目次
情報通信機械器具産業は通信機器や映像・音響機器の製造を行う業界で、基板の製造や液晶パネルの運送など、産業用ロボットの導入により大幅な生産効率の向上やコストカットが見込めます。
本記事では、そんな情報通信機械器具産業分野へのロボット導入が得意なSIerを3社ご紹介します。
・情報通信機械器具業界では産業用ロボット導入による自動化が可能
・生産効率向上、コスト削減が期待できる
・ガラス基材搬送や基盤実装、組立、検査工程での実績が多い
情報通信機械器具産業で産業用ロボットは導入できる
省スペースのロボットを導入したいなら多軸多関節ロボット
特に多品種の製造を行う場合、産業用ロボットの作業スペースを確保するのが難しい場合があります。
そのためロボットメーカーでは省スペースなロボットを導入したいというニーズに合わせ、特徴的な形状の多軸多関節ロボットを開発しています。
上下運動の方法を変える、アームを折りたたむなどの工夫がされることで、今までにない小さなスペースにもロボットが設置できるようになるでしょう。
液晶を自動搬送したいなら低振動のクリーンロボット
パソコンやスマートフォン、薄型テレビの液晶には薄いガラス板が利用されています。
ガラス板は様々な工程で加工されますが、工程間の搬送や加工機への出し入れにおいては、ガラスのたわみやゴミ、汚れ、傷などの付着を防がなければなりません。
この人の手では難しい作業を、クリーンかつ振動の少ない産業用ロボットを使うことで、歩留まり良く、高い生産性を維持したまま加工することができます。
情報通信機械器具産業で産業用ロボットを導入してできること
情報通信機械器具業界で産業用ロボットを導入してできることは以下の3つです。
- 半自動化による生産効率の向上
- 検査の自動化による品質向上
- 製造工程のコスト削減
半自動化による生産効率の向上
情報通信機械器具産業の生産ラインにおいては、少量多品種生産を行う場合が多いので、ロボットが得意な工程を洗い出して半自動化することで、生産効率が向上できます。
ロボットは人にできない精度・速度で作業でき、また休憩も必要なく24時間稼働できるので、特に単純な作業や負荷のかかる作業を自動化すれば一気に効率向上が実現できるでしょう。
反面、コツや感覚のいる作業は無理にロボット化する必要はないので、協業ロボットを上手く使いつつ、人とロボットが並行して作業する状態を作るのが効率的です。
検査の自動化による品質向上
検査工程は、作業員ごとの熟練度の差が品質ばらつきの原因となります。
近年では画像認識技術が向上したため、検査工程をカメラによるチェックに変えることで、検査のばらつきを抑えて品質を向上できます。
通常の画像認識ではチェックが難しい製品でも、AIを導入して学習させ、精度を高めることで自動化できるでしょう。
製造工程のコスト削減
ロボットが得意な製造工程や検査工程を自動化することで、コストを削減できるのも見逃せないポイントです。
生産効率や歩留まりの向上はコスト削減に直結するほか、検査工程などでは作業員の教育にかかる間接的なコストも抑えることができます。
情報通信機械器具業界で産業用ロボットを導入されやすい工程
情報通信機械器具産業で産業用ロボットを導入されやすい工程は以下の3つです。
- ガラス基板搬送工程
- 基板実装・組立工程
- 外観検査工程
ガラス基板搬送工程
スマートフォンやパソコン、テレビなどの液晶を作るガラス基板搬送工程は、産業用ロボットが導入されやすい工程です。
ガラス基板はクリーンな環境下で、割れないように扱う必要があり、ガラス搬送用に特化したクリーンロボットが適しています。
生産性を上げるために搬送速度も重視されるので、高精度・高速なロボットが開発され使用されています。
基板実装・組立工程
基板実装、組立工程でも、産業用ロボットは数多く使用されています。
リード部品のピッキングや基板への挿入、はんだ付けまでを1台で対応できるロボットが増えてきており、画像認識技術の向上もあって多品種生産にも対応しているため、多くの基板実装工程で省人化が実現できるでしょう。
またケーブルやコネクタの接続、ねじ締めなどの組立工程も対応しています。
外観検査工程
実装基板や製品の外観検査工程にもロボットが導入されています。
従来より画像認識技術を使って自動化が進んでいる工程ですが、複雑な形状をしている製品の場合、定点カメラでは正しく認識できないという課題がありました。
しかし、産業用ロボットにカメラを付けて、製品を様々な角度から撮影することで、画像認識の精度を高め、正しく外観検査を行えるようになります。
情報通信機械器具産業での産業用ロボットの導入が得意なSIer
日本国内には情報通信機械器具産業にロボットを導入実績が豊富で、多くの企業から信頼を獲得しているSIerが多数存在します。
ここでは代表的なSIerを3社ピックアップして紹介します。
株式会社大橋製作所
「株式会社大橋製作所」東京都に本社工場、埼玉県に第二工場を持つSIer企業です。
ディスプレイ関連の製造設備やスマートフォンの組立装置の実績が多く、小型電子部品の組立から半田付け、シール貼り付け、ねじ締め作業など、多岐に渡る工程の自動化に対応しています。
カメラなどの清浄度が求められる機器の組立など、難易度が高い工程の自動化も対応してもらえるでしょう。
対応業種 | 生産用機械器具、業務用機械器具、電子部品・デバイス、情報通信機械器具、電気機械器具、輸送用機械器具、汎用機械器具、機械器具など |
対応プロセス | 機械設計、制御設計、製造・組立、電気配線、システム制御、ティーチング |
住所 | 東京都大田区大森南3-1-10 |
URL | https://www.ohashi-engineering.co.jp/ |
ロボットスクールの有無 | 無 |
ロボットショールームの有無 | 無 |
シナジーシステム株式会社
「シナジーシステム株式会社」は熊本県を拠点に、手のひらサイズの製品を作る自動化機器の製造に特化した企業です。
半導体、自動車関連、医療機器を始めとした様々な分野に使われる自動化機器の、企画から製造、組立まで、ほぼ100%内製できる設備と技術を持っているのが強みです。
ロボット教育を目指して「ロボット展示・活用センター」も運営しており、各メーカーの産業用ロボットについて学ぶこともできます。
対応業種 | 生産用機械器具、業務用機械器具、電子部品・デバイス、情報通信機械器具、電気機械器具、半導体、輸送用機械器具、汎用機械器具など |
対応プロセス | 機械設計、制御設計、製造・組立、電気配線、システム制御、ティーチング |
住所 | 熊本県菊池市泗水町永1614 |
URL | http://www.synergy-s.co.jp |
ロボットスクールの有無 | 有 |
ロボットショールームの有無 | 有 |
エース設計産業株式会社
「エース設計産業株式会社」は、大阪を始めとした複数の拠点を持ち、製造関連設備の設計に強みを持つ企業です。
多岐に渡る2D・3DCADや解析ツールを保有しており、電気・電子部品、フラットパネルディスプレイ、自動車関連、食品関連など、幅広い分野の製造関連設備を設計した実績があります。
設計専門の企業ですが、仕様設計から設計、納品時の現場確認、試運転調整など一貫したサービスを提供しています。
対応業種 | 生産用機械器具、業務用機械器具、電子部品・デバイス、情報通信機械器具、電気機械器具、輸送用機械器具、汎用機械器具、機械器具など |
対応プロセス | 機械設計、制御設計、製造・組立、電気配線、システム制御、ティーチング |
住所 | 大阪府大阪市中央区北浜東4-33 北浜ネクスビル18階 |
URL | https://www.ace-tech.co.jp/index.html |
ロボットスクールの有無 | 無 |
ロボットショールームの有無 | 無 |
情報通信機械器具産業における産業用ロボットの導入事例
液晶テレビ用のガラス基板搬送
大型液晶ディスプレイ用液晶のもととなるガラス基板は、コスト削減のためにできるだけ大きなサイズを使うことが要求されます。
しかし、ガラス基板は0.7mmと紙のように薄くて柔らかく、割れやすいため、サイズを大きくすると搬送が技術的に難しくなる問題点がありました。
そこで安川電機は「昇降ダブルリンク式支柱タイプ」と呼ばれる、クリーン性を保ちつつ、精密・かつ高速にガラスを搬送できる双腕ロボットを開発しました。
従来なら水平補正用の装置が別に必要になるサイズのガラス基板でも、ロボット1台で搬送が完結し、設備費を削減できます。
ICチップのロボットピッキング
産業用ロボットはピッキングのような単純作業を行うのが得意ですが、ICチップのようにトレイに入ったものは位置ばらつきがあるため、正しくピッキングできない問題がありました。
しかし近年ではロボットビジョンとよばれるカメラ画像認識機能が進化しており、位置のばらつきを正確に認識し、高精度にピッキングできるようになっています。
協調型セル生産システム
情報通信機械器具の生産工程では、多品種少量生産(セル生産)を行うことが多く、既存の自動化装置では不向きという問題がありました。
そこで、キーエンスでは各品種における生産工程を記憶させ、画像認識技術を用いてワークを判別することで、正しい組立工程を行える多品種向けロボットを開発しました。
セル生産における省人化を実現できると共に、画像から不良判定も行えるので、歩留まりが向上する効果も見込めます。
まとめ
今回は、情報通信機械器具業界への産業用ロボット導入事例と、おすすめのSIer企業を紹介しました。
情報通信機械器具業界は扱う部品が小さく、セル生産が主流で自動化が難しい分野ですが、技術の進歩に伴って自動化できる工程は日々増えています。
生産設備の自動化で迷っているなら、豊富な実績を持つSIer企業に相談すれば、最適な生産ラインを提案してくれるので、一度相談してみてはいかがでしょうか。