産業用ロボットSIer 300社掲載

2023.04.21

ロボット技術の現状について 最新のロボット業界の動向とこれから

ロボット技術の現状について 最新のロボット業界の動向とこれから

近年、ロボット技術の進化によって、さまざまな分野でその活躍が期待されています。

特に、ロボットを活用した自動化によって、生産性の向上やコスト削減などが実現されつつあります。

そこで今回は、ロボットと技術に焦点を当てて、製造業や物流業界における自動化の進展や、その影響について解説します。

ロボット技術の現状

ロボット技術の現状

近年のロボット技術には、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)など、様々な最新技術が組み合わされ、新たな進化を遂げています。
大規模な産業用ロボットのほか、人との簡単なコミュニケーションが可能なロボット、人と同じ空間で作業をサポートできる協働ロボットなども実用化が進んでいます。

今やロボット技術は一部の専門家や技術者だけが活用するものではなく、多くの人々にとって身近な存在になりつつあるのです。

AIとは

AI(Artificial Intelligence・人工知能)とは、人間の知的ふるまいの一部をソフトウェアによって再現する仕組みの総称です。

従来、ソフトウェアはあらかじめプログラムされた通りの処理を繰り返すことしかできませんでした。これに対してAIは大量のデータからパターンを抽出し、学習を重ねることでより適切な処理が可能となる点が大きな違いです。

IoTとは

IoT(Internet of Things・モノのインターネット)とは、電化製品や電子機器、住宅、自動車といったさまざまなモノをインターネットに接続し、通信・制御を可能にした技術です。

スマートホームや自動運転システムなども、モノをインターネットに接続して活用することからIoTの一種といえます。

ロボットと人間の未来

ロボットと人間の未来

ロボット技術の進歩により、私たち人間の未来はどのように変わっていくのでしょうか。

ロボットは、人間の活動をサポートする役割を果たしてきました。人間は不眠不休で働き続けることはできませんが、ロボットであれば24時間365日稼働し続けることも可能です。

また、人間にとってストレスを感じる仕事や、危険な場所の作業でもロボットが代替できます。人間が知覚できないわずかな差異を検知し、不良品を選り分けるといったこともロボットだからこそ可能な工程です。

このように、ロボットは私たちの負担を減らし、より生産的・創造的な仕事に集中するための環境を整える手助けをしてくれます。ロボットを活用することで、人間はいっそう豊かな未来を手に入れられるのです。

ヒューマノイド ロボットとは

ヒューマノイドとは、外見を人間に似せたロボットのことです。

頭・胴体・2本ずつの腕と脚を持つタイプもあれば、上半身のみのタイプもあります。

接客や介護など、人と接する機会の多い用途においては、機械らしい外見よりも人間に近い形状のほうが好まれるケースがあります。

しかし、利便性を考えればロボットは必ずしも人型ではなく、用途によっては動物や虫などの形状をヒントに設計されるケースも少なくありません。

最新のロボット技術

最新のロボット技術

現在開発されているロボットやすでに実用化されているロボットは、用途や目的に応じてさまざまな機能が備わっています。最新のロボット技術について、生活シーンや運動能力、コミュニケーション技術、産業技術といった観点からみていきましょう。

生活シーンからみた最新技術

最初に紹介するのは、私たちにとって身近な生活シーンで活用されているロボット技術です。主な用途と機能とともに、活用されている技術について解説します。

ルンバ

ルンバ
出典:iRobot公式サイト

ルンバはアメリカのiRobot社が開発した家庭用ロボット掃除機です。円盤状のロボットが床のゴミやホコリを吸引しながら走行し、室内の掃除を手助けしてくれます。

ルンバを使用する際、部屋の間取りや家具の配置などをあらかじめプログラムする必要はありません。本体に搭載されたセンサーが障害物や壁、段差などを感知して進行方向を適宜変更するからです。掃除が完了するとホームベースに戻り、次の掃除に備えて自動で充電が始まる仕組みになっています。

パナソニック ルーロ

RULO
出典:Panasonic公式サイト

ルーロはパナソニックが製造・販売する家庭用ロボット掃除機です。上位モデルには部屋の間取りを把握するカメラセンサーが内蔵されており、効率よく掃除を進められます。

掃除するエリア・掃除しないエリアや、曜日・時間帯によって掃除するエリアをスマートフォンから設定可能。一度設定しておけば毎週自動的に掃除を済ませてくれるので、外出中に掃除を終えることもできます。

姿勢制御ロボットとは

家庭用掃除ロボットが室内を移動しながら掃除できるのは、ロボットが自身の位置や向き、姿勢を把握しているからです。たとえば段差に差し掛かった場合、本体の傾きを姿勢から検知しなくてはなりません。こうした姿勢制御の仕組みによって、ルンバやルーロは段差に引っかかることなく掃除を終えられるのです。

運動能力からみた最新技術

運動能力の面においても、ロボット技術には目覚ましい進歩がみられます。最新のヒューマノイドAtlasとWalkerの事例から、最新のロボット技術が備えつつある運動能力をみていきましょう。

Atlas

Atlas
出典:Boston Dynamics公式サイト

ボストン・ダイナミクス社が開発した人型ロボットAtlasは、二足歩行が可能なロボット。階段の歩行やジャンプ、宙返り、雪上での歩行など、優れた運動能力を備えているのが特徴です。災害現場など人が立ち入って作業するのが困難な場所で、人の代わりに活動するロボットとして実用化が期待されています。

Walkar

Walkar
出典:UBTECH公式サイト

UBTECH社がCES2019で発表したWalkerは、身長145cm・体重77kgと人間に近いサイズの一般家庭向け人型ロボットです。スムーズな二足歩行のほか、ドアの開け閉めや物の持ち運びなど、人間に近い動作を実現しています。繊細な動作にも対応しており、絵を描いたりピアノを弾いたりすることも可能です。

コミュニケーション技術からみた最新技術

人の生活に溶け込むロボットには、高度なコミュニケーション能力が欠かせません。コミュニケーション技術からみたロボットの最新技術を、Musio XとAmecaの事例から紹介します。

Musio X

Musio X
出典:Musio Facebookページ

Musio Xはディープラーニングを活用した自然言語処理技術により、ユーザーと会話ができる英語学習AIロボットです。事前にプログラミングされていない英文を新たに生成し、ユーザーの習熟度に適した英会話レッスンを提供します。ユーザーが発話した内容に対し、インターネットからデータを検索して適切な答えを判断することも可能です。

Ameca

Ameca
出典:ENGINEERED ARTS公式サイト

Amecaは、イギリスのEngineered Arts社が開発した人型ロボットです。ゴム製の皮膚を採用し、限りなく人間の表情に近い感情表現が可能となっています。現在は顔と上半身の動きにのみ対応しており、歩行はできないものの、ロボットと人間のコミュニケーションのあり方を予感させる技術といえるでしょう。

産業技術からみた最新技術

ここまでに紹介してきたロボットは、いずれも人間の日常生活に溶け込むことを目指して開発されている点が特徴です。一方、産業用途に特化して開発されているロボットもあります。以下では、産業用ロボットについて詳しくみていきましょう。

稼働台数世界2位の「産業用ロボット」とは

稼働台数世界2位の「産業用ロボット」とは

産業用ロボットとは、主に工場などの工程を自動化することを目的に開発・製造されているロボットです。日本は世界有数の産業用ロボット大国であり、日本製の産業用ロボット稼働台数は世界第2位となっています。

人の暮らしに溶け込み、身近な存在として活躍するロボットはサービスロボットと呼ばれます。一方、産業用ロボットは製造現場での作業を代替することが主な役割であり、産業用途に特化して開発されている点がサービスロボットとの大きな違いです。

産業用ロボットを導入することで作業員を重労働から解放し、人件費を削減することができます。また、ロボットは肉体的な疲労や精神的なストレスとは無縁のため、品質の均一化につながることも大きなメリットです。

産業用ロボットの種類について

産業ロボットの種類について

産業用ロボットには、用途に応じてさまざまな機能や構造が備わっています。ここでは、主な産業用ロボットの種類をみていきましょう。

垂直多関節ロボット

垂直多関節ロボット
出典:EPSON公式サイト

垂直多関節ロボットは、人間の上半身と腕に似た機構を持つ産業用ロボットです。部品の組み立てなど、従来は人の手で行っていた作業を代替する目的で開発されているため、稼働時の動きも人間の上半身に似ています。現在、製造現場で活躍している産業用ロボットとして主流になっているのが垂直関節ロボットです。

スカラロボット(水平多関節ロボット)

スカラロボット(水平多関節ロボット)
出典:YAMAHA公式サイト

スカラロボットは、特定の作業を行うのに適した高さでアームの水平稼働が可能な機構を持つ産業用ロボットです。垂直多関節ロボットと比べて機構がシンプルで制御しやすく、高速・高精度での稼働に適しています。一方向に製品が流れていく製造ラインなど、単純作業を人から機械へと置き換える際に適したロボットです。

パラレルリンクロボット

パラレルリンクロボット
出典:Omron公式サイト

パラレルリンクロボットは、ロボットの関節にあたるリンクを並列に繋げ、高速で精密な動作を可能にした産業用ロボットです。垂直多関節ロボットと比べて可動域は限られているものの、小型製品の箱詰めや検品といった細かな作業に対応できます。目視検査では判別が困難なわずかな差異も検出できるため、品質保持の用途にも活用されているのが特徴です。

直交ロボット(単軸ロボット)

直交ロボット(単軸ロボット)
出典:Unicontrols公式サイト

直行ロボット(単軸ロボット)とは、直行する複数のスライド軸で構成される産業用ロボットです。製造現場での組立や搬送などの用途に活用されています。スライド軸の可動域内で決まった動作を繰り返すことから、ブレが少ない高精度の作業が可能です。直線的な動きは直行型ロボットが担い、複雑な動きは垂直多関節ロボットが担うなど、他の産業用ロボットと組み合わせて活用する場合もあります。

近年注目を集める「協働ロボット」とは

近年注目を集める「協働ロボット」とは

協働ロボットとは、人との協働作業が可能なロボットのことです。従来、消費電力80W以上のモーターを搭載したロボットは人と作業スペースを分け、ロボットの周囲を柵で囲むなどの安全対策を講じることが義務づけられていました。2013年12月に規制が緩和され、80W以上のロボットも、安全基準を満たしていれば人と同じスペースで作業できるようになったのです。協働ロボットを活用することで、人とロボットの役割分担をより柔軟に行えるようになりました。

産業用ロボットとの違い

産業ロボットとの違い

協働ロボットには、従来の産業用ロボットと異なる点がいくつかあります。具体的には「安全面」「コスト面」「技術面」「用途」の4点です。

安全面

従来の産業用ロボットは大型のものが多く、強力なパワーを備えています。人と接触すると極めて危険であることから、稼働中に人が安全柵内に立ち入ることは認められていませんでした。

しかし、近年の産業用ロボットは小型化・軽量化され、人が接近しても安全であることが重要視され、周囲に柵を設けることなく人との協働作業が可能なものが増えています。

コスト面

産業用ロボットは特定の用途のために設計されており、作業工程に変更が生じた場合には改修に多額のコストが必要でした。

一方、協働ロボットは工程のレイアウト変更にも柔軟に対応できるため、運用コストを従来よりも少額に抑えられるのが特徴です。製造する製品の仕様変更や工程変更が発生した際も、柔軟に対応できます。

技術面

産業用ロボットを導入・運用するには、専任のロボットエンジニアが携わる必要があります。

新たなプログラムを作成する場合も専門知識が必要となるため、外部に委託せざるを得ないのが実情です。

しかし、協働ロボットはより簡易的なプログラムで構成されており、社内でのプログラム作成や再ブログラムを行うことができます。

用途

産業用ロボットは同一品種の大量生産を前提に設計されています。

用途が特化されており、別の用途に活用するには大がかりな改修が必要になるのが一般的です。
協働ロボットは多品種の少量生産に活用されています。レイアウト変更や再プログラムも難しくないため、幅広い用途に利用されているのが特徴です。

ロボット技術のこれから

ロボット技術のこれから

現在のロボット技術の進化スピードはとても速く、ロボットはますます人間に身近な存在となっています。今後、ロボット技術は更に発展し、私たちの生活により密接に関わるようになると考えられます。

一方で、ロボットが人間と共存する社会においては、倫理的な問題や法的な問題も浮上してくるでしょう。例えば、人間とロボットの区別がつかない場合や、ロボットによる人間の支配や搾取などに対して、社会的な議論が必要になることもあるでしょう。

ロボット技術はまだまだ発展途上であり、今後も多様な分野での活躍が期待されますが、直面する課題や問題にも対応していかなければなりません。

しっかりと考え、議論を重ねながら、ロボット技術を活用したより豊かで快適な社会を実現していくことが求められています。

まとめ

まとめ

ロボット技術と一口に言っても、身近なものから産業用のものまで多種多様なロボットが存在します。今後もロボット技術は進歩を続け、私たちの暮らしをますます便利で豊かなものにしてくれるはずです。

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