目次
現在、人と同じ環境で作業できる協働ロボットの中には、溶接ができるものも開発されています。一般的な産業用ロボットと違い、安く購入することも可能ですが、導入前に気を付けなければならない点もあるので詳しく見ていきましょう。
・溶接用途の協働ロボットはティーチングが簡単などのメリットがある
・協働ロボットでも溶接用途であれば、安全柵が必要な場合もある
・国内ではユニバーサルロボット社の協働ロボットをベースにした溶接ロボットが発売されている
協働ロボットでも溶接用途のものが開発されている
溶接ロボットといえば、一般的な産業用ロボットでないと導入できないというイメージが強いです。しかしながら、現在溶接ができる協働ロボットが開発されています。
他の溶接ロボットと同様、ベテラン作業者の減少などの問題に貢献してくれます。使い方によっては一般的なロボットより高いコストパフォーマンスを発揮できることから、今後導入が増えていくかもしれません。
溶接用協働ロボットのメリット
溶接用の協働ロボットにはどのようなメリットがあるのか紹介します。
具体的には以下のようなものがあります。
- 初心者でもティーチングが簡単
- 省スペースでの設置が可能
- 低価格で導入しやすい
それぞれ詳しく見ていきましょう。
初心者でもティーチングが簡単
協働ロボットは、ダイレクトティーチングという手でロボットハンドを動かして教示させる方法が用いられています。そのため、初心者でも簡単にティーチングが可能です。
特に現在の協働ロボットは独自のティーチングソフトやアプリケーションが搭載されており、タッチパネルで操作できます。
ユーザーインターフェースを意識した技術開発により、誰でも工数をかけずにティーチングができるようになっています。熟練のロボットティーチングマンがいない工場におすすめです。
省スペースでの設置が可能
協働ロボットは省スペースでの設置が可能です。一般的な産業用ロボットだと厳重な安全対策が必要のため、大掛かりな設置スペースが必要です。
しかしながら、協働ロボットは軽量で場所を取らないため、生産設備内のレイアウトを変更することなくさまざまな用途に応じて配置できます。
また、短時間で簡単に段替えを行えるため、多品種少量生産の生産ラインでも大いに活躍できます。
低価格で導入しやすい
協働ロボットは一般的な中型・大型ロボットよりも低価格で導入できるため、価格のハードルが低く、比較的小規模な企業でも導入しやすいです。
また、協働ロボットは人と同じ環境で作業ができることを目的としたロボットのため、安全柵がなくても使用できます。そのため、周辺設備のコストも削減でき、トータルコストを下げることも可能にします。
価格がネックで悩んでいる企業でも、協働ロボットであれば導入できるかもしれません。
溶接用協働ロボットの注意点
溶接用の協働ロボットは導入することでさまざまなメリットを受けることができますが、いくつか注意しなければならないことがあるので確認しておきましょう。
具体的には以下のようなものがあります。
- 安全対策が必要な場合がある
- 一般的な産業用ロボットよりも生産ペースは遅い
- 周辺機器と上手く連携していることが大切
それぞれ詳しく見ていきましょう。
安全対策が必要な場合がある
協働ロボットは安全機能が充実しているため基本的に安全柵などの設備を必要としませんが、人に危害を加える可能性はゼロではありません。
特に溶接作業であれば、金属を溶かすほどの熱が発生するため非常に危険です。そのため、リスクアセスメントを行い、安全対策が必要であれば実施しなければなりません。
すると、安全柵などの周辺設備を購入が必須になるため、導入コストが増えてしまいます。
一般的な産業用ロボットよりも生産ペースは遅い
協働ロボットは安全性が高い分、人と衝突しても怪我をしにくいレベルのスピードでしか動けません。ISOで速度制限が定められていることから、制限速度以上で動かないようになっています。
そのため、一般的な産業用ロボットよりも生産ペースが遅いです。溶接条件によってはスピードに対応できない場合もあります。
ただし、作業者とロボットの間隔が離れると動作が早くなり、近づくとゆっくり動くロボットもあります。その場合であれば、あなたの工場でも対応できるかもしれません。
生産計画や溶接条件を考慮して導入することをおすすめします。
周辺機器と上手く連携していることが大切
協働ロボットに限った話ではありませんが、周辺機器とうまく連携することが大切です。溶接であれば、前行程でワークの位置決めや固定を行なわなければなりません。
その作業を人に任せてしまうと、リスクアセスメント上危険であることは間違いないですし、速度制限のある協働ロボットよりも通常のロボットの方がコストパフォーマンスに優れている可能性もあります。
もし完全自動化にしたいのであれば、位置決め装置、ワークを運搬・整列する装置、加工後のワークを取り出す装置などさまざまな装置を導入しなければなりません。そのため、完全自動化にするとコスト面の負担が増大する懸念があります。
協働ロボットを導入する前に他にどのような装置が必要かを考えることも大切です。
現在発売されている溶接用協働ロボット
現在発売されている以下の溶接用協働ロボットを紹介します。
- Welbee Co-R
- Co TIG Welders
Welbee Co-R|ダイヘン
ダイヘンのWelbee Co-Rは協働ロボットと同社のWelbeeシリーズをかけ合わせた溶接アプリケーションです。
協働ロボット用に溶接ができるトーチやソフトウェアの開発によって、通常の溶接ロボットではできなかった自動化を行います。
協働ロボットはユニバーサルロボット社のURシリーズを採用。URのロボットコントローラから溶接条件を設定できます。
溶接のスタート・ストップの指示や位置決めなどの動作を画面上に表示される説明によって、初心者でもティーチングが難しくありません。ダイレクトティーチングによる教示も可能です。
協働ロボットにより、安全対策のコスト削減を実現します。安全柵不要でも問題なく稼働できるため、現在稼働している溶接ラインでもレイアウトを変更せずに利用でき、利便性が高いです。
Co TIG Welders|クフウシヤ&ファブエース
クフウシヤとファブエースが開発したCo-TIGWeldersは、協働ロボットを用いたTIG溶接ロボットシステムです。
主に多品種少量生産を行っている板金業界向けに開発されました。べテランの溶接技能者と同等の作業を行い、品質の安定化と生産性の向上をサポートします。
協働ロボットはユニバーサルロボット社のUR5を採用。他にTIG溶接機と定盤、固定治具を用意するだけで、生産が可能になります。
安全柵も必要なく、架台を固定して100Vの電源を挿せば設置完了です。
Co-TIGWeldersは操作性が抜群で、段替えの工数を大きく削減できます。専用アプリケーションが使われており、タッチパネルでの直観的な操作が可能のため、短時間でティーチングが可能です。
ダイレクトティーチングにも対応しており、初心者でもティーチングを数時間以内で行えます。
まとめ
溶接用途の協働ロボットについて紹介しました。協働ロボットでも溶接を行うことができ、ティーチングが簡単で、省スペースの設置が可能であることから今度導入が増えていくかもしれません。
また、溶接ロボットの導入には、SIer企業の存在が欠かせません。もしあなたの工場でも導入を検討しているのであれば、一度相談してみてはいかがでしょうか。