産業用ロボットSIer 300社掲載

2023.05.11

ロボットを使ったプレス加工|自動化のメリットは?動画付き事例紹介

プレス機械周辺での作業は、時に不安全で作業者の負荷が大きい作業であると言えます。また、作業者によって作業時間にバラつきがあると、工程全体の生産性を落としてしまいます。プレス機械への材料投入や工程間のワーク搬送といった作業は、ロボットを使って自動化することが可能です。では、具体的にはどのような自動化事例があるのか、事例を踏まえてご紹介します。

プレス加工工程の自動化とは?

アマダプレスシステム加工機
出典元:アマダプレスシステム

プレス加工工程では、プレス機械を用いてワークに圧力を加え、成形を行っています。加工は機械が行いますが、その前後の機械へのワークの投入・取出・後工程への搬送といった作業は、作業者が行っているという現場も少なくありません。こうした作業は、単純な繰り返し作業であり、ロボットを導入した自動化が見込まれる領域です。

プレス加工工程自動化のメリット

プレス加工工程にロボットを導入し、加工前後の作業を自動化することで、以下のようなメリットが見込めます。

人件費を削減できる

プレス機械は、大量生産を得意としています。そのため作業者は、材料の投入・取出(とりだし)といった繰り返し作業を1日に長時間行うことになります。6軸の産業用ロボットや協働ロボットに置き換えることで、作業者の負荷や人数を減らすことが可能です。省人化により、これまでかかっていた人件費を削減することができます。

作業者の安全性を確保できる

特に自動車の製造現場などでは、ドアなどの大物のワークをプレス加工する必要があります。プレス機械間でワークを搬送する際、大物部品であれば作業者の負荷が大きく、不安全です。可搬重量の大きい6軸のマテハンロボットや専用の搬送機械を使うことで、作業者をより安全かつ高度な仕事に当てることができます。

生産性の向上につながる

人による作業の場合、熟練者と新人との間で作業時間に差が出てしまいます。また、搬送に時間がかかってしまうと、生産効率の低下につながります。ロボットを導入し、同じ精度でスピーディーに繰り返し作業を実施することができれば、生産性の向上が見込めます。

プレス加工工程向けロボットの種類

材料の投入・取出、加工した製品の搬送といった作業の自動化を実現するためには、どのようなロボットを導入すれば良いのでしょうか。

プレス機械へのワーク投入・取出ロボット

プレス機械へのワーク投入・取出作業の自動化には、産業用ロボットや協働ロボットの導入が考えられます。それぞれのメリットがあるので、ご紹介します。

産業用ロボット

単工程の場合、プレス機械1台の前に多関節ロボットを設置し、ワークの投入・取出を自動化します。金型の段替え作業についても、ロボットで自動化するケースもあります。プレス加工の一連の作業をロボットに置き換えることが可能です。
プレス機械が複数並ぶプレスラインの場合、機械の間にロボットを設置し、ロボットに排出したワークを次の機械に投入する役割を持たせることもあります。

協働ロボット

産業用ロボットの場合、ティーチングに専門の知識が必要になります。その一方で、協働ロボットはダイレクトティーチなど、直感的な教示が可能で、ロボットに慣れていない作業者や新人でも簡単に扱うことができるといったメリットがあります。安全柵が不要で、省スペースです。レイアウト変更も比較的簡単にできます。

双腕協働ロボット

協働ロボットの中には、川崎重工業株式会社の「duAro」のように、双腕タイプのものも存在します。duAroの特徴として、人一人分の大きさで省スペースである点と、台車式なので簡単に移動できる点が挙げられます。様々な部品の加工を行うプレス加工工程では、金型の変更が必須なので、移動が簡単なduAroは導入にハードルが低いと言えるでしょう。

プレス間搬送ロボット

プレス機械間のワーク搬送には、産業用ロボットや搬送機械の導入が効果的です。

産業用ロボット

加工したワークを次工程に搬送する作業も、産業用ロボットを導入した自動化が可能です。プレス工程間に産業用ロボットを設置して、高速で正確なワーク搬送を行います。どのようなロボットが適しているかは、ワークの大きさや工程の仕様次第で異なります。

各ロボットメーカーで、プレス間搬送に適した機種のラインナップがあります。一例として、不二越(NACHI)のST210TPは、自動車のドアパネルのような大物部品の搬送に適しています。専用のアームを用いてパネルの並行移動ができるので、高速搬送が可能で、サイクルタイムに悪影響を与えません。

参照URL:不二越 / プレス間搬送ロボット ST210TP

プレス専用搬送機械

プレス間搬送装置 - 製品紹介 - 株式会社エイチアンドエフ
出典元:プレス間搬送装置 – 製品紹介 – 株式会社エイチアンドエフ

プレス機械間の搬送を、専用の搬送装置を使って自動化するケースもあります。搬送装置は、プレス機械メーカーが製作しています。プレス機械と連動した動きが可能で、サイクルタイムの短縮に貢献します。プレス機械内蔵のものであれば、産業用ロボットを配置するよりも省スペースです。

プレス工程の自動化事例5選

各ロボットメーカーやユーザーのプレス工程の自動化事例を、動画付きでご紹介します。

①株式会社有川製作所 協調ロボットによるプレス工程の自動化

石川県にある株式会社有川製作所は、金属プレス・金型設計製作メーカです。同社のプレス工程では、オムロン株式会社製の協調ロボット2台を導入しています。1台のロボットが製品を吸着し、機械にセットします。もう1台は、加工後にカメラで位置を認識した後、検査型でチャックを行い、コンベアに排出する役割を担います。その結果、もともと作業者2名で行っていた作業を1名に省人化することに成功しました。

動画:2台の協調ロボットでプレス工程の自動化を実現。ロボットシステムを内製化することで技術者の育成にも貢献 | 動画ライブラリ | オムロン制御機器

②しのはらプレスサービス株式会社

しのはらプレスサービス株式会社は、千葉に本社を置くシステムインテグレーターです。同社では、プレス機械と汎用ロボット、周辺設備を組み合わせた自動化設備を提供しています。設備導入前のプレス工程では、熟練作業者がプレス機械3〜4台を操作し、金型の段取り替えを半日ほどかけて行っていました。ロボットを導入し段取り替えを機械化したことで、大幅な時間短縮につながり、誰でもスイッチを押すだけで作業ができるようになりました。

プレス&ロボットのSystemIntegration | しのはらプレスサービス株式会社

③ABB プレス工程間ハンドリングロボット

スイスに本社を置くロボットメーカーのABBグループでは、自動車工場のプレス工程向けに、工程間ハンドリングロボット「IRB 760PT」を販売しています。IRB 760PTは、最大で460kgのワークをハンドリング可能です。専用のプレス間搬送装置の段替えにかかっていた時間・コスト・中断回数を削減できます。また、プレス機械との干渉を低減するよう設計されており、作業領域におけるロボット動作の自由度を損なうことがありません。

ツールを自動的に変更する機能と併せて、新たな製品を扱う際には再エンジニアリング無しで再プログラムができる点も特徴です。

ABB’s new and fastest Press tending robot variant: IRB 760 PT

④株式会社アマダプレスシステム 2軸サーボロボット

神奈川県に本社を置く株式会社アマダプレスシステムは、プレスマシンやプレス周辺装置の製造・販売を行う会社です。アマダプレスシステムでは、プレス間のワーク搬送用ロボットとして「RHQ 2軸サーボロボット」を取り扱っています。同社の搬送ロボットは、搬送スピードを上げるだけでなく、プレス機械との相互のタイミングロスを抑える工夫をしています。簡単なティーチング操作のみで、ロボットがプレス機械とのタイミング調整を行う協調制御を行うことが可能です。

2軸サーボロボット RHQシリーズ

⑤株式会社エヌテック 多軸ロボットプレス間搬送システム

株式会社エヌテックは、徳島県に本社を置くプレス機械メーカーです。同社では、FANUC社製のロボットを活用し、ワーク投入・取出・搬送の自動化システムを構築しています。コンベアによって前工程から流れてきたワークを把持し、機械に投入します。プレス機械間に設けた中間ステージ上で、次工程のロボットにワークを受け渡します。

多軸ロボットプレス間搬送システム/Transport System Between Press Machine by Multi-axis Robot

まとめ

プレス加工工程のロボットによる自動化事例についてご紹介しました。プレス加工前後の作業にロボットを導入することで、作業者の安全性を確保できるだけでなく、工程の生産性向上にも繋がります。
今回は自動化事例として、各ロボットメーカーやプレス機械メーカーでの取り組みをご紹介しました。自動化ご検討の際には、是非ロボカルにご相談ください。

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