目次
この記事では、産業用ロボットとは一体どのようなものか、何ができるのか、そしてどのようなメリットがあるかについて詳しく解説します。
限られた従業員数の中で、最大限の生産性を発揮したい、従業員の負担を減らしたいという方は、ぜひ本記事を参考に産業用ロボットの導入を検討してみて下さい。
・産業用ロボットとはFA化(工場の自動化)に寄与するロボットの総称
・産業用ロボットはサービスロボットと区別される
・産業用ロボットを導入することで人件費削減、人手不足解消、生産性向上などが期待できる
産業用ロボットの定義
産業用ロボットとはどのようなものか
日本産業規格JIS B0134によると、産業用ロボット(または産業ロボット)とは「自動制御され、再プログラム可能で、多目的なマニピュレーターであり、3軸以上でプログラム可能で、1か所に固定してまたは運動機能をもって産業自動化の用途に用いられるロボット」と定義されています。
いわゆるFA化(工場の自動化)に寄与するロボットの総称であり、製造現場での作業を代替する機械装置全般を指します。たとえば製造現場における組み立て作業などに活用されます。
ただし、産業において活用されるロボットのすべてが産業用ロボットに該当するわけではありません。産業用ロボットは、後述する「サービスロボット」と区別されます。これら2つの違いを詳しく見ていきましょう。
サービスロボットとの違い
産業用ロボットとサービスロボットの違いは用途です。
産業用ロボットは、組み立て・搬送・検品といった工場での作業を自動化するために活用されるロボットであるのに対し、サービスロボットは医療・掃除・災害救助など人間の生活をサポートするために活用されるロボットを指します。
産業用ロボットにはどのようなものがあるのか
産業用ロボットは形状によって次の5種類に分類されます。
- 垂直多関節ロボット
- 水平多関節ロボット
- パラレルリンクロボット
- 直交ロボット
- 双腕ロボット
それぞれの特徴を見ていきましょう。
垂直多関節ロボット
垂直多関節ロボットは、人間の腕のように繊細な動きを実現できるロボットです。汎用性が高く作業範囲に対して設置面積が小さいことで導入しやすいのが特徴で、2021年現在最も高いシェアを誇っています。
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水平多関節ロボット
水平多関節ロボットとは、水平方向にアームが動く多関節のロボットです。英語名(Selective Compliance Assembly Robot Arm robot)の頭文字を取って「SCARA(スカラ)ロボット」とも呼ばれます。3つの回転動作と1つの上下動作を基本としており可動範囲に制限はありますが、上下方向の剛性に優れています。
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パラレルリンクロボット
パラレルリンクロボットとは、上述の多関節ロボットが抱えるコスト面の課題を解決するために比較的最近生み出されたロボットです。上から吊り下げる形で使用され、高速かつ精密な動きを実現します。
関連リンク:パラレルリンクロボットとは?使用用途や活用事例も合わせて紹介
直交ロボット
直交ロボットは一般的に2〜3軸のスライド軸で構成されるシンプルなロボットです。シンプルな構造ゆえに、比較的低コストで生産できるのが魅力です。半導体や医薬品といった小型製品を扱う分野で使われることが多いロボットです。
関連リンク:直交ロボットとは?構造やメリット・デメリット、導入事例を解説
双腕ロボット
双腕ロボットとは、2本のアームがついているのが特徴の産業用ロボットです。 2本のアームがあることにより、より複雑な作業に対応することが可能になります。
関連リンク:双腕ロボットとは?長所や導入のメリットを紹介
産業用ロボットを導入するメリット
産業用ロボットを導入することでどのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは次の5つのメリットについて解説します。
- 人件費が削減できる
- 人手不足を解消できる
- 生産性が向上する
- 危険な作業を人がしなくて済む
- 作業の質が担保される
人件費が削減できる
中小企業をはじめ、生産コストの大部分を占める人件費に悩まされている製造現場は多いものです。産業ロボットを導入することで従来手作業で行なっていた工程を自動化できるため、人件費を抑えることが可能になります。
たとえば、複数の作業員で分業して行なっている工程を1台のロボットに一元化して対応することも可能です。
人件費を削減することによって元々人件費の安い東南アジアなどの地域で生産される廉価な競合製品に対抗できるようになるため、経営状況が改善することが期待されます。
人手不足を解消できる
少子高齢化が加速している昨今、人手不足に悩む製造現場は多いものです。産業用ロボットを導入することで人手不足を補うことができます。
たとえば垂直多関節ロボットなどを駆使すれば、従来のロボットでは困難であった熟練工の繊細な腕の動きも再現可能です。
熟練工のスキルをロボットで再現することで、作業員の高齢化や属人化による技術継承問題を解消することができるというメリットがあります。
生産性が向上する
人間は24時間365日働き続けることは難しいため、人間の労働力だけで生み出せる生産量には限界があります。また作業員の習熟度によっても生産性は大きく左右されます。
一方、産業用ロボットであれば、プログラムされた一定の動きを続けることができるため、作業量と作業スピードを向上させることができます。
またロボットであれば営業時間内はもちろん夜間などの営業時間外にも作業を自動的に継続することができるので、生産性が大きく向上するでしょう。生産性を向上させることで、経営状態が改善され事業拡大を目指すことも可能になります。
危険な作業を人がしなくて済む
製造現場では長時間続けるのが難しい作業や有害物質が発生する作業など、人間にとって過酷な条件も多いものです。
一方、産業用ロボットであれば、現場環境に合わせた仕様で設計・導入することができるため、人間にとって過酷な作業も難なくこなすことができます。
このように産業ロボットが危険な作業を代替することで、製造現場の過酷な労働環境を改善させることができます。
作業の質が担保される
人間の手作業には体力と時間に限りがあります。またその日の健康状態や長時間労働によって製品の仕上がりにムラが生じたり、集中力の低下によるミスや事故が起こりやすくなったりする可能性もあります。
一方、産業用ロボットはプログラムされた一定の動きを繰り返すことができるので、作業の質を一定に保つことができます。
そのため人間の手作業を産業用ロボットで代替することによって品質管理や納期管理がしやすくなるというメリットがあります。
まとめ
この記事では産業用ロボットの基本特徴や5つの種類、導入するメリットについて解説しました。
産業用ロボットは、産業の中でも特にFA化(工場の自動化)に寄与する機械装置であり、人間の生活をサポートするために使われるサービスロボットとは区別されます。
産業用ロボットを導入することで、日本のモノづくり現場が抱えている様々な問題を解決できるとともに、人件費削減・生産性向上・労働環境改善といったメリットが期待できます。
また産業用ロボットは形状の違いから、
- 垂直多関節ロボット
- 水平多関節ロボット
- パラレルリンクロボット
- 直交ロボット
- 双腕ロボット
これら5つの種類があるので、それぞれの製造現場に合わせた最適なロボットの導入をぜひ検討してみてください。