目次
ロボットを動かしたり、外部機器との信号のやりとりをしたりする際に必ず必要なのがロボットケーブルです。一口にロボットケーブルと言っても、用途によって素材や特性が異なり、多くの種類が存在します。最適なロボットケーブルを選択するには、どのような点に注意すべきか、詳しくご説明します。
ロボットケーブルとは
ロボットケーブルとは、ロボットアームの配線やケーブルベア配線で使われるケーブルのことで、FAケーブルとも呼ばれています。一般的なケーブルと比較して、屈曲回数や曲げ半径などに優れ、細かい反復運動への耐久性があるのが特徴です。
また、ロボットケーブルの中には、産業用ロボットや工作機械などの利用環境に合わせて、耐熱性・耐油性・耐薬品性を備えた製品もあります。
参照文献:
Difference ロボットケーブルと汎用ケーブルの違い
ロボットケーブルの選定・通販 | MISUMI(ミスミ)
ロボットケーブルの構造
ロボットケーブルは、複数の導体をまとめて撚(ひね)った多芯構造をしています。多心構造にすることで、屈曲や捻回といった複雑な動きに対応できるためです。
ロボットケーブルを使用する環境によって、最適な導体の本数・撚りや絶縁体の種類は異なります。そのため、構造を理解し、ロボットケーブル選定の際に考慮する必要があります。
参照文献:
導体本数・撚りの種類
導体には、電力や信号などの電気を送る役割があります。導体の撚り方は、ケーブルの耐屈曲性や耐ノイズ性に影響を与えるので、押さえておきましょう。撚り方には、以下のような種類があり、撚り方向は右撚り(S)と左撚り(Z)があります。
絶縁体の素材
絶縁体には、導体の保護とショートの防止という役割があります。絶縁体の素材によって、可動性・難燃性・柔軟性などの性能が変わります。それぞれの素材の性質を把握しておきましょう。また、素材の種類によってコストも異なります。
例えば、熱可塑性を持つフッ素樹脂素材(ETFE)は、可動性に優れていますが、高価な素材です。そのため、内部温度の変化がない場合は、可動性が高いがコストは抑えられる特殊エラストマーを使用する場合もあります。
ロボットケーブルの種類
ロボットケーブルには大まかに3種類のケーブルに分類されます。可動用ケーブル、固定用ケーブル、ネットワーク用ケーブルです。
参照文献:
ロボットケーブルの選定・通販 | MISUMI(ミスミ)
FAロボットケーブル|製品情報(岡野電線株式会社)
ロボットケーブル選定を失敗しない方法とおすすめメーカ3選(日本サポートシステム)
可動用ケーブル
可動用ケーブルは、ロボットアームやケーブルベアに使われるケーブルです。可動用ケーブルの中でも、用途(首振り・捻回・摺動)によって高速可動部用・中低速可動部用・ケーブルベア用の3種類のケーブルに分けられます。
高速可動部用ケーブル
「首振り」や「ねじり」といった高速動作に耐え得る耐久性の高い構造になっています。滑り性と反発性の高いフッ素樹脂の絶縁体を使用しており、耐屈曲性に優れています。
中低速可動部用ケーブル
「曲げる」や「捻る」といった、速さよりも精度が求められる箇所に使用するケーブルです。絶縁体には、柔軟性の優れた特殊エラストマーなどの素材を使用することが多いです。
ケーブルベア用ケーブル
ケーブルベアは単純な動きを繰り返し行います。修道するケーブルベアの中で、長く安定して使用できるような、耐久性の高いケーブルを選定します。
固定用ケーブル
ロボット本体とコントローラを繋ぐケーブルは、基本的に固定用ケーブルです。固定ケーブルによって、駆動用の電力を供給しています。高い耐油性・耐熱性を備えています。
ネットワーク用ケーブル
通信専用のケーブルです。ロボットとパソコンやセンサなどの外部機器との通信に使用します。DeviceNet・CC-Link・EtherNet/IPなど、ネットワークによってケーブルが異なります。
失敗しないためのロボットケーブルの選び方
配線環境
ロボットケーブルが配線される環境を考慮することが大切です。例えば、周囲温度、屋外か屋内か、油や薬品の対策をしなければいけないか、といった条件によって適切な外皮(シース)の素材が異なります。
また、設備のレイアウト次第で、ケーブル長を選定する必要があります。レイアウト変更によって買い直しが発生する場合もあるので、余裕を持った長さで発注しておくと良いでしょう。
動き・用途
ロボットケーブルを設置する機器の動きや用途も、ケーブルを選定する上で考慮が必要です。前述の通り、可動用ケーブルは、機器の動きが屈曲か捻回か摺動かによって、どのような特性のケーブルを選べば良いかが異なります。
例えば、ケーブルベアで使用するハーネスは、ロボットアームのような屈曲動作をする箇所には向いていません。ロボットアームに使うケーブルの場合、捩り動作が多いため、導体の撚り線ピッチを長くし動きやすくする工夫をします。
一方でケーブルベア用の場合は、直線動作を繰り返し行ってもケーブルがねじれることのないよう、撚り線のピッチを短くしています。
参考文献:【連載4】いかにして正しいケーブルを選定するか! 工業用ケーブル選びの勘所
規格
各国でロボットケーブルの規格が違うので注意しましょう。日本ではJIS規格・JCS規格、中国ではCCC規格、アメリカではUL規格など国によって違いがあります。
ロボットケーブルの断線事例と対策
アームやケーブルベア内に配線されるロボットケーブルは、断線などの不良が発生すると取り替えに手間がかかります。また、その間ラインの稼働が停止するので、なるべく長く使用できるようにしたいものです。ここでは、よくある断線事例と断線対策についてご紹介します。
参考文献:ロボットケーブルの断線やねじれの原因
事例① コークスクリュー現象
曲げ動作において、個々の線心に過負荷がかかることで導線が破断した場合、ケーブル自体がねじれる形になります。原因は様々ですが、ケーブル自体の構造が不適切、曲げ半径が小さすぎる、ストロークが長すぎるなどの可動条件に起因していることが多いです。
事例② ロボットケーブル外皮の破損
ロボットケーブルの外皮が柔らかくなって変形したり、損傷を受け中のシールドや導線が見えるようになることがあります。油脂や薬品に耐性のあるものを使用しなかったなど、状況に合わせたケーブルの選定ができていない場合に起こり得ます。
断線対策
対策としては、条件にあった機能を持ったケーブルを選定するようにしましょう。また、定期交換やケーブルのストックを持つといった事前の対策もあると良いでしょう。
さらに、ケーブルカバーを装着することによって、熱や油、薬品からケーブルをカバーすることも対策につながります。ケーブルカバーは、株式会社ファスコジャパンなどのロボットカバーメーカーで取り扱いがあります。
ロボットカバーメーカーについては、こちらの記事で詳しく書いているので参考にしてみてください。
【関連記事】ロボットカバーとは?メリットと導入のポイントを解説
ロボットケーブルの代表的なメーカー3選
①大電株式会社
大電株式会社は、福岡県に本社を置くケーブルメーカーです。ロボットケーブル業界で20年以上にわたり国内シェアNo.1を維持し続けています。歴史は長く、約40年間にわたり、ロボットケーブルの開発に携わってきました。そのため、豊富なノウハウや技術の蓄積があります。ユーザーの要望に応じた、カスタム設計のロボットケーブルを提案している点が特徴です。
太陽ケーブルテック株式会社
太陽ケーブルテック株式会社は、電線・電線加工品の製造・販売を行うメーカーです。本社は、大阪府にあります。製品のラインナップが豊富で、ロボットアームとケーブルベアの両方に対応可能です。日本・アメリカ・カナダ・ヨーロッパ・中国などグローバルな規格に対応した製品を取り揃えています。
④OKI電線
OKI電線株式会社は、電線事業を展開する神奈川県のメーカーです。OKI電線は、特殊エラストマー絶縁を採用したロボットケーブルを得意としています。フッ素加工絶縁よりも低コストで、かつ屈曲性にも優れた製品を販売しています。
まとめ
ロボットケーブルは、導体の本数や撚り方、絶縁体の種類によって様々な種類があります。ケーブル選定の際には、配線するロボットや機器の動きや用途、配線環境を考慮しなければなりません。ロボットケーブルの選定を誤った場合、断線の恐れもあります。また、断線対策として、ケーブルカバーの装着もおすすめです。
今回ご紹介したケーブルメーカーのように、ユーザーの要望に合わせてケーブルを設計・製作してくれるメーカーも多くあります。メーカーと相談の上、最適なケーブルを選定しましょう。