産業用ロボットSIer 300社掲載

2023.03.01

フレーム磨き工程にロボット導入。世界的アイウェアブランドの挑戦

金子眼鏡株式会社
【インタビューご協力者】市川様・粟田様
kanekomegane

世界的に有名なアイウェアブランドの金子眼鏡。メガネフレームの研磨作業「磨き」の作業効率化を図るため、ロボット導入に至ったと言います。「金子眼鏡しか出来ないことは何なのか」を追求したのち、たどり着いたロボット導入の全貌を金子眼鏡の市川様・粟田様に伺いました。

【会社概要】金子眼鏡株式会社

金子眼鏡インタビュー
商号金子眼鏡株式会社
代表取締役金子 真也
設立1986年4月(創業:1958年4月)
本社福井県鯖江市
事業内容    アイウェアの企画・製造・卸および販売
<リテールビジネス部門>国内直営事業 / 海外直営事業
<ホールセールビジネス部門>国内卸事業 / 海外卸事業 / アパレル卸事業
<プロダクトビジネス部門>製造事業

https://www.kaneko-optical.co.jp/

金子眼鏡だからできる一貫した生産

ロボカル矢部:
まず、御社の事業内容について簡単にお願い致します。

市川様:
もともとメガネの企画と卸を行っており、弊社のオリジナルデザインのメガネを鯖江市のメガネメーカーさんに製造を依頼して販売していました。地場産業は人手不足によって衰退傾向にあり、今後供給が滞る可能性があると感じて13年前ほど前から自社で製造を行っていくようになりました。製造としては後発だったので内製化するのであれば、地場産業の特徴である分業制から自社で一貫生産できる体制を構築するために試行錯誤しました。

ロボカル矢部:
どうして自動化をしようと思ったのでしょうか?

市川様:
一貫生産で自社製品の製造を行えるようになったのですが、今ある技術を集めただけの状態だったため、「金子だからこそできるもの」は何かを考えたときに、効率化して無駄を省いていくことが必要だと感じました。

ロボット導入を決意した理由

ロボカル矢部:
ロボットの導入を検討し始めたのはいつごろでしょうか?

市川様:
5〜6年前ですね。ちょうど補助金やメディアでロボットの知名度が上がっており、導入を検討し始めました。

ロボカル矢部:
どの工程にロボットを導入したのでしょうか?

市川様:
「磨き」という工程に導入しました。

とても根気のいる作業で、60〜70歳の方が大半という若い方に定着しづらいものなんです。手作業なので、1日に生産できる数に限りがあるという状況でした。

メガネの製造において「磨き」が1番作業時間が長く、作業者の負担も大きいため、自動化することで効率化を図り、スキルが必要な工程に多くの人をあてることができると思いました。

Sierとの出会いでロボット導入がスムーズに

ロボカル矢部:
今回、ロボットのインテグレーションを依頼されたのがヤマハファインテックさんとのことですが、どういう経緯でヤマハファインテックさんにお願いされたのでしょうか?

市川様:
展示会ですね。グランドピアノの研磨作業を行っているロボットを見て、これは活用できると思いお声がけさせていただきました。

ロボカル矢部:
ほかのSierさんにもお声がけはされましたか?

市川様:
他Sierさんのバリ取り装置などのロボットもいくつか見ましたが、商談が続かなかったですね。
その点、ヤマハさんは熱心に取り組んでくださったので、そこも決め手になりました。

ロボカル矢部:
発注まではどのくらい時間がかかりましたか?

市川様:
だいたい半年程ですね。打ち合わせは3〜4回でした。
自社内で全体の構想は出来上がっていたので細かい部分を話し合いました。メガネを実際磨けるかどうかの調整に苦労しましたね。

ロボカル矢部:
テストはされたんですか?

市川様:
ロボットとハンドがあれば研磨ができるかどうかは確認できたので、試作機を作っていただいてテストを行いました。

ロボカル矢部:
ロボットの選定はヤマハファインテックさんが行ったのでしょうか?

市川様:
ロボットなどメーカーの選定はヤマハファインテックさんにお任せしましたね。

ロボカル矢部:
設備は全体でおいくらだったんですか?

市川様:
4000万円ほどです。補助金を活用できたので、費用の2/3は補助してもらいました。

自社でオフラインティーチングを実施

自社でも勉強しながらロボット導入に挑戦している

ロボカル矢部:
その後別のロボットは導入されていますか?

市川様:
もともと私が構想しているものがいくつかあり、今はその部分へのロボット導入を進めています。ヤマハファインテックさんにお願いした時にロボットについて勉強するようになり、ファナックさんの力センサーを使って独自でロボット導入を行っています。オフラインティーチングも社内で行っていますね。

ロボカル矢部:
それは3DCADに対してオフラインで行っているのでしょうか?

市川様:
メガネの製造でマシニングセンタを使用する工程があり、もともと3DCADを使っていましたので、そのノウハウを応用しました。

ロボカル矢部:
ソフトは何を使っているのでしょうか?

市川様:
2DCADはメガネ用のものがあって、3Dはマスターキャムを使っています。
オフラインティーチングはファナックさんのものを使用しています。

ロボット導入で得た生産性

ロボカル矢部:
導入してよかった点をお願いします。

市川様:
人の代替として活用できている点ですね。研磨だけでなく搬送まで自動化したことで24時間体制で生産できるようになったので、それは非常に有難いです。

ロボカル矢部:
全部で何台導入されているんですか?

市川様:
8〜9台ですね。磨きだけでなく、切削、搬送まで行えるようになりました。

ロボカル矢部:
想定外なことや、苦労した点などはありましたか?

市川様:
基本的には事前の情報収集を念入りにしていたため想定内でした。

ロボット導入で期待する未来

次世代にノウハウを伝えていきたい

ロボカル矢部:
今後導入を予定している会社さんにアドバイスをお願いします。

市川様:
ロボット=大量生産のイメージが強いと思うのですが、それだけでなくこれからは人の代わりとして活用することもできると思います。人手不足の中で次の世代に受け継いでいくためにも、若い世代にそのノウハウを学んでもらう必要があると思います。

ロボカル矢部:
主体性が重要ということですね。

市川様:
そうですね。ロボットありきではなく、事業をよりよくしていくための1つの選択肢として考えることが大事だと思います。

ロボカル矢部:
今後はどのような部分にロボットを導入していくのでしょうか?

職人とロボットの棲み分けで採用も積極的に

市川様:
きめ細かい作業は人間でなければできないので、全てをロボット化するつもりはないです。初期段階の部分はロボットに任せて、仕上げは人の手で行う、棲み分けをしていきたいと思っています。
手先が器用ではない方もみえるので、プログラミングなどの多様な新しい人材の雇用も生み出せると思います。
Sierさんも忙しいところが多いので、自動化も自社で行えるようにしていきたいですね。

ロボカル矢部:
今後さらにメガネの生産にロボットが導入されていくのが楽しみですね。
本日はありがとうございました!

市川様:
ありがとうございました。

【編集後記】

ものづくりに対して貪欲に向上させていこうという姿勢がとても印象的でした。
オフラインティーチングなどの最新の技術も取り入れながら、ロボットの性能をフル活用する一方、人でしかできない繊細な作業とロボットの棲み分けという考え方も理にかなっていて、今後のトレンドになると感じました。有名な鯖江のメガネですが、このように最新技術と伝統の融合で更に文化として強くなっていってほしいです!

株式会社ロボカル
技術営業部責任者
矢部秀一

早稲田大学卒業後、川崎重工業株式会社のロボット部門にて海外営業、国内営業を経験。
大手自動車メーカーや電機メーカーなどに向け約10年間で通算2,000台以上のロボットの販売に携わる。日本の強みである産業用ロボット業界を更に発展させるため、株式会社ロボカルの立ち上げに従事。ITの力で産業用ロボット業界のビジネス環境を向上させることを目指す。