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ワイヤーハーネス製造工程のレーザーマーキング装置へのドラムからの電線送りのロボット化に成功し、1日当たりの電線ドラム交換時間を84%削減、生産量の50%増加を実現した各務原航空機株式会社様に導入までの経緯と今後についてお伺いしていきます。
【会社概要】各務原航空機器株式会社
商号 | 各務原航空機器株式会社 |
代表取締役 | 代表取締役会長 橋本 繁明代表取締役社長 橋本 将宏 |
設立 | 1968年4月 |
本社 | 岐阜県各務原市 |
資本金 | 1,000万円 |
事業内容 | 航空宇宙用技術試験・実験装置の設計製作 |
主要取引先 | 川崎重工業株式会社、三菱重工業株式会社、新明和工業株式会社、日本飛行機株式会社、株式会社SUBARU、ヤマハ発動機株式会社、タイコエレクトロニクスジャパン合同会社 |
http://www.kae-gifu.co.jp/profile/
ロボカル矢部:
まずはじめに、御社の事業内容についてお願い致します。
橋本様:
当社は航空機や特殊車両などの防衛関係の装備品に搭載されるワイヤーハーネスの製造を行っております。
ロボカル矢部:
ワイヤーハーネスはロボット化がかなり難しい分野だと思うのですがいかがでしょうか?
橋本様:
自動車関係にはワイヤーハーネスは搭載されているのですが、自動車だと同じものを大量生産すれば良いのに対して、航空機の場合は一機あたりに搭載されるワイヤーハーネスの種類も多く、一点一様の部品ばかりのため、90%が人の手で行われており、自動化があまり進んでいない分野だと思います。
ロボット導入のきっかけと選定、設置までの流れとは
ロボカル矢部:
ロボット導入の検討を始めた経緯を教えてください。
橋本様:
ワイヤーハーネスの製造工程の中で最初にドラムに巻いてある電線の長さを測って切り出して電線1本1本に識別番号を印字するという工程があるのですが、今までは15年ほど前に導入したレーザーマーキング装置を使用していました。その設備ですと毎回ドラムの掛け替え作業が必要となるため、労働者の負担はかなりのものでした。
その作業を軽減して作業の効率化を図り、従業員の負担を減らすために、マルチにドラムをかけることができるマルチデリーラーとそれを自動で選択して送り出すAセルなどの装置を導入しました。
ロボカル矢部:
選定にはどのくらい時間がかかりましたか?
橋本様:
もともとレーザーマーキング装置を提供いただいている会社さんのオプションとしてついていたので、選定に関しては特に悩むことは無かったです。
ロボカル矢部:
他の会社さんにもお声がけはしましたか?
橋本様:
お声がけはしました。ただ、国内産のものがほとんどないので、海外からもう1社ほど探して比較検討した結果、現在導入している会社さんにお願いしました。
ロボカル矢部:
前後工程との連結作業はありましたか?
橋本様:
自社内で連結作業も行うつもりで設備の導入を行ったのですが、実際には実現に至っていないのが現状です。今回導入したマルチデリーラーはドラムを8〜9種類かけることができる装置だったのですが、実際に航空機1機あたりに必要な電線はその倍以上で、導入しても人の手で掛け替え作業を行う必要があり、なかなか次工程への連動がうまくできていない状態です。
そのため、思っていたよりも効率化は上手くできなかったです。
ロボカル矢部:
Sierのブイ・アール・テクノセンターさんとはどのような関わり方をしていったのでしょうか?
橋本様:
当社が考えた構想をプランとしてまとめていただき、生産性や費用対効果の計算などをお手伝いいただきました。設備の発注はしていないため、アドバイザーのような立ち位置で関わっていただきました。
ロボット導入のメリットは?
作業時間84%の削減、生産量が50%増加に
ロボカル矢部:
導入してよかった点を教えていただきたいです。
橋本様:
大きい機体で自動化を行うのは難しかったですが、小さい機体であれば掛け替え作業なしで生産できるようになったので、効果はあったと思います。
掛け替えの回数が減ったので、全体の作業時間も短くなりました。1日あたり84%の作業時間が削減され、50%生産量が増加しました。
全体の自動化は慎重に検討すべき
ロボカル矢部:
こうしておけばよかったという点はありますか?
橋本様:
今回導入した設備ではドラムが8〜9種類までの機種しか対応できないので、もう少し拡張していかないと前後工程を含めた生産ライン全体の自動化は難しいと思います。
課題と向き合って自動化を検討していく
ロボカル矢部:
今後、ロボットの導入は検討されていますか?
橋本様:
現状、電線をカットした後に丸いコイルのような状態で次の工程に引き渡し、再度伸ばしてワイヤーハーネスの形を作っていくという流れで作業を行っており、丸めて伸ばす工程が無駄になっていました。それを伸ばした状態のまま次工程に運び、自動化しようという意見もありました。しかし、工場のレイアウトや10〜20mの長さがある電線をどう運ぶかという課題があり、3mまでは対応できる設備は過去に導入していたのですが、どうしてもそれ以上の長さに対応できずに今は頓挫しているという状況です。
電線のカット以外の、電線を端末に挿入する工程や電線の先端の被覆剥きや部品の取り付け工程は細かい作業が多いですが、そこまで複雑ではないので、自動化していきたいと考えています。
既存の技術も活用して
ロボカル矢部:
最後にこれからロボットを導入しようと思っている企業様に向けて一言お願い致します。
橋本様:
当社の場合はもともとオプションとして用意されていた設備を導入したので、自分たちで0から考える必要はなく、導入はしやすかったです。0から導入しようと思うと、自分たちで考えているイメージをすべて実現することは難しいと思いますので、既存の技術で活用できるところを探して、できるところから導入していくことが大切だと思います。
ロボカル矢部:
少しずつでも前進していくことが大事ですね。
本日はありがとうございました。