産業用ロボットSIer 300社掲載

2021.04.30

協調ロボットと協働ロボットの違いは?言葉の使い分けや産業用ロボットとの違いも解説

近年、「人間協調型ロボット」や「協調ロボット」、「協働ロボット」などの言葉を聞く機会が増えましたが、協調ロボットと協働ロボットはどのような違いがあるのでしょうか。言葉の使い分けや産業用ロボットとの違いについて解説します。

この記事の結論

・協調ロボットと協働ロボットは同じ意味で使われる言葉
・ロボットと人が協力することを強調するときは協調ロボット、同じ目的で働くことを強調するときは協働ロボットと呼ぶ
・協調ロボットも協働ロボットも産業用ロボットの中に含まれるが、より小型であることが多い

協調ロボットと協働ロボットに違いはない

「協調ロボット」と「協働ロボット」は、同じ意味の言葉として使われていることが一般的です。また、「人間協調型ロボット」という言葉も、同様の意味で使われていることが多いです。特に注釈などをつけて使い分けをしていないときは、協調ロボットも協働ロボット、人間協調型ロボットも同じものを指していると考えても良いでしょう。

人間協調型ロボット、協調ロボット、協働ロボットのいずれも、安全性が高く人と共に作業できるロボットのことを指します。また、安全柵が不要で、センサで人間やスピードを感知し、必要に応じて作業スピードを調整することができるロボットも、人間協調型ロボットや協調ロボット、協働ロボットと呼ばれることがあります。

協調ロボットと協働ロボットの意味の違い

協調ロボットも協働ロボットもいずれも安全性が高く、人と共に作業ができるロボットを指します。特に使い分ける必要はありませんが、厳密に言葉の意味を探れば違いがないわけではありません。

協調ロボットとは

「協調」とは互いに協力し合うことです。特に立場が違う者同士が協力し合うことを指すことが多いので、人間とロボットという異なる立場の者が協力することを強調するときには「協調ロボット」という言葉が使われることがあるでしょう。

例として、ある工場ではネジ締めやパーツを用意する作業はロボットが担当し、製品が完成する前に人間が手作業で紋章を入れるとします。ロボットと人間は異なる作業を担当しますが、作業全体の流れで見れば協力し合い、お互いが持つスキルを合わせることで製品が完成しています。この場合は「協調」していると考えられるので、ロボットに関しては「協調ロボット」と呼ぶことができるでしょう。

協働ロボットとは

「協働」とは同じ目的のために一緒に働くことです。対等な立場で働くことを指すことが多いので、人間とロボットが同じ目的(製造や検品等)のために一緒に働いているということを強調するときには「協働ロボット」という言葉が使われることがあるでしょう。

例として、ある工場では、人間とロボットが同じ作業レーンで作業しながら、安全性を確保するために適切な距離を保っています。組み立ての工程では、重い部品や鋭利なパーツについては協働ロボットが担当し、軽量で取り扱いが容易なパーツについては人間が担当しています。これらの役割分担により、人間とロボットが同じ目的で協力して作業しているため、「協働ロボット」と呼ぶことができます。

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人間協調型ロボットとは

「人間協調型ロボット」という言葉には、人間とロボットが協力して作業を行うという意味が含まれています。

そのため、単に追随するだけではなく、人間と共同で作業を行うことが求められます。
「協働ロボット」という言葉は、人間とロボットが互いに支援し合いながら作業を行うことを意味しています。こちらの言葉の方が、より対等な立場での作業を表現する言葉といえます。

産業用ロボットと協調ロボット・協働ロボットとの違い

協調ロボットと協働ロボットは厳密な意味では異なる意味がありますが、人間と一緒に働くロボット全体を指して使うときはほぼ同義とされています。両者とも、産業用ロボットの一種であり、人と協力して作業をすることに重点を置いた新しいタイプのロボットと言えます。

しかし、人と協力して作業をするという概念が生まれる前の従来の産業用ロボットと、協働ロボット・協調ロボットには、以下の4つのポイントにおいて大きな違いがあります。それぞれの違いについて見ていきましょう。

  • ロボット本体の大きさ・重量
  • ロボットの設置に必要なスペース
  • ロボットの可搬重量
  • 安全柵の必要性

ロボット本体の大きさ・重量

通常、協調ロボットや協働ロボットは小型で軽量であり、従来の産業用ロボットと比較して本体サイズが小さいものが多いです。そのため、制御不能に陥った場合でも周囲の人々に危害を及ぼす可能性が少なく、安全性が高いという特徴があります。また、協働ロボット・協調ロボットは人と同じスペースで作業することを前提としているので扱いやすく設計されています。

さらに、小型で軽量なので、協働ロボット・協調ロボットの設置が簡単であることも特徴のひとつです。従来の産業用ロボットは大型で重量も大きいため、設置後の移動が困難であり、作業スペースに合わせて位置を調整することもできないことが多いです。

ロボットの設置に必要なスペース

協調ロボットや協働ロボットは、小型であるため広いスペースを必要としません。また、従来の産業用ロボットと比較してアームが短く、可動域も狭いため、作業中に人とぶつかることが少ないというメリットがあります。

そのため、協調ロボットや協働ロボットは、元々の作業レーンを変更することなく利用できることが多く、設置環境を整えるためのコストを削減できます。一方、従来の産業用ロボットは、ロボットを設置するための環境が必要であり、重量に耐えられる特別な作業台や、可動域に配慮した広い空間が不可欠な場合が多いです。

ロボットの可搬重量

協働ロボット・協調ロボットは小型かつ軽量なので、ロボットの可搬重量も少ないという特徴があります。一般的には、500g程度のものから多くても35kg程度のものが使用されます。そのため、重量物の運搬にはあまり適していません。もし重量物を運搬する用途でロボットを導入する場合は、協働ロボットや協調ロボットではなく、従来の産業用ロボットが適しているでしょう。

安全柵の必要性

協調ロボットや協働ロボットは、人と一緒に作業することを目的に開発されているため、ほとんどのタイプは安全柵を必要としません。
その他の産業用ロボットは、安全柵が必要であり、設置やスペースの確保に費用がかかることがあります。

従来の産業用ロボットを導入する際には、作業レーンを移動させる必要があるため、工場の構造自体に手を加えることも必要です。
そのため、協働ロボットや協調ロボットを導入する場合に比べて、ロボット導入時にかかるコストは高額になる傾向があります。

協調ロボットと協働ロボットについて

特別に注釈がない限り、協調ロボットと協働ロボットは同じ意味で使われます。どちらも人間と協力して作業を行い、従来の産業用ロボットと比べて小型かつ軽量で、安全性を必要としないという特徴があります。工場自体の構造に手を加えずに導入することも可能なので、少しでもコストを抑えて工場をロボット化しようと考えている方も検討してみましょう。

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