産業用ロボットSIer 300社掲載

2021.03.31

産業用ロボットの安全規格とは?ISO規格とJIS規格について詳しく解説!

産業用ロボットを導入・運用する際には様々な法律や規格を遵守する必要があります。この記事では作業員の安全を守るために、産業用ロボット製品にはどのような安全規格が定められているのかについて解説します。

この記事を読むことで、製造業では耳にすることも多いISO規格とJIS規格の違いについて学ぶことができます。

この記事の結論

・産業用ロボットに関連する安全規格はISO 10218(JIS B 8433)
・ISO規格とは国際標準化機構によって定められている国際規格
・JIS規格とは、産業標準化法に基づき制定されている国内製品規格

産業用ロボットに関する安全規格

産業用ロボットに関連する安全規格(2021年3月現在)はISO 10218(JIS B 8433)に記載されています。

ISO 10218(JIS B 8433)は次に挙げる2部構成となっています。

  • ロボット本体に関する規格 ISO10218-1(JIS B 8433-1)
  • システムインテグレーションなどに関する規格 ISO10218-2(JIS B 8433-2)

それぞれ見ていきましょう。

ロボット本体に関する安全規格 ISO 10218-1(JIS B 8433-1)

ISO 10218-1(JIS B 8433-1)ではロボット本体の設計および製造上の安全性に関する規格が定められています。内容としては、リスクアセスメント、危険源に対する要求事項や機能安全対応、検証、使用上の情報などが含まれます。たとえば、「5 設計要求事項及び保護方策」という項目では、次のような要求事項が記されています。

5.2.1 動力伝達構成品

一体となったカバー(例えば,ギアボックス)で保護されない,モータ軸,歯車,駆動ベルト又はリンクのような構成品に起因する危険源の暴露は,固定又は可動ガードによって防止しなければならない。

定期的な保全のために取り除くことが必要な固定ガードの固定器具は,機械又はガードに取り付けたままにしなければならない。

可動ガードは,危険な機械機能が接触する前にその機能が停止するように,危険な動作に対してインターロックをしなければならない。(後略)

出典:https://kikakurui.com/b8/B8433-2-2015-01.html

システムインテグレーションなどに関する安全規格 ISO 10218-2(JIS B 8433-2)

ISO 10218-2(JIS B 8433-2)ではロボット周辺機器などを含むシステムインテグレーションおよび設置上の安全性に関する規格が定められています。たとえば、「5.6.3 自動モード」という項目では、次のような要求事項が記されています。

5.6.3.1 一般

自動モード時に安全防護空間への侵入があった場合,危険源又は危険な状態をもたらす可能性がある全ての設備は保護停止にならなければならない。

5.6.3.2 自動モードの選択

ロボットシステムの自動モードの選択が,いかなる保護停止又は非常停止の条件を,無効化又はリセットしてはならない。自動モードの選択は,安全防護空間外で行わなければならない。(後略)

5.6.3.3 自動運転の始動

自動運転は,安全防護空間外から始動しなければならない。 自動運転の始動は,全ての関連する安全防護が有効であるときだけ可能でなければならない。

出典:https://kikakurui.com/b8/B8433-2-2015-01.html

協働ロボットに関する補足事項

人と協働作業をすることを想定して開発された協働ロボットに関しては、人とロボットの接触事故などを防ぐため、補足事項として2016年にISO/TS 15066が定められています。また翌年2017年には、協働ロボットの標準仕様書としてTS B 0033:2017が公表されています。

標準仕様書(TS)とは、国内安全規格としては未だ正式に承認されていないものの今後制定の可能性があると判断されて一般向けに公表されている事項を指します。

協働ロボットは2013年の産業用ロボット関連法案の規制緩和以降に導入が加速しているという背景もあり、今後も補足事項が更新・追加される可能性が高いので、最新の情報にアンテナを貼っておくことが重要です。

ISO規格とは

ISO規格とは、1947年にスイスのジュネーブに発足した「国際標準化機構(ISO;International Organization for Standardization)」によって定められている製品規格です。

ISO規格は、製品やサービスに世界共通の基準を作ることによって国際的な取引をスムーズにすることを目的として制定されており、日本を含む世界163ヵ国(2019年3月末時点)がISO規格に照準を合わせた生産活動をしています。

ISO規格の総数は20,000件以上(2021年3月現在)となっており、グローバル化が進むにつれて今後もさらに件数が増加していくことが予想されます。

JIS規格とは

「JIS(Japanese Industrial Standards)規格」または「日本産業規格」とは、産業標準化法(旧・工業標準化法)に基づき制定されている日本国内の製品規格です。JISには産業用ロボットを含む各種産業製品に関する規格から、文字コードやプログラムコードといった情報処理、サービスに関する規格まで、10,000件以上の規格が定められています(2021年3月現在)。

また、上述の産業用ロボットの安全規格のように、規格の種類によってはJIS規格とISO規格の両方が存在する場合があります。その場合、JIS規格はISO規格を日本語に翻訳して制定されているため、基本的に両者の内容に違いはありません。

JIS規格を満たしている製品にはJISマークが付けられており、一定の品質・安全基準を満たしているという証明にもなります。

ISO規格とJIS規格が生まれた背景

ISO規格とJIS規格は、戦後の国際貿易を円滑化するための取り組みと密接に結びついています。第2次世界大戦後の1947年、スイスのジュネーヴにおいて締結された「関税及び貿易に関する一般協定(GATT)」を発端として、冷戦後の1994年に貿易の技術的障害に関する協定(TBT協定)が日本を含む複数国間で締結されました。

翌年の1995年には自由貿易を目的とした国際機関「WTO(World Trade Organization 世界貿易機関)」が発足。WTO発足後「WTO/TBT協定」に基づいて世界各国で各国の基準・規格をISO規格に統一する流れが加速し、現在に至ります。

まとめ

本記事では産業用ロボット製品にはどのような安全規格が定められているのかについて解説しました。産業用ロボットに関する安全規格はISO 10218(JIS B 8433)に定められています。また今後導入が加速することが予想される協働ロボットに関しては補足事項が更新・追加される可能性が高いので、最新の動向を注視する必要があります。

産業用ロボットを導入・運用する際には、国際基準であるISO規格や国内基準であるJIS規格に関する知識を持ちながら作業現場の安全に十分に配慮しながら進めましょう。

関連記事