処理にも柔軟に対応できる
  • ロボットの故障を事前予測することができる
  • 従来の産業用ロボットに組み込むことも可能

ロボットティーチングを自動化できる

従来の産業用ロボットではロボットに作業内容を教えるための「ロボットティーチング」のコストが課題とされていましたが、AIを搭載した産業用ロボットであればAIにティーチング作業を代替させることが可能です。

その結果、人間がティーチングをしなくともロボットが自動的な作業内容を習得する「ティーチングレス」の状態を実現することが可能になります。

AIを搭載した産業用ロボットを導入すれば、AIに備わっている自己学習機能によって製品パターンなどを自動的に学習し、多品種製品を自動で仕分けたり、高い精度でハンドリング・検品したりすることが可能になります。

たとえば2016年に経済産業大臣賞を受賞した「完全ティーチレス/ばら積みピッキングMUJINコントローラ PickWorker」は、最初の簡単な設定のみでティーチングレスを実現できるAI搭載ロボットです。

多品種多変量処理にも柔軟に対応できる

AIを搭載した産業用ロボットを導入することによって、従来の産業用ロボットが苦手としていた多品種多変量の製品を取り扱う作業も効率化することができます。

たとえば、大きさや向きが不揃いな製品の位置や角度などを認識しアームを柔軟に制御して取り出す作業や、熟練工の腕や経験に頼っていた繊細な外観検査などもAI搭載ロボットで再現することが可能となりました。

ロボットの故障を事前予測することができる

AIによってロボットの動作音や振動データを収集、解析して異常を自動検出する仕組みも開発されています。

この仕組みを活用すればロボットの故障を事前に予測できるので、メンテナンスを適切なタイミングで行うことができ、故障防止に繋がります。

従来の産業用ロボットに組み込むことも可能

産業用ロボット向けに開発されたAIは互換性が高く、すでに現場で稼働しているロボットに追加で搭載することも可能です。

導入時の初期コストはかかるものの、上述のティーチングコストの削減など費用対効果が高いので、長期的に見れば先行投資としてAI搭載を検討する価値は十分にあるでしょう。

AIを搭載した産業用ロボットの導入事例

ここではさまざまな産業分野においてAI搭載の産業用ロボットがどのように導入されているのか、また導入したことによりどのような効果があったのか、具体的な事例を3つ紹介します。

多品種油圧機器外観検査システム

建設機械用の多品種油圧パイロット弁の外観検査に、AIを搭載した協働ロボットを導入しました。

双腕型の協働ロボットとAIによる画像認識技術を組み合わせることで、熟練工に頼っていた外観検査技術の自動化した結果、労働生産性は10倍に向上。また人とロボットが協働できるシステムを構築したことにより、すでにあるスペースを有効活用しながら自動化を無理なく実現することができました。

事例の引用元:『ロボット導入実証事業 事例紹介ハンドブック2018』p.56

ホームタンクのプレス絞りシステム

ホームタンクの製造過程におけるプレス加工油の塗布作業は従来熟練作業者の腕に頼っていましたが、ホームタンクは重量物であるため、女性や高齢者は従事することが難しいという課題を抱えていました。

そこでAIを搭載した垂直多関節ロボットを導入。AIによって塗布方法を最適化させた上でプレス加工油をワークに塗布し、ハンドリングをするまでを一元化・自動化させました。

その結果、労働生産性は従来比の2.3倍に向上し、2人の省人化を達成することができました。

事例の引用元:『ロボット導入実証事業 事例紹介ハンドブック2017』p.102

アルミホイールのバリ取りシステム

アルミホイールのバリ取り工程においてAIを搭載した垂直多関節ロボットを導入しました。

AIで生産現場の画像情報を解析することによって臨機応変にロボット動作を制御できるようにした結果、柔軟性の高い生産ラインとなり、労働生産性が従来比の2倍に向上しました。

事例の引用元:『ロボット導入実証事業 事例紹介ハンドブック2018』p.60

AIを搭載した産業用ロボットが注目されている背景

産業用ロボットは生産性を向上させることができる一方で、ロボットティーチング(作業内容の教示)や、定期的なメンテナンスなどには専門的な知識や教育コストが必要となることが、ロボット導入の大きな障壁となっていました。

このような現状を打破するための解決策として注目されているのが、AIを搭載した産業用ロボットです。

上述のように、AIを搭載することによってティーチングなどの工程をより効率化・単純化することが可能となります。そのためロボットの専門人材やが不足しがちな町工場などにとっても導入時のハードルがさがり、産業用ロボットの導入がさらに加速することが期待されています。

まとめ

本記事では産業用ロボットと産業用ロボットにAIを搭載するメリット、実際の導入事例などについて解説しました。AI搭載の産業用ロボットを活用することで多品種多変量処理や故障の事前予測など、工場の生産性を上げるさまざまな施策が可能となります。

さらにティーチングレスによってロボット導入時の技術的・予算的ハードルも低くなりつつあるので、先行投資としてAI搭載ロボットの導入をぜひ検討してみてください。

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