目次
株式会社アコオ機工では、株式会社不二越の超速スポット溶接用ロボットSRA210Tを人手による溶接が主流である鉄道車両部品の溶接工程に導入し、4人での作業を0.5人に省力化することに成功されました。ロボット導入に至った経緯、またロボット導入において重要なポイントをロボカル矢部秀一がインタビューさせていただきました。
【インタビューにご協力頂いた方】
株式会社アコオ機工 専務取締役 四井様
【会社概要】
商号 | 株式会社アコオ機工 |
代表取締役 | 間鍋 雄樹 |
設立 | 昭和55年7月7日 |
本社 | 兵庫県赤穂市東有年952番地5 |
事業内容 | アルミニウム、鉄、ステンレスの溶接及び組立て・プレス、曲げ等の板金加工・ レーザ加工・吹付塗装、焼付塗装・ファイバーレーザ溶接・設計提案 |
主要取引先 | 川崎車両業株式会社・川重車輌コンポ株式会社・オークラ輸送機株式会社・ 近畿車輛株式会社・三菱電機株式会社 |
【ロボット導入の経緯】
ロボカル矢部:
はじめに御社の事業内容について教えてください。
四井様:
当社は兵庫県赤穂市で鉄道車両部品をメインに扱っている会社です。輸送機関係や船舶関係、プラント関係もお手伝いさせていただいております。当社の強みは、設計から塗装までの一貫工事が行える点で、約40年鉄道関係の仕事をしているのでアルミの板金加工・溶接加工には自信があります。
ロボカル矢部:
ロボットはいつごろから導入する計画をされていたのでしょうか?
四井様:
ロボットの導入計画は2017年から行っており、実際に導入したのは2018年です。
2017年に4m×2mほどの大型の製品加工を受注しました。200か所ほどのスポット溶接が必要で、既存の定置式のスポット溶接機で作成できると思っていたのですが、試作を進めていくと、4人がかりでの作業となってしまい、人の手では難しいという結論になり、ロボット導入を決めました。
【Sier選定について】
ロボカル矢部:
導入にあたり、具体的にどのような行動をしたのでしょうか?
四井様:
調べていくと高丸工業さんが出てきて、もともと溶接機を卸していただいていた商社さんにも勧められたため、高丸工業さんに決めました。
ロボカル矢部:
選定にはどのくらいかかりましたか?
四井様:
半年程度ですね。最初に面談させていただいたときにここと決めました。
ロボカル矢部:
ロボットの導入は初めてでしたか?
四井様:
20年ほど前に一度溶接ロボットを導入していましたので、初めてではありませんでした。
【ロボットについて】
ロボカル矢部:
ロボットの価格はおいくらぐらいだったのでしょうか??
四井様:
ロボット自体は300〜400万円ほどだったのですが、周辺設備等を合わせて約4,000万円ほどかかりました。ロボット導入補助金を活用して半額の負担で導入することができました。
ロボカル矢部:
補助金が下りていなくても導入していましたか?
四井様:
していたと思います。ただ、意思決定までの時間はもっとかかっていたと思います。
意思決定が速くできた点では補助金を活用できて良かったです。
ロボカル矢部:
納期まではどのくらいかかりましたか?
四井様:
8か月ほどです。
ロボカル矢部:
実際に導入された感想はいかがでしたか?
四井様:
とても良かったです。4人かかっていた作業が1人いらないくらいまでに削減できました。以前は納期に間に合わせるために残業・徹夜をしないといけない場合もありましたが、それもなくなり、社員の体力面や安全面も改善されました。
ロボカル矢部:
稼働までの調整はどのように行ったのでしょうか?
四井様:
導入前はテストピースなどで良い条件を探っていきました。ある程度の基準からさらに調整していく過程と、オペレーションに1か月ほどかかりました。
ロボカル矢部:
オペレーションは御社の現場の方が行ったのでしょうか?
四井様:
そうですね。
ロボカル矢部:
導入後に思った通りにいかなかった点、苦労した点はありますか?
四井様:
導入後にはほとんど苦労はなかったです。どちらかというと導入前の条件出しの部分が苦労しました。構造上難しい部分もあったのですが高丸工業さんが色々なアイデアを出して対応していただいたので本当に有難かったです。強いて言うなら高丸工業さんが忙しくてエラーが出たときになかなか来てもらえないということはありましたね笑
ロボカル矢部:
稼働は何年ほどだったんですか?
四井様:
3年です。
ロボカル矢部:
今はそのロボットは稼働していますか?
四井様:
今はその案件も終わったので稼働していないですね。他の案件でも活用してはいるのですが、ほとんど動いていないのが現状です。確定ではないですが、新しい案件もいただいており、まだ使い道はありますね。
ロボカル矢部:
別の案件が来たときは、周辺設備の対応はどのようにしていますか?
四井様:
高丸工業さんにもお手伝いいただいていますが、治具などは基本的に社内で整備しています。
ロボカル矢部:
それはロボットエンジニアが育ってきたということでしょうか?
四井様:
今回は自社で対応できる案件だったのですが、まだまだ自社で完結できるレベルではないため、そこは課題ですね。
ロボカル矢部:
人手不足でロボットを導入したいという経営者の方も多いですが、その点はいかがでしょうか?
四井様:
そこは無かったですね。当時は重労働の軽減とコスト削減を目的として導入しました。しかし、5年経った今は人手不足も顕在化しており、ロボットとの協働は絶対に必要だと思います。そこにどれだけ速く対応できるかが今後は必要になってくると思います。
【2台目、3台目のロボット納入について】
四井様:
スポット溶接ロボット導入の1年後にアルミの溶接ロボットも導入したのですが、そちらはもう3年ほど稼働していないですね。
ロボカル矢部:
そちらも高丸工業さんに依頼したのですか?
四井様:
そうですね。ロボットはダイヘンさんのロボットを導入しました。
スポット溶接ロボットがうまくいったので、ほかの工程にもロボットを導入しようと思い、船舶部品の加工に導入しました。導入したのはよかったのですが、続くと思っていた製品の生産が半年で受注が終わってしまい、そこからは使用していません。ロボットを導入しても最終的には人の手での修正が必要になるという点も想定外で、他の製品への転用も行っていません。
ロボカル矢部:
そうだったんですね。
四井様:
最近だと、昨年9月にファイバーレーザー溶接ロボットを導入しました。そちらはアマダ製のロボットで、今は試作段階ですが、過去の反省を活かして、現場と一体になって導入を進めています。
ロボカル矢部:
そちらは補助金は活用されているんですか?
四井様:
事業再構築補助金で6,000万円をいただくことができました。
ロボカル矢部:
2回目の反省を活かして、3回目は順調に進められているんですね。
【ロボット導入を検討している企業様へ】
ロボカル矢部:
最後にこれからロボットを導入しようと思っている企業様に向けて一言お願い致します。
四井様:
私たちがロボットを導入して上手くいったのは、本当に現場にとって必要なものを導入できたからだと思います。逆に2回目のロボットは現場の方々が修正する必要があったため、現場のニーズと合致していなかったですね。
なので、現場の方々としっかり話し合って、本当にロボットが必要かどうか、また導入後に現場でスムーズに稼働できるような体制を構築していくことが重要だと思います。
ロボカル矢部:
ロボットを使うのは現場の方々ですもんね。
貴重なアドバイス有難うございます!!
【編集後記】
重量物の溶接という、いわゆる3K労働の自動化を現場の作業員と一緒になり実現されたとても良い事例だと感じました。
高丸工業という良いロボットSierのパートナーを見つけ、1台目のロボット導入の成功体験から、主体的に2台目、3台目と自動化に積極的にチャレンジをする姿勢がノウハウを成熟させ、会社の発展に繋がるイメージが持てました。
株式会社ロボカル
技術営業部責任者
矢部秀一
早稲田大学卒業後、川崎重工業株式会社のロボット部門にて海外営業、国内営業を経験。
大手自動車メーカーや電機メーカーなどに向け約10年間で通算2,000台以上のロボットの販売に携わる。
日本の強みである産業用ロボット業界を更に発展させるため、株式会社ロボカルの立ち上げに従事。ITの力で産業用ロボット業界のビジネス環境を向上させることを目指す。