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建材製品の製造・販売・施工までを一貫して行なっているナカ工業株式会社。今年で創業90周年を迎え、全国に19拠点・世界には5ヶ所の拠点を持つ。ロボットの導入により従業員の労働時間短縮に成功した経緯について、宮本様・篠田様に話を聞いた。
【会社概要】ナカ工業株式会社
商号 | ナカ工業株式会社 NAKA CORPORATION |
代表者 | 代表取締役 佐久間 克行 |
設立 | 1932年(昭和7年)4月15日 |
本社 | 東京都台東区東上野2-18-2(日本生命上野ビル3F) |
資本金 | 8億6000万円 |
年商 | 183億円[2021年(令和3年)3月期] |
社員数 | 566名[2022年(令和4年)3月現在] |
事業内容 | 建材製品の製造・販売・施工 一般ビル公共施設 フリーアクセスフロア、廊下・階段手すり、バリアフリー補助手すり、階段すべり止め、柱・壁保護材、点検口、避難器具、抗ウイルス製品ほか 住宅 バリアフリー補助手すり、避難器具、点検口ほか |
ロボカル矢部:
はじめに、御社の事業内容についてお願い致します。
宮本工場長様:
当社は建材製品の製造・販売・施工までを一貫して行っています。主に一般ビルの公共施設、住宅関連の建材事業を行っており、札幌から鹿児島まで全国に19か所の販売拠点があります。海外にはアジア圏を中心に上海・香港・珠海・ベトナム・シンガポールに拠点があります。工場は札幌・つくば・東京・滋賀の4か所にあり、それぞれ生産品目が異なっています。
【ロボット導入について】
ロボカル矢部:
ロボットはどのような部分に導入されたのでしょうか?
宮本工場長様:
手すり関連のエンドキャップや中間のプラケットのカバーで木目調の射出成形を行っており、その過程でどうしても人の手での作業が必要となっていたため、その工程をロボットで簡素化しました。
滋賀工場で笠木の生産を行い、射出成型を行っているつくば工場にロボットを導入しました。
ロボカル矢部:
いつごろからロボットの導入を検討されていたのでしょうか?
篠田様:
導入が2016年で、2年前の2014年から人での作業を減らす検討を始めました。以前使用していたロボットが廃番になり、故障時の部品の供給が止まってしまったことも要因の一つですね。
以前のロボットは加工の工程だけで、仕上げは人の手で行っていたのですが、今回のロボット化で仕上げの工程まで自動化できるように考えていました。
ロボカル矢部:
2年間はどのようなことを検討されていたのでしょうか?
篠田様:
仕上げの工程で成形後に寸法の変化が起きるため、その変化を修正しながら仕上げを行わないと製品にばらつきが出てしまうという課題がありました。今までは人の手でその修正作業をしていたので、ロボットに置き換えたときに対応できる業者を選定するのに2年かかりました。
面取り・仕上げの工程は昼夜交代で8時間ずつ常に作業者を1人置かないと生産が間に合わない状態で、人によっても品質や作業量に差があり、ロボット導入の必要性を感じていました。
【Sierについて】
ロボカル矢部:
業者選定はどのように行ったのでしょうか?
篠田様:
商社さんから3社ほど紹介をいただき、それぞれ特徴のあるSierだったのですが、金属加工の経験があってもプラスチック加工に対応したSierがあまりおらず、その中でも日本省力機械さんはプラスチックのバリ取りや面取りを専門に行っていましたのでお願いしました。
ロボカル矢部:
日本省力機械さんに決められるまでにはどのくらいの時間がかかりましたか?
篠田様:
だいたい1年ほどですね。紹介いただいた3社と月に1度は打ち合わせを行っていたのですが、なかなか良い案が出なかったです。その中で日本省力機械さんは最初から納得できる提案をしてくださいました。ただ日本省力機械さんがとても忙しく、一度は諦めて他のSierも検討したのですが、日本省力機械さんにしかできないと思い、半年後に再度連絡した際には了承いただいたので、1年間という時間がかかりました。
ロボカル矢部:
ロボットの選定はSierが行ったのでしょうか?
篠田様:
そうですね。ロボットの仕様に関しては全て日本省力機械さんにおまかせしました。
ロボカル矢部:
金額は全体でおいくらでしたか?
篠田様:
約3,000万円です。そのうち1/2を補助金で賄いました。
補助金に関しては、ロボットの導入を進めていく中で商社さんからご紹介いただいて申請しました。会社内では既に予算が立てられていたので、補助金が無くても導入するつもりでした。
ロボカル矢部:
発注から納入までどのくらいかかりましたか?
篠田様:
9月に発注して1月に納入されたので、約4か月です。
ロボカル矢部:
納入から稼働まではどのくらいかかりましたか?
篠田様:
設置工事に1週間、調整に3日かかったので10日後には量産できるようになりましたが、当初予想していなかった不具合が起き、1か月間で問題点を洗い出して再度工事を行ったので、本格生産に入ったのは1.5か月後です。
ロボカル矢部:
日本省力機械さんにお願いしていかがでしたか?
篠田様:
とても経験豊富で勉強させていただきました。半分諦めていたことを実現していただけたので本当に感謝しています。有難いことに5年間一切不具合もなく、連絡を取ることがないので、寂しくてたまに当時の担当者の方と電話で雑談するような関係になっています。不具合の連絡は一度もしていないですね。
【ロボット導入の感想】
ロボカル矢部:
実際に導入してみて、いかがでしたか?
篠田様:
これまで昼夜拘束していた作業から解放されたことが1番大きいですね。人が必要なくなったことで、より生産性の高い業務に人手を充てることができるようになりました。
また、自動化されたことで24時間生産が可能になり、夜間勤務を無くすことで労働環境が改善されました。
さらに、当社の社内制度で改善提案制度があるのですが、今回のロボット導入をきっかけに社員の意見が活発に出るようになり、会社全体に良い影響がありました。
ロボカル矢部:
導入にあたって苦労した点はありましたか?
篠田様:
人間が行っていたことをロボットにやらせようとすると、どうしても色々な問題が発生しました。特に導入直後は仕上げが均一にできず、生産タクトが伸びてしまい、それらの問題に対応するのに苦労しました。ひたすらトライ&エラーを繰り返して、そこで出た案を日本省力機械さんと協議して再度工事を行いました。もともと難しい案件とは思っていましたが、原因の分析に思っていたより時間がかかってしまいました。しかし、粘り強く取り組むことで満足のいく品質を出せるようになりました。今回試行錯誤をした経験は会社のノウハウとして蓄積されていくため、貴重な財産になりましたね。
【2台目以降のロボットについて】
ロボカル矢部:
その後、他のロボットは導入されていますか?
篠田様:
2年後に人が行っていた成形後の梱包作業もロボット化しました。今後も3K労働(きつい・汚い・危険)の部分で自動化を進めていき、労働環境をより良くしていきたいと考えています。
宮本工場長:
会社としても単純な老朽更新ではなく、付加価値のある設備投資を行っていく方針で、つくば工場も来年で築30年を迎えるため、ロボットの導入や自動化を今後も進めていきたいと考えています。
ロボカル矢部:
最後に、ロボット導入を検討されている会社さんにアドバイスをお願いします。
篠田様:
やっぱり表面上の部分だけ見てロボット化しようとすると上手くいかないと思います。その奥にある思いや現場の状況まで深く考えていく必要があると思います。私も2年の間に会社から時間がかかりすぎだと指摘を受けたこともありますが、それだけ真剣に向き合ったからこそ不具合もなく稼働できていると思います。
宮本工場長様:
現代の技術の進歩は素晴らしいので、今まで出来なかったことだからといって諦めずにチャレンジ精神をもって取り組んでいけば必ず実現できると思います
ロボカル矢部:
貴重なお話ありがとうございました。
宮本工場長様・篠田様:
ありがとうございました。