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産業用ロボットの歴史は今から70年前にアメリカから始まりました。その後、日本でも開発が始まり、今では世界で産業用ロボット業界でトップクラスのシェアを誇っています。
今回は、産業用ロボットの歴史をはじまりから現在に至るまでを詳しく見ていきましょう。
・アメリカで世界初の産業用ロボット「ユニメート」が誕生
・1968年に国内初の産業ロボットができ、70年代に需要が拡大する
・現在も国内外で需要があり、産業ロボットの知能化が求められている
産業用ロボットの歴史はアメリカから生まれた「プレイバックロボット」から始まる
産業用ロボットの歴史はアメリカから始まります。1954年に技術者のジョージ・デボルはティーチングと再生によって、物をつかんだり、置いたりすることができる「プレイバックロボットの概念」を特許出願しました。
プレイバックロボットは専門的な知識なしに操作ができるという点が、当時革新的なアイデアでした。その後、特許はアメリカの事業家兼技術者であるジョセフ・エンゲルバーガーが買い取ります。
デボルとエンゲルバーガーは偶然出会い、1961年、共に世界初の産業用ロボット会社「ユニメーション社」を設立し、1962年に産業用途に使うロボット「ユニメート」が発売しました。
ユニメートはアメリカの自動車産業から注目され、工場の自動化を進めるために大手自動車メーカーのゼネラルモーターズが工場に導入して実用化が始まりました。
また、同じ時期に同国のAMF社が円筒座標ロボット「バーサトラン」を開発し、自動車工場へ導入されます。このようにして、産業用ロボットはアメリカだけでなく世界中から注目されるようになりました。
世界や日本の1960年代|産業用ロボットが日本でも普及・開発
エンゲルバーガーは日本への進出を考えます。1960年代の日本は高度経済成長期でしたが、どの会社も人手不足の問題を抱えていました。
そこで、エンゲルバーガーは東京の講演に招かれたことがきっかけで1966年に来日します。ロボットの活用の考えている経営者に向けて、産業用ロボットがいかに実用的かをプレゼンしました。
この講演でエンゲルバーガーは日本の需要があると確信し、日本市場に向けてユニメーション社は技術提携先を探します。
1967年に川崎重工の前身である川崎航空機工業がユニメーション社に向けて交渉を行い、エンゲルバーガーから熱意が伝わったことで、技術提携先として採用されました。
これにより、1968年川崎航空機工業は産業用ロボットを開発するためのIR(Industrial Robot)国産化推進室を社内で立ち上げます。
そして、1969年には日本初の国産産業用ロボット「川崎ユニメート2000型」が誕生しました。
世界や日本の1970年代|実用化開始
1970年代は製造業でロボットの実用化が進んだ年代になります。高度経済成長時の日本では、自動車の需要が著しく増えた背景もあり、自動車メーカーが産業用ロボットの導入を急いで行っていました。
1970年にスポット溶接用のロボットが商品化され、アーク溶接ロボット、塗装ロボット、電子部品実装機が次々に商品化されていきます。
多くの企業が自動車の生産スピードを向上するためにこれらのロボットを導入しなければなりませんでしたが、コストがネックで導入できない企業も多くありました。
しかしながら、産業用ロボットの技術も進化していきます。
1960年代の産業用ロボットのアクチュエータは油圧や空圧が動力として主流でしたが、モーターの性能が向上したことで電力を用いられたサーボモータが採用されるようになりました。
これにより、サーボモータが主流となったことで産業用ロボットは低価格化が行われ、普及されるようになりました。
さらに、オイルショックによる物価の上昇により、人件費などの生産コストを下げるため、産業用ロボットの導入に拍車がかかり、需要がより高まっていきます。
世界や日本の1980年|産業用ロボットの普及が急激に増加
1980年が「産業用ロボットの普及元年」と呼ばれ、産業用ロボットの普及が急激に増加します。
1985年には、国内の産業用ロボットの稼働台数が93,000台となり、世界の7割の産業用ロボットが日本で稼働していることから「飛躍元年」と呼ばれるようになりました。
日本の産業用ロボットの技術力は海外からも評価され、アメリカのゼネラルモーターズ社からも採用されるようになり、日本は実質ロボット産業世界一の国となりました。
産業用ロボットメーカーも同時期に増加し、1980年が150社だったのに対し、1985年には282社へと2倍弱増えています。
導入する企業は自動車メーカーだけでなく精密機械や食品業界などさまざまな分野で導入されるようになりました。
世界や日本の1990年|バブル崩壊と設備投資抑制
需要が急増していた産業用ロボットメーカーもバブル崩壊による日本経済の落ち込みで大打撃を受けます。
メーカーの設備に投資を控えるようになり、ロボットの費用対効果を考えて慎重に検討するようになりました。
費用対効果を見据えた結果、産業用ロボットは単に人件費削減を目的とした導入を行うのではなく、人にはできないような作業ができるロボットの導入が行われるようになりました。
汎用ロボットよりも専用化されたロボットの開発が進み、さまざまな方向でロボットの技術が進化していきました。
ロボット言語も進化し、ヒューマンインターフェースを重視したプログラミングツールの需要も高まります。
1990年代は経済低迷により、ロボット事業を撤退した会社も存在しているため、市場はマイナスでしたが、技術面は進化しており、現在の日本のロボット産業を支えるような成果が得られています。
世界や日本の2000年代|リーマンショックも需要は増加傾向に
2000年代はITバブルにより、PCや携帯電話の生産台数が増加し、国内外で液晶半導体などの設備投資が行われました。
また、海外では自動車関連の設備投資の需要があり、産業用ロボットの市場は徐々に復調していきます。
国内メーカーが中国で工場を設営するようになってから、海外向けのロボットシステムの受注が増加します。
2009年にはリーマンショックの影響を受け、産業用ロボット業界は再び不況によるダメージを受けましたが、需要が増加傾向にあることから早く回復しました。
国内需要は停滞したものの、中国やアジアの新興国への需要が増加し、海外への輸出が増えるようになりました。
世界や日本の現在|産業用ロボットの需要は世界中に拡大
現在は少子化による人手不足やコスト削減、生産性向上から、国内外問わず需要は拡大しています。
富士経済によると、産業用ロボットの市場規模は2019年に1兆174億円に達しており、2025年には2兆2727億円に拡大すると言われています。
中国やアジアの新興国などはまだまだ市場に余地があるため拡大する見込みです。
技術的には産業用ロボットの知能化が求められており、AIやIoTを取り入れた生産ラインの需要が高いです。
また、人とともに働くことができる協働ロボットも進化しているため、今後も需要が高まっていくと予測されています。
産業用ロボットの歴史について
産業用ロボットの歴史について紹介しました。今後も産業用ロボットは需要が増えていくでしょう。特にAIやIoTによるロボットの知能化が進んでいきます。
今後あなたの会社をより発展させるためには産業用ロボットの導入が必要になるかもしれません。今回を機に導入を検討してみてはいかがでしょうか?