産業用ロボットSIer 300社掲載

2021.02.06

産業用ロボットの構造とは?基本構成や動作原理を分かりやすく解説!

産業用ロボットの構造はその種類によってさまざまです。特に軸の数や形式に大きな違いがあります。

しかし、最も一般的な産業用ロボットである「垂直多関節型ロボット」の構造を理解すれば、産業用ロボット全体の基本構成や動作原理を理解できます。

そこで本稿では、垂直多関節型ロボットを例にとって産業用ロボットの基本構成や動作原理をわかりやすく解説します。

この記事の結論

・一般的な産業用ロボット(垂直多関節型ロボット)は、3つの機械で構成されている
・ロボット本体(マニピュレータ)は、ジョイントとリンクで形成されている
・軸数や軸の形式は、産業用ロボットの種類によって大きく異なる。

産業用ロボット本体の軸数

製造現場で最も主流な垂直多関節型ロボットの軸数は6軸です。

分かりやすいように、6軸それぞれの役割を人間の体に例えて表現すると以下のようになります。

  • 第1軸:腰の関節(回転)
  • 第2軸:肩の関節(上下)
  • 第3軸:肘の関節(上下)
  • 第4軸:手首の関節(回転)
  • 第5軸:手首の関節(上下)
  • 第6軸:指先(回転)

つまり垂直多関節型ロボットでは、1~3軸が人間でいう腰から肩、4~6軸が肩から指という構造になっています。

稼働時は人間の動作と同様に、腰・肩・肘(1~3軸)を動かし任意の方向に手(4~6軸)を運びます。作業対象に手が届いたら、手首や指先を活用して必要な作業を行います。

なお、産業用ロボットの種類によって軸数は大きく異なります。詳細は「各種類の産業用ロボットの構造」をご覧ください。

産業用ロボットの構成

一般的な産業用ロボット(垂直多関節型ロボット)は、以下3つの機械によって構成されています

マニピュレータ

ロボット本体のことです。先述の「軸の構造」と「サーボモーター」と呼ばれる位置や速度を制御する高機能モーターによって動作しています。

指先部分に取り付けられたハンドピース(またはエンドエフェクタ)は交換可能で、溶接・塗装・移動など用途に合わせてさまざまな作業ができるようになっています。

関連リンク:産業用ロボットのマニピュレーターとは?機能や選び方を解説

コントローラー

マニピュレータの動きを制御する装置です。「制御ボックス」とも呼ばれています。

サーボモーターを制御する「サーボアンプ」や「基盤」などが格納されている装置で、マニピュレータの動きをコントロールする役割を担っています。

関連リンク:産業用ロボットのコントローラとは?役割や命令方法について紹介

ティーチペンダント

マニピュレータの動作内容(ティーチングデータ)を設定する装置です。動作内容の新規作成および変更が可能です。

外観はテレビのリモコンに液晶をつけたようなもので、「表示板」「非常用停止ボタン」「イネーブルスイッチ」「数字キー」などが備わっています。

関連リンク:ティーチペンダントとは?仕組みやメリット・デメリットを解説

産業用ロボットのマニピュレータの構造

一般的に産業用ロボットはロボットアームで構成されています。ロボットアームは人間の体で言う「関節(ジョイント)」と「骨(リンク)」の組み合わせで形成されています。

ジョイント

ジョイントとは、ロボットの関節にあたる部分のことです。ジョイントの構造は、大きく2つに分かれます。

直動関節

直動関節とは、リンクを回転させることなく軸心の方向に伸縮できる関節のことです。例えるなら「突っ張り棒」や「伸縮可能な物干し竿」のようなイメージです。

回転関節

回転関節とは、リンクが軸心で回転できる関節のことです。別名「ねじり関節」とも言います。例えるなら「ドアの金具(丁番)」のようなイメージです。

リンク

リンクとは、ロボットの骨にあたる部分のことです。リンクの構造も大きく2つに分かれます。

シリアルリンク

シリアルリンクとは、リンクが直列に繋がっている構造のことです。したがって、垂直多関節型ロボットはシリアルリンク機構の産業用ロボットと言えます。

パラレルリンク

パラレルリンクとは、リンクが並列に繋がっている構造のことです。パラレルリンク機構の産業用ロボットはその名の通り「パラレルロボット」や「パラレルリンク」と呼ばれています。

産業用ロボットの動きを制御する仕組み

産業用ロボットで特に重要な役割をになっている要素を5つご紹介します。

アクチュエータ

アクチュエータとは、物を動かす力を提供するモノの総称で、産業用ロボットでは関節を機能させるために必要な要素として組み込まれています。

アクチュエータが存在しているおかげで、ロボットアームは上下・左右・回転などの動きが可能になっています。

製品例
・サーボモータ
・ステッピングモータ

減速機

減速機とは、ロボットを動かすための力を得るための要素です。減速機によってモーターの回転数を落とすことでより大きな出力を得られるようにしています。

この原理は自転車の変速機と同じです。車輪の回転数が最も多くなる小さなギアの場合、ペダルが重くスピードが上がる一方で急な坂道を上がれません。

しかし、車輪の回転数が最も少なくなる大きなギアに変換すれば、ペダルが軽くなりスピードが下がる一方で急な坂道でも進めます。

このように減速機はモーターの出力をアップさせるために、モーターと一緒にロボットに組み込まれています。

製品例
・サイクロイド減速機
・波動歯車装置
・遊星歯車装置

センサー(エンコーダ)

センサー(エンコーダ)とは、回転軸の速度や位置を検出する要素です。この要素のおかげでロボットが動いた方向や動いた距離などが認識できるようになっています。

製品例
・エンコーダ
・圧力センサー
・加速度センサー
・トルクセンサー(歪ゲージ/静電容量/光学)

非常用ブレーキ

非常用ブレーキとは、その名の通り停電時などの非常時にロボットを瞬時に停止させる要素です。

製品例
・無励磁作動形ブレーキ

伝達機構

伝達機構とは、アクチュエータや減速機で得た力を先端部に伝達する要素です。伝達する際に、力の加減や方向を変更することもできます。

製品例
・ベルト/タイミングベルト
・ギアー(歯車)
・カップリング(ノーバックラッシ)
・ETPブッシュ(ハイドロ方式)

各種類の産業用ロボットの構造

産業用ロボットは、リンクやジョイントの動かし方や構造別に名称が異なります。代表的な産業用ロボットの種類を4つご紹介します。

垂直多関節ロボット

垂直多関節ロボットは、人の腕のような形をしたシリアルリンク機構の産業用ロボットです。一般的には6軸のものが多いですが、4〜7軸程度まで軸数に幅があります。

水平多関節ロボット

水平多関節ロボットは、水平方向への稼働を得意とするシリアルリンク機構の産業用ロボットです。別名「スカラロボット」とも呼ばれています。

直動関節によって上下運動を可能とするユニット1つと、回転関節によって回転運動を可能とするユニット3つで構成されています。

直角座標ロボット

直角座標ロボットは、単軸直動ユニットを2~3つ組み合わせた産業用ロボットです。別名「直交型ロボット」「ガントリーロボット」などと呼ばれています。

パラレルリンクロボット

パラレルリンクロボットは、2本1セットのアーム3対または4対で最終的にコントロールしたい先端部分を制御するロボットです。

関連リンク:垂直多関節ロボットのメーカー20社と各社商品を紹介

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