産業用ロボットSIer 300社掲載

2021.05.31

ロボットハンドのチャックとは?種類や把持力の発生方式を解説

ロボットハンドには指のような形状で対象物をつかむ「把持ハンド」と、真空や磁力で対象物を吸着させる「吸着ハンド」がありますが、把持ハンドの指の部分、あるいは指の土台部分を「チャック」といいます。

どのような種類があるのか、また、チャックが把持力を発生する方式について解説します。

この記事の結論

・ロボットハンドのチャックとは把持ハンドの指あるは指の土台のこと
・スクロールチャックやフィンガーチャックなどの豊富な種類がある
・把持力は空気か電気、油圧で発揮される

ロボットハンドのチャックとは?

ロボットハンドのチャックとは、把持ハンドの指部分あるいは指の土台部分のことを指します。指の形状や対象物の種類によってチャックの種類も異なります。

ロボットハンドのチャックの種類

ロボットハンドのチャックの種類は多く、対象物やロボットの動きによって使い分けられます。一般的なものとして次の5つのロボットハンドのチャックを紹介します。

  • スクロールチャック
  • 四つ爪チャック(フィンガーチャック)
  • コレットチャック
  • ロングストロークチャック
  • パワフルチャック

スクロールチャック

土台が旋回するタイプのチャックを「スクロールチャック」といいます。単純な動きで、円筒形のワークに用います。

四つ爪チャック(フィンガーチャック)

大型のものや厚みがあるものを運ぶときなどの用途に用いられるチャックを「四つ爪チャック」や「フィンガーチャック」と呼びます。指が4つのタイプのロボットハンドに対応するので、四角形のものなどを把持するときに用いられます。

コレットチャック

「コレットチャック」は、旋盤やフライス盤などで使用するチャックです。軸の中心から放射状にワークを挿入し、外側から締め付けて固定します。フィンガーチャックに比べてワークと接する面が大きいため、ワークを固定する力が強くなります。

ロングストロークチャック

全体的に薄く、しかも把持力が強いチャックを「ロングストロークチャック」といいます。可動範囲が広いワークに対応します。

パワフルチャック

ダイレクトドライブ方式を採用し、把持力が強く、しかも高精度のチャックを「パワフルチャック」といいます。切削水センサへの対応が可能なので、金属加工の場面でも用いることができます。

チャックの把持力の発生方式

チャックの把持力には主に3つの発生方式があります。対象物によっても発生方式が異なることもあるのでチェックしてみてください。

  • エアアクチュエータ式
  • 油圧アクチュエータ式
  • 電気アクチュエータ式

エアアクチュエータ式

空圧エネルギーを利用してチャックの運動に変換する方式を「エアアクチュエータ式」といいます。圧縮エアと真空エアがあります。

油圧アクチュエータ式

油圧エネルギーを利用してチャックの運動に変換する方式を「油圧アクチュエータ式」といいます。油が持つ液体動力を回転運動や直線運動などに活かします。

油圧アクチュエータは、油圧シリンダと油圧モータ、揺動型アクチュエータに分けることもできます。油圧シリンダは油圧エネルギーを利用して上下のピストン運動を行いますが、油圧モータは同じく油圧エネルギーを利用しながらも回転運動を行います。

なお、揺動型は振動型の動きに対応しています。

電気アクチュエータ式

電気エネルギーを利用してチャックの運動に変換する方式を「電気アクチュエータ式」といいます。電気によって動きを変換するため、「電動アクチュエータ式」と呼ぶこともあります。

エアアクチュエータ式や油圧アクチュエータ式と比べると構造が簡単で、反応性が高いという特徴があります。

また、他のアクチュエータ式よりも操作性が高く、仕様調整も簡単なので、扱いやすいといえるでしょう。

環境への負担が少ない点も電気アクチュエータ式の特徴です。エアアクチュエータ式や油圧アクチュエータ式はアクチュエータからエアや油が漏れる可能性もあり、環境汚染の原因になることがありますが、電気は漏れの恐れが低く、万が一漏れた場合でも環境を破壊することにはなりません。

現在利用されているロボットハンドのチャックを紹介

ロボットハンドのチャックをいくつか紹介します。いずれも人気の汎用品で、多くの工場で使用されています。

KMT社 エアハンド(平行開閉形) HFZシリーズ

一体化設計のリニアガイドを採用した高剛性かつ高精度のチャックです。フィンガー部はステンレスを採用し、摩耗しづらく長期間にわたって使用できます。

チャックに連結することができるフィンガーは4つの形状から選択できるので、用途に合わせてアレンジできます。ガイドと本体の位置偏差を防ぐためのピンがあり、安定性を保った作業が可能な点も特徴といえます。

また、高い安定性を保持したまま利用できることが、高精度の作業の実現に繋がっています。

KMT社 エアハンド(平行開閉形) HFZシリーズ

引用元:https://www.e-kmt.com/product_airtac/hfz-series/

コガネイ社 エアハンド NHBシリーズ パラレルタイプ

シリンダとの組み合せで、簡単にロボットアームの設計ができるチャックです。レバー部にリニアガイドを採用し、高耐久性かつ高精度、長時間の把持が可能です。

汎用性が高く、様々な業界の空気圧機器のチャックとして、また、ライン作業の産業用ロボットに対応できます。ハンド部分を平行に取り付けるタイプのチャックなので、高い把持力が求められている作業などでも活躍します。

コガネイ社 エアハンドNHBシリーズ パラレルタイプ

引用元:https://official.koganei.co.jp/preview/NHBDPG

SMC社 薄形エアチャック MHF2シリーズ

ごく薄形のため、装置の省スペース化を目指すときにも使用できるチャックです。2方向からの配管が可能なチャックなので、アタッチメントを取り付けた際の位置調整が簡単という特徴もあります。

また、ブラケットを使わずに取り付けの高さを最小限に抑えられるのも特徴です。取り付けに高さが出ると、ロボットハンドの作業範囲が狭くなることや、特定の作業場では対応できなくなることもあります。

この薄形エアチャックのように薄型のチャックは、省作業スペースを実現したい方や、すでにあるロボットハンドやアームの操作性を高めたい方にも選ばれています。

SMC社 薄形エアチャック MHF2シリーズ

引用元:https://www.smcworld.com/newproducts/ja-jp/20/mhf2-f/

近藤製作所 チャック パワフルチャック CKLシリーズ

薄型かつコンパクトタイプで、高い把持力を発揮するチャックです。また、ガイドが長く、高剛性がある点も特徴です。パワフルかつ薄型なので、すでにある作業スペースで操作性と生産性を高めたいときにも選ばれることがあります。

切削水センサへの対応が可能なので、金属加工の現場でも使用できます。また、大量の水を使っても錆びにくい仕様になっているため、高耐久性も期待できるでしょう。

近藤製作所 チャック パワフルチャック CKLシリーズ

引用元:http://www.konsei.co.jp/mect_prt/product/64

CKD社 薄形ロングストローク 平行ハンド HLCシリーズ

リニアガイドが薄く、しかも可動範囲が広いので、汎用性が高いチャックです。シリーズ内に6つのサイズがあり、用途や対象物の素材によって使い分けることができます。

ロングストロークと薄型を兼ね備えているので、現在の作業スペースを変えないで、作業効率を高めたいときにも用いることができます。また、ハンドを装着する部分が平行になっているので、高い把持力を期待できる点にも注目です。

CKD社 薄形ロングストローク 平行ハンド HLCシリーズ

引用元:https://www.ckd.co.jp/kiki/jp/product/detail/248/HLC

まとめ

ロボットハンドのチャックとは、ロボットハンドの指の取り付け部分のこと、あるいは指部分のことを指します。チャックの形状や性能によって、適した作業や適した作業場が異なります。どのような作業スペースでどんな作業を行うのかを明確にして、もっとも作業効率を高めることができるチャックを選んでいきましょう。

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