目次
事業者が購入した産業用ロボットは固定資産と見なされ、法定耐用年数に基づき減価償却という会計処理が適用されます。本記事では、産業用ロボットの購入に際しての税務上の基礎知識をまとめています。
減価償却の計算方法についても詳しく解説するので、会計処理や投資計画時の参考にしてみてください。
・産業用ロボットの購入時には減価償却が適用される
・減価償却とは購入資産の費用を耐用年数に応じて分割計上する方法
・財務省が定めている「法定耐用年数」に基づいて税務処理を実施するケースが一般的
産業用ロボットを導入する際の会計方法
企業が産業用ロボットなどの固定資産(原則として1年以上に渡り保有・使用する資産)を購入する場合、「減価償却」という会計方法が適用されます。
仮に産業用ロボットを導入した初年度に購入費用の全額を経費として計上した場合、企業の年間収益が平年と同水準であったとしても、その年度だけ利益が極端に低くなり、翌年から利益が極端に増大してしまい、企業業績が会計上で正しく判断できなくなってしまいます。
このことを防ぎ、企業の期間収益と期間費用を金額的に対応させるために行う方策が減価償却です。
減価償却とは
減価償却とは購入資産の費用を耐用年数に応じた期間に分けて経費を計上する方法です。年度半ばに資産を購入した場合は月割りで計算します。
また一般原則として、法定耐用年数を迎える年度末には、帳簿上にその資産記録を「備忘価格」として1円だけ残します。最終年度に資産額を0円として全額償却してしまうと、法定耐用年数を超えて資産が残っていた場合に、帳簿上での記録と現有資産との間に矛盾が生じてしまいます。
これを防ぐために、帳簿上でも1円を「備忘価格」として残しておくという方策が取られます。なお減価償却の計算方法には「定額法」と「定率法」の2種類があり、任意で選択することが可能です。
定額法
定額法とは、購入金額を耐用年数の期間で等分し計上していく計算方法です。
定額法による減価償却の計算式:減価償却費=購入金額/耐用年数
定額法では年度ごとに同額を費用として計上するため、
- 会計処理がシンプル
- 今後の資金計画を立てやすい
といったメリットがあります。
定率法
定率法は購入価格(次年度以降は残存価格)に対して一定の償却率で経費を計上していく方法です。
定率法による減価償却の計算式:減価償却費=購入金額(次年度以降は残存価格)× 償却率
定率法では初年度の償却額が最大となり、年度ごとに段階的に下がっていくことが特徴です。定率法は経費を大きく計上できる分税務上の利益が小さくなりやすいため、場合によっては税金対策として有効です。会社の業績を見通しながら取り入れると良いでしょう。
耐用年数とは
耐用年数は減価償却に基づく会計処理を行う際に必要となる概念で、一般的には減価償却資産が使用に耐えると推定される年数を指します。耐用年数は自由に設定できますが、任意の耐用年数で分割計上した場合、会計上の数字と納税額に差異が生じて会計処理が煩雑になってしまうため、財務省が定めている「法定耐用年数」に基づいて税務処理を実施するケースが一般的です。
産業用ロボットの法定耐用年数
国税庁の「耐用年数の適用等に関する取扱通達 付表10 機械及び装置の耐用年数表」によると、産業用ロボットの法定耐用年数はロボットの用途や作業内容によって異なります。一例として、金属加工関連装置の法定耐用年数を抜粋して紹介します。
設備の種類 | 耐用年数(単位:年) |
鉄鋼鍛造業用設備 | 12 |
鋼鋳物又は銑鉄鋳物製造業用設備 | 10 |
金属熱処理業用設備 | 10 |
その他の鉄鋼業用設備 | 15 |
銅、鉛又は亜鉛製錬設備 | 9 |
アルミニウム製錬設備 | 12 |
まとめ
本記事では産業用ロボットに関する税務上の基礎知識を解説しました。
産業用ロボットを導入するとなるとそれなりの額の資金が動きます。本記事を参考に減価償却の計算方法などについて正しく理解し、産業用ロボットをスムーズに導入・運用していただければ幸いです。