産業用ロボットSIer 300社掲載

2021.04.30

産業用ロボットに関する法律とは?規格や規則についても詳しく解説

産業用ロボットに関する法律や規則、規格について紹介します。産業用ロボットでは、労働者が健康な状態で働けるためにも法律や規則でさまざまな決まり事があります。そこで、法律を知ってどのようなことに気を付けるべきかを知っておきましょう。

この記事の結論

・労働者の安全を確保するための労働安全衛生法と労働安全衛生規則が法律として定められている
・事業者は労働者に対して安全教育を実施したり、産業用ロボット周辺の安全措置を行う義務がある
・事故が起きた責任は事業者ではなく、事故に遭った労働者本人が負うこともある

産業用ロボットに関係する法律1:労働安全衛生法

産業用ロボットに関係する法律として労働安全衛生法があります。労働安全衛生法はロボット産業だけに関わらず、すべての労働者の安全を守る基本となる法律です。

働く人が全員守らなければならない法律のため、記載された法を破った場合、罰則も存在します。そのため、経営者から従業員全員が知る必要があります。

労働安全衛生法では、主に以下の3つの管理について定められているので、必ず知っておきましょう。

  • 作業環境管理…作業環境の危険なポイントを把握して、管理を行うこと
  • 作業管理…作業者が安全に仕事できるようルールを定めて、正しく管理が行われているかを確認すること
  • 健康管理…作業者が健康であることを確認し、病気の早期発見や予防を管理すること

また、労働安全衛生法第59条3項では危険な作業の場合、特別教育を受けなければならないと定められています。そのため、産業用ロボットに関わる全作業員は特別教育を受講して資格を取得しなければいけません。

産業用ロボットに関係する法律2:労働安全衛生規則

労働安全衛生規則は労働安全衛生法をより詳しく定めたものとなっています。

産業用ロボットに関する規則については、以下の4つが記載されています。

  • 第150条の3(教示に関する規則)
  • 第150条の4(運転中の危険防止に関する規則)
  • 第150条の5(検査に関する規則)
  • 第151条(点検に関する規則)

それぞれ詳しく見ていきましょう。

第150条の3(教示に関する規則)

安全に産業用ロボットのティーチングを行うために以下のような措置を行わなければならないと記載しています。

  • 事業者が産業用ロボットの教示を行う場合、産業用ロボットの操作方法や手順を規定すること
  • ティーチング中のマニピュレータの速度の決定
  • トラブルが発生した際の規定
  • 停止後の再起動の方法の規定
  • 産業用ロボットの誤操作による危険防止措置
  • 教示中に他者が産業用ロボットを操作できないようにする措置

ティーチング中は、ロボットの可動領域で作業を行うため、安全の確保が必要です。そのため、これらの措置を行う義務があります。

第150条の4(運転中の危険防止に関する規則)

第150条の4では作業者が操作しているロボットと接触してしまう危険がある場合は対策措置を行わなければならないと記載しています。

そのため、安全柵を設けるなどして、作業者がロボットの可動領域に侵入しないようにする必要があります。

第150条の5(検査に関する規則)

第150条の5ではロボットの検査や修理に関する安全措置について記載されています。運転中に検査が必要な場合は、第150条の3で規定されたティーチング時と同様の措置を行わなければなりません。

また、ロボットの停止中でも対策を行わなければならないと記載しています。作業中に作業者以外の人がロボットを起動させないように対処しなければなりません。

このように、検査ではロボットが動作しているときだけでなく停止中でも危険があるため安全措置を施す義務があります。

第151条(点検に関する規則)

第151条では点検に関する措置について記載されています。事業者は産業用ロボットのティーチング等を行う前に以下の3点を確認する義務があります。

  • 電気系の配線の被覆や外装の損傷があるか
  • マニピュレータの動作に異常がないか
  • 制御装置や非常停止装置が機能するか

上記を点検して問題があった場合、すぐに修理したり、必要な措置を行わなければいけません。

協働ロボットに関する規制緩和

2013年12月に第150条の4の改定によって、協働ロボットの規制が緩和されました。

改正前は80W以上のロボットは柵で囲い、人間の作業スペースから隔離することと定められていました。

改正後はユーザーが、リスクアセスメントに基づく措置を実施し、産業用ロボットに接触することにより労働者に危険の生ずる恐れが無くなったと評価できるときは、柵で囲うことなく人間と協調作業をして良いと変更されました。

産業用ロボットについての国際規格「ISO」

ロボットの安全性要求には、次の2つの国際規格が存在します。

  • ISO 10218-1:2011
  • ISO 10218-2:2011

ISO 10218-1

ISO 10218-1は産業用ロボットの設計および製造上の安全保証のための要求事項について記載されています。産業用ロボット単体に対する安全要求を規定しています。

要求事項として以下の4つがあるので見ていきましょう。

安全適合の監視停止

安全適合の監視・停止では、ロボットの停止条件について記載されており、簡潔にまとめると次のようになります。

  • 産業用ロボットと作業者が協働空間で作業しているとき、ロボットは必ず停止状態にしなければならない。
  • 作業者が協働空間からいなくなった場合、ロボットを再起動してもよい。
  • 協働ロボットにおいては、作業者が協働空間にいても稼働してもよい。

ハンドガイド

ハンドガイドはロボットを操作する装置のことです。ハンドガイドを使ってロボットを操作する場合に必要な規格となっています。記載されている内容を簡潔にまとめると次のようになります。

  • ハンドガイド装置は、ロボットアームの先端周辺に配置しなければならない。
  • ハンドガイド装置には、非常停止装置とイネーブルスイッチ組み込まれていなければならない。
  • ロボットの安全速度はリスクアセスメントで決定しなければならない。ただし、ティーチング中のロボットの移動速度は250mm/s以下でなければならない。

速度と間隔の監視

速度と間隔の監視では、ロボットの速度と作業者の間隔についての規定が記載されています。内容を簡潔にまとめると次のようになります。

  • ロボットは決められた速度で動き、作業者との間隔を維持しなければならない。
  • 速度と間隔に異常が起きた場合、ロボットは保護停止しなければならない。
  • 作業者が安全な間隔を考慮して、ロボットの速度を計算する

この規格によって、安全な範囲でロボットの速度を上げることが可能です。十分な距離をとれば高速で作業させることができ、生産スピードを向上させることができます。

本質的設計または制御による動力および力の制限

本質的設計または制御による動力および力の制限では、ロボットの動力と力の制限について記載されており、内容をまとめると以下のようになります。

  • ロボットに不具合が起きたとしても安全機能は失ってはいけない。
  • 制限値を超えた場合、ロボットを停止しなければならない。

上記の2点の要求が満たされている場合、作業者とロボットは同じ空間で作業できます。

ISO 10218-2

ISO 10218-2はロボットシステムに関する安全要求が述べられています。ロボットシステムとは、生産ラインにおけるすべての機器が該当します。

ISO 10218-2の規格は主にシステムインテグレータ(SIer)が対象の安全規格となっています。

産業用ロボットの事故が発生した際の法律的な責任

もし産業用ロボットによる事故が発生した場合、誰に責任があるのでしょうか?率直に答えを言うと、法律によって変わってしまうため、一概には言えません。

しかしながら、確実にいえることは、法律や安全ルールを守らない人が責任を負うことになるでしょう。

例えば、労働者がロボットと接触して怪我をしたとします。このとき、この労働者がしっかりと安全教育を受けずに作業を任せられていたら、事業者に責任があります。

一方で、安全教育を受けたのにもかかわらず、ルールに従わずに怪我をしたのであれば労働者に責任になってしまう可能性が非常に高いです。

そのため、責任は事業者だけでなく、被害に遭った労働者も負う場合があります。法律や規則だけでは事故リスクが100%なくなるわけではありませんが、事故を減らすためにも、ルールを順守することが大切です。

まとめ

産業用ロボットの法律や規則について紹介しました。労働者は労働安全衛生法や労働安全衛生規則などの法律で安全に作業できるように守られており、事業者は安全な労働環境のためにさまざまな措置を行う必要があります。

事故が発生した時の責任は事業者だけでなく、労働者も負う可能性があるためルールを守って作業しましょう。

また、事業者は産業用ロボット導入の際もさまざまな安全装置を購入する必要があります。もし何をそろえればいいのかわからないのであれば、システムインテグレータ企業に相談してみることをおすすめします。

関連記事