産業用ロボットSIer 300社掲載

2023.05.29

「産業用ロボット」は自社で開発できる?必要なリソースを解説

制御機器でロボットを操作している作業員

産業用ロボットは現在、様々な業界で欠かせない存在となっています。自社でも独自にロボット開発を行って導入したいと考えている企業は多いのではないでしょうか。しかし、ロボット開発には幅広い専門技術と知識が要求されるためハードルが高いのも事実です。
本記事では、ロボットを構成する要素やロボット開発に必要な知識、資格、開発需要やコストについて解説します。ロボット開発を検討している企業の方は、ぜひ参考にしてみてください。

そもそも「ロボット」って何?

自動車工場で組み立てを行っているロボット

ロボットは「センサ、知能・制御系、駆動系の3つの要素技術を有する、知能化した機械システム」と定義されます。
上記は、経済産業省が2006年に発表した「ロボット政策研究会報告書」や国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構が2014年に発行した「NEDOロボット白書2014」に登場し、ロボットの定義として一般的に用いられています。
ほかには、日本工業規格(JIS)による「二つ以上の軸についてプログラムによって動作し、ある程度の自律性をもち、環境内で動作して所期の作業を実行する運動機構」もよく使われる定義です。

ロボットを構成する三要素

産業用ロボットアーム

ロボットは、ロボットの定義にも登場する「センサ、知能・制御系、駆動系」の3要素で構成されています。それぞれの要素は、ロボットにとって、どのような役割を果たしているかみていきましょう。

センサ

人間の感覚器官にあたる部分で、目や耳のように外部の情報を取得する外界センサと、痛覚や満腹中枢のようにロボット内部の状態を知るための内界センサに分けられます。

ロボットのセンサは人間と異なり、目的や機能に応じて数や配置を自由に変更できるうえ、電流や電圧など生物では検知不可能な情報の取得も可能です。

知能・制御系

人間の頭脳や神経系にあたり、センサから集められた情報をもとにどのような動きをするか全身に命令を出すコンピュータシステムです。知能・制御系には、パソコンとマイコン(マイクロコンピュータ)の2種類の方法があります。
ロボット開発では、研究時は自由度の高いパソコンを使い、量産化の段階で省エネ・省コストのマイコンに変更するのが一般的です。

駆動系

人間では、全身の骨格や筋肉に相当し、知能・制御系からの命令に従い、実際の動作を行う部分です。
ロボットの駆動系には、モーターからアクチュエータ、減速機、アーム、ハンドツール、キャタピラや車輪、筐体など幅広い部位が含まれ、どのような機構や部品を用いるかは、ロボットの使用目的や環境に応じて大きく異なります。

ロボットの開発に必要な「4つの知識」とは?

電子回路の基盤

ロボット開発においては、ロボット3要素の設計・開発を行うため、機械や電気回路、プログラミング、ネットワークなど、幅広い専門知識と技術が必要です。ロボット開発に求められる4つの知識を解説します。

機械設計知識

ロボット本体である機械を設計・開発するための知識です。機械設計では、機械が動く仕組みを理解した上で、ロボットに求められる能力から必要な内部機構や筐体などの図面を作成しなければなりません。
一口に機械設計と言っても、その奥には機械工学に必要な様々な力学を初め、制御工学、製図、材料、加工などに関する知識が必要とされます。

電気・回路知識

ロボット内部の電気・電子回路設計を行うための知識です。電気回路はロボットの心臓や血管にあたる部分で、ロボットを思い通りに動かすには、全体にきちんと命令が伝わるよう正しい回路設計を行わなければなりません。
電気回路には、抵抗やコンデンサなどを使用するアナログ回路と半導体ICによるデジタル回路の2種類があり、ロボットの設計・開発では両方の知識が求められます。

プログラミング知識

ロボットの頭脳になるプログラム部分を設計するための知識です。産業用ロボットのプログラミングでは、1992年に標準言語としてJISに制定された「SLIM(Standard Language for Industrial Manipulators)」の知識が必要とされます。SLIMはBASIC風の文法体系で技術者には比較的馴染みやすい言語といえますが、記述能力の面で限界があるため、新たに開発される機能に対応できず、メーカー独自の言語が使用されたり、SLIM自体の拡張を行うなど、一筋縄ではいきません。
ロボットの制御方法によってはC言語やJavaなども求められます。もちろん、プログラミングにはハードウェアの知識が欠かせませんし、下のネットワークの知識、情報セキュリティ技術なども関係してきます。最近では、AIの開発で使われる技術や知識も必要になってきました。

ネットワーク知識

従来の機械・電気・プログラミング設計の3つに加えて、近年のロボット業界ではネットワーク系の知識が求められています。ネットワーク知識の重要性が高まった理由は、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)技術の進歩です。
ネットワークに接続することで、ロボット内の各種情報や稼働状態の一括管理が可能となり、動作や設定の変更、ティーチングなども遠隔操作でできるようになります。ただし、それに伴い情報セキュリティ技術も必須のものとなっています。
今やロボット開発者にとって、ネットワークの知識は欠かせないものになっているといっていいでしょう。

ロボット開発に必要な資格とは?

ロボット開発に必要な資格とは?

ロボット開発には幅広い知識が求められるため、これさえあればロボット開発者になれるといった資格はありませんが、電気やプログラミング、機械設計に関する資格をもっていると採用活動の際に有効です。ロボット開発技術者への就職を目指す人におすすめの6つの資格を紹介します。

電気主任技術者試験

一般財団法人電気技術者試験センターが実施する試験で、合格すると国家資格「電気主任技術者」を取得可能です。電気主任技術者になるとビルなど建物の電気設備の保安監督業務が行えます。
試験には、機械や電気制御、エレクトロニクスなどの知識が求められ、ロボット開発に欠かせない電気・回路関係のスペシャリストを目指せる資格です。

ネットワークスペシャリスト試験

独立行政法人情報処理推進機構が実施する試験で、国家試験である情報処理技術者試験の1つです。情報処理技術者試験で最も難しいレベル4に分類され、合格すればネットワークの構築・運用に関する知識や実技能力が証明できます。
上述の通り、IoTの普及により、今後のロボット技術者にもネットワーク知識が必須になると考えられ、ロボット開発に重要な資格といえるでしょう。

基本情報処理技術者

独立行政法人情報処理推進機構が認定している資格です。ITエンジニアへの登竜門とも呼ばれ、試験ではIT技術者にとって必要とされる基本的な知識・技術や活用法が問われます。
プログラムの基礎やデータ構造、アルゴリズムなどロボット開発で重要なプログラミング知識を身に着けるのに最適で、ロボット技術者を目指す上でも、ぜひ取得しておきたい資格です。

CAD利用技術者試験

一般社団法人コンピュータ教育振興協会が実施しており、CAD(キャド)に関する知識や技術、能力を測る試験です。CADは、コンピュータ上で図面制作などを行うためのツールで、ロボットの構造設計にも欠かせません。
CAD利用技術者試験は知名度が高く、受験者数も多いため、CADに関する資格を取得するなら、はじめにおすすめする試験です。

ディジタル技術検定

公益財団法人国際文化カレッジが実施している検定試験で、ものづくりに必要な情報処理や制御など総合的なIT知識やデジタル技術を評価します。
文部科学省が後援しており、30年以上の歴史をもっているため、受験者数も多く、知名度・信頼性ともに高い試験といえるでしょう。電気回路やプログラミングなど、ロボット開発に必要な知識も幅広く出題されます。

機械設計技術者試験

一般社団法人日本機械設計工業会が実施する設計技術者の技術力認定試験です。
出題科目が幅広く、機械設計から熱力学、流体工学、メカトロニクス、機械力学、材料力学など様々な分野の技術力が問われるため、ロボット開発者に必要な機械や制御に関する知識・技術の証明にも有効な試験といえるでしょう。

現代社会におけるロボット需要の広がりと、導入の現実解

現代社会におけるロボット需要の広がりと、導入の現実解

ロボット産業は、現在、著しく発達している分野の1つです。今では製造業や物流業だけでなく、飲食や農業など、従来ロボットの活躍するイメージがあまりなかった業界でも、広く活用されるようになりました。
自社でもロボットを導入したいと考えている企業は多く、ロボット開発の需要が高まるとともに、他分野からロボット業界に参入する技術者も増加しています。少子高齢化や労働人口減少が進む中、今後さらにロボットの活躍の場が拡大すると予想され、ロボット開発の重要性も増していくことでしょう。
これからのロボット開発で、特に重要とされるのがAIやIoTの技術です。近い将来、ロボットがネットワークで情報をやり取りしたり、AIによって複雑な動きや判断が可能になると考えられており、その応用範囲はますます広がります。そういった面からも、新たな需要に対応できる開発技術が必要となっていきます。

開発に必要なコストは?

ロボット開発コストのなかで大きな割合を占めているのがプログラム開発費です。実は、ロボット導入にかかる費用のうち、本体の価格は2割程度という試算もあります。
ロボットは、基本的にそれぞれの導入現場に合わせて制御プログラムを細かくローカライズしなければならず、その内容に応じて、技術者の人件費など、多くの開発コストがかかり、納期も長くなってしまうのです。高額な開発費は、ロボットを導入する際の大きなハードルといえるでしょう。

生産現場へのロボット導入、3つの選択肢

実際に企業がロボットを導入する場合、自社開発や外部への開発委託、既存製品の導入など、いくつかの方法があり、それぞれにメリット、デメリットをもっています。産業用ロボットの主な導入方法3つをみていきましょう。

[方法①] ロボットを自社で開発する

自社でロボットや自動化に必要な制御システムを開発する方法です。外部委託に比べて費用が抑えられ、納期も短くなります。また、導入後に変更や問題が起きた際も、迅速かつ柔軟な対応が可能になるのもメリットです。
ただ、自社開発を行うには、上述したようなロボット開発に必要な知識や技術に精通した人材やチームが社内に存在することが条件になります。

[方法②] 外部に開発を委託する

産業用ロボットを取り扱う外部のSIerに委託して、自社の要件に合ったロボットを開発してもらう方法です。専門業者なら技術者や経験、ノウハウなどが揃っているため、自社開発よりも高品質なロボットの開発が期待できます
反面、自社の要件や諸条件のすり合わせから始めることになるので、開発期間が長期化し、コストが膨らむ可能性があり、また導入後も保守点検や修理の都度、新たな費用が発生する点がデメリットです。

[方法③] 既存のメーカー製品を導入する

既製品のロボットを購入してローカライズする方法で、オーダーメイドの場合に比べて、ゼロからの開発コストがかからないため、費用を抑えられるのがメリットです。既製品なら購入台数の自由度が高いため、最初は最低限必要な台数を導入し、必要に応じて増設することも考えられます。
ただ、既製品の場合、自社の要件に100%適合した製品を見つけるのは難しく、場合によっては一部要件について妥協せざるを得ないケースがあるかもしれません。

まとめ

まとめ

ロボット開発には、センサや知能・制御系、駆動系の設計が求められ、機械や電気回路、プログラミング、ネットワークなど、幅広く高度な知識と技術が必要です。
自社開発を行うとコストは抑えられるものの、専門知識がハードルになる場合も多いため、ロボットを導入される際には、まず外部のロボットSIerなどに相談してみることをおすすめします。


ロボカルでは、ロボット設備導入のプロたちが、業者探しから導入後のアフターサポートまでお客様に寄り添いながら対応させて頂いています。
ロボットの導入にお悩みの方は、ぜひお気軽にロボカルにご相談ください。

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