産業用ロボットSIer 300社掲載

2023.05.18

人間の仕事が奪われる?──仕事とロボットのWin-Winな関係について

スーパーマーケットで働いているロボット

現在、様々な産業分野で活躍しているロボット。製造業や物流だけにとどまらず、飲食や医療、農業まで導入範囲は多岐にわたります。将来ロボットに奪われる(働き手が人からロボットに置き換わる)といわれる仕事・職種に関して各所で取り沙汰されていますが、ロボットは今後ますます社会全般、特に経済活動において重要な存在になっていくでしょう。

本記事では、ロボットが活躍する業界やロボットによって無くなる(※1)と考えられている仕事、ロボット自体を作る仕事や、改めてロボットを導入することのメリットなど、「ロボットと人間の仕事」の関係について詳しく見ていきます。

様々な分野で活躍するロボット

様々な分野で活躍するロボット

現在、ロボットの活動範囲は様々な業界へと広がっており、人手不足の解消や品質の安定化、人間にとって困難だったり危険な作業、人手ではコストパフォーマンスの悪い仕事など、多様な目的のために活用されています。

製造業や物流業など、ロボットと聞いてイメージしやすい業界だけでなく、飲食業界や医療・介護、宿泊・旅行、教育などのサービス業から農業や建設業まで、今やロボットが活躍する分野は飛躍的に広まりました。しかし、技術的にも実用性的にも、今はまだとば口に立ったばかりといえますし、少子高齢化と労働人口の減少が進む中、今後も日本のロボット需要は、多くの社会・経済活動の中に拡大していくと予想されています。

現在、ロボットはどんなところで活躍しているか

飲食店で働く猫型配膳ロボット

現在、ロボットが活躍している業界は、製造業や物流、建設業から、飲食、医療、旅行、教育業界までと様々です。各業界におけるロボット導入の取り組みと実際に働いているロボットをみていきましょう。

物流業界

現在、ロボットの導入が盛んに行われているのが物流業界です。物流業界では、主に自立走行ロボット(AMR:Autonomous Moblie Robot)を利用し、倉庫や配送センターで棚から出荷する商品を運ぶピッキング業務が行われています。

ネットショッピング大手のAmazonでは商品を棚ごとスタッフのもとに運んでくれる「Kiva」を導入。家具量販店のニトリが採用した「バトラー」は商品を運んでくるだけでなく、AIが使いやすい棚の配置まで決定してくれます。近年、人手不足が問題になっている物流業界にとってはなくてはならない存在といえるでしょう。

製造業界

製造業界はロボットが大きく活躍する業界の1つです。産業用ロボットといえば、製造業をイメージする方も多いでしょう。ロボットによる生産ラインの自動化はもちろん、近年注目されているのが人と共同で作業可能な「協働ロボット」です。

従来、一定以上の出力のある産業用ロボットは、安全上、柵や囲いで人間とは隔離された空間で作業を行わせる必要がありましたが、安全性の向上に伴い法律が緩和され、人とロボットが安全柵なしでも一緒に働けるようになりました。これにより、これまでコストや場所の関係で実現が難しかった中小規模の生産ラインでもロボット導入が進むとみられます。AIやIoT技術との組み合わせにより、さらなる生産性向上が期待できます。

飲食業界

専ら人が行うサービスというイメージが強い飲食業界でもロボット導入は進んでいます。有名なところでは、飲食店で使われている配膳ロボットが挙げられます。猫型フォルムの「BellaBot」や「PEANUT」などが発売され、店員の労力削減や回転率向上に貢献しています。

また、調理用ロボットの開発も進んでおり、パスタ調理ロボット「P-Robo」や、ロボットバリスタ「Ella」などが既に実稼働しています。今後、調理ロボットがさらに多くの作業に対応できるようになれば、人手不足解消や品質の安定化などに繋がっていくとみられます。

医療や介護業界

医療・介護業界も今後、ロボットが普及していくとみられる分野です。医療分野では、従来よりも患者に負担をかけない方法で内視鏡手術を支援する「ダヴィンチ」など、医療従事者をサポートするロボットが導入されています。

今後は人にとって難しい作業や無菌状態での治療が行えるロボットや、再生医療用ロボットなどの開発も進むことが期待されています。

恒常的な人手不足が知られる介護業界でも、ロボットによる課題解決、サポート業務が期待されており、リハビリ支援ロボット「ウェルウォーク」や高齢者の歩行機能支援ロボット「HAL」などの開発・試験導入が行われています。

建設業界

建設業界は人手不足といわれながら、ロボットの導入は進んでおらず、今後の展開が期待される業界です。建設大手の大和ハウスでは、建物の柱などに耐火被覆吹付を行うロボットを開発。清水建設では、溶接ロボットや2本のアームで様々な作業が行えるロボットを開発しています。ただ、現在はほとんどが実証実験の段階です。

しかし、ほかにもドローンを使った測量や3Dプリンタでの施工、自立走行ロボットによる資材搬送など、ロボットが能力を発揮できる作業は多岐にわたり、今後は徐々に開発、普及が進むとみられています。

宿泊・旅行業界

人が接客を行うイメージの強いホテルや旅行業界でも、ロボットを導入するケースが見受けられます。HISが運営する「変なホテル」は世界初のロボットホテルとして、レセプションから清掃、荷物の運搬、照明のオン・オフ、バーの接客、無人コンビニ、クリーニングまで、様々な業務をロボットがこなしています。

また、JTBはシャープと共同で、観光地の案内機能を搭載したロボット「ロボホン」を開発。将来は、宿泊や観光のプランニング、提案などから予約手配まで、ロボットが旅行に深く関わる存在になるかもしれません。

教育業界

教育業界では、授業自体はまだ人が行っており、ロボットが関わるシーンは少ないものの、AIの導入は進んでおり、生徒一人一人に合わせて専用のカリキュラムを作る「atama+(アタマプラス)」などが登場し、導入する予備校や塾も少なくありません。

また、今後需要が伸びるとみられるのが、子どもたちに機械やロボットそのものの作成、プログラミングなどを教えるために、教育を補助する教材として使うロボットです。教育業界では、ロボットが直接子どもたちを教育するというよりも、ロボットを使ってできる体験型の教育から一般的になっていくようです。

農業界

農業界は、人手不足や高齢化問題解消が急務のため、スマート農業やロボット農業への期待が高まっている業界です。

農業においてロボットが活躍する範囲は広く、農薬散布や野菜・果物の収穫を初め、搭載した農作物のデータを収集できる荷車、自動で走行するトラクターのほか、酪農業では、遠隔操作で畜舎を洗浄するロボットも登場しています。

さらに、作付けから栽培までを自動化する野菜の生産工場も研究されているなど、ロボットが育てた農作物が店頭に並ぶ日もそう遠くないかもしれません。

ロボット需要のこれから

農作業を行うロボット

ここまで見てきたとおり、様々な業界でロボットの活用が進んでおり、飲食やホテルの接客業など、従来はロボットで置き換えるのは難しいと考えられていた分野にも進出し始めています。
新エネルギー・産業技術総合開発機構の予測によると、日本のロボット市場は2020年の2.9兆円から、2035年までに3倍以上の9.7兆円になる見通し(※2)で、今後はさらにロボットの普及が加速し、活躍の場が広がっていくとみられています。

わずか30年前、世界中の誰もが手のひらサイズのちいさな機械で、巨大なネットワークを自在に操ることのできる時代が来るとは、ほとんどの人が想像していなかったのではないでしょうか。ロボット技術を含めてAIやIoTが急速に進化する現在、これから10年後、20年後の世界を想像してみるのも楽しいかもしれません。

将来、ロボット・AIの進化で無くなる仕事を考えてみる

スーパーマーケットで働いているロボット

この先、ロボットやAIが多様な業務を代替するようになると、現在は人が行っている仕事の中には機械に取って代わられるものが出てくるのではないかと心配する声が上がるようになりました。
大学や研究機関などからは、「○○年後に無くなる仕事」といったレポートも出されており、ロボット・AIの普及により、今ある職業のうち約50%が無くなるとする研究(※3)もあります。

もちろん事の真偽はまだ定かではありませんが、一般にどういう職業が無くなるといわれているのか、次項では代表的な例を挙げて見ていきましょう。

将来無くなるだろうといわれる仕事

ロボット・AIを含めたIT技術の発達、普及により、従来、人の仕事であったものが機械に取って代わられるといわれていますが、具体的にどのような職業が想定されているのでしょうか。ここからは、ロボット・AI等の技術進化によって、将来無くなる可能性のある仕事をいくつか紹介します。

スーパー・コンビニ店員

スーパー・コンビニの店員はロボット・AIの普及で必要がなくなるといわれています。現在でも無人レジを導入している店舗は多いものの、スーパー・コンビニには、まだまだ人がやらなければならない仕事が残されているように見えます。

一方で、開発中の商品補充ロボットを初め、さらなる省人化に向けた努力が急ピッチで進んでいるのは、関係各企業が「完全無人化」を可能なものとして、既定路線に乗せているからと考えられます。

警備員

警備員も無くなるといわれる仕事の1つです。すでにALSOKの「REBORG-Z」やセコムの「cocobo」など、大手警備会社からは警備員や施設案内係の代わりになるロボットが登場しています。

監視カメラとAIを組み合わせて警備を行うシステムの開発も進んでおり、将来的には、人の手がかからない警備体制が実現されると考えられるのです。

建設作業員

建設業もロボットの進出によって人の仕事が減っていくとみられる分野です。前述の通り、建設業界は他の業界に比べてロボットの現場配備が遅れているものの、それだけ伸び代が大きいともいえます。

重い資材の搬送や安全面の理由などから、今後は、建設用ロボットが現場に投入され、人が手掛ける作業は徐々に減少していくものと考えられます。中国ではAIとロボットでダムを建設するプロジェクトが進行中で、日本でもいずれ、ロボットだけで建物が作られる日がくるかもしれません。

ロボット・AIによって置き換えられない仕事

ロボット・AIの発達によって無くなってしまうといわれる仕事がある一方で、どれだけ機械や人工知能が発達しても無くなりにくいとされている仕事も存在します。この先も変わらず生き残るとされる仕事には、どのような職業があるのかみていきましょう。

医療従事者

医師や看護師などの医療従事者はロボットが導入されても無くなりにくいといわれる仕事です。医療現場では、患者とのコミュニケーションや細やかな配慮、状況に応じた臨機応変な対応などが求められます。

時には、機械では捉えきれない患者の体調や精神面の変化などに気づかなくてはならない場面もあり、完全にロボットで代替するのは不可能と考えられるためです。医療用ロボットは急速に発展していますが、手術の際などにあくまで人間のサポートをする役割に留まると考えられています。

介護・保育

介護・保育の分野でも、人の仕事は残り続けるといえます。介護士や保育士は、利用者や子どもとのコミュニケーション、信頼関係が大切になる職業です。

作業内容の一部はロボットやAIに置き換えられても、一人一人の気持ちに寄り添い、相手から信頼されるホスピタリティやおもてなしまで再現するのは難しいといえます。今後も人の手による介護や保育の需要が無くなる可能性は低いといえます。

教育関係

教師など教育関係の仕事も人間関係が重要となるため、無くなりにくいといえます。教師には生徒たちとの間に信頼関係を築き、それぞれの個性に合わせた柔軟な指導が求められており、それは教室での授業だけに止まらず、言語化されない感情の問題なども関係してくることです。

優秀なAIが生徒のカリキュラムを作成することはできても、あくまで教師が活用するツールの1つに過ぎず、今後もAIやロボットが主体となって教育を担う可能性は低いとみられます。

人に求められるのは「考える力」や「創造力」が必要な仕事

人に求められるのは「考える力」や「創造力」が必要な仕事

ロボット・AIに奪われにくいのは、「考える力」や「クリエイティブ(創造力)」が求められる仕事であると、耳にされた方は少なくないでしょう。では、考える力や創造力があるとは、どういうことを指すのでしょう。

AIは膨大な資料やデータから回答を引き出すのは得意ですが、相手とのコミュニケーションに応じて課題を調整・解決したり、新しい価値や仕事を生み出したりすることは、この先も難しいと考えられます。

たとえば対人対応を例にとってみましょう。顧客対応は重要な業務ですが、単純な受発注や条件のすり合わせだけならAIを含むIT技術で置き換えられるかもしれません。一方で、現場に出ることでわかる気づきや技術、コツがあります。最終的な答えは0か1だとしても、その中間に無数の気づきや本当の答えがあることが少なくないのです。

上で「無くならない仕事」に挙げた医療従事者、教育や介護関係者にはこの能力が必要です。「実際に相手の役に立つ答え」は、理論や正論ではないところに存在する場合があり、それを感知できる能力と、状況に応じた臨機応変な判断から、新たにすべきことを見つける能力、これらを含めた「考える力」であり「創造力」と考えられないでしょうか。

AIには、少なくとも当面の間は、”空気”は読めないのです。

ロボットを「作る」仕事は無くならない

ロボットを操作しているエンジニア

さて、話がロボット技術から離れてしまいましたので戻しましょう。
ロボットやAIが発展していく社会において無くならないだけでなく、さらに需要が高まっていくといえるのが、ロボットやAIを「作る」仕事です。

AIがどれほど優秀な能力をもったとしても、倫理面や安全対策の面などからも機械自身にロボットやAIを開発・製造させることは難しいと考えられます。従って、この領域はこの先も人間のものといえます。

ロボット開発には、設計者から動作プログラムを作成するプログラマー、実際にロボットを組み立てるエンジニアなど、多数の技術者が関わっており、機械からソフトウェアまで幅広い知識と技術が求められます。

それでは、ロボットエンジニアとはどのような仕事で、ロボットを作っている企業にはどんな会社があるのかをみていきましょう。

ロボットを作る「エンジニア」

ロボットの開発・設計・運用を行う技術者がロボットエンジニアです。センサーや知能・制御系、駆動系などの専門知識・技術を用いて、ロボットの設計やプログラミング、開発などを行うのがロボットエンジニアの主な仕事です。

さらに、現場導入や稼働のサポートから、点検・整備などのメンテナンス、不具合が出た場合の修理まで、幅広い業務を一括して引き受けています。

ロボットを作る「企業」

ここでは産業用ロボットの製造・開発を手掛けるメーカーをご紹介します。日本は世界的なロボット大国で、国内には数多くの産業用ロボットメーカーが存在します。

世界のロボット市場でBIG4と呼ばれる4大メーカー「ABB、ファナック、安川電機、KUKA」のうち、安川電機とファナックが日本企業で、2社を合わせると世界シェアの20%以上になります。2社以外にも名だたる国内企業は数多く、世界のロボット市場における日本企業は有力なプレイヤーといえます。

ロボットメーカー一覧はこちらから。
https://robokaru.jp/fundamental-knowledge/industrial-robot-manufacturers/

安川電機

安川電機は、日本初となる全電気式産業用ロボットを開発した会社です。溶接や塗装などに使用される垂直多関節ロボットが主力製品で、自動車産業などで多く導入されている「MOTOMAN(モートマン)」の累積出荷台数は50万台を突破しています。

ファナック

ファナックは、自動車工場などに導入されている黄色いカラーのロボットで有名な企業です。多関節型ロボットのシェアでは国内トップを誇り、さらに、アメリカや中国、アジアなど海外へも積極的に進出しています。

仕事にロボットを組み込むメリットとは?

仕事にロボットを組み込むメリットとは?

業務にロボットを導入すれば、人件費の削減、作業の効率化、生産性の向上や人手不足問題の解消など、企業が抱える様々な課題の解決が期待できます。ロボットを仕事に導入するメリットについて詳しくみていきましょう。

詳しくはこちらもチェックください。

人件費を削減できる

産業用ロボットを導入する大きなメリットが、人件費の削減です。これまで人が行っていた業務をロボットに代替させれば、作業員を削減して人件費を抑えられます

現在では、中国や東南アジアの賃金も上昇傾向にあるため、海外に拠点を移してもコストが下がるとは限らず、ロボット導入による省人化は人件費削減の有力な手段となります。さらに、ロボットなら作業員のように辞めてしまう心配もなく、一度導入すれば長期間稼働させられるため、採用や育成コストなども削減できます。

業務の効率性を高め、品質を均一にできる

生産スピードや品質の安定化により、業務の効率化につながるのもロボット導入のメリットです。従来、作業者のスキルによって左右されていた工程も、ロボットなら熟練度に関係なく計画通りのペースで作業ができ、ミスによる不良品の発生がほとんどなくなるため品質が安定します。

また、生産管理にかかるコストも大幅に削減でき、効率性の向上が期待できます。一方で、ロボット導入によって単純作業から解放された作業員を、より生産性の高い工程、部署へと異動することで、人員配置の最適化にもつながります。

人手不足が解消する

ロボット導入は、多くの業界を悩ませている人手不足の問題を解消するのに有効な方法です。省人化により必要な作業員の数が減れば、これまでより少ない人数で生産を維持できるため、人手不足が原因の売上損失も無くなります。

さらに、24時間労働や危険な作業、過酷な環境での業務も問題なくこなすため、人への負担を軽減して労働条件を改善。労働環境を理由に辞めていく作業員を減らし、人材確保もやりやすくなるでしょう。

まとめ

まとめ

現在、ロボットは製造や物流だけでなく、飲食や旅行、建設や農業まで、幅広い業界に活躍の場を広げています。ロボット導入のメリットは、人件費削減や業務効率化、人手不足解消など様々です。ぜひ、自社に合った最適なロボットの導入を検討してみてください。

※1:本記事では「働き手が人からロボットに置き換わる」ことを便宜的に「仕事が無くなる」と表現しています。

※2:(参考)新エネルギー・産業技術総合開発機構 「2035年に向けたロボット産業の市場予測」

※3:社野村総合研究所、英オックスフォード大学による共同研究レポート「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に」


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