目次
「ロボット大国」とも言われる日本では、今日も最先端のロボット技術が生まれ続けています。この記事では、産業用ロボットの技術的な変遷に触れた上で、産業用ロボットの最新技術を3つ紹介します。
・最新技術①産業用ロボットとAI技術の融合でティーチングレスを実現
・最新技術②産業用ロボットとIoT技術の融合でスマートファクトリーを推進
・最新技術③安全性と機能性を兼ね備えた協働ロボットの実用化
産業用ロボットの技術変遷
産業用ロボットが最初に誕生したのは1950年代のアメリカですが、その時代から現在に至るまでに産業用ロボットの技術がどのように進化してきたのか、2つの観点から解説します。
- 拡張機能の充実化
- 人と共存できる協働ロボットの登場
拡張機能の充実化
ロボットアームなどの基本機能は産業用ロボットが誕生した1950年代からあるものですが、ロボットアームの先端に外観検査用カメラや溶接器具、塗装ガンなどを取り付けることによって、より柔軟な作業に対応できるように進化してきました。
後述するようにIT関連の技術革新が追い風となって、今後も産業用ロボットの拡張機能は充実化の一途をたどることが予測されます。
人と共存できる協働ロボットの登場
従来の産業用ロボットは比較的大型で、人との協働作業には不向きでした。しかし近年、人と共存できる「協働ロボット」が実用化され始めたことによって、従来産業用ロボットの導入が難しかった分野にもロボットを導入する流れが加速しています。
協働ロボットは人と協働作業をすることを前提に開発が進められているため、ロボット本体に人感センサーを組み込むなど、機械としての安全性が追求されているのが特徴です。またロボット本体の大きさも小型化・軽量化してきており、スペースが限られている製造現場にも導入しやすくなりました。
産業用ロボットの最新技術
2021年3月現在の産業用ロボットの最新技術を3つ紹介します。
- 産業用ロボット x AI技術でティーチングを自動化
- 産業用ロボット x IoT技術でスマートファクトリーを推進
- 安全性と機能性を兼ね備えた協働ロボット
産業用ロボット x AI技術でティーチングを自動化
従来はロボットに作業内容を教えるための「ロボットティーチング」を作業員が実施する必要があり、プログラミングなどの専門知識を持った人材を育成するための教育コストや外部委託コストなどがかかるという課題がありました。
しかし近年は産業用ロボットにAI(人工知能)技術を組み込むことでロボットに作業内容を自動的に学習させるという「ティーチングレス」の試みが進められています。
たとえば、2016年に第7回ロボット大賞(経済産業大臣賞)を受賞した「完全ティーチレス/ばら積みピッキングMUJINコントローラ PickWorker」というAI搭載ロボットは最初の簡単な条件設定のみでロボットに作業内容を学習させることができます。
産業用ロボット x IoT技術でスマートファクトリーを推進
IoT(Internet of Things)とはモノがネットワークに繋がっている状態を指します。製造業界においては、IoT技術で工場全体をインターネット化する「スマートファクトリー」の施策が近年注目されています。
スマートファクトリーは2011年にドイツ政府が提唱した「インダストリー4.0(第4次産業革命)」の一環として導入が始まり、現在では世界中の工場でスマートファクトリーが導入されつつあります。
スマートファクトリーのメリットとしては、
- 工場のロボットや機械の稼働状況・稼働率をすべてコンピュータで一括管理
- 故障の前兆をいち早く検知
- データ化された稼働記録に基づき、合理的な施策を打ち出すことが可能
といった点が挙げられます。
感染症の蔓延といった時代背景もあり、スマートファクトリーを含むDX(デジタルトランスフォーメーション)の流れは今後さらに加速することが予想されます。
安全性と機能性を兼ね備えた協働ロボット
協働用ロボットは人と協働作業をすることを前提に設計されており、安全性に優れる反面出力が低い(80W以下の)ケースが多く、作業速度や可搬重量などの面で課題が残されていました。しかし近年、安全性と機能性を両立させた高性能の協働ロボット開発が進んでいます。
たとえば、協働ロボット2台を連動させたり、ロボットビジョン(画像認識システム)を搭載した協働ロボットなども登場。2021年2月には業界大手のABB社が高精度の協働ロボット「GoFA CRB 15000」と「SWIFTI CRB 1100」の2機種を発表しています。
まとめ
今回は産業用ロボットの最新技術として、
- 産業用ロボット x AI技術でティーチングを自動化
- 産業用ロボット x IoT技術でスマートファクトリーを推進
- 安全性と機能性を兼ね備えた協働ロボット
の3つを紹介しました。
近年は技術進化が著しいため、常に最新技術にアンテナを貼っておく姿勢が重要です。またグローバル化や少子高齢化、感染症の蔓延といった複雑な時代背景の中、産業用ロボットが果たす役割が今後も増えていくことが予想されます。
本記事でご紹介した内容が、自社技術と最新技術とをうまく融合させながら時代のニーズに対応するための一助となりましたら幸いです。